小説むすび | 出版社 : 早川書房

出版社 : 早川書房

ダ-クラインダ-クライン

黒人も女性も、自分たちの立場をわきまえていた。“ゲイ”という単語は、まだ“ハッピー”の同意語にすぎなかった。商店は日曜日に休業し、われらの爆弾は敵の爆弾より大きく、米国陸軍は無敵だった。無知な私は、世界はすべて順調にいっているものと思っていた。1958年は、そんな時代だった。テキサスの田舎町デューモントに引っ越してきた私は、まだ13歳だった。父さんのドライヴ・イン・シアターで映画を観て、新しく出来た友達と遊び、姉とそのボーイフレンドを冷やかして、夏休みを過ごすはずだった。ところがある日、家の裏で犬と遊んでいた私は、地面に埋められていた古い手紙と日記の断片を発見する。それは思春期の少女が綴った恋の記録だった。さらにその先の森には、焼け落ちた屋敷の跡が黒々と聳え立っていた。好奇心にとらわれた私は、古い事件を調べてみた。そこでは13年前、火災で一人の少女が命を落としていたのだ。さらに奇怪なことに、同じ夜、町外れにすむ別の少女が、首無し死体で発見されていた。どちらの事件も真相ははっきりしないままだ。私と姉は、事件の真相を突き止める決心をするが…人生で最高に輝いていた夏休みと、それを彩った数々の事件。MWA賞受賞作『ボトムズ』をも凌駕する、鬼才の最高傑作。

ブラック・ウォ-タ-ブラック・ウォ-タ-

女性の身でオレンジ郡保安官事務所の殺人課を仕切る巡査部長マーシ・レイボーンには、試練の事件だ。保安官事務所の身内であるアーチー・ワイルドクラフト保安官補の自宅で惨劇が起きたのだ。妻のグウェンがバスルームで射殺され、アーチー自身も頭部に銃弾を受けた人事不省の状態で発見されていた。状況から見て、妻を射殺したアーチーが自らにも銃口を向けた無理心中事件と思われる。しかも彼ら夫婦は身分不相応の邸宅に住み、収入以上の生活を送っていた。経済的に追い詰められたアーチーが、覚悟の行動を起こしたのだろうか?だが、マーシは割り切れないものを感じる。状況に不自然な点が多過ぎるうえ、周囲の語る事件前の夫婦の生活からは事件の前兆すら嗅ぎ取れないのだ。やがて昏睡から覚めたアーチーは記憶の一部を失っており、自らの無実を語ることも出来ない。マスコミの圧力が高まり、マーシの疑惑をよそにアーチーの起訴を急ぐ検察局。だが彼女は事件の陰に大きな闇の存在を感じはじめていた-『サイレント・ジョー』でアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を獲得した著者が放つ、最新傑作。

誇りは永遠に誇りは永遠に

1914年春、パリで警察署へ放火した容疑で手配されている無政府主義者の青年が、ロンドンで拘束された。身柄引き渡しの裁判が始まるが、青年は弁護士を通してある告発をする。自分をフランスへ引き渡すなら、英国王室の驚くべきスキャンダルを暴露するというのだ。いち早く情報をつかんだランクリン大尉は、ただちにその青年、グローヴァーの弁護士に接触する。やがて入手した「スキャンダル」の中身は-彼は、自分が現英国国王の息子であり、王位の継承者であると言うのだ。若き日の母親が、ポーツマスで海軍勤務だった頃の皇太子と情を通じた証しが自分である、と。しかも、当の母親は息子の言葉を裏付ける手紙を残して、突如失踪していた。ランクリンたちの調査でも、それを否定するような事実は発見されない。では、告発は真実なのか?だとしたら、いったいどんな影響が?国王のフランス公式訪問を間近にひかえ、スキャンダルの可能性に震撼した王宮は、情報局に圧力をかける。何としても真相を探り出し、もしもそれが真実ならば、闇に葬りたい。ランクリンと相棒のオギルロイは、いつもと勝手の違う仕事に戸惑いつつも調査にあたる。だが、グローヴァーとその母親の背後には、フランス無政府主義者たちの影が見え隠れしはじめた…。激動の時代に、誇りのために、そしてまた時には誇りを捨てても、熱く闘う人々の姿を描く、巨匠の渾身作。『スパイの誇り』『誇りへの決別』『誇り高き男たち』に続く冒険スパイ小説シリーズ最新刊。

