出版社 : 早川書房
1980年代後期。FBIニューヨーク支局で捜査官として働くマリーは、黒人女性であるがゆえに能力を発揮する機会を与えられずにいた。そんな時、ブルキナファソの共産主義政府の弱体化を狙うCIAから、若き革命家トマ・サンカラにハニートラップを仕掛ける役目を言い渡される。自身の才能ではなく容姿を買われたのだと悟りつつも役目を引き受けたマリー。そして、さらにハイリスクな任務の見返りとして、幼少期から共にスパイに憧れて育った姉の謎の失踪について鍵を握る人物との接触を約束される。しかし、国民のための改革を推し進めるサンカラの人柄を知るほどに、任務に対する信念は揺らぎ始め…。舞台はアメリカ、ブルキナファソ、そしてマルティニークへ。史実を元に冷戦の知られざる一面を描き出すスパイ小説。
カムチャツカの街で幼い姉妹が行方不明になった。事件は半島中に影を落とす。2人の母親、目撃者、恋人に監視される大学生、自身も失踪した娘をもつ先住民の母親……女性たちの語りを通し、事件、そして日々の見えない暴力を描き出す、米国作家のデビュー長篇
1995年、ピッツバーグ。O・J・シンプソン事件の裁判の行方が全米で注目され、人種間の緊張が高まるなか、青年ボビーは秘密を抱えていた。それは、白人として生きる彼に黒人の血が流れていること。その彼の前に、白人至上主義者に変わり果てた旧友アーロンが現れ、ある黒人青年に対し傷害事件を起こす。期せずして旧友の逃走に手を貸してしまったボビーは捜査に怯え、さらには出自をアーロンに悟られまいと苦悶する。そんなとき、黒人である死んだはずの父親が姿を現しー。人種問題の核に迫るクライム・ノヴェル。
〈氷と炎の歌〉で描かれる世界の300年前、東方のヴァリリアからドラゴンを従えてウェスタロスを征服したエイゴン一世に始まるターガリエン家の治世を綴った年代記。原書を二分冊・2カ月連続刊行。本書を原作にした米ドラマ「House of the Dragon」が製作中
着ぐるみだ。一応、犬ということになる。チョッキーという名もついている。中に入った人は、商店街の映画館でかかる映画タイトルの刷られたチラシを配る。ただそれだけの存在だったー3人が中に入るまでは…滝田徹は、小学生の頃に突然愛犬を失くした。今の仕事に意義を見出せないが、チョッキーの中に入ると守られている気持ちになった。水谷佳菜は、日常生活において「右」を選択する頑なな習慣に縛られていたが、チョッキーの中にいる間は普段なら怖くて出来ないことも出来そうな気がした。兵頭健太は、女に追われている身だったが、チョッキーに入れば逃げてばかりの人生が変わる気がした。3人は、それぞれ自分であることの意味を、ゆっくりと、でもーたしかに見出してゆく。人生の岐路にたった時、進む道を照らしてくれる、温かな物語。
18世紀フランス、ルイ16世の御代。ヴェルサイユ宮殿のアパルトマンで、パリ・オペラ座の演出家を務めるブルジョワジーが何者かに殺害される。現場に残された血の伝言と、遺体の手に握られた聖書の謎とは。知性あふれる公妃&カタブツ陸軍大尉のコンビが挑む!
