出版社 : 白水社
今日はアマの『ダホメ王国最後のアマゾン』がナショナル・シアターで上演される初日。黒人として女性として日々受ける差別に立ち向かってきたアマが、50代になってついに栄光をつかんだのだ。記念すべき今宵、家族や友人たちがここに集う。演劇界を共に生き抜いてきた戦友、母の希望とは異なるがしっかりした自分の意見を持つ娘をはじめ、いまだ不遇をかこつ者、努力して社会的成功を手にしたエリートなど、背景も様々な12人の女性が、それぞれの人生を振り返っていく。子ども時代のレイプ、小さな町での差別、子どもを抱え必死に働いてきたこと、エリートとなった娘との不仲、実の両親を知らないことなど、みな人知れず心に傷を抱えている。大切なのは共にいること。人生、捨てたもんじゃない。笑って泣かせ心揺さぶる真実の物語。2019年度ブッカー賞受賞作。
作家とはだれか、物語とはなにか、事実と虚構、記憶、女性、戦争、越境、ナショナリティ…文学をめぐる冒険、その愛とアイロニー。ロシア・アヴァンギャルド研究者としても知られるクロアチア語作家の長篇、待望の翻訳。ピリニャークの日本滞在記を糸口に、あらゆる文学的主題が縦横に語られるオートフィクション。
私はどこか遠いところで子供のように生まれ直したい。自分で自分を生みたい。男性優位の社会の中で、国境、民族、宗教などの境界線を越え、制度から抜け出そうともがく女性たち。忍び寄る暴力の影。欧米からも注目される、マレーシアを代表する女性作家、初の短篇小説集。英国PEN翻訳賞受賞。
1945年9月、日本人も犠牲となった「三叉山事件」をモチーフに、ブヌン族の少年ハルムトの成長を描いた感動の大作。17年かけて執筆し、台湾・中華圏の文学賞を制覇した注目作、ついに日本上陸! 上巻では、終戦前後の混乱した状況下で「三叉山事件」が起こるまでが描かれる。 台湾原住民族のブヌン族の少年・ハルムトとハイヌナンは、子供のころから野球が好きで、アミ族のコーチ、サウマが率いる野球チームに入る。1941年春、霧鹿部落を離れ、花蓮港中学に進学した二人は甲子園出場を目指して練習に励む日々を送る。だが真珠湾攻撃が起こり、野球どころではなくなってしまう。 ハルムトは、日本人が営む料理屋で働きながら学校に行くことになり、学校や仕事場で日本人、漢人、他の原住民族の学生たちと接する中で、ブヌン族としての自覚を強くし、ハイヌナンに友情以上の思いを抱くようになる……。 下巻は「三叉山事件」が実際に起こってからの出来事が中心に描かれる。 第二次世界大戦が終結して間もない1945年9月10日、米軍の輸送機が捕虜を乗せて沖縄からフィリピンのマニラへ向かっていた。台湾上空を飛行中、台風に襲われ、台東に位置する三叉山の付近に墜落。この霧鹿部落出身で山に詳しいハルムトは、駐在所の城戸所長から捜索を頼まれるが、行く気持ちになれずにいた。悩んだ末、ハルムトは捜索隊に加わり、山の中に入っていく。そして負傷したアメリカ兵のトーマスを偶然発見するが……。 ブヌン族の歴史を背負いながら、日本統治下の多民族多言語の世界で青春時代を過ごしたハルムトは、戦争による心の傷を抱えながら、多くの人たちの影響を受けて成長していく。終戦前後の台湾社会を原住民の視点から描いた作品の中で、これほど日本人との関わりを細やかに書き込んだものは他にない。三叉山事件で犠牲になった城戸八十八は「城戸所長」として本書に実名で登場している。 台湾の美しい自然を背景に、その土地で生きてきた人々の歴史と記憶を神話的な物語としてハルムトに語る祖父の言葉が全篇に散りばめられ、ハルムトを導いていく。祖父の物語からはブヌン族の心が、野球のコーチのサウマの物語からはアミ族の心が、料理屋の雄日さんや駐在所の城戸所長の物語からは日本人の心が、ハルムトの心の中に注ぎ込まれていく。 物語作家としての真骨頂が発揮された、後世に残る名作。
