出版社 : 書肆侃侃房
太平洋戦争中に大陸で再会した二人の幼馴染矢島泰介と岩城智也は、必ず生きて帰り、ともに助け合って生きようと誓う。戦後の高度成長期、二人の育った日田の林業は最大の危機を迎え、二人は仲間とともに実りのない戦いに挑む。だが、戦後日本の復興政策によって、国産杉材などの林業の衰退は止められない。木材輸入自由化政策は着々と進められていく。もう一人の幼馴染鬼塚良一もまた、法案をめぐり暗躍。そんななか、鬼塚の失踪事件が起こる。時代は移り、日田、福岡、東京と離れて暮らす子孫たちは期せずして日田に集まり、彼らの複雑に絡んだ糸が解きほぐされ、物語は驚愕の最終章へ。
秘められた谷で若き戦士たちは愛するもの、愛する谷を守るため剣を取った。谷の人々は時代に翻弄されつつ、もぎとられても切り裂かれても信じる道を進み、誇りと愛を失わなかった。その先が地獄とわかっていても。 生きて、誓いを守るために・・・・・・。 ーー『月と金のシャングリラ』漫画家・蔵西 亡命チベット人医師が遺したチベット愛と苦難の長編歴史小説 1925年、若きアメリカ人宣教師スティーブンス夫妻は、幾多の困難を乗り越え、チベット、ニャロン入りを果たした。現実は厳しく、布教は一向に進まなかったが、夫妻は献身的な医療活動を通じて人びとに受け入れられていく。やがて生まれた息子ポールと領主の息子テンガは深い友情で結ばれる。だが、穏やかな日々も長くは続かない。悲劇が引き起こす怨恨。怨恨が引き起こす復讐劇。そして1950年、新たな支配者の侵攻により、人びとは分断され、緊迫した日々が始まる。ポールもテンガもその荒波の中、人間の尊厳を賭けた戦いに身を投じてゆく。
現代台湾文学選、始動。 近代台湾史を貫く民草の悲哀を重層的に捉えた作品だ。勇気と保身、執着と後悔、正義とその代償。何かを得るために何かを失うのが人生なのだとしたら、彼らは誰ひとり間違ってなどいない。 ーー東山彰良(小説家) よどみなく流れる物語に心を打たれる。徐嘉澤は優れたストーリーテラーなのだ。そして知らぬ間に読者は、複雑で入り組んだ台湾の歴史の記憶のなかに引きこまれてゆく。 ーー郝譽翔(作家) 『次の夜明けに』は徐嘉澤の野心作である。台湾の大きな歴史と個人のささやかな欲望を一本の辮子(ピエンツ:お下げ)あるいは鞭子(ピエンツ:鞭)へと巧妙に編み上げて、苦悶の暗黒時代のなかに、ヒューヒューと音をたてながら、一すじ一すじの光明の所在を明らかにしていく。 ーー紀大偉(作家) 台湾の新世代作家の一人、徐嘉澤 本作が本邦初訳 1947年、二二八事件に始まる台湾激動の頃。民主化運動で傷つき、それまでの生き方を変えなければならなくなった家族。新聞記者の夫とともに、時代の波に飲まれないよう、家族のために生き、夫の秘密を守り続けて死んでいった春蘭(チュンラン)。残された二人の息子、平和(ピンホー)と起義(チーイー)は、弁護士と新聞記者として、民主化とは、平和とは何かを追求する。起義の息子、哲浩(ジョーハオ)は、歴史にも政治にも関心がなく、ゲイだと告白することで一歩を踏み出す。三代にわたる家族の確執を軸に、急激に民主化へと進む時代の波に翻弄されながらも愛情を深めていく一家の物語。
思わず息を詰めていた。市民の健康より利権や金を優先する政治と大企業、監視し合う人々……2012年の事件を題材とする本作のきな臭い空気がいまの日本に重なる。深呼吸するためには、主人公のように自らもがかねばならない。 ーー小山田浩子(小説家) 東海岸の町、陟州をご存知だろうか。石灰鉱山にまつわる謎の死、カルト宗教団、原子力発電所の誘致をめぐる対立などが混在し、欲望が渦巻く陟州を。驚くほど詳細なディテールで描かれた、いまにも手が届きそうなほど鮮明で、恐ろしいほどリアルな陟州を舞台に、この地で苦しい思春期を送った3人が再び舞い戻り、繰り広げられる憎しみと羨望のドラマがゆっくりと浮かび上がる。しかし、何といってもこの小説が読者の胸を熱くさせるのは、彼らのラブストーリーだ。