出版社 : 新潮社
子供の失踪の原因は充分な愛を注いでやれなかったからではないかと心を傷めつつ、安否を気遣う母。自分がつくりだした状況に逆に追い詰められ、子供を連れたまま身動きのとれない犯人。そして誠実に職務を果たし、犯人を追う刑事。-忌まわしい未成年者誘拐と、毒々しい同性愛の世界を描きながら、弱者や傷ついた者たちへの深い同情のまなざしを向け、非情な社会の深淵を突く長編。
時はおそらく未来。破壊された街と道路、荒廃した山河。海は油泥に覆われ、異態進化し巨大化あるいは獰猛化した動植物が到る所にうごめいていても、不思議にノスタルジックな情景につつまれた国境地帯の〈戦後〉-。北の政府の侵攻や組織略奪団の襲撃にもおびえながら、異様な混沌世界を生きる男たちの愛と闘いの日々。本年度日本SF大賞を受賞して、ますます意欲的にシーナ的小説世界を広げる作者の超常小説。
コンピュータで制御された鉄壁の防護システムの向う側に眠る6トンの金塊、しめて100億円-。地下ケーブルが、変電所が黒煙をあげ、エレベータは金庫めざして急降下。練りに練った奪取作戦の幕が、いよいよ切って落とされた。メカ、電気系統、爆薬等、確乎たるディテールで描く、破天荒無比なサスペンス大作。日本推理サスペンス大賞受賞作。
田沼は吝嗇で義仲は粗野、隆盛は温厚篤実-わが国時代小説百年の〈常識〉は、安部龍太郎の自在な筆捌きで、今まさに塗り変えられようとしている。長屋王、平将門、大塔宮、利休、田沼意次、西郷隆盛…上代から明治まで、全く新しい人物造型を試みた渾身の46篇。汚名に甘んじたヒーローたちの陰の血脈を辿る。
失踪した教え子を捜しに上京した塾教師。コンクリート色の欲望ひしめく六本木で、区画しつくされたお仕着せの多摩ニュータウンで、過去十年分の人生を再び生きるはめになった男の四日間…。男の優しさと苦さの限りをつくすハードボイルドの名品。
女には年齢の数だけ花が咲く。花の数だけ夢が咲くー78本の花束を抱いて香り高く華やいで生きる、愛しのシルバーレディ歌子サン、清く正しく美しくをモットーに、口八丁手八丁、歌って踊って大活躍!『姥ざかり』『姥ときめき』に続くお馴染みのシリーズ、待望の第3部。
紀州太地に三百年の歴史を持つ鯨組で、網とり漁法の最後の筆頭刃刺を務めた男の生涯を描きながら、海の男たちの勇壮華麗な鯨との闘いと、滅びゆく古式捕鯨にしか生きる場を持たない者の悲哀を鮮やかに浮かび上がらせた「鯨の絵巻」。教職を剥奪され、奄美大島の夜の山地に青白い鱗の輝きを追うハブ捕獲人を描く「光る鱗」など、動物を相手に生活を営む人間たちの哀歓をさぐる短編集。
腰まで届く黒髪に、かかとの太いハイヒール、日本人の血をひきながら血を吐くようにファドを歌い、熱く激しくフラメンコを踊る炎の女、カルメンシータ・マリア・ロドリゲス。失踪した恋人アンジェリータを追い、マドリから東京にやって来た彼女がスペイン・コネクションがらみのヤクザ抗争に巻き込まれる…。魅惑的なキャラクターがやさしく謎を解いていく、栗本サスペンスの新境地。
漂流している日本の自動車運搬船が発見された。船は完全に遺棄され、残されたままの死体は傷みが激しい。やがて、乗り込んだ男たちに変調が表われた。頭痛・目まい・吐き気…。死の船は謎の大爆発を起し、付近の船舶を道づれにして沈没した。近くの海底で秘かに海底資源の調査を行なっていたピットたちは、爆発で生じた海底地震のため、生命の危険にさらされることになったー。
