出版社 : 新潮社
鉄壁の防御と貧弱なパンチで「凡戦の帝王」と呼ばれた元プロボクサー。落魄した往年の人気俳優のマネージャー。二人の軌道が交差した時、その足元で暗黒の底が抜けた。ラーメン屋主人夫婦の不自然な失踪、床下からドラム缶から次々に見つかる死体、美少女を取り巻く得体の知れない男たち、迫る捜査。世界は二転三転、酷薄な様相を顕にする。衝撃の長編ノワール・ミステリー。
合併、社名変更、グローバル化。老舗製薬会社の改革路線から取り残された47歳の総務課長・青柳と、選手に電撃引退された若手トレーナーの由衣。二人に下された業務命令は、世界的プリンシパル・高野が踊る冠公演「白鳥の湖」を成功させること。主役交代、高野の叛乱、売れ残ったチケット。数々の困難を乗り越えて、本当に幕は開くのかー?人生を取り戻す情熱と再生の物語。
演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会ったー。『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。夢と現実のはざまにもがきながら、かけがえのない大切な誰かを想う、切なくも胸にせまる恋愛小説。
藩命により友を斬るための刀を探す武士の胸中を描く「春山入り」。小さな道場を開く浪人が、ふとしたことで介抱した行き倒れの痩せ侍。その侍が申し出た刀の交換と、劇的な結末を描く「三筋界隈」。城内の苛めで病んだ若侍が初めて人を斬る「夏の日」。他に、「半席」「約定」「乳房」等、踏み止まるしかないその場処でもがき続ける者たちの姿と人生の岐路を刻む本格時代小説の名品。
清流をまたぐ沈下橋の向こう、懐かしいひかげの家に10歳のみやびを連れ里帰りしたさわ。自分を呼ぶ声に車をとめると、そこには親友ひかるの息子で、褐色の手足が伸びすっかり見違えた13歳のりょうがいた…。蜘蛛相撲、お施餓鬼の念仏、遠い記憶を呼び戻すラヴェルの調べ。水面を叩くこどもたちの歓声と、死んだ人たちの魂が交錯する川べりに、互いの衝動をさぐる甘く危うい夏が始まる。
添乗員時代、ツアー客の航空券を忘れる大失態に辞職も考えたJTBの“ずっこけ若手社員”大東敏治。「仕事上の失敗は仕事で返すしかない」。心機一転、OB人脈や顧客の何気ないひと言からヒントをつかみ、前例のない新商品を生み出していく。年金ツアー、積立旅行、デパート共通商品券…。思考停止とマンネリを嫌い、つねに新しい仕事を楽しんだ実在のヒットメーカーの胸のすく半生を描く快作。
畠山警視は実技を伴うスカイマーシャルの訓練中、壁に直面する。彼女は共に難事件を乗り越えた竜崎に助言を求めた(「訓練」)。関本刑事課長は部下戸高の発砲をめぐり苦悩した。そこで竜崎の発した一言とは(表題作)。貝沼副署長、久米地域課長、伊丹刑事部長。彼らが危機の際に頼りにするのは、信念の警察官僚、大森署署長竜崎伸也だったー。七人の警察官の視点で描く最強スピン・オフ短篇集。
根岸の酒問屋に寮番の身で隠居する森口慶次郎のもとには、今日も様々な事件が持ち込まれる。かつて「仏」と呼ばれた腕利き定町廻り同心は、最愛の娘を不幸な事件で亡くした傷を心に隠し、今日も江戸の市井の人々の苦しみに耳を傾け、解決のみちすじをさりげなく示すのだった。そんな慶次郎の元に、婿養子の晃之助が急襲されたとの一報が届くが…。畢生の傑作シリーズ、ついに最終巻!
