出版社 : 新潮社
調教師の男とその犬グレイスが深山で遭難した。劇的に逆転する人と獣の主従関係。山中での壮絶なサバイバル。そこに露呈した「命」の本質とはー。現代の東京にシャーマンと革命の時空を出現させ、選考委員の高評価を得た新潮新人賞受賞作「シャーマンと爆弾男」を併録。
謎と科学の大好きな少女、晶の前に現れた、ぬいぐるみの姿をした少年神、にゃん太。研究者となった晶の前に立ちはだかるのは、過酷なアメリカ留学、セクシャルハラスメント問題、マンション内で起きたストーカー事件、教育現場での容赦のない攻撃…。迫りくる運命の奔流の中、にゃん太は最後まで晶を守り切ることができるのか?そして物語は新たな世代へー。世代を超えたサバイバーたちの戦いの日々を描く。
最弱な夜にひらめいた、最強になれる選択肢。「もうさー女友達と一生暮らしたいんだよね最近は!?」酔って叫んだひと言が、4人の運命を変えたー。エンドレスガールズトーク小説、開幕。
ー出逢って八年。付き合って六年。同棲を始めて二年。もう僕らのあいだに、新鮮な出来事はほとんど残されていない。いつものスペインバルで年上の彼女にプロポーズした青年・雨宮守。長年連れ添った妻に離婚したいと告げられた中年・土方剛。世代も価値観も正反対だったふたりの人生は、社内のある疑惑をきっかけに、変化し始める。夫婦であること、家族であること、働くこと、生活すること、傷つけること、生きること。過去からも未来からも逃れることのできない世の中で、それでも光を求めて彷徨う者たちの物語。
必死で泳いでいると、束の間日常生活の悩みを忘れることができる。そのために、ほとんど依存といってよいほどに公営プールに通い詰める人々がいる。ある日、プールの底に原因不明のひびが入ったことから、スイマーたちは戸惑い、しだいにその生活と精神に不調があらわれはじめる。そのうちのひとり、力強く泳いでいたアリスの認知症は自分の名前を思い出せないほどに進行する…。ひとりの人間の過ごした時間の断片を、現代を生きる我々の喜びと苦しみに共鳴させる傑作中篇小説。カーネギー賞受賞作。
台北からリスボンへ。ファドの調べが繋ぐ追憶の旅路ー。ヨーロッパの果て、場末の酒場で出会った歌い手。凛として舞台に立つ孤高の姿には、つねに死の予感が漂っていた。アマリア・ロドリゲスの名曲に触発され、紡がれた追憶と喪失の物語。「Sを捨てた女」併録。
東京中央テレビの諸橋孝一郎は、数多の特ダネをモノにしてきた敏腕記者。だが、部下のヤラセを機に、職場で閑職へ追いやられ、家庭内でも居場所を失っていた。そんな最中、IT界の風雲児・簗瀬拓人の息子が誘拐されるという事件が発生するー。現場を知り尽くしたテレビ局員だからこそ書けた報道小説ど真ん中!最後に選ぶのは、幼い命か、スクープか。マスコミの性を抉るノンストップ・サスペンス!
ここだけが私の居場所。猫達と居るこの場所が。「猫に九生あり」という。かつて漱石と暮らした黒猫は、何度も生と死を繰り返し、ついに最後の命を授かった。過去世の悲惨な記憶から、孤独に生きる道を選んだ黒猫だったが、ある日、魔女を称する女店主・北星恵梨香が営む猫まみれの古書店「北斗堂」へと迷い込む。文豪の猫と創作の業が絡まり合う、ハートフル×ビブリア×ファンタジー!「日本ファンタジーノベル大賞2024」大賞受賞作!
中世北欧文学の最高峰!13世紀のアイスランドで花開いた、王、豪族、美姫、戦士、農漁夫、ヴァイキングの乱舞する雄渾華麗な物語。幻の名著が、最新の研究を踏まえた図版・系図・地図・文献案内を備えて待望の復刊!「サガ」とは、語り、語られた出来事、物語の意。ヴァイキング時代に人びとがノルウェーからアイスランドへ入植した経緯、活躍した英雄、戦い、何代にもわたる血族同士の復讐の応酬、キリスト教以前の異教時代の魔法や幽霊、呪いなどを活写した壮大な史伝的散文作品が約二百篇ほど現代に伝わる。本書は質量ともサガ文学中の圧巻とされる六篇を収める。
ある日、難民になる。「新しい故郷」を求めて、歩きだす。そんなに遠い世界の話ではないのです。シリアで、クロアチアで、アフガニスタンで、満洲で、生きのびるために難民となった、ふつうの人たち。その姿と心を、てのひらで触れるようにして描きだす。
誰の人生にも罪はあり、罪の理由は人生にある。神森で5歳のASD児・真人が行方不明になった。無事に保護されるが「クマさんが助けてくれた」と語るのみ。真人の母でシングルマザーの岬は、バッシングに晒されている。真人の叔父・冬也の懸命な調査で、4人の男女と一緒にいたことは判明するが、空白の時間は完全には埋まらない。森での邂逅が導く未来とはー。誰もが抱く、拭えない過去を浄化に導く、癒やしの書。
すべては奴の筋書きどおりなのかーー狂気と喝采に満ちた舞台の幕が今上がる。江戸森田座気鋭の役者・今村扇五郎にお熱のお春が、女房の座を狙って近づいたのは……。芸を追求してやまない扇五郎に魅せられた面々の、狂ってゆく人生の歯車。ある日、若手役者の他殺体があがり、ついには扇五郎本人もーー「芸のため」ならどこまでの所業が許されるのか。芝居の虚実を濃密に描き切ったエンタメ時代小説。
世の中に裸で立ち向かう青年たちは躊躇い、悩み、そして身命を擲つ。短いがゆえになおさら強烈だった彼らの最後の旅路。ひとりの悩める若者としての安重根を描き、韓国で33万部のベストセラーとなった歴史小説。
由井鮎彦の到達点にして、文学表現の未知なる未来がここにひらかれる。空虚にして充溢する海。すべてを呑み込み、すべてをもたらす海。そこから漂着し、そこに堆積していく特異な「もの」たち。世界が始まり、世界が終わる場所。類似し相違する分身にして鏡像たちがさまざまな場所を彷徨し、分離と結合を、対話と衝突を、敵対と協力を繰り返す。静寂に閉ざされた地下駐車場から、無限の響きを奏でる果てしのない浜辺へ。第27回太宰治賞受賞作家、初の長編。
勝者も敗者も何かを失い、何かが壊れていく。雀荘「迎賓館」には並外れた技量の打ち手が集まる。枯淡の法務事務所オーナー、飲食チェーン取締役、広告会社局長代理、記憶システムが異様な高校教師。仲間内のゲームに飽き足らず、敢えて鉄火場に挑んだ国立大生・結城は、強者達の雀卓を凌げるのか。