出版社 : 早川書房
惑星ウェレルとその植民地惑星イェイオーウェイ。激しい戦争ののち、イェイオーウェイは高度な文明を有する宇宙連合エクーメンの手を借りて新しい歴史を歩みつつある。老女ヨスは、裏切り者となったかつての英雄アバルカムとの邂逅に救いを見いだす(「裏切り」)。エクーメンへの加盟を目指すウェレルの小国を訪れた使節ソリーは、祭りの日にさらわれ、この地の真実をかいま見る(「赦しの日」)。SF界の女王が圧倒的想像力で人種、性、身分制度に新たな問いを投げかける“ハイニッシュ”世界の四つの物語。ローカス賞受賞作。
ストックホルムで女性の刺殺体が発見された。交際相手の男は服役中だったが、事件当夜は仮釈放されていた。警察は男が犯人と確信するが、ヴァネッサ警部の元に「彼は殺していない」と訴える女性が現れる。ネットで蠢く「インセル」が現実社会に牙を剝く暗黒ミステリ。
私の母は掃除婦をしながら四人の子どもを育て、障がいを持つ夫を支えた。厳しくも誇り高い母からは、勉学に励み、正しく生きることを強要されてきた。だが私は、貧しさや不条理におしつぶされ、母の厳格さにも息苦しさを覚え、鬱積した心の闇から、次第に暴力的な衝動に駆られていくー。湖畔の町で10代から20代を過ごした少女、ガイアの内面をつぶさに描き、カンピエッロ賞を受賞、ストレーガ賞最終候補となった傑作長篇、待望の邦訳。
一九四四年、ヒトラーによるナチ体制下のドイツ。密告により父を処刑され、居場所をなくしていた少年ヴェルナーは、エーデルヴァイス海賊団を名乗るエルフリーデとレオンハルトに出会う。彼らは、愛国心を煽り自由を奪う体制に反抗し、ヒトラー・ユーゲントにたびたび戦いを挑んでいた少年少女だった。ヴェルナーらはやがて、市内に敷設されたレールに不審を抱き、線路を辿る。その果てで「究極の悪」を目撃した彼らのとった行動とは。差別や分断が渦巻く世界での生き方を問う、歴史青春小説。
セイディはゲーム作りを学んでいるMITの学生。才能はあるものの、なかなか周囲からは理解されない。ボストンでのある寒い冬、セイディは幼馴染でハーヴァード大学に通っているサムに再会する。二人は昔、ロサンゼルスの病院の待合室で一緒に“スーパーマリオブラザーズ”をプレイした仲だった。セイディに、ゲーム制作の天賦の才を見出したサムは、一緒にゲームを作ろうと彼女を誘う。苦労の末、二人ではじめて完成させたゲーム“イチゴ”は瞬く間に成功を収め、二人は一躍ゲーム界の寵児となる。だが、自分の作りたいゲームを制作したいセイディと、商業面でのプロモーションに長けたサムは、次第に溝を深め、すれ違いを重ねていき、二人の仲は雲行きが怪しくなっていく。そんな中、セイディとサムをある悲劇が襲うが…。ゲーム制作を通してつながった男女の30年近くにわたる友情の物語。英語圏100万部突破。
被災地を巡るダークツアーを企画するヨナは、収益の低いツアーを査定するよう命じられ、ベトナム沖の島に向かう。滞在中ヨナはひき逃げ事件を目撃してしまい、謎の一味に加わるよう脅される。彼らは、新たなダークツアーを「捏造」しようとしていた。パスポートを失くして出国できないヨナは、滞在許可証を入手するため仕方なく計画に加わる。やがてツアーの全貌が明らかになり、「捏造」の恐るべき真実が発覚するが、もう計画から抜け出すことはできなくなっていて…。ダークツーリズムの闇を描く韓国ミステリ。