1945年9月、日本人も犠牲となった「三叉山事件」をモチーフに、ブヌン族の少年ハルムトの成長を描いた感動の大作。17年かけて執筆し、台湾・中華圏の文学賞を制覇した注目作、ついに日本上陸! 上巻では、終戦前後の混乱した状況下で「三叉山事件」が起こるまでが描かれる。 台湾原住民族のブヌン族の少年・ハルムトとハイヌナンは、子供のころから野球が好きで、アミ族のコーチ、サウマが率いる野球チームに入る。1941年春、霧鹿部落を離れ、花蓮港中学に進学した二人は甲子園出場を目指して練習に励む日々を送る。だが真珠湾攻撃が起こり、野球どころではなくなってしまう。 ハルムトは、日本人が営む料理屋で働きながら学校に行くことになり、学校や仕事場で日本人、漢人、他の原住民族の学生たちと接する中で、ブヌン族としての自覚を強くし、ハイヌナンに友情以上の思いを抱くようになる……。 下巻は「三叉山事件」が実際に起こってからの出来事が中心に描かれる。 第二次世界大戦が終結して間もない1945年9月10日、米軍の輸送機が捕虜を乗せて沖縄からフィリピンのマニラへ向かっていた。台湾上空を飛行中、台風に襲われ、台東に位置する三叉山の付近に墜落。この霧鹿部落出身で山に詳しいハルムトは、駐在所の城戸所長から捜索を頼まれるが、行く気持ちになれずにいた。悩んだ末、ハルムトは捜索隊に加わり、山の中に入っていく。そして負傷したアメリカ兵のトーマスを偶然発見するが……。 ブヌン族の歴史を背負いながら、日本統治下の多民族多言語の世界で青春時代を過ごしたハルムトは、戦争による心の傷を抱えながら、多くの人たちの影響を受けて成長していく。終戦前後の台湾社会を原住民の視点から描いた作品の中で、これほど日本人との関わりを細やかに書き込んだものは他にない。三叉山事件で犠牲になった城戸八十八は「城戸所長」として本書に実名で登場している。 台湾の美しい自然を背景に、その土地で生きてきた人々の歴史と記憶を神話的な物語としてハルムトに語る祖父の言葉が全篇に散りばめられ、ハルムトを導いていく。祖父の物語からはブヌン族の心が、野球のコーチのサウマの物語からはアミ族の心が、料理屋の雄日さんや駐在所の城戸所長の物語からは日本人の心が、ハルムトの心の中に注ぎ込まれていく。 物語作家としての真骨頂が発揮された、後世に残る名作。
天使像が持つ木製のトランペットを吹き鳴らしたら、いったい何が起こるのか。深夜の教会に忍び込んだ二人の少年の冒険を描く「トランペット」。ある暑い日、ロンドンの喫茶店で出会った男が語り続ける同居女性の失踪話に薄気味悪さがにじむ「失踪」。三百五十年の歳月を生きてきた老女の誕生日にお屋敷に招かれた少女の話「アリスの代母さま」ほか全7篇、繊細な描写に仄かな毒と戦慄がひそむデ・ラ・メア傑作選。
語り手は、19世紀半ばの大飢饉に陥ったアイルランドで家族を失い、命からがらアメリカ大陸に渡ってきたトマス・マクナルティ。頼るもののない広大な国でトマスを孤独から救ったのは、同じ年頃の宿無しの少年ジョン・コールだった。美しい顔立ちに幼さの残る二人は、ミズーリ州の鉱山町にある酒場で、女装をして鉱夫たちのダンスの相手をする仕事を見つける。初めてドレスに身を包んだとき、トマスは生まれ変わったような不思議な解放感を覚える。やがて体つきが男っぽくなると、二人は食いっぱぐれのない軍隊に入り、先住民との戦いや南北戦争をともに戦っていくー。西部劇を彷彿とさせる銃撃戦、先住民の少女と育む絆、はらはらする脱走劇、胸に迫る埋葬場面などが、勇敢な兵士でありながら女としてのアイデンティティーに目覚めたトマスによって生き生きと語られる。
