出版社 : 早川書房
農夫のラルフが悲鳴を聞きつけて階下におりてみると、そこには胸に包丁を突き立てられ、血まみれになったゲイの弟ジョナサンが横たわっていた。-殺人の容疑で逮捕されたラルフの弁護を引き受けたホープは、犯行現場から立ち去るのを目撃された黒ずくめの男の行方を追った。さらに、被害者の交友関係をたどってカルーサのゲイ社会を調べて歩くホープの前には、過去の意外な事実が…。家族の悲劇を描くシリーズ第八弾。
休暇から戻ったわたしを待っていたのは、相も変わらぬ仕事の山。なかでも厄介事は、友人の写真屋ウェイドの愛犬を殺した犯人を探しだすことだった。やがて、ウェイドが謎の人物に依頼され、密かにポルノ写真の現像を行なっていた事実が判明した。事件解決の糸口を見つけるため、わたしはその人物の正体を探るが…奇想天外なアイディアを武器に、ポルノ絡みの難事件に立ち向かう私立探偵ヴィクターの抱腹絶倒の大活躍。
世界でもっとも恐れられているテロリスト、アンリ・カゾー。元ベルギー陸軍特殊部隊員の彼は、若い頃、米兵から性的虐待を受けたため、病的なまでにアメリカを憎んでいた。カリフォルニアで武器取り引きの最中、連邦捜査官の急襲を受けたカゾーの一味は、輸送機L-600で逃亡をはかった。州兵航空隊のF-16戦闘機が急追するが、カゾーらはサンフランシスコ国際空港の上空で、輸送機に積まれていた爆発物を投下して逃亡に成功、空港は火の海と化し、数百の死傷者が出た。これをきっかけにアメリカの防空態勢の不備に目を付けたカゾーは、今こそアメリカへの復讐を果たす絶好の機会と判断し、続けざまに第二、第三の空港襲撃を実行、相次ぐ大惨事の恐怖に全米はパニックに陥る。これに対し、大統領の意を受けた元沿岸警備隊管区司令官ハードキャッスルは防空態勢の再整備に乗り出した。だが、そのころカゾーは、湾岸戦争でもすさまじい威力を発揮し、核兵器を除けば最も恐ろしいと見なされている航空攻撃兵器、燃料気化爆弾を入手し、究極の目標、ホワイトハウスへの攻撃準備を着々と進めていた…。
久しぶりの休暇を満喫していたわたしのもとに、家主のヘンリーが相談を持ちかけてきた。数カ月前、心臓発作で急死した近所の老人ジョニー・リーの遺族のため、知恵を貸してくれというのだ。第二次世界大戦中に戦闘機パイロットとして活躍したジョニーを軍人墓地に埋葬しようとしたが、軍には彼の在籍記録は残っておらず、途方に暮れているという。わたしはジョニーの昔の仕事仲間とともに彼のアパートを調べるが、彼が軍に在籍していた証拠は見つからない。ジョニーは嘘をついていたのか。その直後、彼のアパートが何者かに侵入され、さらに、部屋の隠し金庫のなかから古びた鍵が発見された。謎が深まるなか、ある夜わたしは一人の男がアパートからバッグを持ち出す現場を偶然目撃する。わたしは男の後を追うが、それが、行方不明の莫大な金の在り処を探す長い旅の始まりになるとは知る由もなかった。
天性の政治家、南部小州の民主党知事ジャック・スタントンと聡明で野心的なその妻スーザンは、長年共和党に占められてきた大統領の座をねらって、予備選出馬を決意する。が、出馬そうそうつぎつぎと襲いくるメディアの猛攻撃-録音テープ付きのセックス・スキャンダル、妊娠騒動、ヴェトナム反戦逮捕歴、徴兵忌避-にさらされる。おかげでスタントンの名は全国的に知られるようになるが、支持率は低下の一方。しかも、有力な対立候補の健闘、より強力な新対立候補の出現と、スタントン陣営は息つぐひまもない。あいつぐ危機に沈没寸前のスタントン陣営は、ついに強力な秘密兵器、スキャンダル潰し専門の“ゴミ掃除人”まで投入するが…。
敵対宇宙種族「ハイヴ」の主力をなす巨大球体船がついに発見された。だが人類とムルディニは微妙な戦争観の相違から敵を目前に対立、ライアン家の次男ロジャーは功を焦ったムルディニ側艦長の命に背いて殺されかけ、失踪してしまう。かけつけたローワンたちは孫息子を救えるのか。そして人類は「ハイヴ」を打ち破ることができるのか…類まれな能力に恵まれた一族の、銀河を股にかけた活躍を描くシリーズ待望の完結篇。