こんなにのめり込んだ悲しい愛の大叙事詩は久しぶりだ。さすが『目連正伝』を書いたチェ・ウンミだが、これが初めての長編小説だとは。驚きだ。 ーークォン・ヨソン(小説家・『春の宵』著者) この作品は、2012年、江原道にある町で実際に起こった事件をモチーフにしているが、ルポや告発小説とは異なる。ソン・イナ、ユン・テジン、ソ・サンファという主人公を通して、一見平和そうな田舎の小さな町の裏側を生々しく描く。そこには富の分配から疎外され、不条理な生活を強いられた人々がいる。著者のチェ・ウンミは、陟州を金と権力によって手中に収めようとする者たちが現れるのも、私たちの生きている社会に問題があるのではないかと問い続ける。 作品の最後の方でソン・イナが、荒波が押し寄せては引いていく陟州の海岸をゆっくり歩いていくシーンがある。『第九の波』は、それでも私たちはこの社会で戦いながら生きていかなければならないという、チェ・ウンミ文学らしいテーマを垣間見せてくれる。 『第九の波』というタイトルは、19世紀ロシアの海洋画家イヴァン・アイヴァゾフスキーの代表作から取っている。
日本統治時代、戦争の影が色濃くなる中、 荒れ狂う時代の波に翻弄される主人公たちの 恋愛、家族、そして職場での人間模様……。 当時を代表する作家たちが綴る名作六編。 モダニズム作家、李箱の遺稿で、死後に発表された『失花』。妻の死後、中国を旅し、華やかな都会の中の孤独をアイロニーをこめて描いた『ハルビン』。日本にいられなくなり新しい生活を求めてやってきた澄子と、雑誌社に勤めながら小説を書く作家との未遂に終わる愛の逃避行『冷凍魚』。思想犯として投獄された男に本を差し入れ、一時釈放を待つ女。しかし住む家まで用意したのに男は迎えにきた父と帰郷してしまう『経営』。変わりゆく農村を舞台に土とだけ向き合って生き、すべてを失ったあと自らの命を絶つ父。帰郷し田んぼに出てはじめて父の思想にめざめる『土の奴隷』。妻とその女友だちとの交流を通して男と女の不可解な感情とすれ違いを描いた『秋』。 日本統治時代、戦争の影が色濃くなる中、 荒れ狂う時代の波に翻弄される主人公たちの 恋愛、家族、そして職場での人間模様……。 当時を代表する作家たちが綴る名作六編。 失花 실화 李箱(イ・サン/이상) 岡裕美 訳 ハルビン 哈爾濱 하얼빈 李孝石(イ・ヒョソク/이효석) オ・ファスン 訳 冷凍魚 냉 동 어 蔡萬植(チェ・マンシク/채만식) オ・ファスン 訳 経営 경 영 金南天(キム・ナムチョン/김남천) 岡裕美 訳 土の奴隷 続「第1課第1章」 흙의 노예 李無影(イ・ムヨン/이무영) カン・バンファ 訳 秋 가을 池河蓮(チ・ハリョン/지하련) カン・バンファ 訳 解説 渡辺直紀 文学史年表 著者プロフィール 訳者プロフィール
こぢんまりとこぎれいな新築の 共同住宅の薄い壁のあいだから、 内臓が露出するかのごとく暴かれる私生活。 ーーチョ・ナムジュ(小説家・『82年生まれ、キム・ジヨン』著者) 無理をして、我慢して、完璧を目指して、 結局悪い方に向かってしまう。 けれど密かに、静かに、マグマは猛ってる。 これは私たちの物語。 ーー深緑野分(小説家) 「ようこそ! 夢未来実験共同住宅へ」 都心にギリギリ通勤圏内。他のコミュニティから隔絶された山あいに国家が建設したのは、少子化対策の切り札となる集合住宅だった。「入居10年以内に子供を3人もうける」というミッションをクリアすべく入居したのは、4組の夫婦。やがて、お仕着せの“共同体”は少しずつ軋みはじめるーー。 奇抜な設定で、「共同保育」「家事労働」「労働格差」など韓国社会のホットで深刻な現実を描き出していると話題を呼んだ作品。2018年韓国日報文学賞候補作。
鮮やかな手触りのあるディティール、突き詰められた奇想、重層的に拮抗する語りの構造に夢中になって読み耽りました。 酉島伝法 なぜ男は、このような島に、腹を裂いて横たわっていたのか? 第二次大戦後、世界から隔絶された南洋の島。生き残った兵士の家族の壮絶な生き様を描いた表題作ほか、奇妙で不思議な魅力あふれる短編3作を収録。 雨とカラス 氷の像 雨の中、傘の下 国際あなた学会
