出版社 : 河出書房新社
「わたしが呼吸する空気のなかで流れてゆくこの瞬間たち、それらは花火のように空間のなかで弾じけて消える。わたしは時間の原子を自分のものにしたい。そして、本性からしてわたしには禁じられている現在を、捉えてみたい。現在は逃れてゆき、わたしは今の瞬間においてつねに現在である。」(本文より) 〈わたし〉から〈あなた〉へ、思考の背後に潜むものを求める言葉の奇蹟。 いまこの瞬間の生を描くという不可能な試みが生み出した、比類なきイメージの奔流。ウルフ、マンスフィールドと並ぶ世界文学の巨匠リスペクトルの極北にして頂点となる作品が、ついに刊行。
「宝の持ち腐れのような袋小路に、僕はいた。」 元ストーカーと暮らしながら他人のストーカーを覗き見る、落ち目のミュージシャン 極度の無駄嫌いで、ビジネスのため東京駅至近の高層マンションに住むM&A会社社長 緑豊かな公園前の低層マンション生活を送るも、突然樹木伐採が始まり困惑する女…… 麻布競馬場(作家)、推薦! “日常版「滅びの美学」--極限まで乾燥したユーモアが、人生の空虚を容赦なく照らし出す。” シニカルな笑いと冷徹な観察力で、都会に生きる人々のままならぬ人生を写す、令和の《没落小説》爆誕! 『バックミラー』発売記念 著者コメント 初の短編集です。厳選した12作の中には、名刺がわりにしたい作品が幾つもある一方、「これは見られたくない」という、作家や人間の恥部そのものを表出させつつ、思わぬ角度から光を当ててくる作品もありーー。結果的に、代表作と思える一冊になりました。
すべての疲れた人たちへーー。 未踏の文学を切り拓く作家による、 韓国と日本を舞台にした冬眠小説集の誕生! ・冬眠は、健康診断とカウンセリングを経て開始する。 ・万一に備えて冬眠者を見守るガイドが必要になる。 ・ガイドは、信頼できる人にしか任せられない。 ・冬眠者の多くが、はっきり記憶に残る夢を見る。
ビデオゲームのマップに入り込み、アフガニスタンの故郷で殺されようとしている叔父を救出に向かう少年(「きみはメタルギアソリッド5:ファントムペインをプレイする」)、配達され続ける息子の肉片を縫い合わせていく母親(「差出人に返送」)。パレスチナの囚人解放を求めてYouTubeでハンガー・ストライキを拡散する大学生たち(「ハラヘリー・リッキー・ダディ」)。いつまでも死ねない老女を見守る天使と地球(「ヤギの寓話」)。サルに変身し反乱軍を率いることになった青年の数奇な運命(「サルになったダリーの話」)??。 9・11以後の数多の瓦礫をさまよう亡霊を、神話的な笑いで紡ぐ戦争文学の新地平。最注目作家による傑作短篇集。
喪失、孤独、ユーモア、優しさ…心の内に秘める思いが鋭く豊かに描かれた唯一無二の作家による珠玉の11編。13年ぶり最新短編集!これまでの優れた短編の作品群に対してPEN/マラマッド賞を受賞。ピューリッツァー賞、ストーリー賞、ロサンゼルス・タイムズ文学賞、マーク・トウェイン・アメリカン・ヴォイス・イン・リテラチャー賞の最終候補作。「ロサンゼルス・タイムズ」紙、「エスクァイア」誌、「ヴァルチャー」誌、米国公共ラジオ放送などで年間ベストブックに選出!
