出版社 : 新潮社
天皇家に忠義を尽くす小楯家の次男・有綱は、承久の変に敗れ隠岐に流される後鳥羽上皇を警護する最中、上皇寵愛の伊賀局から謎めいた使命を受ける。有綱はそれを源平合戦の際、壇ノ浦で失われた三種の神器の剣を探すことと理解し、備前の刀工・伊織、大三島の幼い巫女・奈岐とともに探索に旅立つ。やがてたどり着いた山中の集落で、彼らを待っていたのはー。日本史最大の謎を独創性豊かに解き明かす、かつてない一大歴史ロマン!
海から死を連想するように、少年は彼に美を思い描いたー。高校二年の春、同じクラスの北条の「美」の虜になった美術部の速水は、彼をモデルに肖像画を描きはじめた。画板を挟み向き合う二人は親しくなるが、夏休みのある出来事が速水の心を打ち砕く。新潮新人賞選考会で激論の末、史上最年少の17歳で受賞した話題作。
映画、演劇、父との記憶ー魅惑の創作世界の謎を探り行く。本との出会いを人生の時間と重ねて綴る9篇の連作小説集。泉鏡花文学賞受賞作『水 本の小説』に続く独自の“ものがたり”
アナ・マグダレーナ・バッハ、四十六歳。飽きることなく求めあう指揮者の夫との間に、子どもが二人。満ち足りた暮らしにもかかわらず、アナは毎年八月の母親の命日に訪れるカリブ海の島で、一夜限りの男を探さずにはいられない。「人には、公の生活、私的な生活、そして秘密の生活がある」そう語ったマルケスが肉迫した、ひとりの女の、誰にも知られてはいけない「秘密の生活」とはー。肉体のなかでぶつかり溶けあう生と死。圧巻のラストに息をのむ、ノーベル文学賞作家が最後まで情熱を注いだ未完の傑作。
老若男女に贈る、強炭酸エナドリ・最高最強エンパワーメント小説集! 過去のブログ記事が炎上中のラーメン評論家、夢を語るだけで行動には移せないフリーター、もどり悪阻とコロナ禍で孤独に苦しむ妊婦、番組の降板がささやかれている落ち目の元アイドル……いまは手詰まりに思えても、自分を取り戻した先につながる道はきっとある。この世を生き抜く勇気がむくむくと湧いてくる、全6篇。
四十路の独身男、平田は自他ともに認める“いいひと”。だが、モテない。結婚はおろか恋人すらできない。「いいひとなんだけどね…」って、もういい!こうなったらとことんサイテーになってやる!立派な“サイテー男”になるべく向かった場所とはー。地球はクズで回っている!?前代未聞の問題作、爆誕!!ふかわりょうが描く、爽快!人生180°回転劇!
1967年生まれの飛馬が育った時代は、みんなノストラダムスの大予言を信じてUFOを待ち、コックリさんに夢中になった昭和のオカルトブーム真っ最中だった。戦後すぐ生まれの不三子は文化的な生活を知らずに育ち、マクロビオティックの食事で子育てをしたのに、娘や息子とうまくいっていない。高度経済成長期の日本に育ち、昭和平成を生きたふたりがコロナ禍の子ども食堂で出会った時、そこに生まれたものは何だったのかー。予測不能な世界を生きる私たちに切実な問いを投げかける角田光代の新たな代表作!
