出版社 : 河出書房新社
五人のT大生の間に生じた確執は、やがて恐しい決闘へと発展していった…。古き良き時代の学生生活と雄大な自然とを背景として、ある完全犯罪の顛末を描く名品「噴火口上の殺人」、ドンデン返しの連続で若き日の佐野洋を唸らせた「四月馬鹿の悲劇」、欺瞞を許しておけない性格の男の悲劇「真実追求家」など、戦後本格派の雄の全短篇から選りすぐった傑作、全10篇。
敬虔なイスラム教徒のアリと、侯爵家の娘でキリスト教徒の美しいニノは、愛し合っていた。しかし、異なる宗教と異なる民族という東西2つの世界に引き裂かれ、越えなければならない深い断絶ゆえに、本書は恋愛小説以上の高貴で美しい物語になった。カスピ海沿岸の古都バクーを舞台に繰り広げられる幸福と絶望、第1次大戦とロシア革命前夜の新興小国の悲劇を描いたこの小説は、1937年にウィーンで刊行されベストセラーになって以来、数奇な運命をたどることになる。そして2000年、2度目の奇跡の復活を遂げた本書は、ニューヨーク・タイムズ紙など多くのメディアから最高級の讃辞で迎えられた。
大学院の研究室で起こった奇妙な密室殺人事件の真相とは?戦後本格推理の幕開けを告げた著者デビュー作「犯罪の場」から円熟期の傑作「細すぎた脚」「月を掴む手」まで全十八篇。入手困難の作品集『犯罪の場』『黒い眠り』の二冊を完全収録のうえ、単行本未収録作品四篇を加えて再編集!名手の筆になる、本格推理サスペンスの華麗な融合をご堪能あれ。
二十年ぶりに刑務所をでた共産主義者。色白の少女を手にしたスカウトマン。刺激を求めて北朝鮮へとぶ劇団主宰者。賞をねらうAV監督。重い過去をもつ不安神経症者。中学時代を振りかえる元銀行マン。そして、死体ビデオ撮影をはじめた友と、育児ジャンキーと化した妻と僕。…甘い薫りに包まれた、連作小説全七編。
静岡県知事選挙を目前にして、前文部科学省事務次官であり第二十六代目由比本陣当主・神谷孝範氏が殺害された。そして、同日同時刻に東京で起こった、もう一つの「密室殺人事件」。複雑に絡み合う人間関係、そして利権問題…。横溝正史の「本陣殺人事件」が、現代に甦る。
八か月の長い冬眠を生きるヤマネの夢物語、不完全雌雄同体カタツムリの愛、莫大な富の蓄積にすべてをかけるフンコロガシ、瞑想の世界に心の平安を求める元麻薬探知警察犬-ヴィスコヴィッツは彼らの生態・環境を生きつつ、情熱的な愛に燃え、野心を抱き、あるいは権力におぼれ、人生の目的を求めて悩む。残酷でペシミスティックでふしだらで、だけど大笑いしてしまう、ケダモノの魅惑!言葉の魔術師カルヴィーノの再来と各国で絶賛。イタリア文学待望の大型新人デビュー作。
「お前はすけべえな女だ。これしか能がないんだ」彼が言った。「あなたがこうした」私は答えた-。刹那の性愛を求めて夜の街を彷徨う女たち。満たされぬ心の叫びを、哀切に描き出す衝撃作。はかなく危うい愛の形。
どこかよく分からない場所で、何時かよくわからない真夜中に、ぼくは何度目かの失恋をした。大阪発東京、カップル+男2人。4人それぞれの思いを乗せたドライブ旅行のゆくえは。
浮世絵の始祖・岩佐又兵衛の遺作は実在するのか?明治期、日本から持ち出された名画文集の行方と、消息を断った婚約者の謎…巧妙な美術業界の罠に導かれ、ニューヨークと京都の迷路をさまよう、涼子の孤独な魂の遍歴を描く蓮如賞受賞作家の初めてのミステリアス・ロマン。