第三眼を額に持つカミス人。かれらは人工衛星カミスに住み、事象制御装置により、惑星リンボス上で社会を営むリンボス生物を制御している。カミス中央機構の理論士イシスは、詩人である弟のアシリスに恋していた。けれども、カミスでは姉弟の恋は禁じられている。イシスは事象制御装置を使って、自分たちの恋を正当化できる世界のシミュレーションを開始したが…日本SFの先端を疾駆しつづける神林長平の意欲的大作。
世界を“時間”“実現事象”“可能事象”の三次元として表現する事象理論の発明者にして犯罪者であるバールが、理論士イシスのリンボス世界(=地球)でのシミュレーションに干渉してきた。北極圏に近い寒村センティシス、ニューデリー、ロンドン、そして日本の各地で、イシスと恋人である弟のアシリス、バールたちは、名前と外見をさまざまに取り替え、自らの目的を達しようとするが…神林SFの最高峰、待望の文庫化。
結婚するときはどれだけ愛していても、死がふたりをわかつまで、と誓いあっても、さまざまな事情から別れざるをえないこともある…みずからも離婚経験のあるD・T・ジョーンズは離婚専門のしがない弁護士。酒とギャンブルが好きで、時間にはだらしないが、弱きを助け、悪をくじく気持ちはだれにも負けない。そんなD・Tの扱う、さまざまな事件と、彼をめぐる人間模様を軽妙なタッチで描きだす、傑作ラブ・ストーリー。
米国中西部ウィスコンシン州の田舎町。吹雪の夜に、湖畔の森をスノーモービルで駆け抜ける「アイスマン」。コーン・ナイフを片手にラクール一家の住む白い家へと接近していく。まず、父親フランクを、次にその妻クローディアを殺し、最後に一人娘の少女リサを生きたまま切り刻んで殺害。そして、なぜか家に放火して立ち去った。全焼した現場を訪れたルーカス・ダヴンポート。警察を辞めたあとフリーの立場で異常殺人の捜査を手伝っている。今回はオジブウェー郡の保安官シェルダン・カーが応援を求めてきた。ダヴンポートは現場検証で出会った女医ウェザーに心惹かれるものを感じる。「アイスマン」はある写真を捜していた。全裸の少年がベッドでポーズをとり、前景には太った中年男の腰から下が写った写真で、その少年は2ヵ月前に殺されていた。秘密を暴露しかねないその写真はラクール家にあるはずだった。しかし写真は見つからず、「アイスマン」は一家を皆殺しにしたあげく、写真の存在を消そうと家に火を放った。タヴンポートの聞き込み捜査が進み、事件の鍵をにぎる写真の存在に気づくと、今度は、ダヴンポートと接近しはじめた女医ウェザーが「アイスマン」に狙われはじめた。…「アイスマン」とは果たして誰なのか。そして連続殺人の背後にある意外な真実とは。-小さな閉鎖社会における異常な犯罪者の心理状態を鮮やかに描く「獲物」シリーズ最高作。
弁護士D・T・ジョーンズの事務所に、突然夫から離婚を求められた女性マレスがやってきた。次に酒乱で乱暴者の夫と別れたいという、若く魅力的なウェイトレスのルーシンダが依頼にくる。さらには、離婚後に難病のせいで生活が苦しくなった中年の女性患者エスターのために看護婦リタが相談にくる。ひきもきらない依頼と難問に東奔西走し、現在の恋人と別れた妻のあいだで、右往左往する弁護士の活躍を描く、傑作長篇小説。
「人類統合体」の攻撃をようやく逃れたラフィールとジントだったが、不時着した惑星クラスビュールは、すでに敵艦隊に占領されていた。帝国に戻る手段を失った二人は、味方の艦隊が戻るまで、この地に潜伏しなければならなくなった。だが、宇宙空間では無敵だったアーヴの王女も、地上では、世間知らずの少女にすぎない。立場が逆転したジントは、王女を守って行動を開始した。-新時代のスペースオペラ、堂々の完結篇。
「メアリー、メアリー、すごいへそ曲がり。どうしてあなたの庭はよく茂るの。銀の鈴やら貝殻や、かわいい少女が一列に…」有名なマザー・グースの一節は、あたかも三週間前に起きたショッキングな事件を予見していたかのようだった。メアリー・バートンという名の元教師が、いたいけな少女三人を殺害し、自宅の庭の花壇に遺棄した容疑で逮捕されたのだ。彼女の教え子の依頼でマシュー・ホープは弁護を引き受けるが、当のメアリーは容疑を否定するだけで、なぜか多くを語ろうとしない。その上、死体を埋めているのを目撃したという隣人や、血のついた服を預かったというクリーニング屋も現われて、状況はますます不利になっていく。はたしてホープは、万全の構えを見せる検察側を切り崩すことができるのか。息もつがせぬ法廷シーン、円熟の語り口。シリーズ中もっともエキサイティングな展開を見せる第10作。
