出版社 : 早川書房
天竜ギャラクシートランスが開発した新型エンジンを得て、月面結婚式場「第六大陸」建設計画はついに始動した。2029年、月の南極に達した無人探査機が永久凍土内に水の存在を確認、もはや計画を阻むものは存在しないかに思われた。だが、再起を賭したNASAが月面都市建設を発表、さらには国際法上の障壁により、「第六大陸」は窮地に追いやられる。計画の命運は?そして、妙が秘めた真の目的とは。
究極の書物を作るため、不思議な冒険の旅に出た職人の姿を描く、めくるめく物語。ときは18世紀。ロンドンの印刷工フラッドは、スロヴァキアのある伯爵から、からくりに満ちた奇妙な家に招かれた。奇書コレクターの伯爵は、「始まりも終わりもない無限に続く本を作製せよ」とフラッドに命じる。だが、フラッドは伯爵の美しい娘イレーナと恋に落ちて伯爵の逆鱗に触れ、城の地下に幽閉されてしまう。11年後、地下牢のフラッドの前に、彼の娘と名乗る少女パイカが現われた。伯爵も亡くなったいま、二人は魔法の活字、哀しみを誘うインク、伝説の製造法による最高級紙など、極上の材料を探し求め、仲間とともに世界中をめぐる航海に出る。だが、ヴェニス、アレキサンドリア、広東と行く先先で一行を妨害する人物が…!すべての本好きに贈る奇想天外な幻想譚。
泥棒やヤクザにも免許が必要な、すべての職業が国の許可制になっているもうひとつの世界。頼りない所長にかわって、ボランティア斡旋所兼便利屋を切り盛りする良子に困った問題がもちあがった。地元のヤクザが、彼女の住む日の丸ハイツからの立ち退きを要求してきたのだ。住民会議に参加した良子だったが、そこに奇妙な生き物“マロくん”が迷いこんできて…。“非日常”にも揺るがない“日常”の強靱さを描いた異色作。
科学技術発祥の地“楽園”を訪れたバロットが知ったのは、シェルの犯罪を裏付ける記憶データが、カジノに保管された4つの100万ドルチップ内に存在するという事実だった。チップを合法的に入手すべくポーカー、ルーレットを制してゆくバロット。ウフコック奪還を渇望するボイルドという虚無が迫るなか、最後の勝負ブラックジャックに臨んだ彼女は、ついに最強のディーラーと対峙するー喪失と安息、そして超克の完結篇。
12歳の誕生日をすぎてまもなく、ぼくはいつもしあわせな気分でいるようになった…脳内の化学物質によって感情を左右されてしまうことの意味を探る表題作をはじめ、仮想ボールを使って量子サッカーに興ずる人々と未来社会を描く、ローカス賞受賞作「ボーダー・ガード」、事故に遭遇して脳だけが助かった夫を復活させようと妻が必死で努力する「適切な愛」など、全九篇を収録した日本版オリジナル短篇集。
母を殺した犯人たちを見つけてもらいたいの-迷宮入りになった28年前の銀行強盗事件で犯行グループに射殺された被害者の娘が、真剣な面持ちでスペンサーに訴えかけた。警察の捜査報告書によれば反体制の革命グループが犯行声明を出していたが、その正体は不明のままだった。やがて政府の秘密機関員だと名乗る男が、スペンサーのもとに忠告に現われた。事件の調査から手を退いたほうが身のためだというのだ。それは、彼がさらなる情報を求めてFBIの支局を訪れた直後のことだった。その後、ガンマンが銃をちらつかせながら、事件に関わらないようにとスペンサーに脅しをかけてくる。28年前の強盗事件の裏に、どんな秘密が隠されているというのか?関係者の多くが口を閉ざすなか、スペンサーが突き止めた苦い真相とは…。パラダイスの警察署長ジェッシイ・ストーンの協力を得たスペンサーが、28年の時を越えて事件の真相に迫る。シリーズ第30作と、パーカーの作家デビュー30周年を記念して、巻末に作家、評論家など著名人による特別アンケートを収録。
緊急事態において科学技術の使用が許可されるスクランブルー09。人工皮膚をまとって再生したバロットにとって、ボイルドが放った5人の襲撃者も敵ではなかった。ウフコックが変身した銃を手に、驚異的な空間認識力と正確無比な射撃で相手を仕留めていくバロット。その表情には、強大な力への陶酔があった。やがて濫用されたウフコックが彼女の手から乖離した刹那、ボイルドの圧倒的な銃撃が眼前に迫るー緊迫の第2巻。
西暦2025年。サハラ、南極、ヒマラヤー極限環境下での建設事業で、類例のない実績を誇る御鳥羽総合建設は、新たな計画を受注した。依頼主は巨大レジャー企業会長・桃園寺閃之助、工期は10年、予算1500億、そして建設地は月。機動建設部の青峰は、桃園寺の孫娘・妙を伴い、月面の中国基地へ現場調査に赴く。だが彼が目にしたのは、想像を絶する苛酷な環境だったー民間企業による月面開発計画「第六大陸」全2巻着工。
大雪に見舞われたニューヨーク州の街バッファロー。元私立探偵のジョー・クルツは三人組の男に命を狙われたが、返り討ちにした。やがて、彼らの雇い主が以前手助けをした男であることがわかった。ファリーノ・ファミリーの後継者であるその男リトル・スキャグはいま刑務所で服役中だが、姉のアンジェリーナを介して指令を下したようだった。彼女を脅してそれを確かめたクルツは、そこで意外なことを聞かされる。彼女がゴンザガ・ファミリーのドン、エミリオ・ゴンザガを殺したいと思っていること。そして、ゴンザガがクルツの恋人を殺させた当人だという衝撃の事実も。ファリーノ・ファミリーがゴンザガに乗っ取られようとしていることも、後で判明した。この時クルツは、一人のバイオリニストから、娘を殺した犯人を捕らえてくれという依頼を受けていた。だが、強力な権力を持つその犯人はクルツに追っ手を差し向けてくる。それをかわしながら、クルツはアンジェリーナを利用してゴンザガへの復讐計画を整えていくが…。鋼鉄のハートを持つ男ジョー・クルツと、一筋縄ではいかない者たちの熾烈な闘い。鬼才が『鋼』に続いて放つハード・アクション・シリーズ第2作。
