出版社 : 新潮社
歌舞伎見物の客の世話をする芝居茶屋の主人・弁之助は、剣術も達者なら頭も切れるが、出来すぎの女房のせいで、暇をもてあまし気味。そんなところへ「中村座の御曹子が行方不明」という知らせが入って…。一日千両が動く芝居の町に巻き起こるさまざまな事件。ころし、誘拐、御家騒動ー。目明しの鶴吉、絵画きの友蔵、二人の友と悪に挑む痛快時代小説集。
ネッド・アレンにとって、栄光は目前だった。メイン州を出てほぼ10年、マンハッタンはいよいよ彼に微笑みかけようとしていた。だが、破滅は前触れもなく襲ってきたー失業。残された負債。不信を募らせる妻。それでも、辛酸をなめ尽くした彼にも蜘蛛の糸は下りてきた。ビッグ・ビジネスのチャンス。ところが…。『ビッグ・ピクチャー』で世界の注目を浴びた著者の再就職サスペンス。
ロシアからは法も秩序も消えていた。当局の権威は失墜し、幾多のマフィア組織が無軌道に鎬を削っていた。そしてチャーリーに未来はなかった。さらに、未来のない男に与えられたはずの任務は、思わぬ危険な方向へと彼を導いてゆく。米ロ両大国の思惑に揉まれ、屈折した愛情に揺さぶられながら、彼は因縁浅からぬ街で孤独な活動を展開する。今日的テーマと壮大な構想のシリーズ第十作。
原子爆弾数十発に相当するとされる、240キロを超えるプルトニウム。それはロシア国内に残されているのか、はたまた移送されてしまったのか?チャーリーの調査が進展する一方で、罪なき娘サーシャの身に危機が迫る。目には目を、命には命を。自らの簡潔な哲学に基づき、チャーリーは鉄壁の罠を用意した。銃弾の嵐の向こうで微笑むのは誰か。世界を危機に陥れた計画は終幕に向かう。
ヘンリー8世と愛人アン・ブーリンとの娘エリザベスは、3歳で母が処刑され、私生児の烙印を押された。21歳の時には、反逆罪の疑いでロンドン塔に幽閉された。しかし数々の陰謀や暗殺の恐怖に怯えながらも、鋭い判断力と英知で男たちを操り、25歳で自ら女を捨て、国家のために生きることを決意する。「ヴァージン・クイーン」、その知られざる素顔が、いま豪華に華麗に浮び上がる。
発展の望みを絶たれ、憂鬱なムードの漂うニュータウンに暮らす一家がいる。1歳の息子を突然失い、空虚を抱える夫婦がいる。18歳で結婚したが、夫にも義母にもまともに扱ってもらえない若妻がいる…。3組の家族、ひとりひとりの理想が、現実に浸食される。だが、どんなにそれが重くとも、目をそらさずに生きる、僕たちの物語ー。「カラス」「扉を開けて」「陽だまりの猫」。
鰹、白魚、鮭、柿、桜…。江戸の四季を彩る「初もの」がからんだ謎また謎。本所深川一帯をあずかる「回向院の旦那」こと岡っ引きの茂七が、子分の糸吉や権三らと難事件の数々に挑む。夜っぴて屋台を開いている正体不明の稲荷寿司屋の親父、霊力をもつという「拝み屋」の少年など、一癖二癖ある脇役たちも縦横無尽に神出鬼没。人情と季節感にあふれた時代ミステリー・ワールドへご招待!
祖母は言った。「ほんとにまあ、どうして作家なんぞになったもんだか」それは、ピギー・スニードがいたからだ。豚を飼い、豚と暮らしたこの男が、豚ともども焼け死んだとき、少年アーヴィングの口をついて出た嘘話。作家の仕事は、ピギーに火をつけ、それから救おうとすることなのだ。何度も何度も。いつまでも。創作の秘密を明かす表題作とディケンズへのオマージュに傑作短篇をサンドウィッチ。ただ一冊の短篇&エッセイ集。
幼い頃、父と母は離婚した。母は新しい恋人と海外へ。父もやがて再婚し…。娘をかえりみない子供のような親。抵抗のすべを知らない子供。世界を静かに覆しつつある新しい家族像を、自らの体験をもとに、柔らかな声で描いた、21世紀文学の幕開けを予感させる長篇。ドイツ語圏の文学賞を独占した23歳の新人の、繊細、果敢な話題作。
剣をもって修羅を生きよ!アヘン戦争前後の香港、ロンドン、幕末の日本を舞台に、大国の陰謀に独り立ち向う海賊“東海の青龍”。歴史の激流が渦巻く海で、命を賭して剽悍に生きた男を描く、壮大なロマン。
愛の欠如のなかに生きる孤独な人間の生と死、相つぐ奇想天外な事件、奇態な人々の神話的物語世界-マコンド村の創設から百年、はじめて愛によって生を授かった者が出現したとき、メルキアデスの羊皮紙の謎が解読され、ブエンディア一族の波瀾に満ちた歴史が終る。世界的ベストセラーとなった傑作長篇の改訳。ノーベル文学賞受賞。
地方営業に呼ばれたフォークシンガー、七十四歳の女流詩人と結婚した七十六歳の文学者、新聞の勧誘に北欧までやってきた黒眼鏡のヨレヨレ男、開いてるのか閉まってるのか分からない中華屋の親父…。21篇の短篇小説がおりなす、人生模様カタログ。
依頼を受けること。そこに、理由などはいらない…。ヤクザの組長の家に生れた過去を持つ相良治郎は、血みどろの抗争を嫌悪しながら市民社会にもなじめず、探偵の道を選んだ。「探偵とは他人の心の中を旅する職業」と、静かにしかし熱く事件を追う。藤田宜永の送り出した新しいヒーローが渋谷の街に現れ潜んだ。この6編の事件簿は、まさに探偵小説の現在形と呼ばれるにふさわしい。
李哲博と朴政道は民族学校からの親友。李はボクシング、朴はサッカーで名の知られた選手だったが、二十代半ばを迎え、挫折感を抱いたまま、ともに歌舞伎町のホテトルを経営していた。一攫千金を狙いポーカー賭博屋を開いた二人は、次々と事業を拡大。自分たちの夢を実現すべく、いわくつきのビル買収という大博打に乗り出すー。欲望の街・新宿を舞台にした、手に汗握る暗黒小説。
これはスゴい、そこまで書くかと右翼が驚き、左翼も呆れた前代未聞の「天皇小説」。天皇とは、日本人にとってどんな存在なのか。われわれはなぜ、これほど天皇にこだわるのか。監獄、右翼左翼、精神科病院、北朝鮮と、さまざまな「非日常」のフィルターを通して見てみたらー。獄中で執筆され、獄中で新日本文学賞を受賞したデビュー作にして超問題作、大幅加筆を経て、文庫版で復活。
鬱蒼としたロッキー山中の薄暗がりを、ライフルを肩に「獲物」を追う男が影のように動いていく。標的は、何も知らずに自然を楽しんでいる若い美女。きわどい描写と本物の死の苦悶が売り物の違法ビデオ撮影のために、「出演者」を狩っているのだ。今捕獲している二人のほかに、もう一人至急入用になった。囚われた「獲物」たちに生き延びる道はあるのか…。前代未聞の極悪猟奇犯罪。