日本経済を裏から操る実力者・隅坂秀太は、ある小島に秘密基地を設け、世界制覇を目論む拠点としていた。深海から奇跡の生還を果したばかりのピットは、息つく暇もなくドイツで起きた陥没事故現場へ向い、小島の位置を解く鍵を手に入れた。最新のハイテク技術を駆使して要塞化され、ロボットたちに護られたこの基地・ドラゴンセンターへ、いよいよピットは潜入したー。
ラルフ・ベア(36歳)は、マンハッタンを中心にビルを幾つも建ててきた。富と名声と美貌の恋人アマンダに支えられて華麗な人生を送る彼は、いま世界最高の住空間ベア・センターをニューヨークに建設しようとしている。それは、祖父からのベア家の夢である。そんな折、突然の父親の過去の告白を受け、父の友人の娘ゲイルとの2年間の結婚を懇願された。彼は術もなく承諾したが…。
ゲイルの父親は20年間ラルフの父親の罪を被り身代わりとなって服役した。離婚の際には莫大な財産がゲイルに入るとはいえ、ふたりの偽りの結婚生活は、憎しみ以外の何物でもなかった。しかし、ニューヨーク市長の陰謀に嵌められながらもベア・センター建設のために奔走するラルフの情熱と誠実さに、いつしかゲイルは彼を愛し始め、ラルフもまた彼女の中に真実の妻をみていた…。
旧友のウェスタガードが大統領候補に指名されようとしている、11月のある冬の日、ミネソタの森で、鹿狩りに出かけたフレッシャーは何者かに銃撃され、瀕死の重傷を負った。しかし、誰が何のために、彼を抹殺しようとしたのか…?5年前に妻を亡くし、山の中で一人、静かな生活をいとなんでいたフレッチャーだったが、彼は森を出て、見えぬ敵をあぶりだし、追いつめていく。
40歳を過ぎて、スズキさんははじめて休暇をとった。その朝届いた一冊の古本『ドン・キホーテ』。差出人の名前は奇妙に甘く懐しく、スズキさんは20年前の時間旅行へと旅立った…。一点突破全面展開を期す、優しく過激なファンタジー。
時は戦国時代。名将・武田信玄の三女にして、木曽義昌のもとへ嫁がされた“甲州御前”万里姫を、過酷な運命の数々が襲う。夫との不仲、姑との確執、そして、木曽家の凋落…。信長、秀吉、家康と、あいつぐ天下取りの荒波に揉まれながらも、誇り高く、気丈に生きた女の生涯を流麗な筆致で描いた歴史絵巻。
50口径ライフルの赤外線スコープが捉えた日本人少女の顔-ジャパンバッシングかまびすしいワシントンDCで起った不幸な交通事故を清算させるべく、元女性警官の指が引き金にかかった。護る側攻める側入り乱れて、聖夜のアメリカに展開する戦慄のサスペンス長編。
地下採石場跡の巨大な洞窟に、核シェルターの設備を造り上げた元カメラマン「モグラ」。“生きのびるための切符”を手に入れた三人の男女とモグラとの奇妙な共同生活が始まった。だが、洞窟に侵入者が現れた時、モグラの計画は崩れ始める。その上、便器に片足を吸い込まれ、身動きがとれなくなってしまったモグラはー。核時代の方舟に乗ることができる者は、誰なのか。現代文学の金字塔。
1969年、ニューヨーク。五年間勤めた東京の大手広告代理店を辞めた“ぼく”は何の目的もないまま、後を追ってきた恋人の里美とふたりで、この地で暮し始めた。ベトナム戦争とサイケデリック・アートの時代のニューヨークがぼくたちに教えてくれたこと、それは…。青春の迷いとあせりの中、恋人とともに過ごした日々をセンシティブに描く、文庫書下ろし都会派小説。