小説むすび | 出版社 : 書肆侃侃房

出版社 : 書肆侃侃房

象の旅象の旅

象は、大勢に拍手され、見物され、あっという間に忘れられるんです。 それが人生というものです。 ノーベル賞作家サラマーゴが最晩年に遺した、史実に基づく愛と皮肉なユーモアに満ちた作品。 1551年、ポルトガル国王はオーストリア大公の婚儀への祝いとして象を贈ることを決める。象遣いのスブッロは、重大な任務を受け象のソロモンの肩に乗ってリスボンを出発する。 嵐の地中海を渡り、冬のアルプスを越え、行く先々で出会う人々に驚きを与えながら、彼らはウィーンまでひたすら歩く。 時おり作家自身も顔をのぞかせて語られる、波乱万丈で壮大な旅。 「ささやかで不条理な奇跡の連続、諦念と温かさに満ちた深い知慮が引き起こす小さな笑い」 (アーシュラ・K・ル=グウィン) 「サラマーゴが、その人生の終わりに近くで書いた、愛嬌たっぷりの作品。『象の旅』は皮肉たっぷりで共感を豊かに誘う語りの中に、人間の本質についてのウィットに富んだ思索と、人間の尊厳を侮辱する権力者への揶揄を定期的に挟み込んでくる」(ロサンゼルス・タイムズ) 「サラマーゴは(……)この奇妙ながらも読み進めずにはいられない物語を紡いだ。サラマーゴがシュールで魅力的な散文の巨匠としてこれからも人々の記憶にのこるのはなぜか、この物語が完ぺきな例である」(GQ)

冥王星より遠いところ冥王星より遠いところ

どんなに大切な時間も、やがて忘れ去られてしまうーー この小説の語り手はその運命に本気で抗おうとする。「惑星X」の存在を信じ続けた天文学者と同じ、狂気と紙一重の切実さで。 モザイクのように繫がる過去と未来、現実と虚構が、日本を越え、アメリカも越えて、遠く太陽系の果てに新しい地平をつくる。 ーー滝口悠生(小説家) 人の記憶で引き起こされる哀しみとは、どの既婚男性にも永年のネルーダの少女がいて、その娘は妻ではなく、愛人でもないということ。でも、絶えず男の現実の神経に働きかける。 青春に舞い戻ることはできないが、記憶ならば可能だ。でも、記憶の中のネルーダの少女は冥王星のように遠くにある。既婚男性の背後にはネルーダの少女がいて、もちろんネルーダの背後にもネルーダの少年が永遠にいる。わたしたちは皆、失ったネルーダを捜すのだ… ーー甘耀明(小説家) 物語はわたしを奇妙な空間の中で散歩させる。その多くは日常生活の中でのシーンだ。コンビニや大通り、部屋、病院で、ライトブルーの光が、町中の無表情なビルの小窓に差している。でも、はっきりとしているのは、読んでいる最中に、零下二百度の孤独がわたしを浸食、太陽系の遠く外れにある緑色の冥王星にいるような気分にさせることーーわたしはそこに行ったことがないけれども。 ーー伊格言(小説家) 文学キャンプ出身の「七年級」作家・黄崇凱、日本で初めての単行本。台湾における尊厳死問題を示唆した長編デビュー作。 病院で母を介護する青年と、妻や娘と暮らす小説家志望の高校教師。青年の夢に出てくる男の姿は高校教師である「俺」の日常とまったく同じで、高校教師が小説で描き出す青年は現実の「俺」と少しも変わらない。二人の「俺」は現実の日常や夢のなか、小説のなかで、母の病室と実家とを行き来し、ネルーダの少女とデートする……。この現実は夢なのか、虚構なのか。今では最愛の母は遠く離れ、太陽系から外された冥王星よりもさらに遠いところをさまよっている。

