出版社 : 新潮社
その時、日本に近代が始まろうとしていた…。すべてに、新しい「意味」と「かたち」が求められた動乱の幕末、人は何を信じて生き、そして死んでいったのか。高杉晋作、小栗上野介らの強烈な光芒を放つ生涯から、歴史の底より微かに漏れる無名の人々の慟哭までを、名手たちの筆は激しく、優しく描き出す。国家とは、そして人生とは。現代に問いかける13編を収めるシリーズ第9巻。
鷹取俊太郎は、稀に見る色男。十代将軍・家治の目に留まり、半ば公然となった御庭番の裏役として、初代・陰の御庭番を拝命した。いきなり美女の罠に嵌まりずっこけるのだが、岡っ引の孝次、公事師の彦佐衛門、そして、俊太郎に惚れた清国の美女に助けられ、紙問屋に身をやつし、なんとか密命を果たしていく。身分を明かせぬ苦闘が続くが、騙し騙され、将軍直々の隠密御用が始まった。
寄宿学校の水浴び場で起きた不可解な水死事故ーそれが四半世紀にわたる、ピラスター銀行をめぐる暗闘のプロローグだった。7年後、同窓生だったピラスター一族のエドワードとヒューは銀行に勤め、事故当時エドワードをかばったコルドバ人、ミッキー・ミランダは、エドワードの母オーガスタを誘惑し、密かな野望を育んでいた…。ロンドンの金融街に渦巻く欲望を活写した注目作。
左遷させられたアメリカでめざましい業績を挙げたヒューが勇躍帰国。エドワードの頭取後継を望む母オーガスタは狡智の限りを尽くし、ヒューをふたたび失脚させる。だが肝心の息子はミッキーにそそのかされ、ピラスター銀行は創業以来最大のピンチを迎える。事態は緊迫の度を加え、ついに血で血を洗う闘いが…。そして24年前の奇怪な水死事故の真相も、白日の下に曝される時がきた。
パリー米人外科医オズボーンは、28年前に父を殺害した男を発見した。ロンドンーロス市警刑事マクヴェイは、首なし死体の謎に挑んでいた。ジュネーヴー美貌の研修医ヴェラは、運命を塗り変える恋に落ちた。そしてベルリンードイツの名士たちはある祝賀会を準備していた…。無秩序や出来事の裏に潜む、巨大な陰謀とは何か。全世界を震撼させた、大型新人の冒険サスペンス長編。
次々に起きる惨劇を切り抜けながら、父親殺害の真相究明に執念を燃やすオズボーン。刑事マクヴェイも、各国捜査機関と密に連絡を取りつつ、数十年にもわたるおぞましい計画の核心に迫っていた。メディアの帝王アーウィン・ショールの正体とは。そして、《明後日》という謎のコードネームの意味とは。猛火と黒煙に包まれたベルリンを後に、オズボーンは氷雪のユングフラウに向かう。
安政七年(1860)三月三日、雪にけむる江戸城桜田門外に轟いた一発の銃声と激しい斬りあいが、幕末の日本に大きな転機をもたらした。安政の大獄、無勅許の開国等で独断専行する井伊大老を暗殺したこの事件を機に、水戸藩におこって幕政改革をめざした尊王攘夷思想は、倒幕運動へと変わっていく。襲撃現場の指揮者・関鉄之介を主人公に、桜田事変の全貌を描ききった歴史小説の大作。
水戸の下級藩士の家に生まれた関鉄之介は、水戸学の薫陶を受け尊王攘夷思想にめざめた。時あたかも日米通商条約締結等をめぐって幕府に対立する水戸藩と尊王の志士に、幕府は苛烈な処分を加えた。鉄之介ら水戸・薩摩の脱藩士18人はあい謀って、桜田門外に井伊直弼をたおす。が、大老暗殺に呼応して薩摩藩が兵を進め朝廷を守護する計画は頓挫し、鉄之介は潜行逃亡の日々を重ねる…。
ここに描かれた老夫婦のあいだにも生涯をかけたロマンスがあった。その片方が欠けたとき、残された者は、どのような死を迎えればいいのか-。孤独な人生の同伴者として老人の生をじっと見守る白い犬とは。幻想的なこの小説には、真実を越えた真実がある。痛いほどにやさしい詩的小説世界。
危機管理の天才・藤堂高虎、情報分析の名人・細川藤孝、宿命のライバル・徳川吉宗と徳川宗春…そのほか、滑稽譚、冒険譚、怪異譚等々、面白さ盛り沢山の歴史短編集。
ジェニファ・ジョーンズの顔の輪郭、ローレン・バコールの目、マリリン・モンローの口元、アン・マーグレットの躰、ディートリッヒの脚に美容整形した世界No.1の美女の肉体が競争して無残にも傷だらけになった話。青ざめた顔の1枚の絵に魅せられてその絵に愛された女の幸福な死…。心がねじれたり魂を売りたくなるような世にも不思議なラブショック・ショート・ストーリー100編を収録。
乱世は幾多の異才を生む。信長、秀吉、家康、信玄、謙信といった稀代の智将・名将の他、大胆不敵に我が道をゆく戦国の異端児前田慶次。独り深遠なる芸術の真髄を見据えた千利休。槍一本に命を託し諸国で名を馳せた孤高の武将後藤又兵衛。また、関ケ原に敗れて主従数名で敗走する西軍の将宇喜多秀家等、戦乱の世を彩った様々な人間模様を達意の筆致で写し出す傑作アンソロジー15編。
マンハッタンで堅実な投資顧問会社を経営するファーは麻薬密売で逮補された息子の将来と引換えにFBIとの取引を受け入れた。カリブのカイマン島にファーは工作員数名と傍受装置を完備した投資顧問会社を作り、おとり捜査が開始された。巨額の資金洗浄を持ちかけてきたのはコロンピアのコカイン・ブローカーとニューヨーク・マフィアだった。一味は罠にはまったかに見えたのだが。
闘争に疲れたIRAのデヴリンは、合同テロ組織による合衆国大統領暗殺計画を察知した。彼は身の安全とオーストラリアへの移住を条件に、この情報をイギリスのSISに持ち込む。だが、担当となったバランタインが情報の真偽を確認しようとした矢先、南仏に滞在中の大統領令嬢が誘拐されたー。テロリストと諜報員の奇妙な二人三脚、監禁された令嬢の凄絶な日々を描く謀略巨編。
私立探偵ブルーは奇妙な依頼を受けた。変装した男ホワイトから、ブラックを見張るように、と。真向いの部屋から、ブルーは見張り続ける。だが、ブラックの日常に何の変化もない。彼は、ただ毎日何かを書き、読んでいるだけなのだ。ブルーは空想の世界に彷徨う。ブラックの正体やホワイトの目的を推理して。次第に、不安と焦燥と疑惑に駆られるブルー…。’80年代アメリカ文学の代表的作品!
妹の部屋から持ち出したバービー人形との恋物語「『ファック・ミー』とバービーはいった」、強姦犯に宛てた被害者からのラブレター「レイプなんて怖くない」、社会の底辺に生きるいびつなカップルの残酷な運命「恋の骨折り老い」-心も体も傷つきながら、それでも誰かを愛さずには、肌を合わせずには生きられない人間の性をやさしく見つめる16編。現代アメリガが生んだ愛の文学傑作選。