出版社 : 新潮社
政・官界が腐敗するメキシコで、軍部によるクーデターが成功した。一斉粛清にのりだした若手将校にとって、最大の標的は麻薬王アラマン。特殊部隊がアジトを急襲するが、アラマンは辛くも脱出、新政権を転覆すべく、アメリカとの国境でテロ工作を仕掛ける。メキシコ軍による挑発と見せかけ、米軍の軍事介入を引き出そうというのだ…。米軍女性少尉が大活躍する迫真の冒険小説。
ステラは42歳、だけど美貌も体型も若い娘に負けてない。結婚にはウンザリしたから、離婚して息子と二人暮らし。仕事も順調、でもずっと全速力で走ってきたから、疲れちゃった。だから思い切ってひとりジャマイカへ行ったの。そこで出会ったのはさわやかな地元の青年。親子ほど歳は違うけど、お互い魅かれあってそしてー。『ため息つかせて』の著者がお届けする元気のでる恋愛小説。
世紀末日本文芸の堕天使が恥と挫折まみれのダメ人生を笑いのめす最高小説集!金がなく職もなく潤いすらない無為の日々。そんな私に人生の茶柱は立つのか?!その過激な堕落の美学で絶賛を浴びた「夫婦茶碗」、金とドラッグと女に翻弄される元パンクロッカーのワイルド・ライフを描いた「人間の屑」。ポストバブル世代の福音書。
エクアドル東部のアマゾン上流、「牧歌的な村」エル・イディリオにも開発の波は押し寄せています。生活を脅かされた先住民や動物たちはさらに奥地へと移動しています。そんなある日、外国人の惨殺死体が運ばれてきます。人間たちの横暴によって追いつめられた山猫(オセロット)が人間を攻撃してきたのです。動物たちを知りつくしている老人も山猫討伐隊に加えられます。自分の身と生活環境を守るために人間を襲った山猫に、老人は引き金を引くことができるのでしょうか…湿った森の豊潤な世界を舞台に、人間の野蛮さを静かに訴える珠玉の小品。
時は慶長年間。飛騨高山城主の嫡男・金森宗和は、京に出て茶人となった。その茶会に訪れる曰くつきの茶人、牢人、幻術師、そしてあやかしの者ども。はかない露の如く美しい茶道具の数々が、血なまぐさい戦場の物語を運んでくる…。謎に包まれた茶人の武将金森宗和を、大坂夏の陣へ向かう合戦絵巻の中に描き込んだ極上の時代小説。
誘い込み、搾り取り、骨抜きにして、するりと姿を晦ます女。次なるターゲットを求め、闇の中で眼を光らせている女。ノルマをこなしながら美しく着飾って巷を浮遊する女。でもあなたは、決して幸せではないはず。もしかすると、本当はもう骸となって、男たちに甘い幻を見せているのかも…。現代という名のベールの下に隠れ棲む恐怖を描く、心理サスペンスの傑作!第二回新潮ミステリー倶楽部賞受賞。
見事に初勝利を果たした千代延義正は、1938年南仏・ポーで開催されるレースに向け、トレーニングに明け暮れていた。だが、国際紛争の火種がついにくすぶりはじめる。活発化する列強の謀略戦は、義正の運命をも変えつつあった。駐仏陸軍武官の公職と私情との狭間で苦悩する父・宗平。そして、二人の女性の行く末は?怒濤のクライマックスへ、物語はブガッティの如く一気に駆け抜ける!’95年、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会特別賞受賞。
十月七日午後五時三十分。萩行きの夜行高速バスが品川のバスターミナルを出発した。乗客乗務員は十二人。約十四時間で目的地到着の予定だったのだが…。深夜に乗務員が殺害され、バスは殺人者とともに、何処とも知れぬ闇の中に放り出される。台風接近で風雨も激しさを増しー。それぞれの人生を背負って乗り合わせた登場人物たちの多視点から恐怖の一夜を描く、異色のサスペンス。
新宿・職安前の託老所は、居場所のない老人たちを日中だけ預かる施設。そこでは入所者の首吊り自殺が立て続けに発生していた。警察はボケを苦にした自殺と断定するが、新入りの中村きんは疑念を抱く。果してボケた老人が自分で首を吊ったりできるだろうか?これは他殺ではないのか…。日本推理作家協会賞短編部門賞を受賞した表題作を含む、連作短編集。
