出版社 : 新潮社
お前を刺すのは憎いからじゃない。愛したいから。わかりあいたいから…。孤独のメロディが流れる真夜中の東京で、凄惨きわまる死体がひとつ、またひとつ…。第6回日本推理サスペンス大賞優秀作。
札幌の大学二年生、高村伸夫は専門課程の選択に悩み、雪に閉ざされた暗鬱なものからの脱出も夢見て、京都の大学の文学部に編入を試みる。が、それに失敗した伸夫は人間へのやみがたい興味から、同じ札幌の別の大学の医学部に進むことを決意する。解剖実習、お産見学の宿直、インターンのための上京など、とまどいにみちた清新な日々の心の軌跡を刻む自伝的長編五部作の第一作。
国家試験に合格した高村伸夫は、母校の整形外科の医局に入局し医師としての道をあゆみ始める。その直後、派遣医師として赴任した道東の炭鉱病院で直面する落盤による死傷事故の連続。一方、子宮破裂で血圧がゼロになるほどの出血をしながら、伸夫の手で命をとりとめた女体の逞しさに目を開かされる。生と死のはざまで揺れる新米医師の驚きと感動にみちた体験を迫真の筆で描く第二作。
地上げした土地の廃ビルにペインティングを施し、アーティストやミュージシャン、編集者などオシャレな不良どもを住まわせる。なんの変哲もない町が二年後には流行の発信地となるだろう。期限付きの解放区、ムスリム・トーキョーはそんな思惑で生まれたー。ドラッグが蔓延し、フリーキーな若者たちが蠢く堕天使の楽園。幻覚のようなヴィジョンに豊かな寓意を重ねた長編小説。
東京郊外の都市で一刀彫りの郷土人形を作る旧家に嫁いだ女性が次々に不審な死を遂げる。最初の妻は交通事故に遭って家に戻ったその晩に、二番目の妻は心臓発作で急死。どちらの場合も夫は不在だったという。その家には江戸時代から伝わる美しい浄瑠璃人形があり、それにはただならぬ因縁が絡んでいるらしい…。謎と官能に彩られた男女の異形の愛を描きだした禁断の恋愛ミステリー。
ユダヤ人に化けてもらいたいー。ナチス親衛隊少佐シュターケにとって、その任務は屈辱に満ちたものだった。最終目標も知らされぬまま送り出された彼は、ユダヤ人の第三帝国脱出を助けるモサドのロッシや米国から派遣されたジュリアとともに、パレスチナからローマへと呉越同舟の冒険行を敢行する。そしてローマで彼を待っていた指令とは…。壮大な規模で描く大戦前夜の歴史秘話。
戦場で出会い、熱い恋に落ちたスティーブンとアンジェラ。身篭ったアンジェラだが、彼がマフィアの跡継ぎであることを知り、秘かに帰国した。数年後、ファミリーの指導者となったものの、妻クララとの不毛な結婚生活に疲れ果てていたスティーブンは、死んだと思っていたアンジェラと再会し、彼女との愛に生きることを決意する。裏切られたクララは、幸せな二人を追い始める…。
エジプト・アメリカ合同軍事演習「ブライト・スター」は両国大統領の観閲の許、平穏裡に挙行される筈だった。だが、リビアの密使が放った両大統領への銃弾が「演習」を「紛争」へと急転させた。直ちにエジプトはリビアへ侵攻、〈限定報復〉を試みるが、事態はソ連による化学兵器の使用にまで拡大。米軍演習部隊は緊急展開を開始するが…。コイルの緻密な筆致が冴える迫真の軍事フィクション。
マンハッタンの超高級マンションの一室から、若い美貌の男性の死体が発見された。男は裸で黒革の拘束マスクをつけ、片脚を切断されていた。身元を探るヴィンス刑事の許に、七年前の殺人未遂事件で昏睡に陥っていた被害者の女性ベイブが、覚醒したという報せが届く。犯人とされた彼女の夫は、有罪答弁取引きですでに釈放されている。一見無関係な二つの事件が、複雑に絡み合いー。
