出版社 : 新潮社
関東大震災後の横浜に生まれた異母姉妹の慧子と蒼。ミッションスクール、ジャズ、ダンスなどのヨコハマ文化を楽しみ、恋を知る二人。しかし戦争の暗雲が港町を覆い尽くす。3・11以降の日本で書かずにいられなかった、戦争と平和、生きることの歓びと哀しみ。
世界中をめぐる豪華客船『ディアマント』のチーフ・パティシエール、三嶋怜衣は、クールな美貌とケーキ作りの実力から“女王”と呼ばれていても、本当は人見知りで性格もマジメ。恋愛よりも仕事に夢中で、目下の悩みは、八歳年下でパティシエ見習いの“生意気坊や”ハルがあまりにマイペース過ぎること。そんなある日、怜衣の恥ずかしい秘密を、よりによってハルに知られてしまいー。「隠さなくたっていいじゃん。ボスも女だってことだろ」昼は「上司と部下」、夜は「奴隷とご主人さま」の逆転主従関係に!?世界一周クルーズ中の豪華客船で繰り広げられるとびきり甘くて濃厚な恋の駆け引き。
上王が統べる島国「八万遠」。建国から千年、このまま平安が続くと、誰もが思っていた。その男が、胸に秘めた欲望をむきだしにするまではー流転する「運命」。異端の「神」を信じる民。授けられた「力」。「血」を破壊する憎しみ。無情の世界で生き残るのは、正義か。それともー一気読みの快感!エンタメ度100パーセント!
部屋に現れた黒い影。屋根裏に広がる闇の穴。正体不明の真っ暗坊主。そして私は存在しない存在。あなたを見つめていることしかできない。最愛の人がこんなに近くにいたことに気づいたのは、すべてが無くなるほんの一瞬前だった…。謎と因果の真っ暗坊主に立ち向かう舞城史史上最最最最最最最最強長篇!
角田光代╳プルースト世界文学最大・最強の長篇小説の画期的〈縮約版〉刊行! 作家志望の「ぼく」が味わう苛烈な恋、そして「時」の不思議ーー。あまりの長大さと複雑な文体ゆえに、名声ほどには読破する者の少なかった二十世紀小説の代表作が、いま蘇える。現代を代表する小説家と仏文学者のコラボレーションによって、プルーストのエッセンスはそのままに、贅美きわまる日本語でついに読める、読み通せる驚異の縮約版一千枚!
「黒衣の女」とは誰か? プルーストが込めた芸術的野心と個人的な思慕とは? 『源氏物語』にも比せられ、『ユリシーズ』と並ぶ二十世紀最大・最強の長篇小説。しかし一万枚を超す長さと、文章の複雑さゆえに読み通すのが容易でない本。その真の魅力と、作家が隠蔽しつつも書き残した謎を、ヌーヴェル・クリティックの第一人者が初めて説き明かす。プルーストの姿を追って旅したヴェネツィアで見たものとは?
平家を滅ぼした後、義経と兄頼朝との亀裂は、深まる一方だった。平宗盛父子を護送して鎌倉に向かった義経は、鎌倉入りを許されず、腰越に留め置かれる。心血を注いだ愁訴の状を幕府の大江広元を通じて差し出すが、その真情は頼朝には届かなかった。失意のうちに京に戻ると、刺客が館を襲撃。義経は戦を避けて、弁慶、静らとともに西国へ下ることを決意する…。切々たる「腰越状」、堀川夜討、義経の都落ちを描く第十八巻。
フランス留学時代に女でしくじり、帰国後も生来のヨソ者として暮らしてきた乾ケンジロウ。東京でのヒモ生活を遁走し、新潟で人生初の恋に落ち結婚するも破局。富山では偶然再会した大学の女友達に、美術館で盗んだジャコメッティの彫刻を餞別に渡し、逃げるようにして故郷の呉へー。『異邦人』ムルソーを思わせる嘘つき男の、太陽と海をめぐる不条理な彷徨。著者の最高到達点。
いい匂い。あの街の夕方の匂いー。些細なきっかけで、記憶は鮮明に甦る。雛子は「架空の妹」と昔話に興じ、そんな記憶で日常を満たしている。それ以外のすべてーたとえば穿鑿好きの隣人、たとえば息子たち、たとえば「現実の妹」-が心に入り込み、そして心を損なうことを慎重に避けながら。雛子の謎と人々の秘密が重なるとき、浮かぶものとは。心震わす“記憶と愛”の物語。
「侮ったら、それが恐ろしい女で」。高校まではごく地味。短大時代に恐るべき能力を開花させる。手練手管と肉体を使い、店員を振り出しに玉の輿婚をなしとげ、高級クラブのママにまでのし上がった、糸井美幸。彼女の道行きにはいつも黒い噂がつきまといーー。その街では毎夜、男女の愛と欲望が渦巻いていた。ダークネスと悲哀、笑いが弾ける、ノンストップ・エンタテインメント!
