出版社 : 早川書房
銀行の金庫室に長年眠っていた大量の録音用蝋管。それは大恐慌下の1934年、検察官トム・フレッシュアワーが遭遇した事件の記録だった。当時、彼はアマチュア考古学者レイニーとともに遺跡発掘品収集家の首なし死体が発見された事件を捜査していたのだ。真相を追う彼らの前に次々と発生する凄惨な殺人と発掘品盗難。その末に浮かびあがる驚くべき事実とは?情感溢れる筆致でサスペンスフルに描く、アメリカ図書賞受賞作。
経営難に陥った学園に校長として赴任したホーソン。性的虐待や薬物濫用で傷ついた子どもが通う学園を再建すべく、彼は改革に乗り出すが、反発する教師たちとの対立は深まっていく。そんな折り、放火で妻と娘を失った彼の悲惨な過去が何者かの悪意で暴かれ、ある教師の部屋が侵入者に荒らされる事件が起きる。やがて、ホーソンのもとに亡き妻をかたる女性から執拗な電話が!その時から、校内を死の影が覆っていく…。
首吊りにされた猫の死骸、学内の臨床心理士の自殺。さらに、プールでは首を鋭利な凶器で刺された男子生徒の死体が発見された。季節は酷寒の冬を迎え、学内で不穏な空気が高まっていく。そして吹きすさぶ雪で学園が外界と隔絶した時、女子生徒に魔手が迫り、ホーソン自身にも危険が!心に癒せぬ傷を負った人々が織りなす、悲哀に満ちた人間ドラマ。『死せる少女たちの家』の著者が、人間の心理を抉った渾身のサスペンス。
まいった。大学教授で作家のグレイディは危機に瀕していた。書いても書いても原稿が完成しないのだ。そのうえ妻には逃げられ、愛人からは妊娠を告げられる始末。そこへ破滅型の担当編集者クラブツリーがやって来て、事態はさらに混沌としてきた。ひょんなことから、彼はクラブツリーと変わり者の教え子ジェイムズと共に狂乱の週末を過ごす羽目に…書くことに取り憑かれた人々の狂騒をシニカルに描く、ポップ・ノヴェル。
ジョージ・マクティアは、番組制作会社のプロデューサー。16,575ドルという破格の週給を得る彼は、苦労のすえ、新番組の契約をとりつけた。妻のリジー・ジンバリストは、ソフトウェア会社の社長。自社株を売却するため、マイクロソフトと交渉を重ねている。家族で過ごす時間が限られた二人は、Eメールを交わして子供たちとコミュニケーションをとる。慌ただしい一日のあと迎える二人だけのわずかな時間。秘密はいっさい持たないけれど、互いのビジネスには干渉しない-これが夫婦の信条だ。そんな二人に衝撃が走る。ジョージの母の事故死、リジーの父の容態の急変。二人は会社で用意してくれたジェット機で、斎場から病院へと駆けつける。そして、心を休める暇もなく、次の仕事に奔走するのだった。帰路、ホテルの部屋で一人悲しみにふさいでいたジョージは、夫婦で共有しているコンピューターを立ち上げた。誤って開いた妻のファイルには、彼の上司のファーストネームが。突然持ちあがった妻の不倫疑惑。彼の日常を揺るがすこの事件は、世紀の変わり目までつづく混乱の序章にすぎなかった…。舞台は2000年2月28日から2001年年明けまでのニューヨーク。時代の最先端に立つ夫婦を通し、現代社会の断面が鮮やかに描かれる。21世紀を迎えるまでを現在進行形で体験できる画期的小説。
グッキーはリバルド・コレッロの協力を得て、超心理実験を敢行した。肉体から精神をきりはなしてエネルギー生物のハルノを探そうというのだ。実験は成功し、5週間後に意識をとりもどしたグッキーは驚くべき事実を告げた。ハルノは大群に捕らえられており、その大群は銀河の星々の強奪を企図しているというのである。驚愕したローダンはネズミ=ビーバー率いるコマンドを大群内部に潜入させることをついに決意したが…。