『土台穴』『チェヴェングール』と並ぶ代表作 プラトーノフが一九三三年から三六年にかけて執筆した長篇『幸福なモスクワ』。この「モスクワ」とは、当時、スターリン体制下で社会主義国家の首都として変貌を遂げつつあった都市モスクワと、そこから名前をとった主人公モスクワ・チェスノワをあらわす。彼女は、革命とともに育った孤児であり、美しいパラシュート士へと成長していく。来たるべき共産主義=都市モスクワを具現化するような、大胆で華やかな女性として活躍するモスクワ・チェスノワだが、思わぬアクシデントによってその嘱望された前途は絶たれる。だが、彼女の新たな人生と物語とが始まるのはむしろそこからだ。 モスクワの街を彷徨するモスクワ・チェスノワ、その彼女を取り巻く男たちーーソヴィエトの行政官ボシュコ、小市民コミャーギン、機械技師サルトリウス、医師サンビキンーーは、彼女の言葉や振る舞いに触発され、思索し、対話し、自らの進むべき道を模索する。モスクワを中心に世界は回転するーー自らの思い描く共産主義の理念と、ソ連社会の現実との狭間で苦闘したプラトーノフの軌跡がここにある。特異な世界観と言語観で生成するソ連社会を描いた作家の「未完」の代表作。
ショパン弾きの老ピアニストがバルセロナで出会ったベアトリスに一目惚れ、駆け落ちしようと迫るが…。求愛する男と求愛される女のすれ違う心理に迫る、ピリ辛ロマンチック・ラブコメディ!
霧と雨に閉ざされた絶海の孤島での「眠る人魚の誘惑」、単調で退屈な工場で働く会計係による「王殺しの冒険」-いずれが現実で、いずれが幻覚か。触れては、また遠ざかる二つの物語。執筆後30年を経て発表された、幻のデビュー作。
ポポカテペトルとイスタクシワトル。二つの火山を臨むメキシコ、クアウナワクの町で、妻に捨てられ、酒浸りの日々を送る元英国領事ジェフリー・ファーミン。1938年11月の“死者の日”の朝、最愛の妻イヴォンヌが突然彼のもとに舞い戻ってくる。ぎこちなく再会した二人は、領事の腹違いの弟ヒューを伴って闘牛見物に出かけることに。かつての恋敵ラリュエルも登場し、領事は心の底で妻を許せないまま、ドン・キホーテさながらに破滅へと向かって突き進んでいく。ガルシア=マルケス、大江健三郎ら世界の作家たちが愛読した20世紀文学の傑作、待望の復刊!
語り手は一匹のヤモリ。アンゴラの首都ルアンダで、フェリックス・ヴェントゥーラの家に棲みつき、彼の生活を観察している。フェリックスは人々の「過去」を新しく作り直す仕事をしている。長年にわたる激しい内戦が終わり、アンゴラには新興の富裕層が生まれつつあるが、すべてを手にしたかに見える彼らに足りないのは由緒正しい家系なのだ。そんな彼らにフェリックスは、偽りの写真や書類を用いて新しい家系図と「過去」を作成して生計を立てている。ある日、フェリックスのもとを身元不詳の外国人が訪ねてくる。口髭を生やし、古臭い服装をしたその男は、「名前も、過去も、すべて書き換えてほしい」と頼み、大金を積む。フェリックスは悩むが、結局、ジョゼ・ブッフマンという新しい名前をはじめ、すべてを完璧に用意する。ブッフマンは大喜びし、以後、足繁く訪ねてくるようになる…。2007年度インディペンデント紙外国語文学賞受賞作。
歴史の大変動期に異なる女として個別の生を生きながら、おのおのが周縁的存在として苦しみ、抗う。そこにくり返し現れる“ウィリアム”という名の男…。500年の時空を超え、4人の女“アーダ”たちの生と死がループする!
