出版社 : 早川書房
愛は水面の光のように刻々とその姿を変える。若い男と子連れの女、美しい男と醜い女-。アン・タイラー、ラッセル・バンクスなど、現代アメリカ作家が描く同時代の愛。
アメリカ東部の大都市フィラデルフィア近郊の、閑静な学園地区メイン・ラインの一角で女性の全裸死体が発見された。スーザン・ライナート、39歳、高校教師。一緒にいたはずの子供たちの姿は消えていた。捜査線上に浮かんできたのは、高い学歴のインテリばかりだった。ビル・ブラッドフィールドは、博識で、詩人の魂をもつといわれるカリスマ的な英語教師だったが、そのストイックな言葉と裏腹に、何人もの女性と結婚やら同棲をし、複数の恋人までいた。彼らの校長、ドクタ・スミスは変態性欲者で、また窈盗癖があった。この二人に疑惑の目は集中した。倫理なき社会病質者の犯罪を描き、そこにうごめく人間心理の不可思議に鋭く迫る、ウォンボー渾身のノンフィクション。
ブルボン王朝の支配する19世紀の南イタリア、シチリアとおぼしき王国にある孤島の牢獄。国王暗殺の陰謀に加担したため死刑を宣告された4人の男たちが、翌朝のギロチン刑を前に恐怖にふるえ、最後の夜をすごしている…。コッラード・インガフウ男爵-熟年。〈現人神〉をリーダーとする地下組織に入って以来、国に対する破壊活動の過激分子となる。サリンベーニ-40代、自称詩人。アジェラシオ-30歳、兵士。ナルチーゾ-年齢不詳、学生。当局は一味の影のリーダー〈現人神〉をつきとめようとするが、彼らはどんな拷問にも屈せず、嘘をつらぬき通している。そして処刑前夜、城塞刑務所の総督がやってきて、〈現人神〉の素姓を明かせば恩赦も認めようともちかけた。4人はこの取引を拒絶したものの、死を前にした動揺は激しく、残された5時間を有意義にすごすため、“デカメロン”のように各人が順を追ってそれぞれの人生を語りはじめた…。計算しつくされた物語はこび、みごとな文学空間…極限状況下の人間の真実と嘘を鋭く追求し、今世紀のイタリア文学を代表する作品とまで絶賛された傑作。ストレーガ賞受賞。
自分の主催するロック・コンサートを妨害する者の正体を突き止めてほしい-大物プロモーターのシーガルに招かれて、彼の自宅で開かれていたパーティに出かけていった私立探偵ジェイコブ・アッシュは、その場で依頼を受けた。だが、事件はその直後に起きた。パーティで振る舞われていたコカインを吸った落ち目のロック・スターのクーニイが急死したのだ。コカインは何者かによってヘロインとすり替えられていた。これもシーガルに対する嫌がらせのひとつなのか?それとも、はじめから、奇行で知られ、業界内に多くの敵を作っていたクーニイを狙った計画殺人だったのか?アッシュはクーニイの身辺をあらいはじめるが、なぜか彼と関係のあった人間はつぎつぎと謎めいた事故死を遂げていった…!ドラッグに彩られた頽廃のロック・シーンを舞台に、アメリカン・ドリームの光と影を描いた著者の自信作。
オフィスは相変わらず閑散としていたが、私立探偵サムスンの胸は期待に膨らんでいた。テレビで“昔ながらの探偵”として紹介されたのだ、きっと山のような依頼が…依頼は二件あった。そのうちの一件は、インディアナポリスの有名な銀行家ダグラス・ベルターとその妻ポーラからで、つい最近、ポーラの出生証明書が偽造されたものであることが判明したので、その理由を調査してほしいという依頼だった。サムスンは50年前の記録を調べ、ポーラが実は養子だったことを突き止める。ポーラが養子にもらわれた背景には、いったいどんな事情があったのか?やがて、過去の調査を続けるサムスンの前に驚くべき真相が浮かび上がってきた。人びとの記憶の片隅に埋もれていた過去の悲劇を叙情的に甦らせる、知性派ハードボイルドの最高作。
考古学者にして無類の冒険家インディ・ジョーンズは、ナチスの暗雲たれこめるヨーロッパをめざした。伝説の聖杯と行方不明の父を探しだすために。ニューヨーク、ベニス、ベルリン、トルコ…。海陸空を縦横無尽に駆けめぐるインディの大冒険。驚異のSFXと息もつかせぬ展開で世界を熱狂させるルーカスとスピルバーグの傑作映画原作。
無生物にとって神とは何か?この命題をいとも軽快に描きあげるイアン・ワトスン「アミール時計」、放射能で汚染された雨の降る近未来を舞台に、母娘の愛憎を情感豊かに歌うタニス・リー「雨にうたれて」、人跡未踏の惑星で探険隊が発見するものは…マイクル・ムアコック「凍りついた枢機卿」、相対性理論がもたらす“ウラシマ効果”にブライアン・オールディスがひねりのきいた結未をつける「キャベツの代価」など、本邦初紹介の新鋭から、さらに円熟味を増した大家まで、今日のイギリスSFを代表する作家の傑作中短篇14篇を収録。
義勇軍と帝国軍、そして黄の修道僧軍団が三つ巴の戦いをくり広げているとき、タリオンは義勇軍の根拠地コメルチに帰還した。妖魔を滅ぼす唯一の武器、女神サンディーヌの母親の遺灰と共に。タリオンを迎えたレヴィ王女ら義勇軍の人々は喜びにわく。しかしその頃、最前線ではフォルタの娘サルティーが帝国のヴァンクリフ将軍の手に落ち、命とひきかえの降伏を迫られていた。それを知ったタリオンは一散に敵陣へラダを駆る。いまや義勇軍の闘士となったフリオも後を追う。将軍の示した刻限にはもう幾許もない。果たしてサルフィー救出はなるか!?
