出版社 : 新潮社
江戸時代初期、染物職人の小伜から武士になる野心に燃え、江戸へ出奔した久米与四郎(由井正雪)は、楠木流兵学を学び、修業の旅の末に島原へ向う。その明晰な頭脳を武器に、一揆制圧に加わる浪人たちの衆望を集めた与四郎は、浪人隊を結成し幕府軍の先鋒として活路を見出そうとする。しかし、そこには狡猾な罠がしかけられていた…。久米与四郎(由井正雪)は心に刻む、「浪人だって人間だ、浪人だって妻子を食わせなければならない。たとえ人足をしても生きてゆかなければならない、それがいけないとしたら、いったいどうして生きていったらいいのか」支配権力への抑えがたい怒りを胸に、徳川のゆるぎない天下に挑んだ由井正雪の壮絶な生涯を描ききる歴史大作!第一部、第二部を収録。場面が迫る、“脚注”の力。新しい感動、新しい周五郎。
間一髪で島原を脱出した与四郎(由井正雪)は江戸に戻り、兵学塾を開く。世評は高く、門人は二千人に及んだ。一方、幕府の浪人統制はさらに厳しさを増し、農民として生きようとする人々さえも追いつめてゆく。虐げられた者たちを救う道はあるのか。正雪は起死回生の策を練るが…。由井正雪曰く、「自分だけが満足すればいいという生きかたは誤りだ、最も多数の人たちと幸不幸をわかちあってこそ、人間らしい生きかたといえるだろう」歴史の裏側に隠された慶安事変の真実を焙りだし、史料の隙間に“人間”を発見した傑作長篇!第二部、第三部を収録。押し寄せる感動ー“脚注”で読む、新しい山本周五郎。
キスしようかと迷ったけれどしなかった、と言い、家まで送ってくれたジャーナリストに心を奪われ、幼子を連れてトロントをめざす女性詩人。片田舎の病院に新米教師として赴任した女の、ベテラン医師との婚約の顛末。父親が雇った既婚の建築家と深い仲になった娘と、その後の長い歳月。第二次大戦から帰還した若い兵士が、列車から飛び降りた土地で始めた新しい暮らし。そして作家自身が“フィナーレ”と銘打ち、実人生を語る作品と位置づける「目」「夜」「声」「ディア・ライフ」の四篇。引退を表明したアリス・マンローが、人生の瞬間を眩いほど鮮やかに描きだした、まさに名人の手になる最新にして最後の短篇集。
四国の山奥の村で、謎の連続老人失踪事件が発生した。容疑者となった父親の真実を探るべく、私は現場へと向う。だが、そこには歴史上最も凄惨な「人権蹂躙」の闇が立ち込めていた…。人間はどこまで残酷なのか。生きることに救いなどあるのか。長年の構想が結実した情念の巨編!血塗られた「差別」の狂気が、六十年の時を経ていま蘇るーノンフィクションの旗手が世に問う、慟哭の社会派ミステリー!
男と張り合おうとするな。みごとに潰されるから。祖母の残した言葉の意味は何だったのだろう。全力を注げる仕事を見つけて、ようやく彼に近づけたのに、和歌と仙太郎の関係は、いつかどこかでねじ曲がった。心血を注いだ渾身の長篇小説。
高校時代からの女ともだち三人も堂々たる五十代。動物園へ繰り出して語り合う、それぞれの近況、人生のあれこれ。孫もできる、恋もできる!思いがけない感情を発見しながらアクティブに生きる日々を軽やかに綴る長編小説。
撮影現場から姿を消した人気女優とあとを追う老俳優の、奇妙な逃避行。男の脳裏によみがえる、少年時代の禁断の恋。いくつかの曖昧な記憶が、思いがけず新しい像を結ぶー。思い出すたびに色合いを変える、遠い日の禁断の恋の記憶。ブッカー賞、フランツ・カフカ賞受賞作家による最新長篇。
もうすぐ還暦。だけど、まだまだ冒険したいし、恋もしたいー。友人の通夜で出会った未亡人の千春に惹かれてしまった弘一郎。「カレセン」だという二十代の亜紀子と心を通わせるバツイチの敏雄。同級生のマドンナに頼まれ、探偵の真似事をするはめになった憲幸。年齢を重ねても、決して尽きない悩みと欲望。枯れない男たちの姿を優しく洒脱に描き出す六つの名短編。
謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていたーー。彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。道東の開拓村で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に奉公に出されるが、やがては旅芸人一座に飛び込んだ。一方、妹の里実は道東に残り、理容師の道を歩み始めた……。流転する百合江と堅実な妹の60年に及ぶ絆を軸にして、姉妹の母や娘たちを含む女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。
