出版社 : 明石書店
人生に訪れる危機と不安。「普通の人々の、平凡でどうでもいいと考えていた、だけど歪んでしまった一日」。時代と社会の病を敏感に捉え平凡な人間群像を暖かく包み込む、篤実なリアリズム小説。
苛酷な日本の植民地支配に抵抗した詩人たち。学生運動のなかから生まれた若き詩人、「満洲」地域で生を受け、二重のディアスポラとして朝鮮語の叙情性を極めた詩人……。その文学の軌跡と現代への影響を韓国・北朝鮮・中国・日本の文学者・研究者たちが描く。 まえがき 第1部 学生運動と抵抗詩人 朝鮮南部の抵抗作家、李石城を読むーー発掘の意味をこめて[金正勲] はじめに 1 李石城は何者か 2 発掘された詩から映し出されるもの 3 日本の思想家から朝鮮の思想家へ 4 『堤防工事』のテーマと意義 おわりに 『堤防工事』[李石城(金正勲 訳)] 朝鮮植民地期のアナキズム独立運動[亀田博] 鄭瑀采の活動と詩篇に表れる抵抗精神[金正勲] はじめに 1 鄭瑀采の成長過程と文壇デビュー 2 「醒進會」活動と投獄 3 凄絶な生きざまの現場と自我省察の歌 4 詩文にみられる抵抗精神 おわりに 歴史的人物、朴準埰の書き残した詩篇に関する考察ーー早稲田大学留学時代の作品を中心に[金正勲] はじめに 1 詩ノートの実物 2 家族愛と故郷愛を描いた詩 3 早稲田大学留学時代の詩 4 抗日的抵抗詩 おわりに 朴準埰の発掘詩紹介[金正勲 訳] 第2部 抵抗から独立へ 尹東柱ーー詩による抵抗の充実と苦悩[愛沢革] 1 尹東柱の詩を新しい眼で読みなおすことが問われている 2 尹東柱は情感偏重の抒情詩人ではないーー金時鐘による尹東柱批評の意味 3 尹東柱と宋夢奎 李相和ーー抵抗と復活の世界性[佐川亜紀] 1 代表作「奪われた野にも春は来るのか」の生命表現ーー女性表象をめぐって 2 世界的な問い 3 虐げられた人々への共感 4 作品「詩人に」--創造への呼びかけ 植民地時代の朝鮮における『国民文学』[渡邊澄子] 二重のディアスポラ、尹東柱[崔一] 1 尹東柱の発見 2 「満州」という空間と韓民族アイデンティティ 3 「満州」の不在と抽象的な故郷 4 「二重ディアスポラ」の漂流する故郷 5 「国民」という記標を持つ者と持っていない者 尹東柱の児童詩とその文学史的意義[金萬石] 1 尹東柱の児童詩学習と創作 2 尹東柱の追求した児童詩の形態 3 尹東柱児童詩の思想・美学的価値 4 結論 李陸史の文筆活動と詩[ハン・ジュンモ] 歴史における詩的参与[文炳蘭] 1 詩の機能 2 歴史と詩人 3 真実の詩と虚偽の詩 第3部 付録・関連短文 李石城の新発見日本語詩稿に出会ってーーその驚きと感動の言葉[金正勲] 雪の降る凍土にも花は咲くかーー出来損ない息子の想父曲[李明翰] 李石城ーー抵抗詩から抵抗小説へ[金正勲] 朴準埰の発掘詩ーー「KBSラジオインタビュー(光州放送局)」[金正勲] 鄭瑀采の生涯と文学[金正勲] 朝鮮近代文学のパイオニア、趙明熙[金正勲] あとがき
IT関連企業の社長として世界中を飛び回る島岡恭一。ある日、メッセージアプリ上で友達リクエストを受ける。警戒しつつ会ってみると、その人物は恭一が過去、唯一交際した女性と瓜二つだった。彼女の目的は何かー。音声認識AIの開発に長年携わる著者が実体験を交え、奇妙な文体でメッセージアプリに仕組まれた実証実験を描く衝撃の近未来AI小説。
権力はそんな彼を「囚人」にした。黄〓暎(ファン・ソギョン)は行動する作家として、労働現場、ベトナム戦争、民衆文化運動、韓国民主化・南北統一運動の渦中に身を投じ、そこに生きる人びとの姿を伝えようとした。権力はそんな彼を「囚人」にしたが、本書はその「囚人」の眼を通して、韓国現代史を生き抜いた人びとの真実を描きあげ、韓国民主化の精神を次代につなぐ文学的自伝である。
獄舎から「作家の自由」を求めて。僧侶を志した青年期の放浪、懸命な愛を注いでくれた母への想い、獄舎で出会った不遇な人びとへの共感、戦場での余りに苛酷な運命、妻の献身と不憫な子への悔悟、光州の闘いに敗れた若者への自責、そして何より独裁権力への強い怒りと闘いの日々。韓国現代文学の絢爛たる開花の沃地となった民族の記憶を作家みずからが語る。