出版社 : 新潮社
高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった──。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。芥川賞『火花』より先に着手した著者の小説的原点。
火葬したはずの妻が家にいた。「体がなくなったって、私はあなたの奥さんだから」。生前と同じように振る舞う彼女との、本当の別れが来る前に、俺は果たせなかった新婚旅行に向かった(「ゆびのいと」)。屋上から落ちたのに、なぜ私は消えなかったのだろう。早く消えたい。女子トイレに潜む、あの子みたいになる前に(「かいぶつの名前」)。生も死も、夢も現も飛び越えて、こころを救う物語。
千三百年以上の歴史をもつ岐阜・長良川の鵜飼い。その最中に屋形船に乗っていたカップルが睡眠薬入りのワインをのみ、女が死亡し、男は生き残る事件が発生する。そして二週間後、東京・台場のホテルの一室で、男が亡くなり、女が助かる事件が。同一の睡眠薬を使用した二つの「心中」事件が、偽装殺人なのではと疑念を抱いた十津川警部は捜査を開始する…。迫真の長編トラベルミステリー。
品川の貨物倉庫で働く亮介は25歳の誕生日、出会いサイトでOLの〈涼子〉と知り合った。どんな愛にも終わりは来るとうそぶく亮介と、愛の力を疑いながら、でもどこかで信じたい〈涼子〉。嘘と不安を隠し、身体を重ねるふたりは、やがて押し寄せる淋しさと愛おしさに戸惑う……。東京湾に向きあった、品川埠頭とお台場に展開する愛の名作に、その後を描く短篇「東京湾景・立夏」を増補した新装新版。
順風満帆な会社員人生を送ってきた大手食品メーカー役員の芹澤は、三歳で命を落とした妹を哀しみ、結婚もしていない。ある日、芹澤は元部下の鴫原珠美と再会し、関係を持ってしまう。しかし、その情事は彼女が仕掛けた罠だった。自らの運命を変えた珠美と会い続けようとする芹澤。彼女との時間は、諦観していた彼の人生に色をもたらし始めるー。喪失を知るすべての人に捧げるレクイエム。
「そのとき私は、けものになりました」情事が記された夫の日記に狂乱する妻。その修羅を描いた『死の棘』。だが膨大な未公開資料を徹底解読し、取材を重ねた著者が辿りついたのは、衝撃の真実だった。消された「愛人」の真相、「書く/書かれる」引き裂かれた関係。本当に狂っていたのは妻か夫か。痛みに満ちたミホの生涯を明らかにし、言葉と存在の相克に迫る文学評伝。読売文学賞評論・伝記賞、芸術選奨文部科学大臣賞、講談社ノンフィクション賞受賞。
廃病院で相次ぐ転落死。不可視の“魔弾”とは? 西東京市に聳える時計山病院。十一年前の医療ミスで廃院に追い込まれたこの場所で、一人の看護師が転落死する。死亡状況や解剖結果から自殺が有力視される中、娘の由梨だけはそれを頑なに否定した。天医会総合病院の副院長・天久鷹央は彼女の想いに応え、「呪いの病院」の謎を解くことを決意する。死体にまったく痕跡が残らない“魔弾”の正体とは? 現役医師が描く医療ミステリー!
物語は始まる。八月の青い、青い、空の下で。あなたは架見崎の住民になる権利を得ました──。高校二年生の香屋歩の元に届いた奇妙な手紙。そこには初めて聞く街の名前が書かれていた。内容を訝しむ香屋だが、封筒には二年前に親友が最後に残したものと同じマークが。トーマが生きている? 手がかりを求め、指定されたマンションを訪れると……。戦争。領土。能力者。死と涙と隣り合わせの青春を描く「架見崎」シリーズ、開幕。
他校のライバル集結。富士の麓で火花が散る! インハイ出場を決めた希衣と恵梨香の新ペア。カヌー部女子四人は休む間もなく練習を重ね、結束を深める。次の関東大会では、絶対的な強さの“孤高の女王”こと利根蘭子をはじめ、千葉からは繊細なパドル捌きで魅せる双子の大森姉妹、山梨からはパワーが武器の神田と堀ペアなど個性的なライバルらが集結。ながとろ高校の勝利の行方は !? 揺れる想いと熱い闘志がきらめく青春部活小説。
ばらが好き。でも、ゆりはもーっと好き。まさか、わたくしの姿がお見えになるんですの? 2018年12月28日、ひとりのパリ旅行者が知らない女から声を掛けられる。女の名は、ランバル公妃。フランス革命で虐殺された、マリー・アントワネットの女官長だった。王妃への強い思いゆえ亡霊となった彼女は語り始める。王妃を愛し、王妃に愛された女人たちのことを──。世界中から嫌われた王妃を過剰な愛で綴る、究極の百合文学!
