出版社 : 新潮社
中東は未曾有の危機に瀕していた。シリアはイラクと連合し、イスラエル侵攻を企む。イラクは大量破壊兵器を使用する機会を窺っていた。一方、対アラブ強硬論者のイスラエル首相は、この脅威に核攻撃で応える決意を固める。虚々実々のパワー・ゲームを経て、戦端は開かれた。双方の最終兵器を同時に破壊せよー。米空軍第45航空団の究極のミッションは、「三位一体(トリニティ)」と命名された。
銃撃され、診療所に駆けこんだフリーのパイロット、キイ・タケット。診察に当たった女医ラーラは、かつて上院議員だったキイの兄とスキャンダルを起こし、その失脚と謎の死の原因を作った張本人だった。ラーラがあえてタケット家の近隣で開業した目的は、キイの腕を借りて内戦状態のモンテサングレに密入国し、わが子の遺体を取り返すことだった。
名馬「サンソ」はまさに救世主だった、悪質な飲酒運転から、調教師としての名声を失ったミッキーにとっては。かつて彼が調教した偉大なる種牡馬。その厩舎管理を任され、ミッキーはアイルランドに帰還した。無名の障害馬に賭け、確実に大儲けできる秘策を胸に…。暗転。ある組織の脅迫。取引に応じなければ、「サンソ」を誘拐するという。テロリストとの攻防。不屈の魂!迫真の競馬サスペンス。
マックスはかつてネットワークの花形リポーターだったが、今は田舎町の系列局に飛ばされている。その町で平凡に暮らしていたサムは、ある日突然レイオフされた。ささいな偶然の積み重なりがサムを人質犯へと変貌させ、事件を中継するスクープを得たマックスに返り咲きのチャンスを与えた。彼らが“主演”する大事件が全米でテレビ放映された時、男たちの運命は狂いはじめたー。
無茶苦茶な誘拐事件だった。身代金が金塊二トン(時価32億)。受け渡しはどうするのか、大阪府警は驚愕するが、犯行計画は緻密だった。大阪湾に繋留中の漁船に金塊を積み、オートジャイロをセットしろという。金塊を積み無人の漁船が闇をゆく。だが、奪取寸前、漁船は偶然にもタンカーと衝突炎上してしまう。万事休すと思いきや、犯人の真骨頂はここからだった。
厳寒のベランダに裸同然で立ち自殺を図った私が、初恋の人に似た医師に出会い瀕死の病人を生き返らせてしまう「重心」。親友の夫と一夜を共にしてしまった女の子の不安と喜びを細やかに描く「鳴り響く名前」等。コメディタッチあり不倫あり、妖怪も出てくれば魔女も活躍する。不条理に迫り魂の奥を揺さぶりもする、魅力的な世界。10人の魔女たちが描くどきどきして、上質な小説集。
甘酸っぱい感傷を伴った懐かしさもある-還暦を間近に控えたある日、定時制高校の同窓会が開かれることになった。働いていた町工場の先輩のこと、放送劇のコンクールに出場したこと、女生徒の一人に寄せる淡い想い…。主人公の脳裡にには四年間の記憶の片々が明滅しはじめる。芥川賞作家、円熟の最新小説集。
安易きわまる「ヤラセ」がきっかけだった。凶悪犯が実在することにスタッフはあわて、犯人に素手で立ち向かう黒ずくめの男の出現に、視聴者は過剰反応した。巷の英雄を追い求める女性レポーターが目的を遂げたとき、ワイドショウを揺さぶる大事件のカウントダウンが始まった!そのマイクはストーカーそのものだ!体験者でなければ書けない凄味が、本書にはある-。
名前は不明ながら「ナウムブルクの巨匠」としてドイツ美術史にその存在を残す石工と彼が刻んだ“永遠”-ロマネスク芸術の傑作として今なお大聖堂に立つ美しき石像ウータをめぐる豊饒な物語。