推理作家E・A・スミスの生前の記憶や感情を備えた複生体のE・A・スミス。彼は図書館に収蔵され、書架に住む“蔵者”である。このたびスミスは、図書館間相互貸借の制度によって、海沿いの村の図書館に送られた。そこで母親と暮らす少女チャンドラに借り出された彼は、何年も前に姿を消した彼女の父親探しを頼まれる。解剖学教授の父親は革装の本を残しており、その本には極寒の氷穴がある“死体の島”の地図が貼りつけられていた…。そんななか、スミスは図書館で自身の古い“版”の死体を発見するが!?巨匠ウルフの未完の遺作となった、『書架の探偵』続篇のSFミステリ。
人より何十倍も遅い時間の中で生きる姉への苛立ちを抑えられない妹の葛藤を描く「キャビン方程式」、幻肢に悩まされ三本目の腕の移植を望む恋人を理解したい男の旅路を追う「ローラ」--社会の多数派とそうなれない者とが、理解と共存を試みる人生の選択7篇
ニューヨークの名門出版社ワーグナー・ブックスで、編集アシスタントとして働く26歳の黒人女性ネラ。いつかは名作を送り出したいと夢見ているが、昇進は遠く、恵まれた白人ばかりの同僚の無神経さに苛立つ日々だったー隣の席に、職場で二人目の黒人女性、新人のヘイゼルがやってくるまでは。黒人女性としての自信と問題意識を持つヘイゼルとなら、手を取り合って出版界に蔓延する差別や偏見と闘っていけそうだった。しかし喜びもつかの間、トラブルが起きてネラの評価は下がる一方、うまく立ち回ったヘイゼルは上層部に目をかけられるようになる。落ち込むネラに追い打ちをかけたのは、「ワーグナーを去れ」と告げる手紙だった。誰が書いたのか?畏怖される編集長か、怒らせてしまった作家か、不満げな上司か。それとも、得体が知れないヘイゼルか?皮肉と風刺に満ちた、お仕事小説にしてスリラー。
190センチの高身長が目立つ、元弁護士の私立探偵・須賀大河の元に、ある日、学生時代の友人で現在は有名IT社長の春山から、社内に貼り出された会社を誹謗中傷する怪文書の調査依頼が舞い込む。中傷はやがて大金を要求する脅迫に発展。大河は春山の秘書やハッカーの友人の協力で犯人に罠を仕掛けるが、行く手には思わぬ悲劇が…著者のハードボイルドへの熱き想いが結実した正統派私立探偵小説登場!
オーストラリア内陸の町リバーセンドの教会で、牧師が銃を乱射し五人を殺害する事件が起きた。一年後、町へ取材に訪れた新聞記者のマーティンは、住民が牧師を庇う証言をすることに気づく。だが、町外れに住む男だけは、住民の言葉を信用するなと警告するのだった。そんな中、山火事が町を襲い、火災現場からかつて行方不明になった観光客の他殺体が発見される。この事件にも牧師が関わっていたのかー?牧師の過去と、彼が事件を起こした真の理由とは。英国推理作家協会賞最優秀新人賞受賞作。
1954年、アメリカ。18歳のエメットは更生施設を出所し、弟が待つネブラスカの自宅に戻って来たが、そこには施設から逃げ出したダチェスとウーリーもいた。エメットと弟は、母が暮らしているはずのカリフォルニアに行き、心機一転、新しい生活を始めるはずだった。だが、ダチェスとウーリーに愛車のスチュードベーカーを奪われ、仕方なく二人の後を追ってニューヨークに行くことに。ダチェスは、上流階級出身のウーリーの一族がニューヨーク州北部に所有する屋敷の金庫の金を、みんなで山分けすると豪語していたのだ。孤児院のシスター、胡散臭い牧師、妻と別れた善良な黒人男性、売れないシェイクスピア俳優、憧れの作家ー道中、エメットと弟は多くの出会いと別れを経験する。『モスクワの伯爵』著者が、少年たちの出会いと10日間の冒険を描く、アメリカで100万部超のニューヨーク・タイムズ・ベストセラー。
飛行機は、わたしの一部で飛ぶことは、世界のすべてだった。1950年、地球一周飛行挑戦中に消息を絶った女性飛行士。2014年、その飛行士を演じることになったハリウッド女優。残された航空日誌が繋ぐ、二つの人生の円。英国最高峰ブッカー賞最終候補作。
