出版社 : 新潮社
20世紀末のある日、ニューメキシコ砂漠の天文台が、奇妙な電波信号をキャッチした。それは厖大な素数系列で、発信源は26光年彼方のヴェガ系惑星と判明した。地球外知的生物からの電波探査機関〈アーガス〉の責任者エリーが、待ち望んだ瞬間だった。世界の専門家が協力しついに信号は映像化されたが、スクリーンに現われたのは、あまりにも意外な…。著名な天文学者の処女小説。
ヴェガ系惑星から届いた〈メッセージ〉解読のため、世界中の知識が総動員された。やがてそれはある機械の設計図であることが分った。再び全世界の協力の下で作り上げられたその〈マシーン〉に乗って、エリーたち5人の地球人代表が、ヴェガに向けて旅立つことになったー。宇宙の先進文明との接触を主題にして、最新の科学情報を基盤に、著者の卓抜な空想が展開する雄大な叙事詩。
中米の国、コスタリカ。国連食糧農業機関の職員であるイギリス人カーターは、この国の深刻な食糧危機を解決するべく派遣されたが。が、順調に進んでいた画期的な援助計画は突然妨害を受け、彼は失踪した。カーターを追って妻サマーズはジャングルに入り、陰謀の真相を知った…。世界的複合企業体の巨大な権力に翻弄される個人を描き、第三世界の現実に鋭く切り込んだ異色の冒険小説。
未亡人となった桂子さんの前に現れた、入江氏という謎の大物。実業家、編集者、作家たちがからむ秘密のプロジェクト。竹林の別荘での酒宴。ドイツの暗い森での密会。花を食べる酔美人の真紅の寝室…。桂子さんの身辺で交わされる、様々な“歓び”。ときに妖しく、ときに典雅で、めくるめくような-濃厚な小説世界。
今度の作品『人間の幸福』では、大自然の力である神は、人間の幸福を、どんなふうに考えているか、ということを書きました。人間の本当の幸福は、この現実の世界に生きながら、大自然の神の世界にいる人間のような気持ちで生きることだと教えられて、それはどういうことなのか、二人の女性が現代社会のなかでどう生きていくか、ということを書いています。
五十歳になったことをきっかけに書き始めた連作から、還暦を迎えて急逝したわずか三ケ月前に書き上げられた表題作まで、予感するように死を意識した日日の心情を私小説風に綴った短編群。「暴飲暴食」「五十歳記念」「心臓破り」「風と灯とけむりたち」「第三の男」「傷は浅いが」「引越貧乏」の七編を収録。
探偵ブルーが、ホワイトから依頼された、奇妙な、ブラックという男の見張り…。アメリカ文学に初めて現われたエレガントな前衛。カフカが書いたような探偵小説と評された、その代表作。ニューヨーク三部作の最高傑作。
伊豆湯ケ島の小学校を終えた洪作は、ひとり三島の伯母の家に下宿して沼津の中学に通うことになった。洪作は幼時から軍医である父や家族と離れて育ち、どこかのんびりしたところのある自然児だったが、中学の自由な空気を知り、彼の成績はしだいに下がりはじめる。やがて洪作は、上級の不良がかった文学グループと交わるようになり、彼らの知恵や才気、放埒な行動に惹かれていくー。
洪作は四年に進級するが、自由奔放な文学グループと行動を共にするようになってからは成績は下がる一方で、ついに彼は沼津の寺にあずけられる羽目になった。おくてで平凡な少年の前に、急速に未知の世界が開けはじめる。-陽の光輝く海辺の町を舞台に、洪作少年がいかにして青春に目覚めていったかを、ユーモアを交えた爽やかな筆に描き出す。『しろばんば』に続く自伝長編。
父を失い、長兄を兵隊にとられた洋と洋次郎の兄弟は、空襲で家を焼かれ、かあさんの田舎へ疎開した。デパートも映画館もない小さな町で、初めての畑仕事や魚とりに精を出し、動員先の工場では地元工員たちと大喧嘩、そして“前線慰問用”の宝塚予科生との交流。そこにはもうひとつの“戦争”があった…。ひと夏の経験を通して成長していく兄弟の姿を瑞々しい筆致で描く感動の長編小説。
1979年の夏、著者にとって人生の最高の友人=中野重治は逝った。1年後、中野夫人原泉さんは、夫を生地の土に還した。その入院と死に至る状況や、郷里福井の埋葬に立ち合った著者に去来する50余年の時間の意味。そして自分自身の生と真実…。本書は、戦前・戦中・戦後の激動の半世紀に、人間的文学的情熱を共にした中野重治との交遊を通して描いた鎮魂の書。毎日芸術賞、朝日賞受賞。
時は戦国、幻術使い果心居士に導かれてその非情な人格を形成した少年赤丸は、貧困放浪の幼少時代から強奪、放火、殺人と残虐の限りをつくす。長じて彼は、畿内掌握の野望に燃え、無類の権謀術数を発揮して主君三好長慶を自在にあやつり、ついには将軍足利義輝をも弑して実力大名にのしあがった。乱世が生んだ下剋上の武将松永弾正久秀の悪の生涯を描く会心の長編。
巨大スタジアムの中で、パルプ作家同士が死力をつくし、制限時間内に一万語の小説をたたきだす、ニュー=スポーツ世界一決定戦〈プローズ・ボウル〉。メタファ・キッドことサケットは、宿敵カンザス・シティ・フラッシュを破り、ついに決勝に進出。だが、八百長の誘いをはねつけたために、恋人を誘拐されてしまった!スリリングな言葉のフットボールを描くスポーツ・パロディ小説。
対戦車ミサイルの権威をソ連から亡命させるため、ある男が英国情報局に招聘された。輝かしい軍歴を誇りながら、アイルランドの暴動鎮圧作戦で、少女を誤射し、すべてを剥奪され放逐された男ジョニー・ドノヒュー。アウトバーンを利用する周到な亡命計画が情報局の威信を賭けて立案され、ついに発令された。しかし再起を期して東側に潜入した彼をあまりに非情な事態が見舞う!
1940年代のある日、イモジンは18歳の娘コーラを連れ、アガタイトの町に辿りついた。夫に愛想が尽き、家を出てきたのだ。車が故障し、役所前広場のベンチで修理を待つ間、娘は5セント持って向いの店にアイスクリームを買いに行った。そしてそのまま、30分、1時間、1週間…。イモジンはひたすら娘の帰りを待ち続ける。今までに例のないまったくユニークな心理サスペンス。
記憶に定まらないうちに次々と変貌するコンクリート・シティー。その片隅に逼塞する私の内なる柔らかきものを目覚めさせてくれる小さな生きものとの秘めやかな語らい。詩人・吉行理恵の奇妙で優しい不思議の国。
凍てつくマンハッタンの朝。スタッテン島の夏。赤い花をかかえ、バスに乗ってきたチャイニーズの女。セントラル・パークのユリの木の下でかじるプリッツァー。イースト・リバーを流れるケーナのひびき。異国での出会いと別れ。きらめきに満ちた、そしてどこか哀しい青春の日々-。リリシズム、そして淡いエロティシズム。著者初の青春小説。
ぽちゃん。こころの中に、さかながいる。でもそれは友達から恋人へ、たった30センチの距離すら泳いでゆけない哀しい魚だ…。大学卒業を控え、学生から社会人への交差点に佇む、ヤマトと桜子。往く夏のかわりに、ふたりがはじめた物語は、せつない22歳の匂いがした-。恋愛小説に優しい風をはこぶ、新鋭作家の誕生。神戸文学賞受賞。