海亀の執拗な攻撃から僕らの身を守ってくれた秘密兵器とは?ヒトは死んだらどこにいくのだろう?-読者が参加する小説「ストッキング」から、オール関西弁で書かれた「ことわざ」まで、謎とユーモアに満ちた「超短篇」小説が36本!(さらに替え歌「朝からラーメン」のおまけ付き!)絶好調の村上春樹=安西水丸“nice&easy”コンビが贈る「村上朝日堂」小説特集号。
教会を離れた私が性の遍歴から帰還すると、襲撃を受け障害者となったギー兄さんは、遙かに大きな存在となっていた。しかし、戦闘力を増す農場派と巡礼団の対立が深まり、巨大化と外的緊張の中で分裂の危機を迎える教会のメンバーに、ギー兄さんは最後の告白を行った。そしてその夜「緑の木」が燃えあがる!「神」に極限まで近づき、なお新たな道を求めるライフワーク、完結編。
長年連れ添った妻に先立たれ、自らも病に侵された老人サムは、暖かい子供たちの思いやりに感謝しながらも一人で余生を生き抜こうとする。妻の死後、どこからともなく現れた白い犬と寄り添うようにして。犬は、サム以外の人間の前にはなかなか姿を見せず、声も立てないー真実の愛の姿を美しく爽やかに描いて、痛いほどの感動を与える大人の童話。
時の流れを見定めて、換えも換えたり主君が七人。槍働きの時代が終わると見るや今度は諜報活動でその名を上げる。稀有の謀将藤堂高虎を描く表題作。信長の度重なる侮辱に忍従する光秀に領地返還の上、中国攻めの援軍をせよという指令が下りた。悲運の武将を描く「明智光秀」など、歴史の奔流の中で下した男の決断を描く歴史譚5編と痛快無比、ユーモラスな歴史短編5編を併せて収録。
異人館の立ち並ぶ神戸・山手の一角にあって一際目立つ英国風の洋館が、紅茶輸入業を営む高見沢一族の邸宅だった。この屋敷内に侵入した何者かに、高見沢家の女社長・隆子が殺された。その直前に中国語のメッセージがー「セイロン亭の秘密を知っているか」。これを契機に次々と得体のしれない事件が起こるのだった。一族の過去と複雑な人間関係にお茶の歴史を絡ませた浪漫的ミステリー。
天網恢恢疎ニシテ漏ラサズ!が口癖の、風車の親分こと御用聞の浜吉。今日も小石川伝通院で風車を売っていると、難事件の解決依頼が舞い込んでくる。月夜になると娘をさらう駕籠の謎を負う表題作、ハゼ釣りの客が釣った銀のかんざしから、かどわかされたご新造の行方をつかむ「かんざし釣り」など、推理と人情で謎を解く捕物9話。お縄にしたあとの計らいも粋な、シリーズ3作目。
打ち捨てられたネイティヴ・アメリカンのコミュニティ。貧窮の極にある家族や仲間のために、ラファエルはある仕事を選んだ。スナッフ・ムーヴィーに主演すること。それは一時間にわたって身体を切り刻まれ、殺される模様を撮影させることを意味したー。『殺人方程式』などでMWA賞を2回受賞した名手が問う、真の愛と勇気。ジョニー・デップに初のメガホンを取らせた問題の原作。
自己中心的な上司、男と駆け落ちした妻…。くすぶっているヒューストン市警犯罪情報課警部マーカス・グレイバーのもとに、部下の自殺というやっかいな事件が舞い込んだ。そして、極秘の内部調査により捜査線上に浮かび上がったのは、意外にも彼が最も信頼していた腹心の背信行為だったー。
盗聴、盗撮、カーチェイス…。最新の装備と最高の技術を駆使した調査により、恐るべき情報犯罪の全貌が姿を現した。謎に包まれた黒幕、バノス・カラティスに迫るべく、グレイバーは周到に組織化された策謀の糸を辿っていく。はたして仲間らと共にグレイバーは事件の最終幕に立った。しかし、全てのシナリオは…。警察内部をも巻き込んだ空前の犯罪計画は思いも寄らぬ結末を迎える。
耳を澄まし心を開けば、見えないものが見えてくる。目はよく見えないけれど優れた聴力と観察力を持った少年は、族長の弟とともに「水の国」をめざし旅にでる。森の奥深くで少年が見つけた限りない世界。