私のおばあちゃんへ私のおばあちゃんへ

年老いた女になるつもりはなかった。 その日その日を生きているうちに、いまにたどり着いただけ。 いまという日は、自分とはまったく関係のない他人のものでなければならなかった。 6人の女性作家が描く“おばあちゃん”アンソロジー おばあちゃん世代の作家オ・ジョンヒ(李箱文学賞、東仁文学賞と、韓国の二大文学賞を受賞。『鳥』で2003年ドイツのリベラトゥル賞受賞。現在は東仁文学賞の審査委員)は次のように述べている。 この小説集は、現代韓国文学の中心で熾烈な執筆活動をしている作家、六人六色の饗宴であると同時に、長い人生を送ってきたすべての「おばあちゃん」に捧げる賛歌でもある。老いていく私自身の姿や複雑な内面が見え、また、私が通過してきた道を生きている娘が、私自身が向かっている時間を生きた母親の姿がはっきりと見える。この作品集は老年に対する通念や偏見を破り、かといって下手なあきらめや和解も見られず、むしろ生の不可解さ、人間の存在の神秘さ、長い年月に堪えてきた人が放つ香りのようなものを読み手に伝える。紆余曲折と悲しみと心の傷によって、人間はかくも愛すべき存在でもあるのだということも。 (訳者あとがきより) <あらすじ> いつかおばあちゃんになることを夢見ていたのに「きのう見た夢」(ユン・ソンヒ)。 残されたフランスでの日記を手掛かりに孫が想像で描いたおばあちゃんの最後の恋「黒糖キャンディー」(ペク・スリン『惨憺たる光』)。 認知症になったおばあちゃんが何度も繰り返し伝えたのはトラブルの多い孫の未来のためだった「サンベッド」(カン・ファギル『別の人』)。 厳しかったおばあちゃんから遺された屋敷を処分するために久しぶりに足を運んだ私は、取り返しのつかない過去に引き戻される「偉大なる遺産」(ソン・ボミ『ヒョンナムオッパヘ』収録「異邦人」)。 女三世代で行ったテンプルステイで母の意外な一面を知り、母にだんだんと似てくる自分に気づく、ある穏やかな秋の日「十一月旅行」(チェ・ウンミ『第九の波』)。 ひとりで堅実に生きてきたはずが、いつの間にか老人だけのユニットに暮らす羽目に。二十一世紀後半の近未来を描くディストピア小説「アリアドネーの庭園」(ソン・ウォンピョン『アーモンド』『三十の反撃』)。 ミステリー、SF、ロマンス、家族ドラマなど、老いを描いた6編 きのう見た夢 ユン・ソンヒ 黒糖キャンディー ペク・スリン サンベッド カン・ファギル 偉大なる遺産 ソン・ボミ 十一月旅行 チェ・ウンミ アリアドネーの庭園 ソン・ウォンピョン 訳者あとがき

オリオンと林檎オリオンと林檎

2019年6月にスタートした韓国文学の源流シリーズは今回、短編選をスタートします。朝鮮文学時代から今の韓国現代文学に続く、古典的作品から現代まで、その時代を代表する短編の名作をセレクトし、韓国文学の源流を俯瞰できる10巻です。現代韓国文学に親しみ始めた読者が、遡って古い時代の文学も読めるようにしたいと考えています。 短編10巻、各巻は6〜10編の各時代の主要作品を網羅します。 各巻には小説が書かれた時代がわかるような解説とその時代の地図、簡単な文学史年表が入ります。よりいっそう、韓国文学に親しんでいただければ幸いです。 日本植民地時代の1930年代韓国は、プロレタリア文学とモダニズム文学との相克の時代。揺れ動く時代を背景に、若い男女の交友関係を軸に、社会運動にのめり込んでゆかざるを得ない暗い時代が描かれる。実りのない恋愛を通して強く自立した生き方を模索する愛と葛藤の日々が、読むものの心に深く響いてくる。 2021年8月上旬全国書店にて発売。

ファットガールをめぐる13の物語ファットガールをめぐる13の物語

宇宙はわたしたちに冷たい。理由はわかっている。 人が自分の体を生きることの居心地のわるさを描き出した、注目の作家モナ・アワドのデビュー作。 インディーズ音楽とファッションをこよなく愛す主人公のエリザベス。特別な人生は望んでおらず、ただ普通にしあわせになりたいだけ。 けれど高校でも大学でも、バイトをしても派遣社員となっても、結婚しても離婚しても、太っていても痩せていても、体のサイズへの意識が途絶えることはない。 自分と同じ失敗をさせまいとする母親、友だちのメル、音楽を介してつながったトム、職場の女性たち……。彼らとの関係のなかで、傷つけ、傷つけられ、他者と自分を愛する方法を探してもがく。 ロクサーヌ・ゲイ、エイミー・ベンダー、ブライアン・エヴンソン、その他各紙誌で絶賛!! 「女性とその体にとって理不尽すぎるこの社会。 アワドはそれを正しくとらえ、この連作短編を通して鮮烈に描き出している」(ロクサーヌ・ゲイ) 「賢くて茶目っ気があって、とり繕うことなくまっすぐな作品。 友情、セックス、誰かの心に寄り添うこと、自分らしく生きること。女子たちの格闘はヒリヒリとして、そのことをアワドはちゃんと語ってくれる。 何もかも受け止めて、素直じゃないけどあたたかい、そんな声で」(エイミー・ベンダー) 「素晴らしい仕事だ。失敗も喜びもひっくるめて、人として生きることの意味とはなにか?  それを痛々しくもありのままに描き出し、答えに近づこうとしている」(ブライアン・エヴンソン) 「実にするどいデビュー作。 もがくリジーを繊細かつ冷徹な言葉で描くアワドの作品は、アメリカの女性について考えるための新たな必読本である」(タイム) 「正直で痛烈、だからこそ読まれるべきだ。本書は女性が生きることの葛藤をわたしたちに見せつける。 ボディー・イメージも、他者との関係も、そしてあまりにも残酷なこの世界を自分の足で歩いてゆくことそれ自体も」(エル)

