出版社 : 早川書房
1920年代、ニューヨーク。投資家ベンジャミン・ラスクは、冷徹無慈悲な読みでニューヨーク金融界の頂点に登り詰める。一方、妻のヘレンは社交界で名声をほしいままにするが、やがて精神に支障をきたす。一世を風靡した夫妻の、巨万の富の代償とは一体何だったのかー。こうして1937年に発表され、ベストセラーとなった小説『絆』。しかし、ここに描かれた大富豪夫妻には、別の記録も存在していた。『絆』への反駁として大富豪が刊行しようとした自伝『わが人生』。『わが人生』を代筆した秘書の回想録『追憶の記』。そして、大富豪の妻の死後発見された日記『未来』。夫妻を全く異なる視点から描く四篇を読み進めるうち、浮かび上がる真実とは…。ブッカー賞候補になり、カーカス賞を受賞し、2023年にはピュリッツァー賞を受賞。ニューヨーカー、タイム、エスクァイア他、多くの媒体のベストブックに輝き、オバマ元大統領も絶賛した、現代アメリカ文学の最先端が贈る長篇小説。
ベルリンで同性の恋人を殺した陳天宏は、刑期を終えて台湾の永靖に戻って来る。折しも中元節を迎えていた故郷では、死者の霊も舞い戻る。天宏の六人の姉と兄、両親や近隣の住民。生者と死者が台湾現代史と共に生の苦悩を語る、台湾文学賞、金鼎賞受賞の長篇
国際的な投資家・鷹栖祐二を刺殺した容疑者は、新興宗教「一真行」の元信者だった。マインドコントロールが疑われ、NCSC(国家総合安全保障委員会)兵器研究開発セクションの井澗紗理奈と、テロ対策セクションの弓削啓史は、心理学者の山咲岳志のもとへ。
スミソニアン博物館勤務の鳥類画家ロニはフロリダ州テネキーの実家で「ボイドの死について話したい」というメモをみつける。ロニの父ボイドは25年前に沼地で謎の溺死を遂げていた。ロニは父の死の真相を追うが、背後には湿地に囲まれた田舎町の大きな闇が……
バッサムはパレスチナ人。ラミはイスラエル人。二人の住む世界は隔絶していた。だが、バッサムの娘がゴム弾の犠牲になり、ラミの娘が自殺テロに巻き込まれて亡くなったとき、二人の男の人生が交錯し始めるーー。実話に基づいて描かれる中東和平版千夜一夜物語
激動の大塩平八郎の乱──大坂から脱出し、江戸に潜伏する泡界坊。ここでも不正を許せぬ心に火がついた。公方様御側衆の土田新吉郎が、将軍のおぼえめでたいのをかさにきて利権をめぐって悪行三昧。泡界は新吉郎を破滅させるため、類例のない大胆な策を講じる!
遠未来、変貌した人類が異星人と果てしのない戦いを繰り広げるさまを壮大なスケールと美しいヴィジョンで描く「鏖戦」。月コロニーでの、壮絶かつ衝撃的な実験を描いた「凍月」。2022年11月に逝去したベアを追悼する、ハードSFの代表中篇2篇を収録した一冊
1926年12月3日、『アクロイド殺し』などで注目を集める気鋭の作家アガサ・クリスティーが失踪した。ときにアガサ、36歳。最愛の母親を亡くし、夫のアーチーは年若い下流階級の娘ナンと愛人関係にあって、ひどく落ち込んでいたという。そして失踪当日の朝、離婚を切り出した夫と大喧嘩をしたアガサは、夫と幼い娘テディの乳母に手紙を残して、煙のように姿を消した。捜索には延べ数千人の警官が動員されたが、アガサは一向に見つらず、夫による殺害と遺体遺棄まで疑われたー11日後、ホテル滞在中に発見されるまでは。一方、アガサからアーチーを略奪したナンは、ある秘密を抱えていた…不可解な失踪のあいだ、アガサとナンに何が起こったのか?世界で最も有名ナミステリ作家の実際の失踪事件をもとに描かれた衝撃のサスペンス。
ヴィオレットはブルゴーニュの小さな町の墓地管理人。墓参者がいなくなった墓まできれいに手入れしている。ある時、一緒の墓に入ると決めた男女の存在が、彼女の人生を大きく揺るがすことに──フランスで130万部突破。別れの場所で輝く生を描く感動の長篇。
ヴィオレットが管理する墓地は美しい。通路には樹齢百年になる菩提樹が並んでいて、多くの墓が花で飾られている。誰も訪れなくなった墓が淋しく見えないよう、ヴィオレットが花を手向けているから。墓地管理人の仕事は、そこに眠る者たちの世話をするということなのだ。ある日、ジュリアンという警視が母親の遺言をもって突然やってきた。母親が、家族には秘密で愛人と同じ墓に入ると約束していたのだという。50歳を間近にして、何度も絶望に襲われ、新しい人生をあきらめていたヴィオレットにとって、この男女の物語は大きな衝撃を与える。花が新鮮な水で生き返るように、彼女の人生もまだ終わってはいないのだ、とー。