腰を痛め、サーカスの花形から事務職に転身し、やがて自伝を書き始めた「わたし」。どうしても誰かに見せたくなり、文芸誌編集長のオットセイに読ませるが……。サーカスで女曲芸師ウルズラと伝説の芸を成し遂げた娘の「トスカ」、その息子で動物園の人気者となった「クヌート」へと受け継がれる、生の哀しみときらめき。ホッキョクグマ三代の物語をユーモラスに描く、野間文芸賞受賞作。
悠木和には“謎”があった。小田桐、野田、望月が塾帰りに立ち寄るハンバーガーショップでの話題は、いつも彼女のこと。可愛いえくぼ、颯爽とした振る舞い、抜群の知性、あだ名付けの微妙なセンス、そして“謎”。「事件の匂いがする」-三人の前に史上最低の探偵が現れた!新潮文庫編集部を騒然とさせた美少女と三バカトリオによる、青春前夜の胸キュンおバカミステリの大大大傑作。
闇の黒猫。水際立った手口で大金を奪い去る盗賊は、いつしかその異名で呼ばれていたー。腕が立ち、情にも厚い定町廻り同心・朽木勘三郎と、彼に心服する岡っ引たちは、商家の盗難騒動、茶問屋跡取り息子失踪事件を鮮やかに解き、いよいよ江戸の闇夜に跋扈する「黒猫」の正体へと迫ってゆく…。文芸評論家・縄田一男氏に大器と絶賛された、野口卓、入魂の書き下ろし時代小説。
子供たちしか知らない秘密。岬の崖の下に石造りの家があって、魔法使いが「おもいで質屋」を営んでいた想い出を担保にお金を貸してくれるという。でも二十歳までに取り戻さないと想い出は返ってこない。中学生の里華は、魔法使いと出会ってすっかり仲良しになり、共に青春の季節を駆け抜けてゆく。やがて二十歳を迎えた時…。きらきらと胸を打つ、あの頃が蘇る魔法のストーリー。
初めて恋人との正月を迎える貫多。だが些細な行き違いから険悪な雰囲気になり、大晦日の夜ついに爆発する。二人の新生活に垂れ込める暗雲の行方はー『寒灯』。いくら邪険に扱っていようと、秋恵への気持ちは微塵も変わっていなかった。しかし暴言や暴力は続き、ついに彼女は去ってゆく。そのあとに残されたものはー『腐泥の果実』。他二篇を収録する私小説集、待望の文庫化。
最高ってなんて最高なんだろう。僕らはいつも最高だ。明日またくる朝。浅漬ー。現実から目を逸らし、表層的なハッピー感に拘泥する表題作「ゴランノスポン」。自らの常識を振り翳す人間の暴力性を浮かび上がらせ、現実に存在する歪みを描く「一般の魔力」。現代と中世が書物を介し烈しく混ざり合う「楠木正成」他、秘蔵小説7編を収録。笑いと人間の闇が比例して深まる、傑作短編集。
京の錦市場で忽然と姿を消した桜子としげの消息は依然として知れないままであった。総兵衛は御堂に篭りひたすら思念を送り続ける。じりじりとした時間が過ぎていく中、総兵衛の奇計に薩摩の密偵が二人引っ掛かったのだが…。一方、江戸では、大黒屋へとつながる秘密の地下道を探り当てた元同心池辺三五郎が不穏な動きを見せ始めた。京と江戸、切迫する二つの危難、会心の第七巻。
都市伝説サイト「よろいち」に“おひとりさま”の怪情報が届く。夜道で「火を貸してくれ」と声を掛けられ、断ると身体に火をつけられるというもの。そんななか、火の気のない場所で女子高生の身体が燃える事件が!被害者は奇しくも事務所の社長・輝一の知人の教え子。そして単身調査に乗りだした恵は、輝一の意外な過去を知るのだが…。信頼の絆を失ったチーム、絶体絶命か!?
警察庁警備局公安課内に密かに組織された“次世代犯罪情報室”。その中枢をなすのは、人の死を予知するクロノスシステム。爆破テロ、切り裂き殺人、毒殺ー次々と予知される殺人計画の裏には、恐るべき企みが隠されていた!捨て身の情熱×クールな頭脳。興奮度200%UPの新シリーズ始動!
最愛の娘が家出した。どこへ?クリスマスに父が贈った童話の中へ。父は小さな娘を探すため小説世界へともぐりこむ…。残酷でキュート、愛に満ちた冒険譚。第25回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。