出版社 : 新潮社
大使夫妻はなぜ軽井沢追分から姿を消したのか。12年ぶり、待望の新作長篇小説。2020年、翻訳者のケヴィンは軽井沢の小さな山荘から、人けのない隣家を見やっていた。親しい隣人だった元外交官夫妻は、前年から姿を消したままだった。能を舞い、嫋やかに着物を着こなす夫人・貴子。ケヴィンはその数奇な半生を、日本語で書き残そうと決意する。失われた「日本」への切ない思慕が溢れる新作長篇。
村上春樹の新訳と山本容子の銅版画で、マッカラーズの名作がよみがえる。さびれた南部の町で暮らすアミーリアは、言い寄る男に見向きもせず、独身で日用品店を営んでいる。ある日彼女のもとに背中の曲がった小汚い男が現われた。町中が噂するなか、どういうわけか彼女はこの小男に惚れこみ、同居してカフェを始める。そこにアミーリアの元夫が刑務所を出て帰還。奇妙な三角関係の行方はーー。
あの瞳に射抜かれて、私は一億円盗んだ。感動の疾走エンタテインメント! 「ストラーダ、一緒に逃げよう」。共に駆けるだけで、目と目を合わせるだけで、私たちはわかり合える。造船所で働く事務員、瀬戸口優子は一頭の元競走馬と運命の出会いを果たす。情熱も金も、持てるすべてを「彼」に注ぎ込んだ優子が行きついた奈落とは? 言葉があふれる世界で、言葉のない愛を生きる。圧倒的長編小説!
「ママ、けいさつにつかまらないでね」罪を犯し愛を諦めた母娘の半生。里美は、娘の汐里と2人で暮らしている。若い頃の前科が原因で家族からは疎遠になり、やがて生活に困窮した里美は罪を犯してしまう……。愛を夢見て、妬んだ里美と、愛を求めて諦め、姿を消した汐里。一度は訣別したふたりだが、再び巡りあい、そして……。あらゆる母娘に、愛は存在するのか。
音楽への夢と情熱、別れと喪失ーー台湾の文学賞を総なめにした話題作! 天賦の才能を持ちながらピアニストの夢破れた調律師のわたしと、再婚した若い音楽家の妻に先立たれた初老の実業家。中古ピアノ販売の起業を目指してニューヨークを訪れたふたりが求めていたものとはーー。作中にシューベルト、リヒテル、グールド、ラフマニノフといった巨匠の孤独が語られ、「聴覚小説」とも評された台湾のベストセラー。
僕の前にあらわれた、夏の日の幻影を追って……。美大生の静流は、ある夏の日に小学校で人気者だった幼馴染・琴葉と再会する。背の高い美青年に成長した琴葉に誘われるままに「あるもの」を探しに出かけてゆくが……。ふたりの男子が織りなす夏の日のきらめく奇跡。そして急転直下の結末が示唆するものとは? 息をのむ伏線回収と美しい装幀も見せ所の注目作。
税金を1円も使わずファッションセンターを建設せよ! そんな無茶な……。繊維産業の衰退に頭を痛める東京・城東地区の工場街。新区長の票欲しさの選挙公約と、役人の点数稼ぎのための提案によって、実行不可能ともいえるファッションセンター建設計画が動き出した。スケープゴートとして担当課長にさせられた加藤聖治は調整に奔走するが、行く手には地方行政の魑魅魍魎どもが立ちふさがって……。
人間を操ってきたものとは何か? 明らかになる人類史のキーワード。「その言葉を知ったときが新しい人間の始まりなんだよ」と、公園で知り合ったヒロさんは言った。「あなたもその言葉を知ってしまいましたネ。縁ですね」と、渋谷で出会った異人は言った。表題作「新しい人間」と「彼には本名がない そればかりか人間でさえない」の2篇を収載。今ひもとかれる「新しい小説」