母さんを失くした、ぼくたちの家に、魔法のようにやってきた電子おばあさん。料理の腕は最高で、凧をあげれば天まで届く。暗く沈んだ我が家の空気も、元のように明るくなった。でも姉のアガサだけは、どうしてもおばあさんに心を開こうとせず…。子守りロボットと子供たちとの心暖まる交流を描く表題作ほか、願いが何でもかなう火星の都市を訪れた地球人たちの不思議な体験「火星の失われた都」、ディケンズと名乗る奇妙な男と少年のひと夏の物語「ニコラス・ニックルピーの友はわが友」など、ブラッドベリが優しく歌いあげる珠玉の短篇集。
幼い頃に別れた父親から突然届いた一通の手紙。それがロンドンで平凡に暮らす息子ジャックの生活を一変させた。手紙によると、父は死刑囚として南アフリカ共和国の刑務所にいるという。いったい何が起きたのか?調査を開始したジャックは、やがて意外な事実を知る。父はSISの工作員で、南アフリカの反政府組織内で情報収集中、爆弾事件に関わり公安警察に逮捕されたのだった。SISが見殺しにすることを知ったジャックは、手製爆弾を使って独力で父を救う決意をするが…。反アパルトヘイト運動に揺れる南アフリカを舞台に描く冒険サスペンス。
あとで後悔するわよ、といったヴィッキーの声が弁護士ホープの耳を離れなかった。かつての人気ロック歌手だったヴィッキー。その復帰リサイタルの夜、ベッドを共にしたホープを、彼女は異常なほど執拗に引きとめた。浴室でそのむごたらしい撲殺死体が発見されたのは、翌朝だった。しかも一人娘が現場から連れさられていた。警察は被害者と最後に会ったホープへの尋問を皮切りに捜査を開始したが、一方自責の念に駆られたホープも自ら事件の渦中に踏み込っていく。グリム童話を下敷きに、莫大な富を生んだ女をめぐる歪んだ人間関係を描く意欲作。
2度目のハネムーンだと喜んで出かけたパリで、パツィー・ベルマンは死んだ。なぜか、夫妻の車に爆弾が仕かけられていたのだ。妻を失ったロジャーの悲しみは大きかった。事件は折りしも頻発していた爆弾テロの一つと判明したが、ロジャーはやがて、恐ろしいことに気づいた。妻の姉、弁護士、彼の秘書までが、莫大な財産を相続することになった彼を、妻殺しの犯人だと疑っているらしい…。小さな疑惑が皮肉な結末を招く上記アン・モリスの「列車で出会った若い男」をはじめ、サイモン・ブレッド、B・M・ギルらの傑作書き下ろし短篇11篇を収録。
60年代最高と謳われたロックバンド〈パーセプションズ〉の元メンバーが、なぜ殺されることになったのか。自宅のヴィデオに映っていた女の1人から恐喝を受けていたらしいのだが、その女も男友達も、さらには事件を追った同僚刑事も、やがて同一拳銃で殺された。しかし、事件はこれで終わったわけではなかった。送られてきた犯行声明文にあるロックンロールの亡霊とは何者か?またその動機、目的、そして最終標約とは?ロサンジェルスのショービジネス界を舞台に左利きの刑事ニッキー・ラフマニノフの執念の捜査を情感豊かに描く最新大作!
町の厄介者ジョーイを妻の愛人が射殺したのは本当に正当防衛だったのか?ジョーイの老父の執拗な抗議に警察署長バルジックは事件の再捜査を始めた。やがて彼の前に、捜査の不手際と被害者の意外な素顔が浮かび上る…。北東部の田舎町を舞台に、卓越した会話と人物造形で独自のリアルな小説を作り上げる、アメリカ探偵作家クラブ賞ノミネートの秀作。
人生に退屈を感じはじめた口腔外科医ドク・アダムズは、友人のリアティス・ローンティスの頼みに心が動くのを感じた。ある戦友を見つけ出す手助けをしてくれというのだ。ヴェトナム戦争当時、ローンティス指揮下の特殊作戦部隊、〈デイジー・ダックス〉がある村の危機を救った礼として、黄金のシヴァ神像をローンティスはもらい、副官のヴィラードと山分けすることにした。ところが、最近になって香港の銀行の保管庫に預けてあったその像を二人で受け出そうとしていたところ、突然ヴィラードが行方不明になってしまったというのだった。〈デイジー・ダックス〉の男たちを探るドクの冒険が始まった!『ケープ・コッド危険水域』『幻のペニー・フェリー』に続く、アドベンチャー・スピリットと遊び心に溢れるサスペンス長篇。
すぐにきてほしい-秘書ペギーからの伝言に胸騒ぎを覚え、彼女のアパートメントに急行した私立探偵のジョン・タナーが発見したのは、足を挫いてソファに横たわるペギーの姿だった。タナーを見ると、彼女は段階から突き落とされたといい、弱弱しくつぶやいた。「彼がこんなことをするとは思わなかった…」“彼”とは、毎晩ペギーに電話をかけ、脅迫を交えながら、彼女に猥褻な話を強要する男のことだった。男は、まるで一部始終を監視しているかのように、彼女の日常生活から人間関係までを知り尽くしていた。タナーは、ペギーの身辺から調査を開始するが、なぜかペギーは調査の協力に消極的で、いつしか二人の間には溝が生じていた。そして、そんなペギーの態度を見透かしたように犯人は要求をますますエスカレートさせてきた…!