出版社 : 新潮社
大切なひとを守るとき、私は刀を選ばない。若き私塾の主が仰ぐ、これから。お役目がなく学問で身を立てることもできない淳之介は、幼なじみの同心から頼まれたある娘の見張りをきっかけに、攘夷の渦中へと吞み込まれてゆく。徳川の世しか知らないながらも、武士という身分に疑問を抱き始めた青年がようやく見つけた、次代につながる道とは。生へのひたむきな問いが胸を打つ、人間味溢れる時代小説。
中国歴史小説の巨匠の最高傑作、謎の英傑の活躍を描く四部作いよいよ完結。春秋戦国時代末期、周王朝の末裔という出自を隠して生きる商人・公孫龍は、天賦の才により諸侯のブレーンとして名をはせてきた。だが、西の大国秦の台頭で諸国の均衡が揺らぎ、徳より力が支配する時代が近づいてくる。それは公孫龍にとって青年期の終わりでもあったーー歴史小説の面白さを刷新する著者渾身の大長編最終巻。
目の前の女性はまっすぐ裕也に訊いたーーあなたは、わたしの祖父ですか? 祖父を探していると女性は言った。祖母は安西早智子といい、未婚のまま出産、何も語らずに亡くなった。裕也はその名を知っていた。古い記憶が甦る。一九七六年ベルリン国際映画祭、祝祭の夏。あのとき彼女に何があったのか。祖父とは誰か。探索の果て裕也が辿りついた真実とは。過去と現在が交錯する人生探しのミステリー。
今日こそ彼らに往復ビンタ。もやもやはびこる職場と私を描く芥川賞候補作。同じ部署の三人が近頃欠勤を繰り返し、その分仕事が増える私はイライラが頂点に。ある日、三人のうちの一人、先輩女性の下村さんから、彼らの三角関係を知らされる。恋人を取られたのに弱っているのか開き直っているのか分からない下村さんの気ままな「ダンス」に翻弄される私は、いったいどうすればーー新潮新人賞受賞作。
もう二度と SNSができない身体にしてほしい。承認欲求を巡る新たな傑作。フォロワー獲得に死力を尽くすミクルは思う。「何故この世界は自分にフォロワーが増えないように作られているのだろう」。自撮りを繰り返すとイソギンチャクになる顔面。オート化された無人回転寿司。まさかのフォロワー爆増ーー狂った現象が次々とミクルを襲う、地獄展開に抱腹絶倒、気分は爽快。約十年ぶり、待望の長編!
ああもう、本当に、世界が滅びるなんて最高だ。「お前ら愛する人に気持ちは伝えたかい?」--底辺YouTuberの生配信「こなるんの予言ちゃんねる」で告げられたのは、世界の滅亡。嘘か真か一切不明、だが同じように終末を確信した者たちは最後の行動に出る。驚きと企みに満ちたクライマックスへ向け疾走する、常識も正論もぶっ飛ばすジェットコースターエンタメ。
美術業界と保存との葛藤を鋭く描き、20以上の賞を受けた衝撃のデビュー作。ルーヴルの至宝を500年前の素顔に戻せ! 古きを愛する学芸員オレリアンは、実利優先のヤリ手新館長ダフネに無茶ぶりされた修復プロジェクトの旅に出る。国家をも巻き込む大騒動の末、姿を現したモナ・リザの本来の顔とは? 視覚情報に溢れたSNS時代に、美とは何か、本物とは何かを問いかける絶品アート小説。
認知症の母に僕は救われていたのだと思う。幼なじみの真弓と街に出かけた“僕”。とある映画を見た僕の脳裏に忌まわしい記憶が鮮烈に蘇り、青年期に抱えた嫉妬、憎しみ、恐怖、偽善の念に再び苛まれる。真弓、高校時代の友人、そして妻。3人との関係に苦悩する僕は、重度の認知症を患う母の元へと逃避し、すがってしまう。
磨きをかけた悪の手管で、しぶしぶ善をなす、あの長屋の面々が帰ってきた! 表向きは善人ばかり、実は悪党揃いの善人長屋に、大事な根付を失くして憔悴するお内儀が訪ねてきた。加助の人助け癖がまた出たと嘆息する一同だったが、その根付がかつて江戸を騒がせた盗賊・白狐の持ち物とわかりーー。「白狐」「三枚の絵文」など六話を収録。粋な情けと謎解きで大向こうを唸らせる大人気シリーズ最新刊!
