出版社 : 新潮社
理想を求める中間管理職の奮闘に切り込む、シニカルなボディ・メイキング文学。勤務先で係長に抜擢された後藤は、ボディビルの選手でもあった。ある日、社内の人材の無駄に切り込み組織の代謝を上げると大会に向けて停滞中だった減量も進むことに気づき、身体を仕上げるべくチームの脂肪の除去に驀進し始める。肉体と組織がシンクロしたとき、たたき出されるのはベストパフォーマンスか、それともーー
それで誰かを助けられるなら、うそぐらいつく。大学のサークルを抜けたい姪のため、うその辞める理由を考えてあげたことをきっかけに、「うそ請負人」と頼みにされるようになった女性の困惑。会社の自転車置き場で、人間関係へのストレス発散のために同僚がとっていた思いがけない行動。日常の困ったことどもをやり過ごし、目の前の「今」を生き延びるための物語11篇。
戦だけが闘いの場じゃない。命と矜持を賭けた任務への挑戦が今、始まる。刀狩り、太閤検地、醍醐の花見など、豊臣秀吉が仕掛けた大事業を縁の下で支えたのは、尊敬と嫉妬のまなざしを浴びながら五奉行と呼ばれるようになった男たち。ぶつかることも多いが互いの才は認め、敵対勢力の横槍をはねのけ、力を合わせて難事に立ち向かう。『八本目の槍』に次ぐ、石田三成をめぐる歴史お仕事傑作巨篇!
より多くの金をつかんだ者が京都を制するーー最後に嗤うのは仏か鬼か。日本仏教の最大宗派・燈念寺派で弱者の救済を志す若き僧侶・志方凌玄。バブル期の京都を支配していたのは、暴力団、フィクサー、財界重鎮に市役所職員……古都の金脈に群がる魑魅魍魎だった。腐敗した燈念寺派を正道に戻すため、あえて悪に身を投じる凌玄だが、金にまみれた求道の果てに待っていたのはーー。圧巻の社会派巨編。
あなたも私も、いつかどこかで「もうひとつの世界」と繫がっている。アプリで知り合った彼のこと、どこまで信じていいのだろう? あの日、かき氷を食べたせいで、自分はガンで死ぬというのか? 誰もがどこかに伝染させている。この不毛な連鎖を止めるのは誰? コロナ禍、ストレス、重病リスク……。すべてが不確かな時代に生きる私たちの「ありえたかもしれない」分岐を描く5つの物語。
北海道が全停電した日、わたしは剥製のウミガメを放つため、真夜中の公園を彷徨う。時空を超える“北の地の想像力”の新星が鮮烈なデビュー!第37回三島由紀夫賞候補作、新潮新人賞受賞作(「彫刻の感想」)。
世界がパンデミックに覆われた2020年、アメリカ人のケヴィンは、軽井沢・追分の小さな山荘から、人けのない隣家を見やっていた。京都の宮大工の手になるその日本家屋は、南米から帰国した元外交官夫妻の住まいだったが、親しい隣人であった夫妻は、前年ふいに旅立ったあと、消息を絶ってしまっていた。能を舞い、たおやかに着物を着こなす古風で典雅な夫人・貴子。ケヴィンは彼女の数奇な半生を、「日本語」で書き残そうと決意するー。
いまや世界から忘れられつつある島国の片隅で、二つの孤独な魂が、月の光に照らされていたー。故国を離れ、日本語を自在に操るアメリカ人を語り手に、日米の二つの家族にまつわる秘められた記憶と、戦前からおよそ100年にわたる日本と日本人の変容を描きだす。
愛はいつでも儚い一方通行。独身で背の高いアミーリアは、どういうわけか町に突然現れた小男に惚れこんで、同居してカフェを始めた。そこに元夫が刑務所から帰還。奇妙な三角関係の行方はー。村上春樹がいつか訳したいと願っていた名作を彩る山本容子の銅版画。豪華コラボレーション新訳版。
造船所で事務員として働く瀬戸口優子は、通勤途中の国道で、馬運車から逃げ出した元競走馬と運命的な出会いを果たす。「彼」の名はストラーダ。街のはずれにある乗馬クラブで「彼」に跨った優子は、誰よりも「彼」と心を通わせる感覚を味わい、その馬にのめり込んでいく。ストラーダの栄光の復活のため、優子は組合の金に手をつけ始める。帳簿を改ざんして「一時的に借りるだけ」だったはずの横領額は、気づけば億を超えていた…。言葉があふれる世界で、言葉のない愛に生きる。感動の疾走エンタテインメント!
里美は、娘の汐里とふたりで暮らしている。若い頃の前科が原因で家族とは疎遠になり、やがて生活に困窮した里美は罪を犯してしまう。愛を夢見て、妬んだ里美と、愛を求めて、姿を消した汐里。一度は訣別したふたりだが、再び巡りあい、そしてー。透明な筆致で家族の本質を追求した長編小説。
天賦の才能をもちながらピアニストの夢破れた調律師の「わたし」は、若い妻を喪った初老の男性、林サンと出逢う。亡妻の残したピアノをめぐって二人の運命は絡み合い、やがて中古ピアノの販売事業を手掛けるため、運命の地ニューヨークへたどり着く…。シューベルト、ラフマニノフ、リヒテルやグールドといったクラシック音楽の巨匠たちが抱えた孤独が綴られた本作は「聴覚小説」と評され、台湾文学金典奨をはじめ主要な文学賞を総なめにしたベストセラー。
「久しぶり、俺のこと恋しかった?」息をのむ瞬間を切り取る、夏の日の煌めく奇跡。鮮烈な筆致で描きあげた、宝物のような小説。
人間を操ってきたものとは何か?開いたパンドラの箱。明らかになる人類史のキーワード。封印されていたものが、今ひもとかれる「新しい小説」-。表題作「新しい人間」と「彼には本名がない そればかりか人間でさえない」の2篇を収載。
平賀源内の隠しものを奪え! 密命が下ったのは『解体新書』の絵師だった。鉱山の指導で秋田を訪れた平賀源内にその画才を見出され、『解体新書』の絵師に大抜擢された下級武士の小田野直武。故郷に戻って安穏と暮らしていたが、江戸出仕の密命が下る。源内は老中・田沼意次と秋田の佐竹家を強請ろうとしていた。講釈の発禁本、銀札の改定、蘭画、相次ぐ変死など、史実に基づく歴史ミステリの佳品。