舞踏会舞踏会

発売日

2021年4月29日 発売

優雅で感傷的な自虐小説?繊細な含羞に裏打ちされた狂気? これも文学なのだ、ではなく、これこそが文学なのだ、と敢て言おう。 佐川恭一は、令和日本文学の、黒光りに輝く希望の星である。 ーーーー佐々木敦(ことばと編集長) 5編の妄想と諧謔によって綴られる佐川恭一ワールド全開の一冊。 妻と娘との三人家族のわたしは、職場でも家庭でも孤立していき、限られた小遣いの中でわずかな喜びを見出す日々。強靭な精神を持つ妻に太刀打ちできないわたしは家出することで抵抗するが ・・・「愛の様式」 苦手なドッジボールに誘われるまま参加したことをきっかけに、現実のぼくの心と体はどんどん乖離していく。十歳を目前にしたぼくはすべてを消し去ってしまおうと決意する ・・・「冷たい丘」 この世界はしらふで生きていられる場所じゃない。勝者しか存在を許されない会場で、ぼくたちは倒れるまで下手なダンスを踊り続けるしかない ・・・「舞踏会」など、「ことばと」掲載の表題作を含む5編を収録。 愛の様式 冷たい丘 舞踏会 ひだまりの森 友情(浜大津アーカスにて)

レースの村レースの村

発売日

2021年4月22日 発売

幽霊の世話をする人々、女性だけの村、姿が透明になる犬……。 とても不思議なのに、どこか懐かしい光景。 日本のどこかに、こんな場所がまだあるのかも、と思えてくる。 豊かな発想から物語を紡ぎ出す、新しい語り部の誕生だ! 松永美穂(翻訳家/早稲田大教授) 「ことばと」掲載の表題作を含む4編を収録。 <あらすじ> 大学の友人サクマの帰省に同行したぼくは、そこで幽霊と暮らす奇妙な村人たちと出会う…「幽霊番」。女性だけの村で育った卯月と、「騙されちゃ、だめよ」と云い、突然いなくなってしまったハルカ。サナさんの秘密の儀式を偶然目撃した卯月は、自分の知らない世界があることに気づいてしまう…「レースの村」。夫との関係はいつも少しずれていると感じる杏子はバイト先の店長とのふとしたはずみで起こった出来事により…「空まわりの観覧車」。透明になった犬の夢二、病気がちで寝たきりの姉綾子とともに過ごす日々はあの雪の日のように儚い…「透明になった犬の話」。綻びのできたレースのように繊細で不可思議な世界を紡ぎだす四編の物語。 幽霊番 レースの村 空まわりの観覧車 透明になった犬の話

ごめんなさい、ずっと嘘をついてきました。----福島第一原発 ほか原発一同ごめんなさい、ずっと嘘をついてきました。----福島第一原発 ほか原発一同

発売日

2021年3月4日 発売

福島第一原発を主人公に描かれるノンフィクション小説 原発が語り手となって伝える、今まで知らされてこなかった真実。15章に渡る「ごめんなさい」を、私たちはどう受け止めればいいのか。 この本を読んだあなたがどう感じ、どんな行動を起こすかが大切です。もし万が一、あたかも何もなかったかのように原発依存を続けるなら、事故は必ずまた起きるでしょう。起きるはずのないことでも起きるのですから、一度起きたことがまた起きるのは必然です。原爆が二度落とされたように…。  ──科学ジャーナリスト 倉澤治雄 ウルトラクイズ優勝の僕の肩書きはいったい何だったんだろう。本当に世界は知らないコトにあふれてる!  ──アメリカ横断ウルトラクイズ 第13代クイズ王 長戸勇人 とざい、とーざい!ここにおわすは原発の、嘘かマコトかこの懺悔⁉︎事実は小説より悲劇、知らずに生きるのは災難。 ──おしどりマコちゃん(漫才師・記者) プロローグ 一つ目のごめんなさい  私は空へ海へ、長年放射能を捨て続けてきました 二つ目のごめんなさい  私が事故ると被害額が国家予算を超える!? 三つ目のごめんなさい  またまた外務省が隠した報告書は、原発へのミサイル攻撃の損害試算 四つ目のごめんなさい  私が出す何十種類もの放射能。人体への影響は未だわからない 五つ目のごめんなさい  子どもたちへ、将来を心配させてしまってごめんなさい 六つ目のごめんなさい  西日本や韓国の原発が事故ると大変よ 七つ目のごめんなさい  米国ではダメダメな避難計画だと原発は働けない。けど日本は……? 八つ目のごめんなさい  放射能は、まやかしだらけでごめんなさい 九つ目のごめんなさい  国策原発も、まやかしだらけでごめんなさい 十個目のごめんなさい  ヨーロッパの新原発と比べ貧弱すぎてごめんなさい 十一個目のごめんなさい  放射能だけでなく大量の熱を海に捨ててきました 十二個目のごめんなさい  大切な廃炉の話を聴いてください 十三個目のごめんなさい  それは私たちが出す核のゴミのこと 十四個目のごめんなさい  実は、原発の過酷事故は何度も起きてた エピローグ 最後のごめんなさい   先進国で日本だけ、ガン死が増え続けています

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