賢くて可愛いAI 犯人の探偵を翻弄する大逆襲劇。人工知能探偵・相以の驚異的な推理力に大敗を喫した以相。復讐に燃える彼女は、人間の知能を増幅させ完璧な共犯者を造り、相以に挑戦状を叩きつけた。ゴムボートで漂着した死体、密室で殺された漁協長、首相公邸内殺人事件。連鎖する不可解な事象を読み解く一筋の推理の紐は、なんと以相の仕掛けた恐るべきトリックの導火線だった!? 奇想とロジックが宙を舞う超絶推理バトル再燃。
優しくぼくを見つめる、母と思っていたその人は母ではなかった。ぼくは捨て子だったのだ……。家を追われた 8 歳の少年レミは、謎の老旅芸人ヴィターリスの一座に加わり、芸をする動物たちとともに巡業の旅に出発する。大都会から炭鉱町まで、時に厳しい荒野を渡り、吹雪を耐え、川を越え── レミは真の幸福を求めて旅を続ける。時代を超えて読み継がれるフランスの児童文学の傑作を完訳!
旅の道中、時に仲間を失いながら出会いにも恵まれるレミ。イギリス人貴族マダム・ミリガンとアーサー母子。弟のように付き従うマティア。レミを家族のように遇してくれた花づくり農家アキャンの一家。国境を超えてイギリス、スイスへと旅を続け、ついに生母の居場所をつきとめるのだが──。レミは永遠に別れることのない本当の家族と巡り会うことができるのか。涙と感動の物語、完結編。
俺は二度と日の当たる場所には出られない──押収品のドラッグをくすねて停職になった刑事エイダン・ウェイツ。提示された唯一の選択肢は街に跋扈する麻薬組織への潜入捜査、そしてそこに引きこまれた国会議員の娘の調査だった。危険極まる任務についたウェイツが目にする想像を超えたドラッグ世界の闇、そして警察の腐敗。本当の悪の正体は? 心の暗部を抉るように描く驚愕のデビュー作!
人はなぜ、欺き続けなければ生きていけないのか。欲望の深淵を暴く、犯罪巨編! 戦後最大かつ現代の詐欺のルーツとされる横田商事事件。その残党たる隠岐は、かつての同僚の因幡に導かれるがまま〈ビジネス〉を再興。次第に詐欺の魅力に取り憑かれていくがーー。欺す者と欺される者、謀略と暴力の坩堝の果てに待ち受ける運命とは。透徹した眼差しで現代の日本を、そして人間の業と欲を徹底的に描破する。
「孤独はわたしそのもの。孤独に動かされてわたしは書いてきた」--ジュンパ・ラヒリ。歩道で、仕事場で、本屋で、バルコニーで、ベッドで、海で、文房具店で、彼の家で、駅で……。ローマと思しき町に暮らす45歳の独身女性、身になじんだ彼女の居場所とそれぞれの場所にちりばめられた彼女の孤独、その旅立ちの物語。大好評のエッセイ『べつの言葉で』につづく、イタリア語による初の長篇小説。
刑事たちの執念の捜査×容疑者の壮絶な孤独ーー。犯罪小説の最高峰、ここに誕生! 東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。浅草で男児誘拐事件が発生し、日本中を恐怖と怒りの渦に叩き込んだ。事件を担当する捜査一課の落合昌夫は、子供達から「莫迦」と呼ばれる北国訛りの男の噂を聞くーー。世間から置き去りにされた人間の孤独を、緊迫感あふれる描写と圧倒的リアリティで描く社会派ミステリの真髄。
駆出しの作家だった頃の私が取り組み、完成できなかったノンフィクション。それは、ある忘れられた柔道家の型破りな半生を追ったものだった。だが、彼に寄り添う女、高校時代の恩師など、取材を進める毎にその実像はぼやけていく。一方、私と本人の間には、取材対象と取材者の垣根を越えた感情のさざ波が立ち始めー相対する二つの魂の闘争と交歓を描く。
東日本大震災の翌年、僕は京都から上京した。大学のキャンパスで出会った君は独り政治活動を行い、浮きまくっていた。啄木の歌を愛し、諳んじる僕はアニメ研究会に引きずり込まれ、ヲタと二次元の洗礼を受けつつ君に惹かれ、身を投じていく。生きにくさと時代閉塞を打破するコミカルでシリアス、一途な平成meets Revolution!平成の終わりに恋と革命に萌えた若き命。