書かねば、夢は終らない。名著『北越雪譜』、刊行に至る四十年の数奇な道。江戸の人々に雪国の風物や綺談を教えたい。越後塩沢の縮仲買商・鈴木牧之が綴った雪話はほどなく山東京伝の目に留まり、出板に動き始めるも、板元や仲介者の事情に翻弄され続けーーのちのベストセラー『北越雪譜』誕生までの長すぎる道のりを、京伝、弟・京山、馬琴の視点からも描き、書くことの本質を問う本格時代長篇。
コロナ禍で経験した日常のキワが蘇る、超絶細密描写にハマること必至の連作。夫に付き添い初めての救急車でやってきた深夜の病院の待合室。ふと思い出したのは、子供の頃に聞いた、赤い猫を見ると死ぬという噂ーーパンデミックというついこの間の出来事を背景に、ある平凡な夫婦とその周りの人々の生活を精緻に描き、日常の外側に読者を連れていく。海外でも翻訳多数の気鋭作家による最新連作長篇。
本書は、あらゆる角度からの深読みを許容する。求む、全てを読み解く猛者! 末期癌の宣告を受けた父は安楽死を望むが、日本ではそれが叶わない。残された日々の家族像を描いた「ボート」。虎の脱走事件、美術館で見たベラスケスの絵画のエピソード等を、緊急待機中のF15パイロットが独白する「鏡」。異なる二つの物語が絡み合ってはほどけ、まったく新しい見え方を立体的に浮かび上がらせる。
歴史の奔流に抗うには、人ひとりの命はあまりに儚いーー。李朝最後の王高宗は、閔妃を日本人に斬殺され、息子をロシア語通訳に毒殺されかかりながらも強かな抵抗を続けた。日本統治下の作家や詩人、語り手の中村をガイドしてくれた在日の女子留学生。儚い生の連なりが、激動の朝鮮史を織りなしてゆく。過去を掘り下げることによって未来を見晴るかす視野を開く刺激に満ちた歴史長篇。
少年は何度も何度も成長し、愛しい人々と青春を駆け抜ける。1947年、ユダヤ系の家庭に生まれたアーチボルド・ファーガソンの、驚くべき仕掛けに満ちた成長物語。ドジャースLA移転、ケネディ暗殺、ベトナム反戦運動。50〜70年代のアメリカを生きる若者の姿を、緻密で独創的な四重奏で描く。「この本を書くために一生待ち続けていたような気がする」というポール・オースターの、作家人生の総決算となる大長篇。
パンスペルミア説(宇宙汎種説)を前提として語りかける、唯一無二の恋愛小説。3章が重なり合うように構成された恋愛小説。各章は春から夏、秋から冬と変遷する。第1章は「この世」の話。高校一年生の初恋から学生結婚そして大学卒業直前の離別までを主人公が語る。第2章は「あの世」から第1章を読んだ既に他界した恋人が、主人公に自分の心を語る手紙。第3章は「仮の世」のブータンでの再会。恋人は小鳥となり「あの世」から「この世」を仮訪問する。ふたりは、ブータンの友人と人間哲学と宇宙を語り、酔生夢死を過ごす。
理想を求める中間管理職の奮闘に切り込む、シニカルなボディ・メイキング文学。勤務先で係長に抜擢された後藤は、ボディビルの選手でもあった。ある日、社内の人材の無駄に切り込み組織の代謝を上げると大会に向けて停滞中だった減量も進むことに気づき、身体を仕上げるべくチームの脂肪の除去に驀進し始める。肉体と組織がシンクロしたとき、たたき出されるのはベストパフォーマンスか、それともーー
それで誰かを助けられるなら、うそぐらいつく。大学のサークルを抜けたい姪のため、うその辞める理由を考えてあげたことをきっかけに、「うそ請負人」と頼みにされるようになった女性の困惑。会社の自転車置き場で、人間関係へのストレス発散のために同僚がとっていた思いがけない行動。日常の困ったことどもをやり過ごし、目の前の「今」を生き延びるための物語11篇。
戦だけが闘いの場じゃない。命と矜持を賭けた任務への挑戦が今、始まる。刀狩り、太閤検地、醍醐の花見など、豊臣秀吉が仕掛けた大事業を縁の下で支えたのは、尊敬と嫉妬のまなざしを浴びながら五奉行と呼ばれるようになった男たち。ぶつかることも多いが互いの才は認め、敵対勢力の横槍をはねのけ、力を合わせて難事に立ち向かう。『八本目の槍』に次ぐ、石田三成をめぐる歴史お仕事傑作巨篇!