出版社 : 新潮社
時は元禄、東北の小藩の山村が、一夜にして壊滅した。隣り合い、いがみ合う二藩の思惑が交錯する地で起きた厄災。永津野藩主の側近を務める曽谷弾正の妹・朱音は、村から逃げ延びた少年を助けるが、語られた真相は想像を絶するものだった…。太平の世にあっても常に争いの火種を抱える人びと。その人間が生み出した「悪」に対し、民草はいかに立ち向かうのか。
四月、俺の未来は薔薇色に見えた。浪人覚悟で受験した大学に合格、そこには面倒見のいい先輩と、あわよくば恋人がいて、大好きな漫画の話もできる、充実の日々があるはずだった。だが、漫画サークル「パラディーゾ」に入った俺を待っていたのは、奇人・変人の先輩たちとの日々。違う。待ってくれ。それに俺が気になるあの女の子は…。漫画への熱き想いを描く、切なく甘い青春小説。
地方都市のしがない学芸員として働く手島沙良は、仕事の途中で体長15センチの謎の小さなおじさんを発見する。彼の名は槇原伝之丞。孤独な人間にしか見えない存在だという。なりゆきでその願いを叶えるハメになった沙良だがー。ひょんなことから出会ったイケメンは訳ありで、街に伝わる河童伝説が蘇ったり、あげく殺人事件発生?彼女の平凡な日常は今、涙とともに変わり始める。
時はロシア革命と第一次大戦の最中。英国のスパイであるアシェンデンは上司Rからの密命を帯び、中立国スイスを拠点としてヨーロッパ各国を渡り歩いている。一癖も二癖もあるメキシコやギリシア、インドなどの諜報員や工作員と接触しつつアシェンデンが目撃した、愛と裏切りと革命の日々。そしてその果てにある人間の真実ー。諜報員として活躍したモームによるスパイ小説の先駆にして金字塔。Star Classics名作新訳コレクション。
「今からあんたの願いをひとつだけ叶えてあげる」。デートの途中、突然時が止まった。動かない街に現れたのは、「神」と名乗るアヤしげな男たち。肩を叩かれ戻った世界は、あれ、何かが違う…?笑って笑って最後にほろり。わちゃわちゃ神頼みエンターテインメント。
人見知りの新人女性監督と人間嫌いな脚本家。虚構と真実の境界線で2人が見たものとは?連続ドラマ制作中の2人にせまる邪な闇と謎。名女優や片腕の男たちも巻き込み、撮影は進行するがー。「相棒」「3月のライオン」脚本家小説デビュー作!
常に密やかに、優雅に、挑戦し続けてきた作家の言葉が、無数の映像や小説、夢や記憶の断片と共に繊細に紡がれ、誰も読んだことのない、前代未聞の物語として誕生した!二つの批評的エッセイに縁取られ、六つのフォト・コラージュに彩られた小説群。
警察官になって六年目。(いちおう)テロ対策部門を志望していた僕は、能力も性格も平凡。なのに、県で一番大きい警察署の署長から突然スカウトされて、『刑事一課強行係』の刑事になった。とにかく、せっかく刑事になったんだ。時効完成のXデーまで三箇月の『あの事件』。全国指名手配犯の女にとっては、じき天国。追いかける警察にとってはもう地獄。運命のその日が来るまで、あきらめるわけにはいかない。あの女を、捕まえてみせる!経験と創造力の奇跡的な融合。元キャリア警察官の著者にしか描きえない、未曾有の警察小説!
金なし、地位なし、才能なしーなのに、幸せな男の物語。時は明治39年。業界紙編集長を務める宮本銀平に、母校・一高野球部から突然コーチの依頼が舞い込んだ。万年補欠の俺に何故?と訝しむのもつかの間、後輩を指導するうちに野球熱が再燃し、周囲の渋面と嘲笑をよそに野球狂の作家・押川春浪のティームに所属。そこへ大新聞が「野球害毒論」を唱えだし、銀平たちは憤然と立ち上がるー。明治球児の熱気と人生の喜びを描く痛快作。
なぜか自分以外には誰の姿も見当たらない…。治験バイトのため入っていた病院で、長い眠りから覚めたシマダミロクは驚愕する。事態を解明すべく都心に向かった彼が他の生存者たちの力を得て知ったのは、「太陽のしゃっくり」を引き金に原発危機、感染症の蔓延、ライフライン停止が同時発生し、人類が滅亡へとまっしぐらに突き進んでいること。そんな絶体絶命の状況下で、看護師の国枝すずに囁かれた言葉がミロクの頭をよぎる。「最後の一人になっても、頑張ってくださいね」。驚異の想像力で我々の未来を予見する、純文学×SFの到達点!