破壊された村にやってきた主人公とその管理下のロボット「雪怪」が小型機械車と出会った顛末を描く「戦車の中」ほか、AIをめぐる物語6篇と2篇のエッセイを収録。劉慈欣『三体』に続き、中国にヒューゴー賞をもたらした「折りたたみ北京」著者による短篇集
真面目な看護師コレデはうんざりしていた。美貌の妹アヨオラが、今日もまたその彼氏を殺してしまったのだ。これで三人目。コレデは死体を処理するが、次第に警察の捜査が姉妹に迫り……。ナイジェリアの新星が描くブラックユーモアと切なさに満ちたサスペンス
癖があり頑固だが、ときにやさしく勇敢なオリーヴ・キタリッジ。老境を迎えた彼女の日々と、海岸沿いの町クロズビーの隣人たちの悲喜こもごもをつづった傑作ぞろいの13篇を収録。ピュリッツァー賞を受賞した傑作『オリーヴ・キタリッジの生活』11年ぶりの続篇
〈氷と炎の歌〉で描かれる世界の300年前、ドラゴンを従えてウェスタロスを支配したターガリエン家を綴った年代記。デナーリスの三代前の当主による征服から150年間を描く。原書を二分冊・2カ月連続刊行。本書原作のドラマ「House of the Dragon」が製作中
ニューヨーク州の山地にそびえ立つホテル・ネヴァーシンク。大統領も宿泊に来る人気ホテルだが、子どもが行方不明になる事件がたびたび発生していた。どうやら経営者一族の抱える秘密が関わっているらしい。洋館ホテルを舞台に展開するミステリと家族の年代記
廃止予定の宇宙停留所には家族の住む星へ帰るため長年出航を待ち続ける老婆がいた……冷凍睡眠による別れを描き韓国科学文学賞佳作を受賞した表題作、同賞中短編大賞受賞の「館内紛失」など、疎外されるマイノリティに寄り添った女性視点の心温まるSF7篇!
1960年代アメリカ。アフリカ系アメリカ人の真面目な少年エルウッドは、無実の罪により少年院ニッケル校に送られる。しかし校内には信じがたい暴力や虐待が蔓延していたーー。実在した少年院をモデルに描かれた長篇小説。ニューヨークタイムズ・ベストセラー。
札幌方面西方警察署刑事課勤務の鈴木勢太は小樽市で交通事故に遭い、目覚めるとーーロボット掃除機となっていた。こんな姿になっても義父からDVを受けて勢太が保護していた姪を護らなければいけない! 卓抜な着想で選考委員達を驚嘆させた掃除機ミステリ。
海面上昇が進んだ近未来。北極圏にあり、深海熱水噴出孔の上に建てられた洋上巨大建築物クアナークは高度なAI群に統治されている都市だが、感染病ブレイクスが街に暗い影を落としていた。この街で囁かれるのは、動物に対する特殊な力をもった女性がオルカとホッキョクグマを伴ってやってくるという噂。その噂は住民をざわめかせるー大富豪の孫でブレイクスを発症したゲイのフィル。政治家のもとで働くアンキット。八百長を重ねるファイターのカエフ。街を憎む美しきメッセンジャーのソク。人々の運命を巻き込み、街はかつてない事態に突入していく。キャンベル記念賞受賞の、新時代の黙示録。
郊外の町ミラクル・クリークの治療施設で火災が発生し、二名が命を落とした。1年後、はじまった裁判は、施設の経営者一家、その患者、関係者たちの秘密を明らかにする……。エドガー賞最優秀新人賞&国際スリラー作家協会最優秀新人賞二冠、心揺さぶる傑作。
かつては伝説のレコード店主、いまや哀愁のカウチサーファー。五十路の男ヴェルノンがたずね歩く旧友たちの心にも、90年代の輝かしい記憶が響きつづけるのであった。パリの片隅で生きる人々の哀しさと滑稽さを音楽が彩る、現代版・バルザックの『人間喜劇』。
自国第一主義による地球温暖化は終局を迎え、人類の生存域が北欧地域に限られた2060年代。グーグルによる個人データの完全な可視化は、人間から共感という能力を失わせていた。そんななか、アイスランドで暮らすトランスパランス(透明性)社の元社長が、個人データを人工的な体に移植し、不老不死を可能とする“エンドレス・プログラム”の準備を進めていた。それは、“考えること”を放棄した人類への最後の抵抗にして、ささやかな願いだったー仏のドゥ・マゴ賞受賞作家が放つ、この現在の先にある、不可避な未来への警告。