シティ・オブ・ボ-ンズシティ・オブ・ボ-ンズ

ハリウッドの丘陵地帯の奥深くで、人骨らしき遺物が発見される。一匹の犬がそれを咥えてきた時、隠されていた事件が明らかになった。警察の鑑定の結果、その骨は十二歳くらいの少年のもので、死亡時期は二十年近く前、死因は鈍器による頭部への殴打であることがわかった。ハリウッド署の刑事ハリー・ボッシュは、殺人事件として捜査にあたるが、手がかりは乏しく、捜査は遅々として進まない。だが、まもなく現場付近に住む逮捕歴のある小児性愛者の男が捜査線上に浮かび上がる。ボッシュは取り調べにあたるが、男の前歴が外部に漏れ、容疑者としてテレビ報道されてしまう。男は無実を訴え、不当な取り調べを糾弾する遺書を残し、自殺してしまった。有力容疑者の死亡という最悪の事態に、警察内部にはボッシュを早期に解雇せよとの不穏な空気が流れ始め、彼は窮地に立たされた。そんな時、ある女性から骨について新しい情報が入るが…。哀しき運命に翻弄された骨のため、ボッシュは刑事生命を賭けて事件の真相に迫る。汚れた“天使の街”で独り正義を貫く、刑事ハリー・ボッシュの生きざまを描いた、シリーズ最新作。

ビタ-・メモリ-ビタ-・メモリ-

恋人のノンフィクション作家モレルのアフガン行きが決まり、憂鬱な日々を送るわたしのもとに、黒人労働者のサマーズから保険金詐欺の調査依頼がきた。また同じ頃、シカゴではホロコーストについて話し合う会議が開催されていたが、そこでスピーチをしたラドブーカという男性の名前を聞いて、親友の女医ロティが失神してしまう。彼女の過去と関わりがあるらしいのだが、何を訊いてもいっこうに答えてくれない。彼女を助けたい一心でわたしはラドブーカを調べはじめるが、その直後、まるで調査を妨害するようにわたしを中傷するビラが街頭でばらまかれた。さらにサマーズの保険を扱った代理店の店主が殺され、ロティが忽然と姿を消す。わたしは二つの事件の意外な結びつきに気づくが、そのせいで身近な人間を危険に晒すことに。事件は混迷を極め、真相を追うわたしの前に事件に関わる人々の苦く哀しい過去が浮かび上がる。過去の亡霊に悩む親友のために奔走するV・Iの友情が深い感動を呼ぶ大作。英国推理作家協会賞ダイヤモンド・ダガー賞(巨匠賞)に輝く著者が贈る、女性探偵V・I・ウォーショースキー・シリーズ第10弾。

キリング・タイムキリング・タイム

超一流の特殊効果技師が、得体の知れぬ凶器によって全身を細かな砕片にまで分解されて殺された。犯罪心理学者のギデオン・ウルフ博士は、彼の遺した一枚のディスクをその妻から手渡されて助けを求められる。そのディスクには三年前の合衆国大統領暗殺の瞬間の映像が収められていた。それは撮影者不詳のまま一年前に突然世間に流れ出た映像で、すでに世界中の誰もがいやというほど目にしたものだった。だが、ディスクに収められていたのはそれだけではなかった。そこには問題の映像が巧妙に偽造されたものであるという証拠ばかりか、驚愕の事実までもが隠されていたのだ。それを目にしたギデオンは戦慄を覚え、友人の私立探偵とさらに調査を進めようとする。だがその矢先、突然の銃撃を受け友人は殺されてしまった。単身、真相究明に乗り出したギデオンは、事件の陰に歴史を覆しかねない恐るべき陰謀の存在を感じ取るが…。歴史サイコ・サスペンス『エイリアニスト』で注目を浴びた著者が、歴史とテロリズムについての長年にわたる研究と考察をもとに、壮大無比なスケールと想像を遙かに超える展開で描き上げた近未来スリラー。

サイレント・ジョ-サイレント・ジョ-

病院で医師から、ウィルを助けられなかったと告げられた。助けられなかった。その言葉は銃弾となってわたしの心臓を貫いた…赤ん坊の頃、実の父親に硫酸をかけられ顔面に大火傷を負ったジョーは、施設にいるところを政界の実力者ウィルに引き取られる。ウィルは慈愛に満ちた養父としてジョーを育て、見事に彼を立ち直らせた。成長したジョーは21歳になり、今はウィルの仕事を手伝いながら、保安官事務所に勤務している。その大恩ある養父ウィルが、ジョーの目前で何者かに射殺される。ウィルの政敵でもある男の娘が誘拐され、その身代金取引を買って出たウィルが娘を保護した直後の出来事だった。養父の仇を討つべく、ジョーは一人真相を追及する。それが、ウィルの、人には知られたくなかったであろう暗い部分を、白日のもとに晒すことになろうとも。そしてその事件が、ジョーに途方もない試練と、大いなる成長を与えることになるとは予想もせずに…2002年度アメリカ探偵作家クラブ賞で最優秀長篇賞を受賞した、感動のミステリ。

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