「期限切れの倉庫から出てきた品物に興味はありませんか?あなたに関係した品物のようですが」ある朝キンジーのもとにかかってきた一本の電話が、とっくの昔に封印したはずの思い出を甦らせた。埃まみれの箱の中身は、彼女自身の卒業証書、写真、古い手紙、洗面道具、テープレコーダー…そう、この品々はキンジーが最初の夫、ミッキー・マグルーダーと別れた時、彼のもとに残してきたものだ。当時は優秀な警察官だったミッキーだが、キンジーと離婚した後、職を失い、どこで何をしているのかは彼女も知らなかった。いや、知りたくもなかった。だが、箱の中にあった一通の手紙をきっかけに、キンジーは別れた夫を捜そうと決意する。今は疎遠となった、かつての同僚、友人を辿るキンジー。しかし、十五年振りのミッキーとの再会は、彼女が予想もしない状況で果たされることになった…。キンジーの語られざる過去、最初の夫の秘められた生活、そして明らかになる、二十年前の謎の事件-ミステリ界のトップランナーが贈る、人気シリーズ最新作。
87分署のすぐそばの公園で若い娘の絞殺体が発見された。キャレラは娘がメアリーという修道女だと突きとめるが、不審な点が次々と浮かんだ。修道女だというのに豊胸手術を受けていたこと、質素な生活を送っていながらいつも金銭的に困っていたこと…敬虔で看護婦としても優秀だったメアリーには驚くべき秘密が?一方、マイヤー・マイヤーたちは、犯行後にクッキーを置いておくことから“クッキー・ボーイ”と呼ばれる空巣の捜査に追われていた。そして誰も知らないところでは、キャレラの父親を殺した男が密かにキャレラの命を狙っていた。
年一回のバザーの準備中、アニーの友人の女性が失踪した。心配で胸がいっぱいのなか、バザーの運営メンバーが撲殺体で発見され、当の女性に殺人の容疑が!なぜ彼女が殺人現場に?被害者が残したメモをもとに、アニーは町の住民の秘密を探るが…友人の無実を信じ、ミステリの知識を駆使してアニーが謎に満ちた殺人の真相に挑む、好調シリーズ第九作。
かつては共産主義者の同志として、そしてなによりも深い愛情で結びついていた夫婦バーナードとジューン。なぜ、彼らは突然破局を迎えたのか?私は義理の両親にあたる二人の人生に強い興味を抱き、回想録にまとめるため、独自に真相を探りはじめた。二人から話を聞くうち、やがて彼らが袂を分かった背後に“黒い犬”の存在があったことが判明する。犬の姿を借りた“悪”に出会い、すべてが変わったと主張するジューン。悪の象徴など、ジューンの妄想にすぎない、と一笑に付すバーナード。“黒い犬”は実際に存在したのか?それともジューンが生みだした想像の産物なのか?私は彼らの人生を影のように覆う“黒い犬”の真実を追究するが…。ヨーロッパ戦後思想史を背景に、鬼才が夫婦の魂と愛の軌跡をサスペンスフルに描く。イギリスでベストセラーを記録した、ブッカー賞作家による注目の長篇。
“ゴノツァル”とアルマナ級輸送艦10隻はポスビの中央世界、二百の太陽の星近傍で立ち往生していた。中央プラズマから着陸を拒否されたのだ。それだけでなく、テラ駐留部隊が住む太陽都市サンタウンとの連絡もとれない。中央プラズマが窮地に立っていると判断したローダンはアトラン、フェルマー・ロイド、そして新たに発見された女性ミュータント、イルミナ・コチストワとともにみずから二百の太陽の星に潜入した…。