3953年。人類はワームホール・テクノロジーの開発により、着々と版図を拡大しつつあった。ところが、太陽をはじめとする主系列星に思わぬ異常が発見された!恒星の進化過程が何百倍にも加速され、恐るべきスピードで銀河が老化しているのだ。このままでは、遠からず宇宙は死滅してしまう!この異変の謎を探るべく、最新鋭の宇宙船「グレート・ノーザン」が、ワームホールを利用して五百万年後の未来へと旅立つが…。
未来の太陽系に到着した「グレート・ノーザン」の一行は、太陽の中に住まう女性リゼールから驚くべき事実を告げられた。恒星を抹殺しているのは、人類とは全く異質な暗黒物質生命だというのだ!これに対抗できるのは宇宙の支配的種属ジーリーのみ。かくして一行は一縷の望みを託し、宇宙の彼方にあるジーリーの拠点、謎の建造物「リング」へと赴いた…!ハードSFの気鋭が驚異のタイムスケールで描く、未来史の集大成。
21世紀初頭、全世界に蔓延したウイルスにより、人類は死滅寸前にあった。地表をおおいつくした死のウイルスをさけ、密閉された地下都市で生活するわずかに生き残った人々。科学者たちは、ひとりの男に人類が生きのびるための一縷の希望を託して、鍵を握る時代ーすべてがはじまった1996年へと送りこんだ。そこで彼がつかんだ巨大な謎…“12モンキーズ”とは?知られざる兵器か?秘密の軍隊か?それとも…。
タムール帝国の騒乱の陰にいたのは、戦の神シルゴンだった。シルゴンと対等にわたりあうための道はただひとつ、薔薇の形のサファイア、ベーリオンの力に頼ることだけ、恐るべき破壊力を秘め、この世で神以外にはスパーホークだけしか触れられぬ魔石、ベーリオン。世に災いをもたらさぬため、かつて女神アフラエルによって神の手も人の手も触れぬところに隠されたこの魔石を、スパーホークはふたたび手にすることに…。
第二次世界大戦末期、ドレスデン空襲で焼失したとされるクールベの名画「石割り人夫」。この世界的名作が、戦後五十年近くたって突然、現われたという。ロンドンの画商オズワルド・ギンは、名画を売りたい人物がいるとの情報を旧友から入手。だが、その旧友は突然の死を遂げてしまう。オズワルドは謎の売手を探し、ナチの残党が隠れ住む南米へ飛ぶが…。英国の鑑定人が歴史の闇に消えた至宝の謎に迫る宝探しミステリ。
ガブリエル・デュプレは、モンタナの牧場で牛の出荷を管理する焼き印検査官。ある日、山中で発見された軽飛行機の残骸を調べに赴いた彼は、そこで三体の人骨を見つける。が、奇妙なことにそのうち一体は手と首が切り取られており、当時の記録から乗員は二人だったことも判明する。首なし死体はいったい誰のものなのか?調べを進めるデュプレは、数十年前に端を発する悲劇に突き当たる。西部の大自然を背景に描く注目作。
新時代を迎え、英国情報部をリストラされたティム・クランマーは、叔父から遺された屋敷に引退し、年若い愛人エマと優雅な日々を送っていた。同じく引退した元部下のラリーも近くの大学で教鞭をとっていた。ラリーはパブリック・スクール時代からの友人で、彼が二重スパイとして育て上げた男だった。ところが、クランマーの目の前で、エマとラリーは運命的な恋に落ちた。そして、クランマーの屋敷を警察が訪れた。ラリーが失跡し、その前に怪しげな外国人と接触していた、と告げ、クランマーとの関係を執拗に追及した。ラリーは、なんと元KGBコントローラーと組んで、ロシア政府から巨額の金を詐取したらしい。いったい何のために。クランマーには寝耳に水の話だったが、情報部も上司だった彼の関与を疑っていることがわかった。そしてエマも、ラリーとともに姿を消していた。愛人を奪われたうえ苦しい立場に立たされたクランマーは、自ら二人を追い、真相を探りだそうとする。官憲の手を逃れ、パリへ、モスクワへ、戦火のカフカズ山脈へ-冷戦後、さらに混迷を深める世界をさまようスパイたちの魂を、比類ないサスペンスのうちに描ききる。