「これほどの強度の小説は滅多にないし、ここには真の意味での熊がいる。」--古川日出男 「いつかこんな夢の中に自分もいたような気がする。止まらない余震のような小説。」--斎藤真理子 生きるためにもがく者、 死ぬための場所を探す者ーー 暴力から逃れた女を匿う山奥の家に暮らす、リツとアイ。 津波ですべてを失ったサキと、災後の移住者であるヒロ。 震災から7年の地で、身元不明の幼子をめぐり、4人の女たちの運命が、いま、動き出す。
本文のみならず、カバー、表紙、扉、帯、そして、三島氏自身による「「假面の告白」ノート」を含む、当時の「書き下ろし長篇小説」シリーズの月報までを再現。 三島氏が広告宣伝のために書いたという「作者の言葉」、三島氏の死去の直後に書かれた坂本一亀氏による回想エッセイ「『仮面の告白』のころ」を含む小冊子も封入。 ※部数限定復刻につき、重版はいたしません。 平野啓一郎氏推薦! 「私は永遠に私でしかない。──絢爛たるペダントリーと華麗な技巧、瑞々しくも官能的な詩情に酔わされながら、読者が最後に向き合うのは、素顔の三島の孤独な自己認識だ。この告白は悲痛だが美しく、そして確かに、天才の開花だ。」
影を買う店 使者 猫座流星群 陽はまた昇る 迷路 釘屋敷/水屋敷 沈鐘 柘榴 真珠 断章 こま 創世記(写真=谷淳志) 蜜猫 月蝕領彷徨 穴 夕陽が沈む 墓標 更紗眼鏡 魔王 遠い日の童話劇風に 青髭 連祷 清水邦夫&アントワーヌ・ヴィオロディーヌへのトリビュート
2023年12月、イスラエル軍の空爆によって命を落としたパレスチナの詩人、リフアト・アルアライール。忘却に抗うため、そして想像力によってあたらしい現実を立ち上げるため、彼が私たちに届けた、23の反撃の物語。 【目次】 わたしが死なねばならないとしても リフアト・アルアライール アリー・アブーニァマによる序文 編者による序文 用語解説 Lは生命(ライフ)のL ハナーン・ハバシー 戦争のある一日 ムハンマド・スリーマーン 助かって ラワーン・ヤーギー カナリア ヌール・アル= スースィ 土地の物語 サーラ・アリー ガザで歯が痛い サミーハ・エルワーン 僕は果たして出られるのか? ヌール・アル=スースィ ある壁 ラワーン・ヤーギー 不眠症への願い ヌール・エル・ボルノ 包み ムハンマド・スリーマーン ひと粒の雨のこと リフアト・アルアライール 撃つときはちゃんと殺して ジーハーン・アルファッラ オマル・X ユーセフ・アルジャマール 我々は帰還する ムハンマド・スリーマーン 下から ラワーン・ヤーギー 十五分だけ ワファー・アブー・アル= コンボズ 家 リフアト・アルアライール ネバーランド タスニーム・ハンムーダ あっというまに失って イルハーム・ヒッリース ぼくのパンなんだ タスニーム・ハンムーダ かつて、夜明けに シャフド・アワダッラー 老人と石 リフアト・アルアライール 傷痕 アーヤ・ラバフ 作者たち 謝辞 訳者あとがき 解説 岡真理
思春期の通過儀礼たるロマンチックなプロムの顛末を描く表題作のほか、クールな殺人兵器レッド・ライダーBB銃をめぐるクリスマスの思い出、恋に疼き目が霞んだわたしが提出した「読書感想文」が招く思わぬ波紋、無敵の喧嘩ゴマが嵐を吹き寄せる運動場の決闘、隣家に越してきたポーランド人の女の子に誘われたパーティの行方、レモンツイストみたいな微笑みを浮かべる「最高の女の子」とのデートなど、1960年代の「プレイボーイ」誌で活躍した個性的ユーモア作家の傑作を精選。日本オリジナル作品集。
結婚記念日に夫から贈られた植木は、「贈り主様にそっくりな『花』」をつける不思議な木ー「未の木」。少年は、言葉の力で世界を紡ぐことができたー「ジュヴナイル」。四十年前、現政権が発足した日に大災害が生じたあの地へと、私は帰ってきた、なぜ?-「流下の日」。山腹に生じた緋色の世界に迷いこんだ末にー「緋愁」。“うみの指”に襲われる世界と、私の世界ー「鎭子」。“しお”に覆われゆく風景、“しお”に病みゆく身体、“しお”と共存する人々、ささやかな日常から織りなされる歴史ー「鹽津城」。日本SF大賞2冠作家・飛浩隆、8年ぶり待望の作品集。