東京で、長崎で、この惑星で、愛を求めて男女二人の魂が邂逅する。双子の弟を亡くし、一人の身体で二人分の命を生きる理咲、死者の魂を癒しながら、母を求め、父への復讐を果たそうとする陸、宇宙の端っこで惑う星たちの数奇な運命の物語。
南北に分断された朝鮮半島で1950年6月25日、北が南に攻め入り、一時的にソウルが陥落。 戦争に振り回されながらもしぶとく生きる人々の実態を描いた本作品は 時代を超えて、今も生々しく、新鮮だ。 ある日突然戦争が始まった。ソウルが陥落。砲弾に追われ、 行き場を失った人々は逃げ惑う。 夫が北に去ったあと、社長秘書とは名ばかりの愛人として生きるスンジェと、婚約まで考えた彼女がいるヨンシクの道ならぬ恋の行方は……。 戦争によって運命を狂わされていく人々の姿を描く韓国の文豪廉想渉の長編小説。 絶壁 宿命の朝 真空の炸裂 銃声に目覚めた心 反感 攻勢 移動戦線 潜伏 混乱 捜索 逃避行の一日 災難 出発の前 待望の中秋節 拉致 天を衝く火柱 解放の足跡 奇跡 彷徨の三叉路 再び出で立つ流浪の道 「驟雨」解説
光は闇の中でのみ煌めくという 苦しみが癒えることはなく、孤独を抱え、それでも、 日々、生きていかなければならない。 光と闇、生と死。心は彷徨いながら揺れ動く。 心のよるべなさを丁寧に掬いあげた初邦訳作家の短編集。 ストロベリーフィールド 時差 夏の正午 初恋 中国人の祖母 惨憺たる光 氾濫のとき 北西の港 途上の友たち 国境の夜 著者あとがき 訳者あとがき
きもちのいい奇天烈。たぶん、きもちがいいのは、それが本能とか骨とかに刻まれた、文様のようなものだから。知らなかった世界なのに、自分を見つけた気もしてる。 ーー最果タヒ 妹の右目からビームが出て止まらない。薔薇園にいくと必ず鰐がいた。眠たくて何度も泣いた。紙粘土で上司たちの顔をつくった。三人でヤドカリになった。サメにたべられて死にたいだけの関係だ。あたらしい名前がいる。おばけになっているときはなにも話してはいけない。肩車をした拍子に息子の股間が私の首にくっついてしまう。隠れ家的布屋さんは月に進出している。私は忍者で、すごいのだけれど、あんまりみんな信じない。……可笑しさと悲しみに満ちた53の物語 ビーム/ムキムキ/ものを溶かす汗/世界ブランコ選手権こどもの部決勝戦/へそのゴマ/狼/骨とテレビに出た/かなでちゃん/こっくりさん/私と鰐と妹の部屋/植物園/お墓/なにかが死んでいる/屋根裏部屋/チェーンソー/夜中/歯医者さんの部屋/サンバイザー/こういうのが好き/呪われてしまえ/トースター/紙粘土で友だちをつくった/刺繡/私はゼロ/夏/僕は泳いだ/二十歳になったら悪魔になる/てるてる坊主/おばけの練習/小説とケーキ/誕生日/虹/ジョン・トラボルタ/好きなひとと同じときに体調を崩してるとうれしいよね/ミイラ/いまどこにいるの/星を読まない/ヤドカリの家/トカゲの死/サランラップ/平凡/隠れ家的布屋さん特集2049/植物って知ってる?/仕事をやめる/斧に白いサインペンで名前を書く/シェルター/知らないひと/石の動画/鞄/サメ友だち/棺のなか/雷は庭に落ちた/あそび
私を死へと誘い、死を予感させる 花の精、花の香、花の色 それは美しく、妖しげに揺れる業火 妖花が悪夢を呼び……退廃の美へ その時私はあっと声を上げた。荒涼とした風が沸き起こり、丘の上に広がる空の闇が布のように二枚にめくれ、大きくはためいて揺れた。そしてお互いに包みあうように丸まり、私を飲み込もうと覆いかぶさってきた。それは巨大な食虫花の漆黒の花弁だった。
