出版社 : 早川書房
社長のロイドに、女性パイロットのマージ、そして、かなりガタのきた恒星間宇宙船+シャトルのアルフェッカ号ーそれが銀河の零細企業・ミリガン運送のすべてだった。愛機の修理費を稼ぐため、惑星ヴェイスへと向かったロイドとマージ。だが、その軌道は『大戦』の負の遺産である機雷原に覆われていた。それを突破して地表へと降下するには、優秀なナビゲーターが不可欠だったが…傑作ハードSF活劇いよいよ開幕。
中高一貫の私立校で英語を教える女性、和田留奈。単調な生活に退屈し、孤独を感じていた彼女は、16歳の教え子、池田純と関係を持っていた。そんな彼女のもとにある日、差出人不明の封書が届く。中から出てきたのは、「殺してやる」と書かれた手紙と、純といっしょにラブホテルから出てくるところを写した一枚の写真。スキャンダルになることを恐れた留奈は、上海の友人のもとに逃れるため、姉のパスポートを盗み、姉になりすまして神戸からフェリーに乗った。同じ頃、イギリスで小さな画材店を営むラルフは、理想の女性を探すため東京に来ていた。彼は東洋の女性はやさしく従順だと考えていて、タイの女性と結婚したが、破局を迎えていた。結局、東京でも理想の相手は見つからず、彼はインターネットで知り合った中国の女性に会うため、フェリーに乗った。運命の糸に導かれるように、同じフェリーに乗った留奈とラルフ。やがて二人が出逢ったとき、恐ろしい結末に向けて、歯車が静かにまわりはじめた…。英国推理作家協会賞最優秀新人賞受賞作『アースクエイク・バード』に続き、気鋭の作家が放つ極上の心理サスペンス。
ロンドンの喧噪を避け、アイルランドの田舎を旅する男は、地図上のとある場所に興味をいだく。宿の主人の警告にもかかわらず、引き寄せられるようにその場所へたどりついた男は、不吉なたたずまいの村を発見した。そのときから、男の身に奇怪なできごとがふりかかりはじめる-。『吸血鬼ドラキュラ』の作者、ブラム・ストーカーを、アイルランドの作家として再評価しようという運動に応えて誕生した、ヴァンパイア・ストーリー4篇。ケルト伝説を下敷きに、ゴシック的荘厳とサイコ的狂気を加味した、正統にして異端なる恐怖、ここに降臨。
夢を見ない理由、死体に似た街、腐敗してゆく自分、地下室で蠢く父、時の王国におわす神、娼婦工場の太った女、演歌と神秘主義の密接な関係、妄想を媒体にする言語人形-現実の皮が剥がれたときに見え隠れする幻覚妄想恐怖戦慄神秘奇蹟を、ヒステリーの治療過程に見立てて並べてみせた、凄絶作品集。『傀儡后』で宇宙的悪夢を描いて日本SF大賞を受賞した牧野修が虚空の果てに見いだした、厳格なる十三の知恵に耳を傾けたまえ。
注意することだーポアロのもとに届けられた挑戦状。その予告通り、Aで始まる地名の町で、Aの頭文字の老婆が殺された。現場には不気味にABC鉄道案内が残されていた。まもなく第二、第三の挑戦状が届き、Bの地でBの頭文字の娘が、Cの地でCの頭文字の紳士が殺され…。新訳でおくる著者全盛期の代表作。
その朝、新聞の広告欄を目にした町の人々は驚きの声を上げた。「殺人お知らせ申しあげます。12月29日金曜日、午後6時30分より…」いたずらか?悪ふざけか?しかしそれは正真正銘の殺人予告だった。時計の針が予告の午後6時30分を指したとき、銃声が響きわたる!大胆不敵な殺人事件にミス・マープルが挑む。
銀行強盗を追う保安官が拾ったヒッチハイカーの正体とは?屋根裏部屋で起きた、首吊り自殺の真相は?一攫千金の儲け話の真偽は?制限時間は2分間、きみも名探偵ハレジアン博士の頭脳に挑戦!手がかりはすべて問題文のなかに隠されている。動かぬ証拠を押さえて犯人を追いつめろ。事件を先に解決するのはきみか、博士か?いつでも、どこでも、どこからでも楽しめる、面白くてちょっぴりためになる推理クイズ集。
