出版社 : 新潮社
京都発賢島行の近鉄特急ビスタEXで、大学准教授が殺された。彼はテレビ番組で、伊勢神宮を貶める自説を主張する予定だった。特急内の事件と、東京で殺されていた歴史雑誌編集者との関係は?女性容疑者を追う十津川警部が、“おかげ横丁”で見出した彼女の意外な姿とは?
周王朝末期、弱体化した国を守るため人質として燕に送られることになった王子稜。その途上、父王から託された燕王宛の書翰の内容を知る。そこには、これを持参した王子を殺すようにと書かれていた。王宮内の陰謀に巻き込まれたことを知った稜は、身分を捨て運命を天に委ねることに決める。折しも、強国趙の幼い二人の公子を賊の襲撃から助けたばかり。二公子の臣下の求めに応じ、王子稜は商人「公孫龍」として趙の都を目指す。そして運命は変転を始めたー。
書店主が拾ったバッグには、赤いモレスキンの手帳が入っていた。男は離婚歴のある書店主。女は夫と死別した金箔職人。見知らぬ二人を結ぶ赤い手帳と一冊の本ー。『ミッテランの帽子』に続く、大人のためのおとぎ話。ジュゼッペ・アチェルビ賞受賞。
内装会社でバリアフリー店舗を手がけたのをきっかけに、25歳で義肢装具士の専門学校に飛び込んだ二階堂さえ子。苦手の製作実習を助けてくれたクラスのはぐれ者2人の熱にあてられ、芸者やカメラマン、人力車夫など多彩な義肢ユーザーと出会い、少しずつ見え始める「ほんとのバリアフリー」。そして、未来の自分。
江戸最強の出版人、蔦屋重三郎。そして、才能の開花を待つ、まだ何者でもない天才たち。身も心も、自分がなりたいものになるために、捧げる日々。しかし。あるひとつの「死」が、夢追人の生活に、暗雲を…。
延暦寺につかえる者が住まう八瀬の山里には「八瀬童子」と呼ばれる忍びたちがひっそりと暮らしていた。ある日、次期天台座主の名前が記された秘伝の巻物が奪われ、巻物の奪還を命じられた少女・すがるは、陰謀渦巻く京の都へと向かう。疫病と飢饉に困窮する民をよそに「花の御所」で繰り広げられる権力争い。そこへ山名宗全、細川勝元ら守護大名たちの対立が絡み、巻物の探索は壮絶な忍者同士の死闘へと発展していくー。野望の陰で命を散らす忍者たちの悲哀を描く、一気読み必至の歴史エンターテインメント。
最高の出来事も、最悪の思い出も。生まれるのも、壊されるのも。人生の分かれ道は、たいてい夜に姿を見せる。ボクサー、タクシー運転手、警察官、高校教師。その夜、四人の男女は、闇に侵されたー。人間の強さと弱さを繊細な視線で見つめ、生まれた、忘れられない物語。
弁護士の澤田花が教育を担当することになった修習生の藤掛。その派手な容姿に引っかかる花だったが、仕事をする内、彼の意外な才能を発見する(「第一章 人は見かけによらない」)。十代で司法試験を突破した天才少年・柳が検察修習にやってきた。周囲が浮き足立つ中、柳の過去と重なるような事件の裁判が始まりー(「第三章 うつくしい名前」)。全四章。
疫病が猛威をふるい、死臭でむせかえる平安朝の洛中ー一生消えぬ傷を負い、人と世を呪詛しながらしかし、イチは変わりかけていた。空也上人、命拾い、救った命、身寄りをなくした身重のおなご…。NHKドラマ『雲霧仁左衛門』ほか執筆。着実にキャリアを重ねた脚本家が満を持して挑み、心血を注いだ長篇小説。京都文学賞受賞作。
私は、私を育てていくーー。誰しもが恋い焦がれた青春の普遍を真っ向から描き切る、加藤シゲアキ、これが新たな代表作。高校生限定のマッチングアプリが必須となった現代。東京のとある高校を舞台に、3人の若者の運命が、鮮やかに加速していくーー。恋とは、友情とは、家族とは、人と“繫がる”とは何か。悩み、傷つきながら、〈私たち〉が「世界との距離をつかむまで」を端正かつエモーショナルに描く。著者3年ぶり、渾身の新作長編。
完成しながらも発表されず、手許に残された「影に対して」。「理由が何であれ、母を裏切り見棄てた事実には変りはない」しかし『沈黙』『深い河』などの登場人物が、ついにキリストを棄てられなかったように、真に母を棄て、母と別れられる者などいないー。かつて暮した街を訪ね(「六日間の旅行」「初恋」)、破戒した神父を思い(「影法師」)、かくれキリシタンの里を歩きながら、(「母なるもの」)、失われた“母”と還るべき場所を求め、長い歳月をかけて執筆されて全七篇。
琵琶湖近くの介護療養施設で、百歳の男が殺された。捜査で出会った男と女ー謎が広がり深まる中、刑事と容疑者だった二人は、離れられなくなっていく。一方、事件を取材する記者は、死亡した男の過去に興味を抱き旧満州を訪ねるが…。昭和から令和へ、日本人が心の底に堆積させた「原罪」を炙りだす、慟哭の長編ミステリ。
食べることはその土地と生きてゆくこと。舌を燃やし、思い出を焼くつくすほど辛い唐辛子、庶民のキャビアと呼ばれるサルデッラに腸詰めサラミのンドゥイヤ、近海で獲れた鰯の塩漬け、シーラ山地で生産されるチーズやじゃが芋、自家製オリーヴオイルにワイン、スイカや無花果など季節を彩る果物…。南イタリア、カラブリア州出身の作家が、固有の言語と食文化を守ってきた郷土の絶品料理と、人生の節目ごとに刻まれた家族の記憶とを綴る、自伝的短篇小説集。