出版社 : 新潮社
妖怪レストラン「もず亭」の看板娘・蕗が誘拐された! 一報を受け、市村鉄之助始め沖田総司ら新選組が結集、救出に向かう。鉄之助のご先祖様・ぬらりひょん率いる妖怪軍団も作戦に参加し大騒動に。冷気を出す雪女、刀を振り回すカマイタチ。火の玉は炎を放ち、お歯黒べったりは逃げ回る……。姿を現した黒幕は新政府一のワルだった! 新選組が悪党をぶった斬る、書下ろし時代小説。
月刊誌記者として働く小坂井夏輝、31歳。取材先で中学の同級生・瀧光平と再会する。かつて周囲を見下していた瀧を夏輝は疎んじ、片や誰彼なく優しくする夏輝を瀧は偽善者と嫌っていた。だが次第に夏輝は瀧が抱える痛みを、瀧は夏輝の葛藤を知るようになる。過去を受け止め、前を向いて歩くために、二人はある行動に出る。逃げたくなる自分の背中をそっと押してくれる、優しい物語。
戦争末期の東京ーー空襲に怯え、明日をもしれぬ不安な日々を生きる十九歳の里子。母と伯母と女三人、杉並の家に暮らす彼女の前に、妻子を疎開させた隣人・市毛が現れる。切迫する時代の空の下、身の回りの世話をするうち、里子と市毛はやがて密やかに結ばれるが……。戦争の時代を生きる市井の人々の日常と一人の女性の成長を、端正な筆致で描き上げた長編文学作品。谷崎潤一郎賞受賞作。
土井利勝の讒言により父家康の怒りを買い、諏訪に流された松平忠輝。奸計を隠蔽するため、利勝は忠輝を亡きものにしようと、柳生十兵衛を刺客として諏訪に送る。一方、幕府転覆を企む海賊一味も、忠輝の附家老だった大久保長安の隠し金を狙い、諏訪へ。はたして難敵相手に、天海の命を受けた大道寺菊千代率いる大江戸七人衆は、忠輝の身を守ることができるのか?書下ろし時代小説。
腕っぷしは弱いが、見た目は役者と見紛うばかりのいい男。柳亭種彦は二百俵取りのお殿様で、暇を持て余す趣味人だ。その読み手を楽しませる才能を見込んだ版元の山青堂は、彼の戯作で一山当てようと目論む。渋々ながらも書き始めた種彦。すぐに戯作の虜になるが、世に出した作品がその身を危うくする…。実在した流行作家の若き姿と、本を愛おしむ仲間たちとの痛快な活躍を描く。
来たれ、難事件。依頼料は高校生割引1000万円! 「兄を探してください」と、一人の少女が訪れた。行方不明や素行調査の類は引き受けない探偵社だが、その青年の周辺で、エネルギー開発に携わる人物が相次いで失踪したことが判明。国家を巻き込む事件と予測した大神チームは、調査に乗り出す。そんななか、鏡(きよう)市(いち)の最愛の弟・辰(たつ)爾(じ)にも危険が迫る──特異能力を誇る4人の探偵を絶体絶命に陥れる闇組織、その驚愕の正体と目的ととは!?