K県見幸市を統治する佐久間種苗を襲った細菌テロは、100名超の研究員を殺害する。事件を追う高層民のコチ、国境警備隊の来未、元刑事の尾藤の前に立ち塞がる「アブソルート・コールド」とは?『プラ・バロック』の著者が、令和日本に放つサイバーパンク巨篇
1936年、ロンドン。高名な心理学者リーズ博士が、自宅の書斎で何者かに殺されているのが発見された。現場は密室状態。凶器も見つからず、死の直前に博士を訪れた謎の男の正体もわからなかった。この不可能犯罪に、元奇術師の探偵ジョセフ・スペクターが挑む。
人生に疲れた40歳のファウストは、長年暮らしたミラノを離れてイタリアンアルプス近くのレストランで働き始める。山に囲まれ次第に人間らしさをとりもどしていたとき、狼たちが山からおりてきていたーー。ストレーガ賞受賞作家が描く、人生やり直し山岳小説。
ある輝かしい夏の日。生物化学の研究をする大学院生のウォレスが夏のすべてを費やした線虫の培地に、カビが生えていた。ウォレスはただ、笑った。数週間前に父が死んだ。心配してくれる友人たちをよそに、ウォレスはこれっぽっちも悲しみを感じなかった。感情と向き合うことを避けていた中、同級生の同性の友人と一夜を共に過ごした。ウォレスの中に眠っていた過去のトラウマ、温もりへの渇望が目を覚ましたー。ニューヨーク・タイムズ紙ほか、欧米の各紙誌で年間ベストブックに選出。デビュー作にしてブッカー賞最終候補作となった注目の一冊。
ひと月前に大学へ長期休暇を申請して以来、一切の連絡がつかない黒猫。付き人は唐草教授の頼みで、失踪直前に彼の研究室を訪ねた四人の来訪者ーー元歌手、俳優、現代画家、廃墟写真家を調べることに。黒猫は何の目的で彼らと会ったのか? そしてその行方は。
いま最も注目される作家の初SF作品集。真実の愛を証明できる「回樹」をめぐる、ありふれた愛の顛末。骨の表面に文字を刻む技術「骨刻」がもたらした、特別な想い。すべての映画には魂があった。「BTTF葬送」への抵抗の物語。人間の死体が腐らない世界で、あるテロリストが達成した「不滅」。奴隷制度下のニューヨーク、白人と黒人と宇宙人の融和は「奈辺」?回樹に愛を託した人々は、年に一度の「回祭」を催していたー。誰も思いつけないアイデアと、誰でも思いあたる感情の全6篇。
かつてのベストセラー作家ジェイコブは、どうしても新作を書けずにいた。小説創作講座で教えるだけの日々に鬱々とし、受講生のエヴァンに怒りと嫉妬の炎を燃やしていた。授業を受ける意義がないとうそぶきながらも、彼の語る小説のプロットは素晴らしいものだったからだ。その三年後、ふとしたことからジェイコブはエヴァンが死んだことを知る。彼は、エヴァンが自分に語ったプロットを盗用して小説を書くことを決意する。かくして、新作『クリブ』はべストセラーとなるが、そこに何者かから脅迫メールが届き…
フランスの地方に暮らす幸せな一家。ある日、第三子が重い障がいを抱えていることが分かった。長男はかいがいしく第三子の世話に明け暮れるが、長女は彼の存在に徹底的に反発する。障がいのある子どもが誕生した家庭の心の変化を、静謐な筆致で描く感動長篇。
チートなし使命なしの転生令嬢だったカレンは、過酷な運命を乗り越え、無二の魔法使いとなって皇子ライナルトの皇位簒奪を助けた。そんな彼女のささやかな願いは、密かに慕うライナルトの隣に座ること。だが、皇太后クラリッサが仕掛けた罠に、カレン最大の危機が迫っていた。数奇な人生の物語、堂々完結。書籍特典として書き下ろし短篇×2本収録。
1973年、ブラジル西部のマット・グロッソ州。無慈悲な人体実験に関与したナチスの生物学者ヨシアス・マウラーを追跡するべく、当地へと赴いたユダヤ人の文化人類学者アラン・スナプスタインと医師のベン・バーネイズは、先の大戦での祖国敗北を否認する日本人移民・通称“カチグミ”の残党を追う日系人青年ヒデキ・ジョアン・タテイシと行動を共にすることになった。旅の果ての月夜、アランとタテイシは奇怪な刺青の少女を目撃するが、それは生命と精霊が二重写しとなる、濃密にして猥雑な世界との遭遇だったーアマゾンに奇怪な陰謀劇を構築する、バイオテクノロジーSF×幻想文学。第10回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作。