出版社 : 新潮社
天に駆けのぼる龍の火柱のおかげで、見失った方角を知り、あやうく遭難を免れた漁師の因縁(表題作「龍を見た男」)。駆落ちに失敗して苦界に沈んだ娘と、幼な馴染で彼女をしたう口がきけない男と心の交流(「帰って来た女」)。絶縁しながらも、相手が危難の際には味方となって筋を通す両剣士の意地(「切腹」)。その他、市井の人々の仕合せと喜怒哀楽を描いて卓抜な技倆を示す傑作時代小説集。
「写真撮っちくれんか」-撮影処に現れたのは蓬髪、羊羹色の紋服に、よれよれの袴の坂本龍馬その人だった。時は幕末・明治、舞台は日本の玄関口・長崎。以来彦馬の周囲には、時の重要人物をめぐる事件がつぎつぎと発生する。手掛かりは写真!風雲怒涛の時代絵巻を背景に、日本で初めてのプロ・カメラマン上野彦馬がミステリーに挑む、異色の連作時代推理小説集。
前夫を暗殺されながらもその弟の妻となり、幸せを取り房した女が出遭う疑惑。ミステリー・タッチで描く表題作はじめ、朝鮮に出兵した兵士と現地の女との数奇な運命をたどる「小麦さま」、天保時代、筑前黒田藩の財政の混乱を皮肉に描く「筑前狂想曲」など、多彩な筆を駆使した時代短編集。
経営難に苦しむ呉服商角屋は隣家からの出火で、店舗と仕入れたばかりの商品を一夜にして失った。父・吉兵衛は縊死し、2人の兄は頼りにならず、膨大な借財を返すため18歳の花江は料亭“たちばな”に住み込んだ。名の通った料亭とはいえ、上客のためには女の世話もする。奉行所の役人や、かつての許婚者が、花江を買いにやってくる…。肉体を超えた凄絶なまでの男女の愛を描く長編小説。
デンマーク4人、ノルウェー3人、スウェーデン4人、アイスランド3人、フィンランド4人-。青年の孤独と女性への憧れ、性の解放と人間の解放、濃密なエロスの世界、神の不在と魂の希求、戦争の深い傷痕、厳しい自然のなかの狩漁や漁撈の生活…ノーベル賞受賞作家をふくむ傑作集。巻末に編者による「現代北欧文学の概観と解説」を付す。
人生、夕方があれば朝も来る-15歳で家出をした健治は、旅館の下働きから日露戦争軍夫へ、北海道のタコ部屋から三越百貨店の宮中係へと、波瀾の道を歩む。そして信仰を得た彼がたどりついたのは、人の垢を洗うクリーニング業だった。-日本で初めてのドライ・クリーニングの開発、厳しい時代の信仰への圧力との戦い。苦難はなお続いた…。天が与えた職業とは何か!?クリーニングの〔白洋舎〕を興した五十嵐健治の生涯に、事業と信仰の根源を描く!
個人が秘密を持つこともままならないような小さな海浜の町イーストウィック。そんな町にふつりあいな大邸宅。そこに大都会ニューヨークから移り住んできたいわくありげで魅力的な中年の独身男。男の出現に色めきたつ3人の魔女。魔女といっても、あの腰の曲がった鈎鼻を突き出した老婆ではない。30代の女盛りの知的で美しい女たちである。いずれも離婚して、自由な生活をおくっている。そうした環境に1人の男が飛び込んでくることで、物語はドラマチックに展開してゆく-。
大人の世界に目覚める思春期の少年たち。彼らを取巻く堕落した社会。自己の衝撃的な体験を見事に昇華させ絶讃を博したラテンアメリカ文学の旗手、’63年の傑作。厳格な規律の士官学校で起こった試験問題盗難事件-密告、いじめ、軍事教練中の射殺…暴行、飲酒、喫煙、盗み、ばくち、カンニングなど、鬱屈しつつも虚勢を張った粗暴な振舞いをする少年たち。弱肉強食の悲情な世界での彼らの成長過程を通して、腐敗、堕落、暴力、不正、偽善にあえぐ現実社会を告発する!