なぜ、私なの?-賭博師シェルの奸計により、少女娼婦バロットの叫びは爆炎のなかに消えた。瀕死の彼女を救ったのは、委任事件担当官にしてネズミ型万能兵器のウフコックだった。高度な電子干渉能力を得て蘇生したバロットはシェルの犯罪を追うが、その眼前に敵方の担当官ボイルドが立ち塞がる。それは、かつてウフコックを濫用し、殺戮のかぎりを尽くした男だった…弾丸のごとき激情が炸裂するシリーズ全3巻発動。
あんたとマイケルのことは知ってるよ-大学で英文学の助教授をしているケイトは、繰り返しかかってくる脅迫電話に悩まされていた。単なる嫌がらせとしか思えない内容だったが、あまりの執拗さに耐えかねたケイトは自らの手で犯人を捜しだそうと決心する。一方、彼女の恋人のジャック・ストライカー警部補は、二件の事件を抱えていた。人類学部の女性助教授が自宅で射殺死体で発見されたのに続き、若い医学生が病院近くの路上で惨殺されたのだ。有能で勤勉、誰からも愛されていた二人が、なぜ?大都会グランサムに展開するサスペンス大作。
純粋さゆえの破壊的な生を鮮烈に描く、“第二のサガン”、十七歳のデビュー作。わたしの名はシャルレーヌ、十九歳。夜になると静寂と孤独が支配するこの独房での生活も、まもなく二年になる。幼いころからわたしは、いつも何かを恐れていた。学校でも周囲にうまくなじめず孤独だった。生きるのがつらく、喉の奥に何か詰まっているみたいで、息をするのも苦しかった。そんなある日、サラが目の前に現われた。はじめて自分を理解してくれる存在に出会い、わたしは幸せだった。だが、やがて何かが狂いだす。失われた友情を取り戻そうとすればするほど、サラの冷酷さはエスカレートした。そして、長くつらい日々の末、わたしはある決心を固めるが…。傷ついてもなお突き進まずにはいられぬ思春期を描き、全仏を騒然とさせた衝撃作。
旅の帰途、嵐にあったディー判事一行はやむなく山中の寺院に一夜の宿を求める。そこは、相次いで三人の若い女が変死するという事件が勃発した場所だった。到着早々、判事は窓越しに異様な光景を目撃する。昔の兜を被った大男と裸で抱き合う片腕の娘-しかし、そこは無人の物置のはずで、しかも窓すら無い部屋だったのだ。怪奇現象か?幽霊か?何者かの悪戯なのか?ディー判事の悩みをよそに、夜が更けるにつれ次々と怪事件が襲いかかってきた!古代中国に実在した名判事を主人公に、巧妙なトリックと大胆な推理を展開する人気シリーズ。
失業中のコンピュータ・プログラマーのジャック・フォアマンは、ナノテク(超微細技術)開発に携わるハイテク企業、ザイモス社に勤める妻ジュリアの様子がおかしいことに気づく。まるで別人になったかのように、性格、振る舞いが一変しているのだ。さらに、末娘に原因不明の発疹が現われたり、不審な人影が徘徊するなど不可解な出来事が相次ぐ。おりからザイモスでは、想像を絶する異常事態が起きていた。ネヴァダ州の砂漠に建設された製造プラントから、偵察用カメラとして開発された分子機械(ナノマシン)が流出し、制御不能に陥ってしまったのだ。ナノマシンには生物の“捕食者-被食者”の関係がプログラムされており、以前勤めていた会社でこのプログラムの開発にあたったジャックは、事態収拾のためにプラントへと赴く。しかし、ザイモス社独自の技術により開発されたナノマシンはウイルスのように自己増殖を始め、予想をはるかに超えるスピードで進化を遂げていた。野生化したナノマシンは、獲物を狙う捕食動物のようにスウォーム(群れ)となって人間への攻撃を開始した!暴走したマシンを破壊する手だてはあるのか?はたして人類は生き残れるのか!?テクノロジーの暴走に警鐘を鳴らし続ける巨匠が放つ未曾有のハイテク・パニック・サスペンス。全米で200万部のブロックバスターを記録し、20世紀フォックス映画化も決定した超話題作。
突然、邸内は真っ暗になった。南米のある小国の副大統領官邸がテロリストに占拠された。折りしも、工場誘致のために日本の大手企業社長の誕生パーティが開かれており、出席者は人質となった。オペラ好きな主賓のために招ばれた世界的歌手のロクサーヌ・コスも、各国の要人たちも。幽閉生活が続くうち、人々は奇妙な安らぎを覚えていく。金と名誉を求めるばかりが人生ではないと気づいたのだ。テロリストたちも、実際は貧しい家の子どもだった。知的な大人たちと接して初めて、この世には美しい世界があることを知っていく。やがて、ロクサーヌの歌をきっかけに、人質とテロリストは心を通わせていく。首謀者までが人質に心を開き、官邸には牧歌的な時間が流れるようになる。だが、この平穏な日々が永遠に続くはずはなかった…。人間の根源的な愛とは何かを問いかけるオレンジ小説賞、PEN/フォークナー賞受賞作。