出版社 : 新潮社
徳川中期、農村が疲弊し、都市部の商人が力を持ち始めた転換点。老中首座の重責を担う田沼意次は、貧者への重税、賄賂政治、恣意的人材登用と非難にまみれていた。-悪政の噂は本当なのか。出所はどこなのか。絶望の淵にあっても、孤独に耐え、改革を押し進めた田沼意次という不屈の人間像を新しい視点から描く傑作歴史長編。
富山は、ある事件がもとで心を閉ざし、大学を休学して海の側の街でコンビニバイトをしながら一人暮らしを始めた。バイトリーダーでネットの「歌い手」の鹿沢、同じラジオ好きの風変りな少女佐古田、ワケありの旧友永川と交流するうちに、色を失った世界が蘇っていく。実在の深夜ラジオ番組を織り込み、夜の中で彷徨う若者たちの孤独と繋がりを暖かく描いた青春小説の傑作。山本周五郎賞受賞作。
環境破壊で地球が滅び、様々な星へ人類は移住していた。少年シンが暮らすナイラ星も移住二百年を迎えるなか、従妹のリシアに先住異星人の超能力が目覚める。失われた“精霊の木”を求め、黄昏の民と呼ばれる人々がこの地を目指していることを知った二人。しかし、真実を追い求める彼らに、歴史を闇に葬らんとする組織の手が迫る。「守り人」シリーズ著者のデビュー作、三十年の時を経て文庫化!
魔が差したのだ。術後の昂揚した気分が引き起こしたまちがいは、女医柿沼東子を奈落へ突き落とした。幼い娘の親権を奪われ、失意のまま一人伊達湊市の病院に移った東子は、天才外科医の陸奥の下、粛々と研鑽を積む。手技を上げた東子の前に、斯界の権威が立ちふさがる。病気腎移植の倫理問題と東日本大震災を背景に運命に翻弄される女医の姿を感動的に描く医療長編。
真辺由宇。その、まっすぐな瞳。まるで群青色の空に輝くピストルスターのような圧倒的な光。僕の信仰。この物語は、彼女に出会ったときから始まった。階段島での日々も。堀との思い出も。相原大地という少年を巡る出来事も。それが行き着く先は、僕と彼女の物語だ。だから今、選ばなければいけない。成長するとは、大人になるとは、何なのかを。心を穿つ青春ミステリ、堂々完結。
父を火事で亡くした心的外傷から、身近な人の死を予知夢に見るようになってしまったみちるは、誰にも言い出せずに怯えふさぎこんでいた。手を差しのべてくれたのは従兄の一美兄ちゃんだった。「信じるよ。一緒に予知を覆そう」そして高校生になった彼女は再び夢を見る。校舎屋上、血塗れの刃、最後に見えたのは…一美兄ちゃん!?後悔と痛みを乗り越え前を向く、学園青春ミステリー。
アメリカ政府の機密情報が筒抜けになっているとしか思えない不可解な事件が続発する。米国内ではロシア海軍と交戦した駆逐艦艦長が居場所を突き止められて襲われ、イランでは諜報活動に従事する情報機関員が正体を暴かれ拘束される。一連の疑惑に繋がる壮大かつ複雑な陰謀が着々と準備される中、“ザ・キャンパス”工作員は機密情報が北朝鮮当局者に渡るのを阻止するためジャカルタに向かう。
オンライン詐欺で捕まり、出獄したルーマニア人ダルカは、ネット調査会社に勤めたが、インドの会社のシステムから手に入れたデータが途方もない「金鉱脈」だと気付く。それを使ってスパイの洗い出しを依頼した中国情報機関のダミー会社の意向をよそに、彼はこれからターゲット情報を作り闇ウェブで売り捌くことにした。すると、アメリカ人の極秘情報を物色する謎の組織が接触してきて…。
何も起こるはずはないるいつも通りだ。明日はくる。絶対にくる。平凡な日常が少しずつ失われていくことへの不安に苛まれる多感で繊細な少年少女たちを描く「虹のかかる行町」。帰ってきたはずの子どもが姿を消してしまう「飛光」など、家族と子どもをめぐる四編を収める中短編集。