両親を事故で亡くした女子大生・笹川唯は高額の報酬と引き換えに記憶消去薬「レーテ」の新薬実験に参加する。完全に閉鎖された施設で、天才科学者の監視のもと過ごす7日間。毎日記憶をリセットされる唯と5人の被験者たちだが、ある日目覚めると流血死体を発見してーー。どうしてこの手は血塗れなの……まさか私が、殺したの? 驚愕のエンディングに戦慄必至の記憶喪失ミステリ。
命からがら故郷〈タラ〉農園に帰還したスカーレット。しかし母は病死し、父はそのショックで自失していた。残された人々を率いて、この私が故郷を再建するほかない。この土地だけは誰の手にも渡さないーー! しかし南部の住民には苛酷な重税が課せられ、農園を売らなければならない危機の瀬戸際に。スカーレットは金策のため、自らをレット・バトラーに差し出す決意を固めたが……。
星がきれいなある夜、突然ウェンディの部屋に現れたピーター・パン。彼らは妖精ティンカー・ベルの魔法の粉を身体にふりかけ、ネバーランドへと飛び立ちます。行き方は、二つ目を右に曲がったら、そのまま朝までまっすぐ! さあ、海賊のフック船長、人魚、人食いワニが待つ大冒険の始まりです。永遠に年を取らない少年と、やがて大人になってしまう少女の、切なくも楽しい物語。
鬱々とした霧が今日も町を覆っているー。四方を山と海に囲まれ、古い慣習が残る霧ヶ町で、次々と発生する奇妙な殺人事件。その謎に挑む高校生の俺は、寺の小さな離れに独居してなんでも屋を営む、温厚な叔父さんに相談する。毎回、名推理を働かせ、穏やかに真相を解き明かす叔父さんが、最後に口にする「ありえない」犯人とは!常識破りの結末に絶句する「探偵のいない」本格ミステリ誕生!!年間ミステリ・ベスト10常連の奇才が放つ、抱腹と脱力の問題作。
人生もバクチも九勝六敗のやつが一番強いーー。そんなことを教えてくれた作家がいた。彼は途方もない屈託と優しさを抱えて生き抜いた。奇病、幻視、劣等感、孤絶、放蕩、芸能好き、人恋しさ、人嫌いーー無頼と称され、無比に優しい人とも呼ばれた作家が遺した、魂をさらけ出す私小説名品集。強靭で、懐の深い文章が紡ぎ出す、あざやかな人物造形と生々しい心象の数々。立川談志、嵐山光三郎との対談と、夫人へのインタビューを附す。全篇単行本初収録。
水を飲むように本を読む“私”は、編集者として時を重ね、「女生徒」の謎に出会う。太宰は、“ロココ料理”で、何を伝えようとしたのか?“円紫さん”の言葉に導かれて、“私”は創作の謎を探る旅に出るー。時を重ねた“私”に会える、待望のシリーズ最新作。
偉人たちの知られざる素顔。笑いと驚きに満ちた新しい歴史小説。華麗なる女性関係。泥沼の金銭トラブル。国々を股にかけての逃避行。思想家ヴォルテールとプロイセン王フリードリヒ二世の間には、恋にも似た熱い友情と、壮絶な駆け引きがあったーー。実在のできごとを丹念に追いながら、鋭い洞察と巧みな構成で偉人たちの姿を鮮やかに描き出す。ドイツのベテラン作家による、新しい歴史小説。
胎児のように手足を丸め横たわる全裸の女。周囲には赤、白、黄、色鮮やかな無数の折鶴が螺旋を描くーー。都内で発生した一家惨殺事件。現場は密室。唯一生き残った少女は、睡眠薬で昏睡状態だった。事件は迷宮入りし「折鶴事件」と呼ばれるようになる。時を経て成長した遺児が深層を口にするとき、深く沈められていたはずの狂気が人を闇に引き摺り込む。善悪が混濁する衝撃の長編。
陸上部の名物顧問が転勤となり、代わりにやってきたのは頼りない美術教師。部長の桝井は、中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを募り練習をはじめるが……。元いじめられっ子の設楽、不良の太田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介。寄せ集めの6人は県大会出場を目指して、襷をつなぐ。あと少し、もう少し、みんなと走りたい。涙が止まらない、傑作青春小説。
天下の悪法「生類憐みの令」やゆがんだ将軍継承方針など五代将軍綱吉の大義なき政の専横ぶりに御三家定府水戸光圀は憤怒を募らせる。綱吉の背後には、隆光権僧正の影がちらつく。家康との約定により、表の顔は古着問屋、裏の貌は隠れ旗本として徳川守護を五代百年に亘って精勤してきた鳶沢一族。将軍家か大義か、狭間に揺れる若き総兵衛勝頼を描く、新潮文庫百年特別書き下ろし作品。