出版社 : 新潮社
門を作った張本人、その名は山下啓次郎。おーまいごっど、オレのじいさんが建築家だと。ルーツ探しに旅行けば、出るぞ鹿児島、やっぱり西郷。山下清も乱入し、時空を越えた大騒ぎ。官軍、逆賊を叩っ斬れば、洋輔、ピアノを叩っ弾く。門を壊しちゃならねえと、反対門前コンサート。住民一気に盛り上がり、かつぎ出されたピアニストー。日本文壇をしゃばどびと震撼させた奇著を読め。
注意深く耳を澄ませば、海のうめきが聞こえてくるー。汚染、埋め立て、乱獲によって痛めつけられた海、浜を追われた漁師たち。着々と進む大規模な環境破壊は、人々の心をも確実にむしばんでゆく。浜辺の町に、腕利きの漁師である父親と二人で暮す少年健太と、都会からの転校生可南子、担任の若い教師紀子先生との交流を鮮やかに描き、海の素晴らしさを高らかにうたう心温まる物語。
1870年代のニューヨーク、格式や富の大小ではっきり階級の定まった社交界に、長年ヨーロッパで暮し自由な精神を身につけたエレンが戻ってきた。彼女は伯爵である夫との離婚を望み、いとこの婚約者で弁護士のアーチャーの依頼人となる。離婚は大変な醜聞であり、一族の不名誉である。アーチャーはエレンに魅かれ、真摯な愛を貫こうとするが果たせない。ピューリッツァー賞受賞作。
恐怖のリストラが始まったー。全米有数のTVネットワークであるUSBは、財政悪化の難局を経費削減で乗り切ろうとするが、大実業家による乗っ取りが電光石火の早業で敢行された。解雇、自殺ー。同僚たちの悲劇に打ちひしがれ、自らも窮地に追い込まれた花形プロデューサーは、乗っ取りの黒幕に復讐を誓う。報道のあり方と企業買収の非情な論理を問う大型ビジネス・サスペンス。
戦前・戦後、新聞社のパリ特派員を勤め、フランス文化をこよなく愛して「ムッシュ・クラタ」と呼ばれた男。日本人の常識から逸脱した行動をとり、鼻持ちならないキザな奴と見られていた彼が、記者として赴いたフィリピンの戦場でしめしたダンディな強靭さを鮮やかに描いた表題作。ほかに夫婦の絆の裏表を鋭い人間観察で切り取った「晴着」「へんねし」「醜男」をおさめる中・短編集。
反乱、暗殺、裏切り、虐殺、謀略。栄耀栄華を極めた者は、明日は無残な敗者となったー。長屋王、平将門、千利休、田沼意次、坂本龍馬、西郷隆盛ら、時代の頂点で敗れ去った悲劇のヒーローたちの人間ドラマを、気鋭の時代小説作家が生き生きと描きだす。大和時代から明治維新まで、千三百年にわたるわが国の歴史を四十六の短編小説によって俯瞰する、新しい“日本通史”の試み。
鴨川の河原に描かれた見事な花形絵。池坊中興の祖・二代専好は、その絵を描いた少年に類稀な立花の才を認め、自らの跡を継がせようと心中決意した。跡目を争う専好の弟・専存と高弟衆の敵意を尻目に、真摯に花道を追求する大住院以信。壮大かつ華麗な立花で勇名を馳せながらも、江戸初期に確立しつつあった家元制度の前に、夢破れ悲運の生涯を終えた花道界の天才の生を描く歴史長編。
「この人と一緒にいたい」京都随一の美妓・幾松が見初めたのは維新の志士・桂小五郎の颯爽たる姿だった。幕末の嵐を共に乗り越え、桂は新政府の参議・木戸孝允となり、幾松はその妻・松子となるが、結婚を境に二人の愛は姿を変える。国事に忙殺され次第に消耗する木戸。苛立ちと愛の渇きを、若い役者との「遊び」で紛らわす松子。動乱期の女性の生きざまと愛の軌跡を綴る傑作時代小説。
「敵を打ち倒すために大事なことは、武略・計略・調略。それ以外のなにものも不要じゃ」-。元就の卓越した知将としての策略は忍びの者を遣った情報戦、敵の裏をかく合戦陣形、謀略を駆使した政治にあらわれた。下剋上の戦国期に小豪族から身を興し、宿敵陶氏、大友氏、尼子氏らとの激闘の彼方に西国平定の野望を見据えた稀代の猛将毛利元就を描いて、その意外な素顔に迫った長編小説。
ミッドウェスト大学の教授だったバウマンは、酔っ払い運転で少女を轢き殺したため、二千人の凶悪犯が収容された州立刑務所に服役している。刑期を無事に終えることだけを考えていた彼だが、所内で起きた連続殺人の捜査をする羽目に…。暴力沙汰とドラッグが蔓延するこの世界で、バウマンは果たして真犯人を突き止め、生き残ることができるか?迫真の超大型エンターテインメント。
連続殺人の被害者メッツラーと親しかったゲイの青年、カズンズの助けを借り、事件の関係者を洗うバウマン。〈終身刑囚クラブ〉〈黒い国士軍〉など囚人グループ間の苛烈な抗争に巻き込まれつつ、捜査を進めた末に浮かび上がったのは驚くべき事実だった…。舞台は一つの街ほどの規模を持つ巨大な重警備刑務所、主人公は元大学教授。ミッチェル・スミスが圧倒的な迫力で描く問題作。
米ソ両首脳による核兵器の全面廃棄条約調印まであと十日。しかし二人を狙う謎の女暗殺者の影がー。元CIA局員ジャック・ローウェルは、大統領の特命を受け、最新型B1爆撃機を駆って女を追跡する。いつ、どこで、そしていかなる方法で暗殺を企てるのか。おりしも、ワシントンの生化学研究所から、新種の猛毒が若い女によって盗みだされた…。華やかな大型アクション・スリラー。
「あす、きみとお別れしなければならなくなりました」死刑囚楠本他家雄は、四十歳の誕生日を目前にしたある朝、所長から刑の執行宣告を受ける。最後の夜、彼は祈り、母と恋人へ手紙を書く。死を受容する平安を得て、彼は翌朝、刑場に立つ…。想像を絶する死刑囚の心理と生活を描き、死に直面した人間はいかに生きるか、人間は結局何によって生きるのかを問いかける。
白内障にかかった自分の目玉をプラスティックの人工水晶体にとりかえる大手術。その模様を、焦燥とも悲愴感とも無縁な、子供のような好奇心でクールに眺める作家の視線ー。読者の意表をつき、ユーモアさえ感じさせる表題作のほか、鋭利な感性で研磨された過去の記憶が醸しだす、芳醇な吉行文学の世界。7編収録。