亡き友の家を守る物書き、綿貫征四郎。姿を消した忠犬ゴローを探すため、鈴鹿の山中へ旅に出た彼は、道道で印象深い邂逅を経験する。河童の少年。秋の花実。異郷から来た老女。天狗。お産で命を落とした若妻。荘厳な滝。赤竜の化身。宿を営むイワナの夫婦。人間と精たちとがともに暮らす清澄な山で、果たして再びゴローに会えるのか。『家守綺譚』の主人公による、ささやかで豊饒な冒険譚。
国内二例目の赤ちゃんポストで張り込んでいた新聞記者・長谷部友美が目撃したのは、嬰児を抱いた石葉宏子の姿だった。独身だと思っていた知人の行動に戸惑う友美。慌てて姿を消した石葉の行方を追ううちに、女の抱えていた修羅が浮き彫りになってゆく。最後に掴みとった驚愕の真相とは。先端医療は新たなる福音か、人倫を揺さぶる悪魔の誘惑かー。
抱かれたい。触れられたい。早くあなたに私を満たして欲しいー。身分の違いで仲を裂かれ、命を落としたはずの女との、蕩けるほどに甘く激しい交わり。殿様の側室と女中が密かにたがいを慰め合う、快楽と恍惚の果て。淫らな欲望と嫉妬に惑い、魔性の者と化した高貴な女の告白。牡丹燈籠、雨月物語、四谷怪談、源氏物語…古の物語に濃厚なエロティシズムを注ぎ描き出した、八つの愛欲の地獄。
ひとりの男が失踪した。金融庁長官の特命を帯びた捜査官の伊地知耕介がマークしているベンチャー銀行の専務だった。銀行の急所を突く証拠と共に消えた金庫番を探し出し、伊地知は不正を暴くことができるのか。野望実現に驀進する会長の坂巻、銀行に巣くう闇の暴力組織。男たちは沖縄の離島へ飛ぶ…。金融界を熟知した著者が放つハードボイルド金融エンターテインメント!
樺島信濃は、逃げていた。誰から?包丁を持った女から。なぜ?愛人であることがバレたから。逃げて、逃げて、逃げて。今はスポーツジムのアルバイト。けれど、給料では生活費すら賄えず、貢がれたブランド品を売って、なんとか暮らす二十六歳の日々。これではダメだ。わかっている。でも。そんなある日、弟が元恋人とやってきて…。愛とは。家族とは。切なさ極まる長篇小説。
天才学芸員の佐久間と娘のかえでが越してきた香瀬町では、いま奇妙な事件が起きていた。それは、18年前の消印の絵葉書が届くこと。その当時、一人の少年画家が亡くなり一人の郵便局員が失踪していた。事件の謎を解く鍵は、少年が遺したピカソらを模した絵画。絵に込めた画家の想いを読み解けば、この町の止まった時間が動き出すーアガサ・クリスティー賞作家の絵画ミステリー!
孤児院で育ったジュディの人生に、とびきりのチャンスと幸せが舞い込んできた。名を名乗らない裕福な紳士が、奨学金を出して彼女を大学に通わせてくれるという。ただし条件がひとつ。毎月、手紙を書いて送ること。ジュディは謎の紳士を「あしながおじさん」と呼び、持ち前のユーモアがあふれた手紙を書き続けるのだがーー。最高に素敵なハッピーエンドが待ち受ける、エバーグリーンな名作。
幸せな結婚を果たした級友ジュデ ィに、彼女の育った孤児院の運営を任されることになったサリー・マクブライド。何不自由ない家庭で育ったサリーにはとても抱えきれない重荷だが、ジュディや恋人の政治家、嘱託医にユーモアたっぷりの愚痴を手紙に書いて送るうち、少しずつ院長の責務に喜びを見出していくーー。『あしながおじさん』に勝るとも劣らない、愛と感動の結末が待つ名作。
まま母と二人の義理の姉にこき使われても明るく暮らす16歳の少女エラ。お城から舞踏会への招待状が届くが、まま母の意地悪でエラは留守番。悲しみに暮れる彼女に、美しい妖精が魔法をかけてー。輝く宝石と煌めくドレス、珍しいご馳走、不思議な道化、無邪気なダンス、極上の砂糖菓子、そして王子のキス。夢のように魅惑的な言葉で紡がれた、ときめきと幸せが溢れだす永遠のシンデレラ物語。