舞踏会のさなかに刺殺された子爵と美貌の婚約者の変死、消え失せた機密書類の行方、忽然と消えた使用人の謎など、ポアロとヘイスティングズの名コンビが数々の難事件に挑戦する!ポアロもの11篇のほかに、ミス・マープルもの1篇、怪奇もの1篇を収録。クリスティーが、短篇の名手ぶりをいかんなく発揮した傑作集。
19世紀、オーストラリア。貧しいアイルランド移民の子ネッド・ケリーは、幼いころから獄中の父にかわり、母と6人の姉弟妹を支えてきた。父の死後、母はネッドを山賊ハリー・パワーに託す。だがそのせいで、ネッドはわずか15歳で馬泥棒の共犯容疑で逮捕されることになった。出所したネッドは、美しい娘メアリーと出会い恋に落ちるが、ようやくつかんだ幸せも長くは続かない。横暴な警察は、難癖をつけてはネッドや家族を投獄しようとしてくる。いまやネッドと弟のダン、二人の仲間たち“ケリー・ギャング”は、国中にその名を轟かすおたずね者となっていた。あまりの理不尽さに、遂にネッドは仲間と共に立ち上がるが…。死後百年を超えてなお人々を魅了しつづける実在のヒーローの真実の姿を、彼がまだ見ぬ娘へ綴った手紙を通して描く感動作。ブッカー賞、コモンウェルズ作家賞受賞作。
“ダンテ『神曲』の自筆原稿が、ヴァチカン図書館で発見された”。人々の運命を狂わせる知の魔書『神曲』秘話を通じ、錯綜するふたりの作家の精神の光と影と、悪夢的な運命を抉り出した大型小説。
どことも知らぬ砂漠の惑星。そこでは“ハハ”と呼ばれる銀色の巨大な装置が、荒れた大地を耕し、さまざまな種子を播きながら移動を続けていた。“ハハ”に寄生する人々のムラで、少年ニジダマは暮らしていた。どこかに存在するというトシに憧れる彼は、ある日、トシからの交易人を名乗る男ツキカゲを迎える。それは、世界に隠された大いなる秘密と、ささやかな約束へとみちびく出会いであった-植物育種家にして叙情SFの名手が描く、とある世界の発芽と収穫の物語。
はるばるネブラスカからマンハッタンのウルフの住居を訪ねてきた老資産家の依頼は、十一年前に勘当した息子を探してほしいというものだった。ウルフは助手のアーチーに命じ、さっそく新聞に情報提供を呼びかける広告を打つ。ところが応じてきたのは、警察や新聞記者、弁護士といった連中ばかり。どうやら、いま話題となっている殺人事件の公判の被告が、くだんの息子と同じ頭文字らしい。公判へ駆けつけたアーチーは、その被告こそが問題の息子だと確信する。だが、事件の裏はなかなかに複雑なようで…絶大なる人気を誇る美食家探偵の名推理。
甥のレイモンドを筆頭に、前警視総監や画家などさまざまな職業の人々がミス・マープルの家に集っていた。一人の提案で各自が真相を知っている昔の事件を語り、その解決を推理しあうという“火曜クラブ”ができたが…静かな目立たない田舎の老婦人ミス・マープルが初めて驚異の推理力を披露した短篇13篇を収録。
一月の寒い夜、サンディエゴ市の実力者ピート・ブラガが撲殺された。敏腕のトム・マクマイケル部長刑事が捜査の担当になるが、これは彼にとって皮肉なめぐり合わせだった。ブラガ家とマクマイケル家の間には三世代におよぶ確執があったのだ。1952年、トムの祖父が仕事上の争いがもとでピートに射殺された。それは正当防衛として認められたが、翌年ピートの長男が何者かに襲われる事件が起きた。それ以来、彼の知能は10歳のままになっている。犯人はいまだに確定していないが、それはトムの父親のしわざだと思われている。