出版社 : 朝日新聞出版
静かな港町の造船所に謎の外国客船がやってくる。だが姿を現した巨大な船体には、もの悲しい雰囲気が漂っている。アスパシア・アン号。乗って来たアスパシア人とは、一体何者か。忘れられた国家の議会は、由緒正しくも、しかしデタラメに展開して…。生者と死者の交差する、現代の寓話。
1901年10月、霧の都ロンドンである事件が発生した。日英同盟締結の外交交渉にあたっていた日本の全権公使・林董が、何者かに狙撃されたのだ。現場に居合わせたスコットランド・ヤードのフラナガン刑事は、早速捜査に乗り出す。遺留品からポーランドの秘密結社が、さらにその後ろで糸を引くロシアの影が浮かび上がる。そのころ、ロシアの秘密警察オフラーナは、清の実力者・袁世凱に新たな刺客の派遣を要請していた。袁がロンドンに送り込んできた凄腕の刺客は、暗号名『朱雀』。京劇の女形役者出身の、美貌の青年だった…。
『お熱いのがお好き』『七年目の浮気』などお馴染の映画からマリリン・モンローがとびだし、影武者リンとコンビを組んで大活躍。あのマリリンが歌って、踊って、推理する小説ワンマンショー。
ある日、猫が人間の言葉を話すのを聞いた。その声に導かれるままに川上の村を訪れた「私」は、自分がそこで「猫のジャンナ」として生涯を終える運命にあることを知る…。日常のなかに潜む「異界」から帰還した男の物語。
羊飼いに学校はいらない、すべては自然が教えてくれる-太古からの牧畜世界サルデーニャ島。厳格な主人でもある父との葛藤をへて少年は成長をとげる。ある自伝のこころみ。
1934年大晦日、深夜の帝都・東京。滞日中の安南国皇帝が失踪し、その愛人が墜落死。警視庁切っての名警視が真相究明に乗り出したが、デマ・誤報・密告が錯綜し、元旦の首都は大混乱に陥る。秘宝「帝王」の行方と、動機不明の連続殺人事件の謎ーすべての探偵小説を超えたスーパー都市迷宮小説。
見知らぬ男に嫁ぐ17歳の冬の朝、母となりながらも出口の見えない夫との地獄、家を去り河川敷での創作にすべてを委ねた繚乱の日々、妻子ある男への消し尽くせない情念の炎、夫の死、愛を勝ち得た58歳の新妻の旅立ちー。激しさと優しさが織りなす新子川柳の世界のすべてを晒す、渾身の半生記。
夜も更けた大都会のあちこちに男と女の見果てぬ夢が咲き乱れ、やがて最期を迎えたクレオパトラの嘆きのように空しさだけがわだかまる。そして、稀代の色事師カサノバのため息にも似た底知れぬ幻滅の嵐が心の中に吹き荒れるー豪奢なひとときと蠱惑的なまざさしが交錯する愛のつづれ織り51篇。
十九世紀末、日本の琉球処分に反発、清国に支援を求めて海を渡った男たちがいた。福州琉球館を舞台に、憂国の思いに燃える彼らを待っていたのは…。歴史の波に翻弄されながらも、時代に立ち向かう琉球人の群像。
幕末、15のときに江戸は芝大門・惣兵衛親分の若い衆になって10年、渡世の義理をつとめてきたツブテの歌吉は、乗った船が難波して大海を漂っているところをアメリカの船に救助された。再び、渡世の義理を果たすべく、大西部をさすらいつつ絶世の美女を探しまわる挙銃無宿・歌吉の破天荒な冒険譚。
けがれなき悲しい存在ー。飽食の象徴、残パンを食べて育ち、やがて飽食の世界に連れ戻される豚たち。都市の近郊で畜産業を営む祖父とともに豚と暮らしてきたロック青年の六平と、変貌する街を見ながら「景色が壊れていく」と呟く家出少女・うさぎ…。ふたりの無垢な魂の彷徨を描く青春小説。