ラジオから届く、あの時代のヴォイス。謎のDJのトークが昭和史と文学史と奇想を巧みにリミックスし、ヒロヒトと南方熊楠、森鷗外ら戦前・戦中期の文化人たちとの密かな絆を謳いあげる。6年ぶりの大長篇小説。
権力に抗う和泉式部。全てを見通す紫式部。平安ヒロインたちを織り込んで、艶やかに魅せる澤田絵巻の頂点!藤原道長の権勢を転覆させようと京を暗躍する盗賊たち。その首魁が死んだはずの兄だと聞いた道長邸勤めの女房・小紅は、盗賊の正体を追い始める。折しも中宮・彰子の懐妊が判明し、道長の栄華の月が満ちようとする中、王朝の禁忌が明らかになるー。
「死んどくれよ」いなくなって欲しいと願ったのは、ほんとうだった。でも…。著者初の「江戸市井もの」苛酷にして哀切、いっそ潔く、清々しい。恋い焦がれ、欲に流され、橋を渡ろうとする女と男。表と裏、感情のひだ、生きようを描き「傑作」と呼ぶしかない全八篇。
大学受験の朝、駅で射殺事件を目撃しながら通報を怠った麻紀。やがて親友の恋人として再び姿を現した犯人は職業的殺人者だった!一方、事件を追う刑事のことみは文科大臣秘書と交際するうちに大臣の特殊な嗜好と周囲の不審な事件を知り、単独捜査を開始するー。読者を打ちのめす衝撃の展開。赤川ミステリーの新たな名作誕生!
独伊のはざまでダム湖に沈んだ村。ファシズム、失われた母語、環境破壊…。母から娘へ、忘れてはいけない村の歴史。世界35ヵ国以上で翻訳。50万部超のベストセラー。ストレーガ賞最終候補/イーゾラ・デルバ賞/ドロミーティ・ユネスコ賞/ヴィアダーナ賞など受賞。
母もいつかは高齢となり、別れが来るものと幸子は思ってはいた。しかしその日が本当に来ると、心の奥底では思っていなかったことに気がついたのは、その時を迎えてからだった。そろそろ今後のことを考えねばならない。でも頭も身体もついていかない…。孤独と向き合う女性を描く長編小説。
唯一無二の主人公、再び。その前途、誰にも予測不能! 成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!? 読み応えますますパワーアップの全5篇!
竜崎のもとに、著名作家・北上輝記が小田原で誘拐されたという一報が入る。犯人も目的も安否も不明の中、北上の友人でミステリ作家の梅林も絡み、一風変わった捜査が進む。一方、警視庁管内では殺人事件が発生。さらに息子の邦彦が大学中退に…!?己の責務を全うせよ。人気シリーズ、第十弾!
千数百年間、隠されてきた「謎の神」、驚天動地の真実!軒先の括り猿、祀られる猿田彦神、庚申堂の三猿ー奈良を歩く編集者の橙子の目に、次々に「猿」が飛び込んできた。それは『記紀』で天孫降臨を先導しながら奇怪な死を遂げた「謎の神」の正体に迫る手掛りなのか?博覧強記の民俗学者・小余綾俊輔の推理と論証は、古代から現代に至るまで秘められてきた歴史を浮上させ、ある「血統」を巡る論争に終止符を打つ!
気鋭の学者が舌禍事件により教授に負の烙印を押され、病に見舞われながらも生き抜こうとするが、苦痛のあまり、自死を選ぶ。親友として学者の苦悩に寄り添ったつもりだった医師もまた、学者の妻からの辛辣な言葉に、自己嫌悪に苛まれ…。学者と医師、ふたりの絶望を通して、「愛の不在とは」「宗教とは」「精神医学とは」を問う。
左右田始(そうだ・はじめ)、50歳、職業俳優。演技経験は豊富でも、端役ばかりで名前を知る人は少ない。しかし脇役ならではの観察眼で、あらゆる現場で生じた綻びを解決し、「犯人」の心を動かし癒していく。五篇からなる、エンタメ業界ミステリー!
リスは夏のはじめについて考えたい。クマは二度とケーキを食べたくない。スズメは冷静さを身につけたい。アリはリスと真剣に話したい。イカはだれかに招かれたい。カブトムシはみんな陰気になってほしい。マンモスは絶滅をとりやめたい。カメはカタツムリにやさしくされたい。トカゲは目立ちたい。ザリガニは最悪なことに見舞われたい。カゲロウは明日話したい。ハリネズミはなにもほしくない…。63のどうぶつそれぞれに、まったくばらばらの、奇妙で切実な願いがある。その奇妙さが鏡となって、わたしたちの心をうつしだす。『ハリネズミの願い』『きげんのいいリス』『キリギリスのしあわせ』につづく、トーン・テレヘンの“どうぶつ物語”第4弾。