出版社 : 書肆侃侃房
2025年2月16日没後80年 彼の詩を読みながら、ゆかりの地をたどり、彼の歩いた地と彼の心を感じてほしい。 空を仰ぎ、星をかぞえ、 時代の朝を待った尹東柱(1917-1945) 自選の19篇を中心にした日韓対訳選詩集 韓国で最も愛される澄明な詩群 詩人の生涯を詩と写真でたどる旅 両開きで日本語と韓国語の詩をそれぞれ収載 日本の読者のみなさんへ 伊吹先生が翻訳するそばで父(尹一柱)が一緒になって一字一字を熟慮して編んだこの翻訳にこそ、詩人の想念に最も近い真実があるのではと思っています。 今回、韓日対訳詩集の韓国語原稿を提供させていただくにあたり伯父と父と対話するような気持ちで伯父の作品を再び読み返しました。日本語訳詩集が福岡から韓日対訳で出版されるとは、伯父の命が尽きた場所から彼の精神が復活するように思えてなりません。 一九八四年十一月に訳詩集が出版されると、茨木のり子先生のエッセイの中で伯父の翻訳詩集が引用され、さらに日本の高校現代文の教科書に掲載されました。ハングルを学ぶ人たちが尹東柱の詩を知ることになり、伊吹先生の訳詩集は尹東柱の詩世界を日本の方々に伝える大きな土台となりました。そして日本語の他にも英語、フランス語、ドイツ語、チェコ語、中国語、ロシア語、ジョージア語の翻訳へとつながりました。 どうか多くの方々に愛読いただき、清冽に生き、静かに母国語で想いを整理し記録した青年の澄んだ心に思いを馳せながら、互いに寄り添い共に歩む世界を創ってゆけたらと願っております。 尹東柱の甥(詩人の弟尹一柱の長男)、尹仁石(ユンインソク)/本書監修者 序 詩 (1941.11.20) 死ぬ日まで空を仰ぎ 一点の恥辱なきことを、 葉あいにそよぐ風にも わたしは心痛んだ。 星をうたう心で 生きとし生けるものをいとおしまねば そしてわたしに与えられた道を 歩みゆかねば。 今宵も星が風にふきさらされる。 序詩 죽는 날까지 하늘을 우러러 한점 부끄럼이 없기를 , 잎새에 이는 바람에도 나는 괴로워했다 . 별을 노래하는 마음으로 모든 죽어가는 것을 사랑해야지 그리고 나한테 주어진 길을 걸어가야겠다 . 오늘밤에도 별이 바람에 스치운다 . 本書は、伊吹郷訳・日本語版尹東柱全詩集『空と風と星と詩』を底本にした対訳選詩集。 両開きで日本語と韓国語の詩をそれ…
老いに抗いながら 過去の恋、突き上げてくる激情と性への執着 破滅への衝動と闘い続ける その終着点は美の極致か幻か…… 青年時代に小説を書いていたが、途中で才能への疑問を覚え挫折し休筆した。 心の奥底に燻り続けていた文学への想いが再燃したのは、七十歳のとば口が見えた瞬間だった。個人の生や愛や死の想念が未知の深淵に墜落していく時、いかに激しく輝くかに気づいた僕は再び筆を執らずにはいられなかった。人間の苦しみや喜びや悲しみ、怒りが僕の脳裏に渦巻いた。僕は彼等を愛しエゴイストと呼んだ。心優しきエゴイストたち、と。
こんな未来なんて想像もできなかった。そもそも未来なんて思い描けなかった━━。 トランス女性の作者による声や経験が主体性を持って読者に届けられる。 ストーンウォール図書賞受賞はじめ大きな支持を集めたトランスガールの青春小説。川野芽生さん推薦! むしろ、ごくありふれた、青春の物語。それが、彼女には、彼女たちには、なかった。これまでは。━━━━川野芽生 「本書の、最もすばらしい部分は(略)トランスジェンダーの若者が、自分を尊重できるようになっていく物語、となるだろう」(訳者あとがきより) 【あらすじ】 アマンダ・ハーディは、ある出来事から高校最後の年を新しい街で過ごすことになる。彼女にはある目的があった━━できるだけ目立たず、人との関わりを避け、ただ日々をやり過ごす。卒業したら自分を知る者のいない場所に消える。すべては自分の人生を生きられる未来のため。ここは通過点にすぎない。それでも転校先での数々の出会いは、彼女の心の氷を溶かしてゆく。その先に見出したものとは━━?
リアルにファンタジーが溶け出し、新たな世界へと導く山野辺太郎の真骨頂! やわらかい言葉と適度なペーソスで、作者は奇想を真実に変える。「恐竜時代」とは、人を信じるための胸のくぼみに積み重ねられた、記憶の帯だ。私たちの心の地層の底にもそれは眠っていて、あなたに掘り起こされる日を静かに待っている。 ーー堀江敏幸 「恐竜時代の出来事のお話をぜひ聞かせていただきたい」。 ある日「世界オーラルヒストリー学会」から届いた一通の手紙には、こう記されていた。 少年時代に行方をくらました父が、かつてわたしに伝えた恐竜時代の記憶。語り継ぐ相手のいないまま中年となったわたしは、心のうちにしまい込んだ恐竜たちの物語ーー草食恐竜の男の子と肉食恐竜の男の子との間に芽生えた切ない感情の行方を、聴衆の前で語りはじめる。 食う者と食われる者、遺す者と遺される者のリレーのなかで繰り返される命の循環と記憶の伝承を描く長編小説。 表題作ほか、書き下ろし作品「最後のドッジボール」を収録。
郵便配達をしていた俺は故郷の「くに」から逃げてきた。妻のカルラと幼い息子とともに「島」で不法滞在している。買い物をした帰りに乗っていた地下鉄が故障で止まってしまい、右も左もわからない場所で降ろされてしまった一家。なんとか家にたどり着こうとあれこれ画策するが、やることなすことすべてが裏目に出てー。周囲から存在を認められず、無視され続ける移民の親子は、果たしてどうなるのか?