バブルのあぶく銭を掴み、順風満帆に過ごしてきたはずだった。大西浩平の人生の歯車が狂い始めたのは、娘が中学校に入学して間もなくのこと。愛する我が子は境界性人格障害と診断された…。震災を機に、ビジネスは破綻。東北で土木作業員へと転じる。極寒の中での過酷な労働、同僚の苛烈ないじめ、迫り来る貧困ー。チキショウ、金だ!金だ!絶対正義の金を握るしかない!再起を賭し、ある事業の実現へ奔走する浩平。しかし、待ち受けていたのは逃れ難き運命の悪意だった。実体験に基づく、正真正銘の問題作。
いまは亡き天才建築家が設計した、通称「おっぱいマンション」。立地もデザインも抜群、できた当時はあこがれの住居、いまでは、終の住処として、人気を保ち続けていた。だが、重大な問題が発覚!勃発した改修騒ぎは、建築家の娘、学生運動あがりの引退した教師、秘密を抱えた元女優、天才の右腕たちの人生を、秘密を、理想を呑み込んでー。建て替えるべきか、残すべきか。正義の審判の行方は?人生最大のお買い物は、人生最悪のドラマを生む!?
昭和二年。関東大震災で最愛の妹を喪った八重は、妹の婚約者だった竹井と結婚したが、最新式の住居にも、新しい夫にも、上手く馴染めない自分に苛立ちを感じていた…。昭和と共に誕生し、その終わりと共に解体された同潤会代官山アパート。その一室からはじまった一家の歳月を通して描かれる、時代の激流に翻弄されても決して失われない“家族”-すなわち“心の居場所”の物語。
絶対に残業しない主義の結衣だったが、とうとう管理職になってしまう。新人教育を任されたものの、個性的過ぎる若者たちに翻弄される毎日。そんな折、チームが参加することになったのは、差別的なCMが炎上中の企業のコンペだった。パワハラ、セクハラのはびこる前時代的な社風に、結衣は絶句するがー。定時の女王はホワイトな職場を守れるのか?
小説家としてデビューしたものの著書は一冊だけ、しかも絶版。そんな私が関西の巨大私立大学で創作を教えることになった。小説家としての先行きへの不安や夫との対立、動機も目的もさまざまな学生たち…執筆はますます行き詰まり、教え子たちも隘路へとはまり込んでいく。教師としての自身の経験を元に、小説と格闘する人々を描いた表題作の他、女性と世界との葛藤を浮き彫りにする作品集。
プラハの貧しいラビの家からサーカス団に飛び込み、ナチス政権下を生き抜いた老マジシャンと、ロサンジェルスの裕福なユダヤ人家庭に育ち、両親の離別に悩む少年。壊れた愛を魔法で取りもどしたいー夢見がちな少年の願いは、拗ね者のマジシャンの心をついに動かし、一族の命運を変えた戦時下の「奇跡」をも呼び覚ます。持ち込み原稿を断わられ続けること10年、スイスの名門ディオゲネス社から刊行されるや、たちまちベストセラーとなり、17ヵ国語に翻訳された話題のデビュー長篇。
都知事、狙撃ー。新国立競技場で起きた事件は日本を震撼させた。誰が。なぜ。狂騒の中、日就新聞社会部の天宮理宇はチームを率いて真実を追うが、捜査は唐突に打ち切られる。「犯人はクルド人難民」その警察発表は国策として難民を受け入れた日本において、瞬く間に浸透した。結論ありきの手法に違和感を覚えた天宮は社を去るが…。この国の未来を予見する圧倒的エンターテインメント!
「都知事狙撃事件の真犯人、その正体は…」新聞社を辞め、フリーの記者となった天宮理宇の告発は、ウェブを介して拡散し、世論が動き始める。だが、それは隠された秘密の一端に過ぎなかった。事件の鍵を握る男、アル・ブラク。シリアからの難民。メディアを牛耳る新聞王。すべての過去が繋がったとき、新国立競技場に再び銃声が鳴り響く。この国の“危機”を描く、怒涛の長篇サスペンス!