新栄橋完成に沸く大黒屋に、深浦の船隠しを監視する眼を報告してきたのはおこも姿の忠吉だった。監視小屋には、オロシャと思われる文字が記された絵図面、貨幣等が残されていた。多くの証拠を残したことに総兵衛は疑念を募らせる。一方、幕府鉄砲玉薬奉行配下が大黒屋周辺を嗅ぎ回る。正介の秘密に感づいたのか。折から信一郎率いる交易船団が一年弱の航海を終え戻ってきたが…。
楽器を持った黒人が三名漂着した。牢で騒音をたてる彼らに興味を持った殿さまは、日頃嗜む篳篥の奏法を援用しクラリネットでセッションに加わり、やがて…(「ジャズ大名」)。春の夕刻、井戸端で身体を拭う百姓の女房の裸身を覗き見て、思わず突撃した大名は、減封国替の憂き目に遭うのだが…(「晩春の夕暮れに」)。小名から関白・将軍まで、選び抜かれたバカ殿たちが繰り広げる大狂宴。
あの頃の僕らは、誰かのヒーローになりたかった。クリスマスを目前に控えた階段島を事件が襲う。インターネット通販が使えないーー。物資を外部に依存する島のライフラインは、ある日突然、寸断された。犯人とされるハッカーを追う真辺由宇。後輩女子のためにヴァイオリンの弦を探す佐々岡。島の七不思議に巻き込まれる水谷。そしてイヴ、各々の物語が交差するとき、七草は階段島最大の謎と対峙する。心を穿つ青春ミステリ、第2弾。
密室殺人。犯人は、病気(アイツ)だ。呪いの動画によって自殺を図った女子高生。男性に触れられた瞬間、肌に異常をきたす女性。そして、密室で溺死した病院理事長の息子……。常識的な診断や捜査では決して真相にたどり着けない不可解な事件。解決できるのは、怜悧な頭脳と厖大な知識を持つ変人女医・天久鷹央(あめくたかお)、ただ一人。日常に潜む驚くべき“病”と事件の繋がりを解明する、新感覚メディカル・ミステリー第3弾。
娘時代に恋愛小説を読み耽った美しいエンマは、田舎医者シャルルとの退屈な新婚生活に倦んでいた。やがてエンマは夫の目を盗んで、色男のロドルフや公証人書記レオンとの情事にのめりこみ莫大な借金を残して服毒自殺を遂げる。一地方のありふれた姦通事件を、芸術に昇華させたフランス近代小説の金字塔を、精妙な客観描写を駆使した原文の息づかいそのままに日本語に再現する。
敗戦後の混乱はますます激しくなり、南部人が戦勝した連邦政府の圧政と解放された奴隷の横暴に苦しむ最中、スカーレットは、妹スエレンの婚約者フランクを横取りして再婚した。夫とともに製材所の経営に乗り出し、意外な才能を発揮するが、秘密結社KKKが結成され、フランクやアシュリも否応なく巻き込まれていく。スカーレットの周辺には、にわかに血の匂いが立ちこめ始めたーー。
コンプレックスとトラウマを抱え、恋愛を諦めていた遺伝子研究者の柴山と部下の松永。しかし柴山が恋に落ちたと知りショックを受けた松永は、ある仮説にとり憑かれ、失踪する。「愛は存在しない。恋人はDNAが決定している」。だが、単独で研究を進める彼の前に一人の女子学生が現れ…現役生物学者が描く、マッドでスウィートな理系ラブエンタメ。
寿永四年三月二十四日、平家七百艘、源氏六百艘ー両軍の船々は、愈々壇ノ浦で相まみえる。知盛と義経の攻防の中、阿波勢の動向や潮流の変化を機に戦況は源氏側へ有利に傾く。決定的となった敗北に、二位ノ尼に抱かれた安徳天皇をはじめ、経盛、建礼門院は次々と入水していく…。清盛の歿後わずか四年、平家は滅亡の時を迎えた。ついに命運尽き、波間に消えた平家一門の無常を描く第十七巻。