出版社 : 朝日新聞出版
「旅先の祭りのなかをこうしてぶらぶら歩くこと、それがわたしの祭りだった」-植民者の子として過ごした朝鮮での記憶を抱きつつ、旅商いの人々の漂泊と遠い夢に惹かれ、各地の祭りを尋ね歩く日々。友人たか子もまた、露店の親分との強烈な過去を持っていた。二人の心が漂う幽玄の世界を描く。
書下ろし長篇近未来パニック小説。我々は、日本国政府に対し、宣戦布告する。家族の絆を守るために、斎藤家の家長・総一郎は、核弾頭を手に立ち上がる-。「国家主義カースト制」によって、超管理国家となった2075年、日本国・東京。長年、住み慣れた家を政府の策略により追われた斎藤家は、毒ガスに汚染された危険な地域・ナリタニュータウンへの移住を強制される。政府の勧告を無視し、転居を拒む住民たちに対して国家権力は数々の嫌がらせや追い立てを画策する。政府の汚いやり方に怒り心頭に発した斎藤家の家長・総一郎は、住民のリーダーとして抵抗運動を展開するが-。
日中の溝が拡がる1930年代。美貌の娘・碧雲は神戸の日本人家庭に育てられた。突然舞い込む紙片に記されたメッセージー中国人であることを忘れるな!目に見えぬレールが彼女を故国へと導く。抗日運動の地下組織に身を投じる人々の、激烈な生を描く。
加速する日本軍の大陸侵略、次々と陥落してゆく都市。亡国の危機にさらされた中国を救おうと泥沼の戦場へ向かう同志たち。自分だけにしか出来ない仕事ー碧雲は地下組織からの使命に奔走する。乱世に生きる人間の宿命と愛。壮大なサスペンス・ロマン。
屋上から落下した氷の塊に頭を打たれ、昏睡状態に陥った夫。暗い予感に脅えながらも友情と希望の力に支えられ、看病を続ける若い妻-人の営みの中にある小さな宝石をすくいあげ、静かな感動をもたらすエリザベス・バーグの最新長編小説。
日本中が太平洋戦争一色に塗りつぶされていく頃、戸数40戸ほどの楚洲の村で、松堂家の人々は仲睦まじく暮らしていたが…沖縄本島北部「ヤンバル」と呼ばれる美しい自然のなか、病に、戦争に、命を脅かされながらも、素朴な愛を失わず生きる人々を詩情豊かに描く。沖縄県具志川市文学賞受賞。
平安時代後期、建礼門院に仕えた右京大夫。栄華を極める平家の若き貴公子・資盛を愛し、年上の芸術家・隆信に愛され、絵巻のように華やかな日々を過ごした彼女には、悲歎と怨嗟の後半生が待っていた…。源平の合戦という歴史の波に翻弄された生涯を哀しくも鮮やかに描いた、女流文学の珠玉。
江戸始まって以来の大奇人にして博識無双の平賀源内先生。謎に包まれた事件に手も足も出ない神田の御用聞・出っ尻伝兵衛のたっての頼みで、おもむろに解決に乗り出すが、さて結末やいかに。オランダ渡りの知識や奇想天外の推理で、事件の核心に迫る源内先生の痛快無類の捕物帳、初の文庫化。
静かな港町の造船所に謎の外国客船がやってくる。だが姿を現した巨大な船体には、もの悲しい雰囲気が漂っている。アスパシア・アン号。乗って来たアスパシア人とは、一体何者か。忘れられた国家の議会は、由緒正しくも、しかしデタラメに展開して…。生者と死者の交差する、現代の寓話。
黄巣の乱直後、滅亡の足音がする洛陽で活躍する泥棒、項郎と相棒。偶然に項郎と出会ってから、平凡な少女楊明珠は、共に秘宝の在処を捜すことになった。手掛りは、曹操の息子曹植と、兄の妻洛妃との許されぬ恋を秘めた「洛神の賦」のみ。自称白楽天の玄孫、白睦蓮、翠蓮姉妹、悪徳官僚・李衡佶と彼と組む大商人・陶恭、項郎たちを追う恵武らが入り乱れる。秘宝は一体誰の手に…。謎の核心は、洛神の賦。稀代の大泥棒、盗跖公項郎が狙う次なる獲物は、魏の「洛妃の宝珠」。時を超え、唐末の洛陽に蘇る悲恋…。波瀾万丈冒険時代活劇の復権。
1901年10月、霧の都ロンドンである事件が発生した。日英同盟締結の外交交渉にあたっていた日本の全権公使・林董が、何者かに狙撃されたのだ。現場に居合わせたスコットランド・ヤードのフラナガン刑事は、早速捜査に乗り出す。遺留品からポーランドの秘密結社が、さらにその後ろで糸を引くロシアの影が浮かび上がる。そのころ、ロシアの秘密警察オフラーナは、清の実力者・袁世凱に新たな刺客の派遣を要請していた。袁がロンドンに送り込んできた凄腕の刺客は、暗号名『朱雀』。京劇の女形役者出身の、美貌の青年だった…。
『お熱いのがお好き』『七年目の浮気』などお馴染の映画からマリリン・モンローがとびだし、影武者リンとコンビを組んで大活躍。あのマリリンが歌って、踊って、推理する小説ワンマンショー。
ある日、猫が人間の言葉を話すのを聞いた。その声に導かれるままに川上の村を訪れた「私」は、自分がそこで「猫のジャンナ」として生涯を終える運命にあることを知る…。日常のなかに潜む「異界」から帰還した男の物語。
羊飼いに学校はいらない、すべては自然が教えてくれる-太古からの牧畜世界サルデーニャ島。厳格な主人でもある父との葛藤をへて少年は成長をとげる。ある自伝のこころみ。