地球をめぐる巨大な軌道スタジオに再現されたLAのセットで、レプリカントとブレードランナーのデッカードの死闘が撮影されていた。だが、みずからの伝記映画のアドバイザーとして撮影に立ち合っていたデッカードの目の前で、敵を演じていたレプリカントが本当に射殺されてしまった!やがて、謎のブリーフケースを受け取ったデッカードは、レプリカントの反乱をめぐる複雑怪奇な陰謀の渦中へとまきこまれていくが…。
“エンタープライズE”を率いるピカード艦長は、謎のウイルスに侵された惑星の封鎖任務中、ウイルスの発生源についての手がかりをつかむ。これは宇宙連邦内部からの攻撃だ!そう悟ったピカードが艦首を向けたのは惑星ヴァルカンだった。サレックの暗殺者を追及するスポックと、ウイルス蔓延の首謀者を追うカークとピカード。三人は奇しくもヴァルカンに集結する。そして、彼らの追う敵はひとつだと判明したとき…。
グレースは心の優しい女性だ。恋人と別れたいけれど、相手を悲しませたくない。だから、仕方なく殺してしまうのだ。一方、グレースを偶然見かけた殺し屋のサムは彼女に恋心を抱き、監視するようになる。そして彼女の殺人の手際のよさに思いをつのらせていく。やがて、グレースが三人目の恋人を殺した時、グレースとサムは運命の出会いを…殺人癖のある女と一匹狼の殺し屋の危険な恋を描くブラックな味わいのサスペンス。
ダム工事のため湖底に沈む山里の村で、相次いで二人の少女が失踪した。村は騒然となり、警察も乗りこんでくるが、少女たちの行方は杳として知れない。そのうえ、最有力容疑者と目された青年ベニーも忽然と姿を消し、真相は村とともに湖底に消えた…そして十五年後、村人の大半が移り住んだ町で、ふたたび少女失踪事件が起きた。そして、町のあちこちには“ベニーが帰ってきた”の落書きが!またしても悲劇が繰り返されるのか-十五年前の捜査で無念のほぞを噛んだダルジール警視は雪辱に燃えあがった。執念の捜査が暴く、衝撃の事実とは。
元俳優で警備員のスコットは、映画会社から調査を依頼された。話題の新作映画の脚本家バートが共産主義者だと指摘する手紙が届いたため、密かに差出人を突きとめてくれという。が、製作発表パーティの夜、バートが他殺体で発見された。殺人と手紙の関連を探るスコットは、事件の裏に潜む醜悪な人間関係に突きあたる…赤狩り旋風が吹き荒れるハリウッドを舞台に、男たちの哀愁が浮かびあがる情感豊かなハードボイルド。
16世紀英国。幽閉中の王女エリザベスは、伯母が何者かに命を狙われていることを知り、密かに脱出した。が、駆けつけた直後、伯母は毒を盛られて殺されてしまう。哀しみのなか、男装して身分を隠したエリザベスは犯人を追うが、彼女の身辺にも危険な罠が!陰謀渦巻く時代、勇気と気品を兼ねそなえた若き日のエリザベス1世が、果敢に謎に挑む本格ミステリ。
猫はきらいだ。家は持たない。群れることもない。女性にはやさしい。若者には時にきびしい。人間には頼らない。そして困っているものはぜったいに見過ごせない。義侠心に厚く、自立して生きる犬のローヴァーが出会う、都会の片隅の、心に残る小さな出来事。
第二次大戦も終盤を迎えようという1944年。守勢に立たされたドイツ軍の最大の関心事は、大々的な反攻を企む連合軍のフランスへの上陸地点の特定だった。折りしも、国防軍情報部は有力な情報を入手した。ロンドンで、反攻に関する極秘計画“マルベリー作戦”が動きだしたという。早速、潜入工作員キャサリンに、機密奪取の指令が下った!一方、ドイツの動きを察知した英国情報部も、全力をあげ工作員割り出しにかかる。