出版社 : 新潮社
二十五歳という年齢は、青春の夕暮れに浮かぶ迷子のお月様のようね…。七年越しの恋にピリオドを打ち、大阪に舞い戻ったさつき。新しい職場、新しい仲間、新しい夢、そしてふるえるような恋の予感。それは、青春のフィナーレを鮮やかに彩る、せつないドラマのはじまりだった。
両親と死別し、遠縁にあたるドリーとヴェリーナの姉妹に引き取られ、南部の田舎町で多感な日々を過ごす十六歳の少年コリン。そんな秋のある日、ふとしたきっかけからコリンはドリーたちと一緒に、近くの森にあるムクロジの木の上で暮らすことになった…。少年の内面に視点を据え、その瞳に映る人間模様を詩的言語と入念な文体で描き、青年期に移行する少年の胸底を捉えた名作。
’60年代最後の年、22歳の上山哲夫は、アコースティック・ギターひとつを持ってアメリカへ旅立つ。子供の頃、ベース・キャンプの金網の向こう側にしかなかった「アメリカ」を求めて。西海岸から東へたどる哲夫が出会ったものはベトナム戦争の影とヒッピーたち…。巨大な異文化に裸で身をさらし、己れの根を必死に捉まえようと彷徨する若者の姿を鋭い感性で描きだした青春の書。
小学4年生になっても、ぬいぐるみの「くますけ」と片時も離れられない成美は、交通事故で突然両親を亡くして、ママの親友の裕子さんに引き取られた。裕子さんはとても優しい人だけれど、成美には誰にも言えない秘密があるから、くますけ以外は信じることができない…。正常と異常、現実と非現実の境界にある閉ざされた少女の心の内面をモダン・ホラーの手法で描く異色の長編。
低い扶持にあえいでいても、こころはいつもサムライ。十年のうち九年は百姓暮らし、一年だけ赤錆だらけの槍を担いで日光山警護にあたる八王子槍組千人同心・鷹取俊太郎。後に陰の御庭番・信濃屋芳兵衛となり、将軍の耳目となって活躍した男の元服後の筆下ろしを描く表題作をはじめ、江戸時代の底辺を担って生きた下級武士たちの心意気を無類のユーモアとペーソスで綴る時代短編集。
オレゴン州の小さな町ホープ・バレーが宇宙からの攻撃としか考えられない方法で消滅させられた。一方、CIAから離れてフリーとなったマクラッケンは、むかし愛し合った女から何者かに脅迫されている宝石商である祖父の救援を依頼される。マクラッケンの追跡が、ホープ・バレーを攻撃した巨大な勢力とクロスした時、恐るべき〈アルファ計画〉の全貌が浮かび上がる。シリーズ第2弾。
ブルックリンに根を張る大ファミリー、プリッツィ一家。13歳からこの業界に手を染めたチャーリー・パルタンナは、30歳になった今や副ボス兼執行人である。マジメでトッポいチャーリーが一目惚れしたショー・ガールのマーデル。これがなかなか一筋縄ではいかない女だった。一方で、ボスの娘メイローズがチャーリーに惚れたから話はややこしい。恋と義理と人情のマフィアン・コメディー。
ホームズの下宿のあったベイカー街、ワグナーのオペラをみにいったロイヤル・オペラ・ハウス、彼とワトスンが初めて出会ったセント・バーソロミュー病院、二人が犯人を追跡したオックスフォード街からリージェント街、そして散策した公園はどこか?-大英帝国の最も華やかな時代に大活躍した名探偵中の名探偵シャーロック・ホームズ。その足跡をたどると、ヴィクトリア朝時代の残り香が色濃くただよう都・倫敦が霧の中から…。
一九七九年に起きた一人の若者の死。その状況と原因をめぐって、それぞれの関係者が推理するその口から、また新たな物語が紡ぎ出されていく。懐古にふけっていたはずの彼等は、いつしか自分たちで作り上げた迷宮に踏み入っていく…。言葉によって構築される現実の脆さとそこに潜む謎を描いて一気に読ませる、気鋭の力作。
紋章上絵師の章次のもとに、かつて心を寄せあっていた女性から、二十年前と同じ蔭桔梗の紋入れの依頼があった。その時は事情があって下職に回してしまったのだが、それは彼女が密かな願いをかけて託した紋入れだった…。微妙な愛のすれ違いを描き直木賞受賞作となった表題作「蔭桔梗」。下町の職人世界と大人の男女の機微をしっとりと描いた11編の作品を収録した珠玉の短編集。
エリザベスは、テッドの喚き声が忘れられなかった。成功疑いなしの舞台初日前夜、大女優の姉はなぜか追いつめられ、深酔いし、テッドとの婚約を解消しようとした。そして翌朝、彼女の死体がテラス下の中庭にー。エリザベスは検察側証人として、その夜の記憶を失ったテッドと対決することになった。犯人は憎い、でもテッドは好き…。サスペンスの女王が描く華麗で怖ろしい世界。
確かに“狂犬”は狂っていた。女たちの手足を縛り、殺し、犯すことでしか彼は満たされない。しかも“狂犬”はインテリだった。計画は綿密に考え抜かれ、体毛を剃り、コンドームを使った。犯行現場にはただあざ笑うかのようなメッセージだけが残されていた。特別チームを組んだ市警本部の切り札はルーカス警部補。捜査に手段を選ばない辣腕刑事と連続暴行殺人犯の対決を描く長編サスペンス。
色の浅黒いローズと色白のレイチェルは同じ病院で生れた。誕生と同時に両親を亡くしたローズは、貧乏に耐え意地悪な祖母に仕え苦学して弁護士になり、レイチェルは、家族の愛情に包まれて贅沢に育てられ医者になった。情熱的な二人の出生の秘密を握るシルヴィの苦悩。愛の時が流れ、ローズの恋人ブリアンと男に裏切られたレイチェルは、ベトナムの戦地で運命の出会いをした…。
恋人ブリアンからの手紙はローズに届かず消息が絶たれた。九死に一生を得たブリアンとレイチェルは地獄のベトナムから奇跡的に脱出し強い愛の絆で結ばれた。作家となり成功した彼の幸福な結婚に絶望したローズが、過去の卑劣な男の報復で訴えられたレイチェルを弁護するという運命の皮肉。そして出生の秘密を明かすシルヴィ。二人の現代女性の真実の愛と友情を見事に描いた長編。