平賀源内の隠しものを奪え! 密命が下ったのは『解体新書』の絵師だった。鉱山の指導で秋田を訪れた平賀源内にその画才を見出され、『解体新書』の絵師に大抜擢された下級武士の小田野直武。故郷に戻って安穏と暮らしていたが、江戸出仕の密命が下る。源内は老中・田沼意次と秋田の佐竹家を強請ろうとしていた。講釈の発禁本、銀札の改定、蘭画、相次ぐ変死など、史実に基づく歴史ミステリの佳品。
団地の僕たちは、どうしてあんなに馬鹿で痛くてゴキゲンだったんだろう。宿敵・管理人との対決、雑木林のひょうたん池の謎、捨て犬失踪事件、テレビゲーム禁止令…。喘息持ちの気弱な少年・蓮が、悪ガキの世界へ踏み出す冒険の一歩。『荒地の家族』の新鋭による芥川賞受賞第一作。
調教師の男とその犬グレイスが深山で遭難した。劇的に逆転する人と獣の主従関係。山中での壮絶なサバイバル。そこに露呈した「命」の本質とはー。現代の東京にシャーマンと革命の時空を出現させ、選考委員の高評価を得た新潮新人賞受賞作「シャーマンと爆弾男」を併録。
謎と科学の大好きな少女、晶の前に現れた、ぬいぐるみの姿をした少年神、にゃん太。研究者となった晶の前に立ちはだかるのは、過酷なアメリカ留学、セクシャルハラスメント問題、マンション内で起きたストーカー事件、教育現場での容赦のない攻撃…。迫りくる運命の奔流の中、にゃん太は最後まで晶を守り切ることができるのか?そして物語は新たな世代へー。世代を超えたサバイバーたちの戦いの日々を描く。
最弱な夜にひらめいた、最強になれる選択肢。「もうさー女友達と一生暮らしたいんだよね最近は!?」酔って叫んだひと言が、4人の運命を変えたー。エンドレスガールズトーク小説、開幕。
さぁさぁ、皆で賭けをしようか! 勝者は一つ、望みを叶えて貰えるって! 若だんなと妖の謎解き合戦の始まりだ!! あの屈強な佐助が血だらけになって、犯人は小鬼の鳴家だってぇ? 菓子職人・栄吉の新作あられの味見会は見合い話を摑む場になっちゃうし、若だんなと妖は摩訶不思議な怪異に遭遇、おまけに若だんなは独立する奉公人の世話をしろと命じられちゃった! 若だんなと長崎屋の妖達はすべての謎を解けるの〜? シリーズ第23弾!
同じ身体を生きる姉妹、その驚きに満ちた普通の人生を描く、芥川賞候補作。周りからは一人に見える。でも私のすぐ隣にいるのは別のわたし。不思議なことはなにもない。けれど姉妹は考える、隣のあなたは誰なのか? そして今これを考えているのは誰なのかーー三島賞受賞作『植物少女』の衝撃再び。最も注目される作家が医師としての経験と驚異の想像力で人生の普遍を描く、世界が初めて出会う物語。
『明け方の若者たち』の著者、待望の最新長編は波乱の結婚譚ーー3歳年上の彼女へのプロポーズ。人事部の若手社員として関わったハラスメント疑惑。何の変哲もなかった雨宮守の人生は、26歳で大きく動き出す。恋も仕事も理想は幻想へと変わり、目の前の現実と向き合い始める20代後半ーー過去からも未来からも逃れることのできない世の中で、光を求めて彷徨う者たちの物語。
わたしたちはどんな痛みからも解き放たれる。泳いでいる、そのときだけは。過食、リストラ、憂鬱症ーー地下の市民プールを愛し、通いつめる人達は、日常では様々なことに悩み苦しんでいる。そのうちのひとり、アリスは認知症になり、娘が会いに来ても誰なのかわからなくなって、ついに施設に入ることになる。瞬時にきえてしまうような、かけがえのない人生のきらめきを捉えた米カーネギー賞受賞作。