そしてトムも、ピートの孫娘のパトリシアと10代のころ恋に落ちたが、両家の確執に阻まれて、その恋は終わりを告げていた。トムは、ピートの身のまわりの世話をしていた看護婦のサリー、新空港の建設や港の土地をめぐってピートと対立していた人々、遺産相続に絡む遺族たちなどを調べていく。だが、彼は容疑者のサリーと愛し合うようになり、思わぬ危機を招いてしまうことに…。『サイレント・ジョー』でアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞した著者が、奥深い謎と感動の人間ドラマを描く最新傑作。
大逆事件の判決が下ろうとしていた明治44年正月。出獄したばかりの大杉栄は、素寒貧のため大富豪夫人の失踪事件の調査を引き受けた。動き回っているうちに、何者かが東京各所にペスト菌をばら撤き、陸軍がその跡を密かに放火殺菌しているという謎の事件を嗅ぎつける。風前の灯火の同志の命を救わんと、帝都を揺るがす二事件に挑戦するアナーキスト大杉栄。その瑞々しい探偵ぶりを描く傑作歴史ミステリ。
世界を震撼させる新手の細菌テロか?東京発ロンドン便の機中で若い女性が高熱を発して急死、日本で製薬会社を営む彼女の家族もまた東京近郊の自宅で同じ症状を呈して死亡した。遺体には蚊の刺し痕が…事態を重く見た日本情報部の要請で、英国情報部はジェイムズ・ボンドを日本へ急派する。日本では緊急のG8サミットが開催される予定なのだ。日本へ飛んだボンドは、旧知のタイガー田中と協力して事件の謎を追う。東京で殺し屋の襲撃を退け、特急列車で一路、謀略渦巻く北海道、そして瀬戸内海へ!世界転覆を企む巨魁との対決の結末は。
かつてはキンジーを威嚇恫喝し、大いに恐れさせていた昔なじみのドーラン警部補も、寄る年波からか健康を害し、今は捜査の第一線から身を引いている。そんな彼が突然訪ねてきた。聞けば、かつての先輩である元刑事のステーシーが癌に冒され、余命いくばくもない。ステーシーの、そしてドーラン自身の心残りになっている事件の解決に手を貸してくれないかと言うのだ。事件は18年前、偶然にも彼ら二人が第一発見者となった他殺死体遺棄事件。郊外の石切場付近に打ち捨てられ腐乱していた、少女のものと思われた死体で、全身に多数の刺し傷が認められた。だが、多くの遺留品にもかかわらず、ついに死体の身元は判明せず、ジェーン・ドウと名付けられたまま、警察の記録書類のなかに埋もれていたのだ。退屈な日常の調査業務にうんざりしていたキンジーは、依頼を引き受ける。だが、二人の老刑事とともに遺体の発見現場に向かったキンジーは、そこで思わぬ事態に直面する…。1969年8月、サンタ・バーバラ郡で発見され、以来今日に至るまで身元不明のままという、現実のジェーン・ドウ事件にインスパイアされて執筆し、全米で大きな反響を呼んだシリーズ最新作。
「リリーはどこだ?」ナノテク学者ピアスの自宅に、男たちから熱狂的な電話が次々かかってきた。ピアスはその女に会ったことさえなく、明らかに間違い電話だった。しかし、リリーが評判の娼婦だと知るにおよび、ピアスは彼女についてインターネット上で調べ始めた。肩に届く黒髪、ブラウンの瞳、深い褐色の肌。粗い目のネットでできた黒いネグリジェで胸を包み、褐色の股間のラインととがらせた唇が男を誘う。淫らな美神がそこにはいた。リリーに惹かれたピアスは、ホームページの管理会社を訪ね、彼女が失踪している事実を知る。その直後、リリーを捜す彼の元に脅迫が…。人工的に創られた欲望空間の悪夢を描くサスペンス小説。現代アメリカ・ハードボイルド小説界を代表する著者の新境地。