【斉藤壮馬さん(声優)、川野芽生さん(作家・歌人)推薦!】 「世界が乱反射して、隙間がことばになる。 わたしも忘れ物を取りに戻らなくちゃ。 渦雲同盟に、あなたも、加わってみませんか。」--斉藤壮馬 「気をつけて。高原英理の言葉は、あなたの中で増殖し、 あなたを作り替えてしまう、 --夢という名のウイルスだから。」--川野芽生
【選考委員 小川哲・町田康・角田光代・村田沙耶香、笑撃!】 「『これは面白い』と感激した。物語がどんどん加速し、最後まで可笑しさや面白さが減速しないまま走りきっている。」--小川哲 「身体が変調する感覚、言葉への妄執、不潔への恐怖、狂気の反転、言葉による魂の放恣な垂れ流れ。恐怖と笑いが同時に腹の底からせり上がってくる。」--町田康 「こちらの予想をかんたんに裏切ってくる独創性がどんどんスパークしていく、その意外性がおもしろかった。」--角田光代 「発狂ぎりぎりで瞼の裏側に現れる万華鏡のようで、どんどん鮮やかになっていく作品世界にのめりこんだ。」--村田沙耶香 【俳優・仲野太賀、ラッパー・TaiTan、激賞! 各界で話題沸騰!】 「壊れた感情が、もの凄い速度で事故ってる。 読後感は瀕死だった。 なんとか生きてる、まだ人間やれてる… 空いた口から出てきた言葉は『速すぎて、止まってみえる…即ちハイパーたいくつ…!?』」 ーー仲野太賀(俳優) 「言葉が勝手に“来る”。 読み手の眼球を突き破って“来る”。 その速度と乱暴さが気持ちいい。 超、面白いです」 ーーTaiTan(ラッパー・Podcast「奇奇怪怪」パーソナリティ) 【日常から退屈を引き剥がすつもりが、なぜか服も人生もすべてボロボロにーー】 職場では1000倍の支払いミス。私生活では高額な衣服の買いすぎでクレカ借金。62万円
【第61回文藝賞受賞作】 パラノイアックな人物の視点を描ききる勇気と高度な文章技術。新人離れした作品である。 --小川哲 誰が存在したかも、語り手の性別すらも明示されないあいまいさ。たしかなことが何ひとつないからこそ、この小説は強いのだ。--角田光代 尋常の景色、おそらくは平穏で退屈な田舎の景色をそのまま描いて異常の景色となす不思議の筆力。美事だった。--町田康 特別な文体と出会う喜びを覚え、言葉自体に強烈に惹きつけられた。この作品が宿しているものの大きさに、ただただ圧倒された。--村田沙耶香 十年ぶりに、坂と崖に囲まれた故郷の田舎町をおとずれた「わたし」。 墓地へと続く道を進むと、死んだはずの幼馴染「キイちゃん」の声が語りかけてくる。 行方不明の母、蒙昧な神のごとき父、汚言機械と化した祖母…… 不確かな記憶が流れ込み、平凡な田舎に呪われた異界が立ち上がる。 圧倒的異才が放つ、衝撃のデビュー作!
●『New me -文藝×monogatary.com小説集ー』収録作品 大賞作 「白山通り炎上の件」 有手窓 ★YOASOBI新曲「New me」として楽曲化 優秀作 「サイボーグになりたいパパゲーノ」 東旺伶旺 「放浪する顔面」 佐加島テトラ 佳作 「青い木と遺棄」 目榎粒子 「グリーンベルベットの背骨」 青井井蛙 「タイポグリセミア」 本條七瀬 「さよならの海」 冬村未知
第46回野間文芸新人賞候補作 安堂ホセは、物語の磁石を持っている。現実世界で排除された不都合で不穏でヤバい砂つぶてのような言葉を、暴力と倫理の磁石で吸い寄せ、反発させ、交渉させ、渦巻かせる。あらゆる倫理が覆され、暴力が吹き荒れている今、「暴力から暴を取りはずす旅」の物語が出現したことは、一つの事件だ。 読もう! 旅立とう! 旅によって運ばれるのは、あなた自身だ。 ──柳美里 強烈な皮肉とクールな文体。 私たちの眼差しを切り開く手術(オペ)のような小説。 どこへ連れていかれるのかわからず、ひと晩で読み終えた。 ──佐藤究 語りと構造、ストーリーの面白さの中に、資本主義や植民地主義、ウクライナ戦争やガザでの虐殺についての鋭い批判が、当然のように滑り込む。 極めて刺激的かつ、開放的。国境を越えて、世界にリコメンドしたい。 ──須藤輝彦 この小説を読むことは自らの感性を問い直すことである。 異性愛主義や人種という不適切なカテゴライズにあらがうための、必読の一作。 ──渡邉英理 典型的な物語に閉じ込められないための強烈な意志、ねじ伏せられない悪意と復讐がこれほどまでに徹底された作品はなかなかない ──水上文