ケガレを呑むことでしかその男は生きられない。坂口麻美は悪夢を見ていた。何者かに追われ殺されかける夢だ。使えない後輩に、人を馬鹿にする同僚、図々しい肉親。不愉快なものに囲まれる日常に疲れすぎているせいだろうか?「いいえ。それはあなたの罪です」突如現れた美貌の青年・浪崎碧はそう告げた。-時に人を追い詰めてまで心の闇を暴き解決する“カカノムモノ”とは。まったく新しい癒やしと救済の物語、ここに誕生。
東京、山の手に広々とした敷地を誇る名門女学校「聖マリアナ学園」。清楚でたおやかな少女たちが通う学園はしかし、謎と浪漫に満ちていた。転入生・烏丸紅子がその中性的な美貌で皆を虜にした恋愛事件。西の官邸・生徒会と東の宮殿・演劇部の存在。そして、教師に没収された私物を取り戻すブーゲンビリアの君…。事件の背後で活躍した「読書倶楽部」部員たちの、華々しくも可憐な物語。
孤児オリヴァー・ツイストは薄粥のお代わりを求めたために救貧院を追い出され、ユダヤ人フェイギンを頭領とする少年たちの窃盗団に引きずり込まれた。裕福で心優しい紳士ブラウンローに保護され、その純粋な心を励まされたが、ふたたびフェイギンやその仲間のサイクスの元に戻されてしまう。どんな運命がオリヴァーを待ち受けるのか、そして彼の出生の秘密とはー。ディケンズ初期の代表作。
絵描きの眼に映った、ハリウッドの夢の影で貧しく生きる人々を描いた「いなごの日」。立身出世を目指す少年の身に起る悲劇の数々を描き、アメリカン・ドリームを徹底して暗転させた「クール・ミリオン」。グロテスクなブラック・ユーモアを炸裂させ、三〇年代のアメリカを駆け抜けて早世したウエスト、その代表的な長編に短編二編を加えた永久保存版作品集。“村上柴田翻訳堂”シリーズ。
舞台は60年代の米国東部の名門カレッジ。真面目で内気な学生ジェリーは、入学後すぐにお喋りで風変わりな女子学生プーキーと知り合った。彼女にふり回されながらも、しだいに芽生えていく恋…街角でのくちづけ、吹雪の夜の抱擁。だが、愛はいつしかすれ違い、別れの時が来る。生き生きとした会話が魅力の青春小説を、村上春樹が瑞々しいタッチで新訳する。“村上柴田翻訳堂”シリーズ。
少女は祖母を「西の魔女」と呼んでいた。光あふれる夏が始まるー。ロングベストセラーの表題作に繋がる短篇小説「ブラッキーの話」「冬の午後」、書き下ろし「かまどに小枝を」の3篇をあわせて収録する愛蔵版小説集。
同じ飛行機に乗りあわせたサッカー選手からのデートの誘い。疎遠になっていた幼馴染からの二十年ぶりの連絡。アメリカ人に嫁いだ娘と再会する母親。最愛の妻と死別した祖父の思い出話ー。かつて強制収容所が置かれたロシア極東の町マガダンで、長くこの地に暮らしてきた家族と、流れ着いた芸術家や元囚人たちの人生が交差する。温かな眼差しと、煌めく細部の描写。米国で注目を集める女性作家による、清新なデビュー短篇集。
平成2年。全国紙の採用試験にすべて落ち、北海道の名門紙・北海タイムスに入社した野々村巡洋。縁もゆかりもない土地、地味な仕事、同業他社の6分の1の給料に4倍の就労時間という衝撃の労働環境に打ちのめされるが…会社存続の危機に、ヤル気ゼロだった野々村が立ち上がる!休刊した実在の新聞社を舞台に、新入社員の成長を描く熱血お仕事小説。『七帝柔道記』の“その後”を描く感動作。
結婚詐欺の末、男性3人を殺害したとされる容疑者・梶井真奈子。世間を騒がせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿と、女性としての自信に満ち溢れた言動だった。週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、親友の伶子からのアドバイスでカジマナとの面会を取り付ける。だが、取材を重ねるうち、欲望と快楽に忠実な彼女の言動に、翻弄されるようになっていくー。読み進むほどに濃厚な、圧倒的長編小説。
その孤島は古い手記どおりに実在した。不都合な真実を瓦礫の下に埋もれさせたまま。カブトガニの青い血液を用いた新薬開発。そして重大な副作用の発生。その爪痕は、海に囲まれた実験場の破壊だけでは消滅しなかった…。ジレンマとはまそにこのこと。新薬はすでにわが社の主力商品なのだ。社史の不可解な空白の理由を知ったからにはただでは済むまい…。海の力が古い手記を生き残らせたように、海辺の現代生物は人類を進化させるのだろうか…。
都市は官能の遊園地、革命の練習舞台、孤独を食べるレストラン、言葉の作業場。世界中から人々が集まるベルリンの街に、経済の運河に流され、さまよい生きる人たちの物語が、かつて戦火に焼かれ国境に分断された土地の記憶が、立ちあがる。「カント通り」「カール・マルクス通り」他、かつて国境に分断され、いまや世界中の人々が行き交うベルリンに実在する10の通りからなる連作長編。