大正の京都。伯爵の血筋でありながら一族に忌み嫌われる露木の病弱な体は、日々蝕まれていた。だが祇園祭の宵山も盛りの頃、露木は鯉城に出逢う。頑強な肉体の彼が外の世界を教えてくれたから、心が救われた。その時から、露木は鯉城のために謎を解く。それが生きる証…ある日、鯉城は女から恋人のふりをしてほしいとの依頼を受けるが、恋に取り憑かれた相手の男が月夜に女の家に付け火をし、自らに火をつけて焼死したと聞く。男は猟銃を所持していたが、なぜ苦しい死を選んだ?この事態に悩む鯉城のため、露木はあまりに不可思議な男の死の理由を推理する。その他「鹿ヶ谷の別荘に響く叫び声の怪」や「西陣の老舗織元で起こる男女の愛憎劇の行方」など、京都に潜む愛と欲の情念はさらに渦巻き、鯉城と露木の二人は意外な結末に直面する。『刀と傘』で「ミステリが読みたい!」ベストミステリ1位を獲得した著者が仕掛ける、驚愕必至の連作本格探偵ミステリ。
第5子を妊娠中のアンドレアはニュージャージー州郊外に住む専業主婦で、かつてはFBIの優秀なプロファイラーだった。殺人事件の現場に偶然出くわしそこで末っ子がお漏らしをしてしまったことをきっかけに、彼女は落ち目のジャーナリストのケニーと調査を開始する。50年前に地元で発見された骨と今回の事件との関連に気づいた彼女は、隠された町の秘密に迫る。やがて明らかになったのは人種差別をめぐる暗い過去だった。「いまはイケてない」探偵コンビが郊外の町で犯人を追い詰めるオフビートな痛快ミステリ。
2020年。パンデミックのさなか、会社を解雇されたジェイミー。たまたま再会した昔の知りあいの紹介で「大型動物」の権利を守る組織とやらに雇われて、急遽、「現場」に向かうことに。だが、ジェイミーが連れていかれた先は、なんと並行世界の地球「怪獣惑星」だった!保護する動物とは、体長150メートルの「怪獣」!?驚きながらもジェイミーは、「怪獣保護協会」の一員として、巨大怪獣の生態を研究し、ある事情から絶滅の危機に瀕しているという彼らを保護する任務にとりかかる。だが、組織への資金提供者として地球からやってきた億万長者が怪獣を悪用しようとしたため、怪獣惑星と地球に危険が迫る…!“老人と宇宙”シリーズで知られるアメリカSF界の第一人者スコルジーがあふれんばかりの怪獣映画愛を注ぎこんだ傑作怪獣SF。
2003年1月、パリ。著者アンヌの母のもとに差出人不明のポストカードが届けられた。メッセージ欄には、アンヌの祖母の両親と妹と弟の名前だけがあった。4人は1942年にアウシュヴィッツで亡くなっていた。誰が、なんのために61年の時を経てこのポストカードを投函したのか。調査を続けるうち、著者の母方の一族の知られざる過去が明らかになる。ロシア革命から逃れ、東欧やパレスチナを経てパリに安住したものの、その後ナチスにより離散したユダヤ人一家と、一人だけ生き残った祖母。なぜ祖母だけが強制収容所への移送を免れ、生き延びたのか。著者の母のもとに実際に届いたポストカードから、あるユダヤ人家族の苦難の歴史をひもとく、フランスの高校生が選ぶルノードー賞とアメリカの学生が選ぶゴンクール賞受賞の感動の長篇小説。
チート&使命なしから逆転した転生令嬢カレンと彼女と共に数奇な人生を歩む人々の物語は、まだ終わらない!国家と世界を揺るがした波瀾万丈の物語の裏側や脇道でいったい何が起こっていたのか?WEB掲載や書店限定特典SSなど、単行本未収録の短篇が一堂に集結!さらに、電子書籍特典イラストギャラリーも!書籍特典として書き下ろし短篇×2本収録。