出版社 : 新潮社
1942年、第二次大戦の戦禍の及ばぬアラバマ州の小さな港町に、一隻のUボートが浮上した。沿岸に暮らす16歳の少年ビクターは、不気味な船影に遭遇するが、潜水艦は再び海中に姿を消す。自分を殺しかけた「巨大な黒い化け物」を追跡するうちに、ビクターはナチスの機密計画「カタログ」の存在を知り…。アメリカ南部の美しい自然を背景に、少年の冒険を描く青春小説。
わずか2時間の間に1人は銃弾で、1人は絞殺とその殺害方法こそちがえ2人の最高裁判事が殺された。そのあざやかな手口からプロの殺し屋の仕業にまちがいない。だれがなんのために2人を標的に選んだのか?ロースクールの美人女子大生が書いた事件の摘要書〈ペリカン文書〉が見えない敵の存在をあぶりだす。彼女に危機が迫る…。
輝くような美貌と炎のように激しい気性のスカーレットは、アシュレにいちずに思いを寄せているが、彼は心優しいメラニーと結婚。スカーレットはそれへの腹いせに愛してもいないメラニーの兄と結婚。そして南北戦争では南軍が敗北し、スカーレットはわずか十六歳で未亡人に…。一族を飢えから救うために手段を選ばぬスカーレットを陰に日向に支えるレット。二つの強烈な個性は、互いに反発しあうが、スカーレットの打算から二人は結婚。穏やかな生活が訪れるかと思われたが、愛娘の死を契機に運命は暗転し、レットへの真実の愛に目覚めたとき、レットはスカーレットから去っていった…。南北戦争を背景に展開する一大ロマン。
それは世界一ロマンチックな飛行機だった。第二次大戦の発端となった英仏の対独宣戦の直後、大西洋横断航路の豪華飛行艇パンアメリカン・クリッパーは、ニューヨークを目ざし、サウサンプトンを離水する。だが、同機の機関士エディ・ディーキンは妻を誘拐され、その生命と引換えに不可解な要求を受けていた。さまざまな乗客の思いを乗せて、クリッパーは嵐の大西洋上空を飛ぶ。
クリッパーを不時着させろ!エディはようやく知った。誘拐犯たちは、乗客の一人で護送中の凶悪犯を奪回しようとしているのだ。-母国を離れるイギリス人ファシスト政治家の一家、その娘に恋する逃亡中の宝石泥棒、アメリカ人劇作家と駆け落ちする人妻、それを追ってきた夫、ナチから逃れ亡命するユダヤ人科学者…。彼ら乗客の人生の落ち着く先は、そしてクリッパーの運命は?
極寒のタジク共和国山岳地帯から、必死の脱出行を続ける英国秘密工作員パトリック・ハイドは、ソ連軍用機の撃墜現場に出くわした。なぜかそこには顔見知りのCIA部員の姿も見えた。大がかりな陰謀の目撃者となったハイドは各国情報部の標的となる。孤立無援の彼は、かつて命を救った上司のオーブリーに助けを求めるがー。はち切れんばかりの迫力とサスペンスが溢れる待望の長編。
秘密工作員ハイドは謎の撃墜事件と、もう一つの旅客機墜落事故との関連に気づいた。陰謀の首謀者の手は、各国上層部にまで伸び、英情報組織の長オーブリーも完全に封じ込まれてしまった。彼の姪キャスリンは、罠にかかってFBIから追われる身だ。真相に近づいたハイドを守れるのは、今や彼自身のみ。心身を極限まで酷使するハイドの凄絶な孤軍奮闘ぶりを描く、冒険小説の決定版。
映画撮影中の事故で失明したハリウッドの元音響技師ハーレック。彼の姪のジェイニイが、何者かに誘拐された。彼女はどこにいるのか?犯人からの電話の背後には、電車のブレーキ音や風鈴の音や音楽がかすかに聞こえる。犯人の居場所をたどる唯一の手がかりは、この背後の音のみ。鋭敏な聴覚だけを頼りに、ハーレックが誘拐犯に迫る。シカゴを舞台に展開する異色犯罪ミステリー。
失踪した息子の伝記を作り、自費出版したい-。ゴーストライター・島崎のもとにその話が舞い込んでから、彼は広大な館で残された資料の山と格闘することになった-。年譜、インタビュー、小説中小説、モノローグを組み合わせながら進行する、これは読者への挑戦状。
誘拐犯からの連絡が、こともあろうに警察に届くとは。約束の場所に、しかし犯人は姿を見せなかった。そしてそれっきり音信が途絶えて…。児童心理の恐るべき深さ、移植医学の陥穽。最果てまで行きついた現代社会の闇を背景に描く、不可解きわまる誘拐事件。
引き抜かれたカカシのあとに生えた草の葉っぱ、雲母のようにキラキラする竜のウロコ、字の書かれた小さな石ころーそんな奇妙なものばかりがあるというどんぐり民話館。そのどんぐり民話館を探しに、都会から一人の青年がやってきたが…。いつまでも語りつがれる民話のような味わいで、さまざまな人生の喜怒哀楽を描いた31編。ショートショート1001編を達成した記念の作品集。
溌刺と欲望のおもむくままに生きてきたウサギも、すでに中年。胴回りの太さが気になりだし、鏡を覗くこともついぞなくなった。だが、ウサギは今や金持なのだ。『帰ってきたウサギ』では、ウサギはライノタイプの印刷工として働いていたが、その業種が不振になった時期に、うまい具合に義父が死んでくれ、義父の自動車販売業を受け継ぎ、ちゃっかりそこの経営者におさまってしまう。自動車業界は、第一次石油危機に見舞われ、燃費の悪い大きなアメリカ車が敬遠され、日本の車が順調な売れ行きを示している。ウサギは金持なのだ。
ある日、ケント大学に通っている息子のネルソンが、女友達メラニーを連れて家に帰ってくる。彼女を家に泊めるかどうかで一悶着が起こる。古い世代のウサギには、二人の関係がうまく理解できない。やがて、ネルソンの子を身ごもったプルーという女性が出現する。ウサギも結婚以前に妻のジャニスを妊娠させた過去を持つ。ネルソンは親の通った道を確実にたどりつつある。ウサギは完全に枯れきってはいないが、行動よりイマジネーションの世界に生きることが多くなり、死への予感をおぼろげに感じだす年代になったのだ…。
浅野はなぜ吉良に切りつけたのか?〈松ノ廊下の刃傷〉も、発端からして摩訶不思議。「君父の讐はともに天をいただかず」とはいうけれど、〈討入り〉だって〈虐殺またはスラップスティック〉。伝説と虚構の厚化粧を落としてみれば、なんともグロテスクな赤穂浪士事件。両家をめぐる人びとが、おかしくも愚かしく燃えた時代は元禄。滑稽舞台の幕が開き、鳴るはパンクな陣太鼓。