マニキュアで窓ガラスに描いた花吹雪を残し、夜明けに下駄音を響かせアイツは部屋を出ていった。結婚10年目にして夫に家出された歳上でしっかり者の妻の戸惑い。しかしそれを機会に、彼女には初めて心を許せる女友達が出来たが…。表題作をはじめ、都会に暮す男女の人生の機微を様々な風景のなかに描く『紅き唇』『十三年目の子守歌』『ピエロ』『私の叔父さん』の5編。直木賞受賞。
それはただ単に、交通渋滞のための遅刻だったが…。恋人を待つ1時間に人妻の心に去来した不信が招く愛の終り。夏の昼下り、夫の浮気を目撃しショックを受けた若妻は、ニースのカジノで幸運を8に賭けた…。いつしかなれあいになった夫婦関係で、離婚を決意する夫の心情。若者の残酷な愛のエゴとジェラシーなど男と女の微妙な恋愛模様を背景に、愛の皮肉と優しさを描く短編集。
ニューヨークの地下鉄で女性に暴行しかけたチンピラを、乗合せた白人男性が射殺した。マスコミは彼を“善意の殺人者”と呼び、英雄に仕立てた。同じころ人気女性キャスターら3人の女性が殺され、また元ベトナム兵が続いて射殺される事件が起きた。NY市警の名コンビ、ニューマンとレッドフィールドは、これらの連続殺人はお互いに関連があると見たが…。新シリーズ第1弾!
ミストラル死す。20世紀を代表するこの天才画家の訃報に接した瞬間、ファッション界に君臨する女性実業家マギー・リュネルの前から50年の歳月が消えた。1925年パリ。花の都に出てきた17歳の田舎娘マギーは、持ち前の美貌と活発な性格で、たちまち人気モデルにのしあがる。マチスが、ピカソが、競って彼女の絵を描いた。が、ひとりの無名画家との出会いが彼女の人生を変える…。
心から愛したパトロンの死後、マギーはモデル・クラブを経営しながら、女手ひとつでひとり娘テディを育てあげる。だが皮肉なことにテディは、マギーがかつて愛した男ミストラルと運命的な恋に落ち、私生児フォーブを出産したのだった…。1920年代のパリから現代のニューヨークまで、華麗なファッション・モデルの世界に生きた女性三代の愛と自立の歴史を描く感動の大河ロマン
実業界、政界に雄飛した父は、女性遍歴を重ねていく。その蔭で、母は歌集を編むことによって自らの心を癒す。青春時代、父に反抗しながら、結局は後を継ぎ、大企業のトップに立つ主人公が、今や、忌み嫌っていた父に似てきたことを覚る。自己の内面に潜む、救いようのない血塗の心奥を吐露した長編小説。
ときめく心を持ち続ければ、年とることなど怖くない!若き日に苦労した分思いきり楽しまなけりゃ、いったい何の人生か。年寄りは年寄りらしくの声にもめげず、思う存分老後をエンジョイする77歳歌子サン。1人マンションで優雅に暮す歌子サンの周りには、今日も様々な出来事が持ち上る…。いつまでもときめきを忘れずに生きる歌子サンの大活躍を描いた連作短編シリーズ第2弾!
広島カープの強さの源は〈モミジマンジュウ〉で、〈ヤキュウ〉のルーツは柳生一族にあった!自称“日本通”アメリカ人W・C・フラナガンの誤解とコジツケの処女作「素晴らしい日本野球」。そして、ソ連に占領された戦後日本の姿を描く「サモワール・メモワール」など、微妙な違和感を、大胆なフィクションをテコに極限まで拡大して笑いのめす異常発生作品群10編。
プロの当り屋、赤木圭一郎は、今を去ること10年前、当り屋専門学院の講師、当り屋文左衛門が言った言葉を思い出した。「幻の少年カスパー・ハウザーを見た日、あんたは当り屋をやめなあきまへん」。そして圭一郎は見た、幻の少年が、車の前へ身を躍らせるのを…。場外馬券売場のガード下からアンスバッハのしらゆきつもる公園へ。母と子の愛憎が交錯する悲しくも美しい妄想の純文学。人気ナンバーワン戯曲「小指の思い出」原作。