愛する夫が自分を殺そうとしたという事実がどうしても信じられないベイブは、ヴィンス刑事と協力して事件の再調査を進める。家族はなぜか彼女に詳しいことを語りたがらない。彼女には昏睡中のかすかな夢の記憶があるのだが、それはパーティ着の男女が黒革のマスクをつけた若者をいたぶる異様な場面だった。全く覚えのないことをなぜ夢に見たのか?謎は一層深まり、意外な結末へ向う。
あの黒人少年の歌声には百万ドルの価値がある-。ふと耳にしたプロモーションビデオから、少年を日本でデビューさせようと目論んだ若き女性ディレクター。その日から、音の狩人の群れに立ちまじっての孤軍奮闘がはじまる。F1のエンジン音かまびすしいモナコでのラストまで、息つく暇なく読ませてくれる驚異の音楽サスペンス。
平安王朝の宮廷ドラマの華麗な覇者、光源氏の、因果応報ともいうべき秘められた業を背負って生れた、もの静かな貴公子・薫。彼を敬愛するがゆえに、その切実な求愛に応えることを拒みとおして逝った大君。運命の恋人たちの愛は、さらに変転しながら、川をくだる…。流麗な文章と巧みな構成を以て、世界の古典を現代に蘇らせた田辺版・新源氏物語、待望の完結編「宇治十帖」上巻。
大君亡きあと中の君への情念にもだえる薫の前に現れたのが、中の君の異腹の妹・浮舟であった。彼女は薫に惹かれる一方で、色好みの匂宮とも通じ、恋の板挟みに思い悩んだ末に霧ふかい宇治川に身を投げるが…。極限の愛を余すところなく描いて、圧倒的な感動をよぶ田辺版・新源氏物語、堂々の完結編「宇治十帖」下巻。
TV局に勤める夫と女優の浮気に気づいた35歳の人妻。6年越しの煮え切らない恋が重くのしかかる、33歳のツアー・コーディネーター。長い間追い求めていた香りを完成させた途端に、妻に去られてしまったパーフューマー。恋愛と結婚、仕事と家庭など、様々な問題の間で揺れ動いて、自分の感情に素直になれない男と女。その微妙な心理を花に託して巧みに描いた掌編8編を収録。
CBAネットワークの看板番組〈ナショナル・イヴニング・ニュース〉の人気キャスター、スローンの家族3人が誘拐された。犯人からは何の反応も要求もない。一体何のために、誰が?どうして本人ではなくて、家族か?人命尊重と報道義務のジレンマに苦しむCBA。しかもスローンはかつて、人質を犠牲にしてもテロリズムに屈すべきではないという強硬論を唱えたことがあった…。
CBAはFBI、警察当局と別に独自の捜査班を組織し、その結果を毎日報道することにした。リーダーは、かつてスローンと、誘拐されているジェシカの愛を争ったこともある敏腕取材記者パートリッジ。彼の献身的な努力と、テレビ局の頭脳と取材能力の限りを尽した調査は実を結び、犯人像が少しずつ見えてくる…。報道機関の社会的使命と企業論理の対立を巧みにとり上げた人間ドラマ。
待たれていた男ー、チャーリー・マフィンがいよいよ帰ってきた。MI6の上級職員として復帰した彼だが、待っていたのは経費にうるさい次長と無能な新人。憂鬱な日々を送っていたが、ある亡命ロシヤ人の情報から要人暗殺計画の存在を嗅ぎつける。暗殺者も標的も、日時も場所も判然としないその計画とは?チャーリーは独自の推理でテロリストを追う。待望のシリーズ第8作、遂に登場。
1963年ハロウィーンの夜、ケネディの遊説をひかえて緊張するテキサスの重警備刑務所から、ブッチとジェリーが脱獄する。二人は8歳の少年フィリップを人質にして逃亡を計るが、少年に性的いたずらをしようとしたジェリーをブッチは射殺する。一方、ブッチを追うテキサス・レインジャー隊長レッドは、昔ブッチを少年院に送り込んだ人物であった…。ヒューマン・ドラマの話題作。
多感な少年たち、すり傷だらけの季節、海と工場と飛行場-。時代の風が、昭和30年代の町と人間を吹き抜ける。羽田空港に近い駅前商店街を舞台に少年たちの心と友情、家族の絆を描く長編小説。