アメリカの文学賞、シャーリイ・ジャクスン賞2017 韓国の小説家で初の長編部門受賞作 どこで道を踏み誤ったのか…… 記憶にないあの日の事故 次第に明かされる真実とは 映画「ミザリー」を彷彿とさせる 息もつかせぬストーリーにひきこまれていく。 こんな書き方ができるのかと驚かされた。生臭さを感じるほどリアルに描かれた人間の振る舞いやひとつひとつの言葉が、見事なサスペンスを織り上げる。分岐点はどこだったのか? 事故の原因は何だったのか? 人生に“穴”を掘っていたのは誰だったのか? 「わかりあえなさ」という底なしの穴の前で読者も立ち尽くす。 ーー深緑野分さん (第2回出版社合同韓国文学フェアPOPより)
住宅街の中にある寂れた公園サンパーク。そこで浮浪者が殺された。元恋人への復讐を目論む鈴木真里、冷静な観察眼を持つ刑事竹内秋人、精神科病棟で友の帰りを待つ桃井沙奈。サンパークをのぞむ瑠璃色の古いアパートの一室を舞台に、それぞれの現在と過去がつながり、事件は思わぬ展開へ。
中学時代のちょっとした遊びの呪いか「二十歳までに三人死ぬ」という言葉にとらわれ、消息不明となっていた酒見君を探し出した源の前に現れたのは…「雲を離れた月」。大学時代の友人、榊君と久しぶりに再会した光安は、思い出話をするうちに彼のお面に手をかけたあの夜のことを振り返る「ある夜の重力」。50万円と引き換えに誕生日を手放してしまった渕上がたどり着いた先には…「7月2日、夜の島で」。「たべるのがおそい」掲載の「エスケイプ」の四編を収録。
楽しくてばかばかしくて切実な絶望で、今にも破裂しそう。 読んでる私も破裂しそう。せーのでいっしょに破裂したい! ーー藤野可織 「たべるのがおそい」で衝撃的な話題を呼んだ「回転草」、冬休みに母と妹とともに亡き祖父の湖畔の家で過ごした恐怖の日々を描いた「夜」、キリンになったミカを解体する描写からはじまる「彼女をバスタブにいれて燃やす」、記録的な吹雪の夜に現れたユキとの氷の生活を綴った「海に流れる雪の音」をはじめとする、愛と狂気と笑いと優しさと残酷さとが混在した10の物語。 「回転草」 「破壊神」 「生きものアレルギー」 「文鳥」 「わたしたちがチャンピオンだったころ」 「夜」 「ヴァンパイアとして私たちによく知られているミカだが」 「彼女をバスタブにいれて燃やす」 「海に流れる雪の音」 「よりよい生活」
それは春の宵のようにはかなくかなしい 苦悩や悲しみが癒されるわけでもないのに 酒を飲まずにいられない人々。 切ないまでの愛と絶望を綴る七つの短編。 酩酊の先に見えてくるのは、ミルク色の濃霧のなかで浮かび上がってくる、あのときの、あの人との記憶。ここに描かれているのは、思い出したくはない、けれど、思い出す必要がある、それを抱えながら生きていなかければならない「私」の生の痕跡。 ーー窪美澄 (第2回出版社合同韓国文学フェアPOPより) 生まれてまもない子どもを別れた夫の家族に奪われ、生きる希望を失った主人公ヨンギョンが、しだいにアルコールに依存し、自らを破滅に追い込む「春の宵」。別れた恋人の姉と酒を飲みながら、彼のその後を知ることになる「カメラ」。アルコール依存症の新人作家と、視力を失いつつある元翻訳家が出会う「逆光」、十四年ぶりに高校時代の友人三人が再会し、酒を飲み、取り返しのつかない傷を負うことになる「一足のうわばき」など、韓国文学の今に迫る七つの短編を収録。初邦訳。 春の宵 三人旅行 おば(イモ) カメラ 逆光 一足のうわばき 層
温泉×遊園地=前代未聞の“湯〜園地”実現記念 別府大学の温泉研究会に属する明礬湯太郎。温泉道を極めるため留年を続ける、十三先輩に誘われ、「別府フロマラソン」に出場することに。各温泉郷に散りばめられた「当たり湯」を一日で探し当て、見事一番にフロマラソンを湯破したものは、願いが一つ叶うという。淡い想いを抱き、優勝を目指す湯太郎の行く手には、強力なライバルが…市内の温泉を駆けずりまわる過酷なレースを、湯太郎は完湯することができるのか!? 特徴 ○著者は、別府市在住で小説家・別府大学講師の澤西祐典! ○小説の舞台は別府八湯! 別府の温泉、名所などが多数登場します ○登場する温泉については「別府八湯温泉道名人会」および別府大学学生が注釈協力 ○カバー裏には別府エリアマップを掲載