アフリカに魅せられた古人類学者ケンは、ケニアの平原で古人類のものと思われる不思議な足跡を発見した。きのう付けられたように見えるその足跡をたどっていくと、何と化石までもが見つかった。人類の祖先、アウストラロピテクスのもののようだ。彼は発掘を始めるが、何者かの罠にかかって不毛の地に置き去りにされる…。300万円の時を超えて冒険と科学とロマンの世界が広がる。
飢えと疲労で瀕死のケンの命を救ったのは、アウストラロピテクスの少年だった。厳しい気候と地形に守られ、自然の恩恵をこうむる術を会得した彼らは、300万年の時を生き延びたのだ。行動をともにするうち、二人の間には友情のようなものが芽生える…。迫り来る密猟者と、名声を追う貪欲な科学者と、残酷な政治情勢から逃れて、アウストラロピテクスの少年は、生きる。
冷戦が終わって、上司も変わった。チャーリーは新人ガウアーの教育係を押しつけられ、憮然とする。一方、新生ロシアで対外情報部門のトップに昇りつめたナターリヤは、幼い娘を育てながら組織内の暗闘に耐え、チャーリーの行方を追っていた。そして北京ではロンドンに情報を送っていたイエズス会士が公安当局にマークされ、彼を出国させることがガウアーの初仕事に。シリーズ第九作。
新人ガウアーは、任務の遂行直前に中国当局に拘束されてしまったが、チャーリーの教えを忠実に守り、獄中生活に耐える。そしてチャーリーは北京行きを命じられた。やったぞ、現場復帰だ!だが、情報と資料を吟味した彼の目には何もかもが不自然に映っていた。ここでしくじれば、本当に未来はなくなる。周到な準備を重ね、チャーリーは運命の鉄道駅へ向かう。恩讐と逆転の大団円は。
幕の内弁当を食べるとき、ついついおかずとめしの配分を考え、食い進み計画を立ててはいませんか?中学生の頃から「何かでひと山当てて大儲けをする」という夢を見続けている友人が周りにいませんか?誰の身近にもいるごくフツーの人々の日常が、ちょっと視点を変えただけでニヤリと笑える小説になりました。あの名作を大胆にもパスティーシュした表題作など八編を収めた短編集。
まり子は美脚を誇るサーカスの花形スター。彼女は、三人の男性に等分に恋をした。ふわふわと甘い綿菓子のような恋を。ところが、恋の魔法は突然解かれてしまう。まり子が妊娠したために。恋は身を軽くするものなのに、どうして生命は身を重くするのだろう。まり子は憂鬱になった。いつまでも恋をしていたい。だけど、どうすればいいの?恋の向こうにある日常の重さ…甘く残酷な恋愛小説。
1839年、アフリカ人シンケはキューバに向かう奴隷船アミスタッド号で52人の仲間と反乱を起こし、成功した。しかし船は迷走し、結局彼らは米海軍の手に落ちて乗組員殺害の罪で裁かれることになった。故郷に帰ることだけを願った彼らに罪はあるのか。そもそも奴隷売買は違法であるはずだ。自由と平等の国アメリカ、その威信をかけた史上最も重要な裁判を扱った感動大作。
1941年初秋、ワシントンD.C.日本大使館。難航する和平交渉の最前線で芽生えた二つの恋。機密文書を打ち出すタイプライターが恋に搦め捕られたとき、男女は否応なく外交交渉のホットゾーンに投げ込まれた。そして彼らは切望した。和平の成立と恋の永遠を。運命のパールハーバーが日本外交の欺瞞を世界に曝してから約二週間後、戦時下のクリスマス・イヴに、ある秘密が永久に封印された…。
百年近く生きたお祖母ちゃんの死とともに、その魂を受け継ぎ、「救い主」とみなされた新しいギー兄さんは、森に残る伝承の世界を次々と蘇らせた。だが彼の癒しの業は村人達から偽物と糾弾される。女性へと「転換」した両性具有の私は彼を支え、その一部始終を書き綴っていく…。常に現代文学の最前線を拓く作者が、故郷四国の村を舞台に魂救済の根本問題を描き尽くした長編三部作。