植民地から解放されても朝鮮戦争の戦後、 完全に南北に分断され交流を絶たれた人々の苦悩は続く 「解放」後の混乱期に肩書をなくした高学歴の青年がとしての運命を予感「道程」。満洲からソウルに辿り着いた母と息子の、部屋さえ得られない苦難の日々「星を数える」。ひとところにとどまらず回遊していく男と、定住したまま動こうとしない女の相克「駅馬」。釜山に避難した貧しい兄妹のおぼつかない日々。ある日、二人は行方知れずになった「雨日和」。前線で戦っていた兵士が突然拘束され、転向を拒否したために辿る悲惨な運命「猶予」。南の島に幽閉された二人の捕虜。自死した仲間の家を訪ねた男を息子と思い最期を迎える母「ヨハネ詩集」。戦争時に夫を、戦後息子を失った女は神も信じられず、早逝した息子の位牌も焼いてしまう「不信時代」。朝鮮戦争は終わったが、その後軍の監房に収監された兵士たちのドタバタ劇「明暗」。休戦後、世の中はがらりと変わり、戦争時の密告者が罪の意識に苛まれるようになる「すべての栄光は」。 道程ー小市民 도정ー소시민 池河蓮(チ・ハリョン/지하련) カン・バンファ訳 星を数える 별을 헨다 桂鎔默(ケ・ヨンムク/계용묵) オ・ファスン 訳 駅馬 역마 金東里(キム・ドンニ/김동리) 小西直子 訳 雨日和 비 오는 날 孫昌渉(ン・チャンソプ/손창섭) カン・バンファ 訳 猶予 유예 呉尚源(オ・サンウォン/오상원) 小西直子 訳 ヨハネ詩集 요한시집 張龍鶴(チャン・ヨンハク/장용학) カン・バンファ 訳 不信時代 불신시대 朴景利(パク・キョンニ/박경리) オ・ファスン 訳 明暗 명암 呉永壽 (オ・ヨンス/오영수) オ・ファスン 訳 すべての栄光は 모든 영광은 黄順元(ファン・スンウォン/황순원) 小西直子 訳
ペンシルベニア大学で、RNAやDNAを用いた最先端の遺伝子治療の開発を夢見て研究生活を共にした若き研究者たち。そのひとり、無名時代のカリコ博士の実像と魅力を知る著者が、彼女の苦悩と挫折、復活と栄光を描いた実話に基づく異色話題作。
病床の母から繰り返し聞かされた、幼少期をすごしたあの小さな町の記憶。そこでは火事で多くの人が亡くなり、私の兄もそのとき死んだのだという。ある日、家出してたどり着いた森の中の家には、女性が隠れ住んでいた。それを機に母と親しくしはじめた彼女が起こした騒動をきっかけに、私の家族は壊れてしまう。最期まで語られなかった母の秘密。記憶をたどる中、父との再会で告げられた思いもよらない真実とは…。
不安定な地位にある大学非常勤講師のドロシーは、図書館のトイレで出血を確認する。流産したことを親友にも母親にも打ち明けることはできない。大学で講義し、セラピーに通い、産婦人科を訪れるが、どこにいても何をしていても世界から認めてもらえない気がしてしまう。3月の終わりからの1ヶ月半、予測不能なキャリアのなかで、自分の身体に起きた「流産」という不可解な出来事と知性によってなんとか折り合いをつけていく。
知り合いから頼まれて顔も知らない人と待ち合わせをする羽目になった俺(水上)。この人と思ったキザキさんは別の男と去ってゆき、代わりに現れたサカナさんに誘われるままに不思議な居酒屋で飲み明かし、まさに迷宮にはまり込んでゆく、心理的ロードムービーのような作品。ほかに書き下ろし「Maxとき」も収録。第四回ことばと新人賞受賞作。
五年間同棲している私の彼女、ジョンユンには四人の大親友がいる。ミンジ、ジヘ、ジヨン、スジン。「ジョンユンの彼女なら、私たちの友達も同然でしょ」彼女たちはみんな私に会いたがるけど、私はその誰にも会ったことがない。ジョンユンに誘われても、誰の結婚式にも行かない。ついにジョンユンの親友たちに会ってみることを決めた日、かつて私が憧れを抱くも苦い決別を迎えたひとりの女性から手紙が届く。「非婚式にご招待します」。クィア・労働・女性問題など、今を生きる女性たちをときにリアルに、ときにさわやかな余韻で描き出すチョ・ウリ初の短編集。表題作「私の彼女と女友達」など八編を収録。初邦訳。