人生の旨味と苦味と可笑しみを洒脱な筆致で描く、著者92歳の到達点!パリ文壇最長老による生前最後の傑作短篇集。「ある受刑者」「サンドイッチマン」「記憶喪失」ほか全13篇収録。
『分解する』『ほとんど記憶のない女』につづく、「アメリカ文学の静かな巨人」の三作目の短編集。内容もジャンルも形式も長さも何もかもが多様なまま自在に紡がれる言葉たちは、軽やかに、鋭敏に「小説」の結構を越えていく。作家が触れた本から生まれたミニマルな表題作「サミュエル・ジョンソンが怒っている」をはじめ、肌身離さず作家が持ち歩くという「小さな黒いノート」から立ち現れたとおぼしき作品など、鋭くも愛おしい56編を収録。
1989年夏の東ドイツ。大学で文学を学ぶエドは、恋人を事故で亡くして絶望し、人生からの逃亡を決意する。向かったのはバルト海に浮かぶ小さな島、ヒッデンゼー。対岸にデンマークを望むこの島は、自由を求める人々の憧れの地だ。島に到着したエドは、さしあたり一夏を過ごそうと「隠者亭」の皿洗いの職に就く。実質、島はクルーゾーというカリスマ的な男によって統治されていた。強烈なパワーで周囲を動かすクルーゾーに、エドは畏怖と憧れを抱く。やがて、クルーゾーは詩への情熱からエドを特別な存在として認め、二人は心を通わせ、深い絆で結ばれていく。だが、夏が終わり、秘かに国境を越えようと住人が一人また一人と去っていくと、平穏な日々に亀裂が…。最後に一人、島に残った男が知る世界の大転換と、友との約束とは?夢と現実の境界を溶かす語りで国家の終焉を神話に昇華させた、ドイツ書籍賞受賞作。
コロナ後を生き抜く キーワードは「やさしさ」 ユーモア溢れる筆致で多くの読者を魅了した『女の答えはピッチにある』(サッカー本大賞2021受賞)の著者による、韓国で大反響のエッセイ、日本上陸! 新型コロナウィルスの世界的な流行で生活は一変し、人と関わらない日々が普通になりつつある。今まであたりまえだと思っていたことが、そうではなかったと思い知った著者が、日常生活を振り返り、自分がつらかったとき、困難に直面したとき、他者の大小さまざまな「やさしさ」がいかに自分自身を立ち上がらせてくれていたのか、しみじみと実感したエピソードが本書には詰まっている。 『多情所感』とは、 韓国の四字熟語「多情多感 (思いやりが深いこと )」にちなんだ造語。コロナ前には気づかなかった、女子サッカーチームの先輩たちから自然に受けていた励まし、偽善的な上司からの悟り、客室乗務員時代の女性たちの連帯、社会にはびこるマウントや偏見、SNSの言葉の落とし穴、塞ぎ込んでいたときに救ってくれた友人の料理のあたたかさ…。タイトルの通り、著者の繊細な感受性が日常生活や社会の様々な層の感情を掬いあげていくが、それには秘密がある。著者が小学校3年生の時に、大人たちが何気なく使う言葉や表現でクラスメートが深く傷つけられていると感じた記憶が明かされる。その姿が自らの深い傷になり、今も反芻し、差別する側の目が自らの内にないか常に問いかけている著者の繊細さがあるからこそ、本書の言葉は人を包みこむやさしさをもつ。 大きく感情を揺さぶられながら、相手の立場で考える想像力を取り戻す力を与えてくれる、心の点滴のような一冊。 日本の読者のみなさんへ 第一部 海苔刷毛置き、みたいな文が書きたい 旅に正解はありますか 逆さま人間たち サッカーと大家 虚飾に関して 自分だけを信じるわけには、いかないから 先祖嫌悪はおやめください 納涼特集 私の幽霊年代記 スーパーで、ようやく 彼のSNSを見た 本で人生が変わるということ Dが笑えば私もうれしい──#私がもう使わない言葉 第二部 ひとつの季節を越えさせてくれた 扉の前で、今は そんな私たちが、いたんだってば 飛行機はわるくなかった あるミニマリストの試練 wkw/tk/1996@7'55"/hk.net プーパッポンカレーの喜びと悲しみ ひょっとして、これは私のソウルフード あとで会おうね、オンラインで コーヒーと酒、コロナ時代のスポーツ 旬の食べ物をしっかり摂ること ひとつの季節を越えさせてくれた あとがき──コロナ時代の近況と、書かれていないやさしさについて 訳者あとがき