出版社 : 白水社
台北近郊の第四原発が、原因不明のメルトダウンを起こした。生き残った第四原発のエンジニア・林群浩の記憶の断片には次期総統候補者の影が…。戦慄の至近未来サスペンス。呉濁流文学賞、華文SF星雲賞受賞。
V・ウルフも嫉妬した短篇の名手の傑作13篇 初めて夫に欲望を感じた直後に、妻が夫の本心を知る「幸福」。不慣れな外国で家庭教師が出会った親切な老人との楽しい午後はやがて……「小さな家庭教師」。不穏なお迎えが来て老女を怯えさせる「まちがえられた家」。裕福な女が、施しを与えた貧しい女に対し、夫の何気ない一言から嫉妬の炎を燃やす「一杯のお茶」。夫の友人の熱情を弄ぶ人妻を描く「燃え立つ炎」。小さな幸せを、思わぬ言葉で粉々に打ち砕かれる独身女性「ミス・ブリル」。大人社会そっくりの歪んだ人間関係にからめとられた少女たちの「人形の家」……。女たちはいつだって、喜びと哀しみ、期待と落胆、安堵と不安の間を揺れている。 「外科医のメスの繊細さ」で「些細な出来事によって人生の重大事に迫る」と評される短篇の名手、キャサリン・マンスフィールド。交流のあったヴァージニア・ウルフも「私のライバル」と最大級の賛辞を贈っている。 本書は日常に潜む皮肉を鋭く抉り出す鮮烈な13篇を厳選した日本オリジナル短篇集。2012年にロンドン大学で新たに発見され、自伝的要素が濃いとされる未発表原稿「ささやかな過去」も収録。
鎧の中はからっぽーー奇想天外な騎士道物語 時は中世、シャルルマーニュ大帝の軍勢に、サラセン軍との戦争で数々の武勲を立てた騎士アジルールフォがいた。戦場にあっては勇猛果敢、謹厳極まる務めぶりで騎士の鑑ともいうべき存在。だが、その白銀に輝く甲冑の中はからっぽだったーー。肉体を持たず、強い意志の力によって存在するこの〈不在の騎士〉は、ある日その資格を疑われ、証を立てんと15年前に救った処女を捜す遍歴の旅に出る。彼に恋して後を追う女騎士ブラダマンテ、さらにその後を追う若者ランバルドの冒険とあわせ、奇想天外な騎士道物語が展開する。文学の魔術師カルヴィーノが、人間存在の歴史的進化を寓話世界に託して描いた《我々の祖先》三部作開幕。「指輪、ナルニア、ゲド、どれも世界を語るに足りないと思っている人への贈り物! これでだめだったら、ファンタジーに絶望していい」(金原瑞人)。
茅盾文学賞受賞作品 「金ができたら、故郷に帰って店を開こう」--盲人はみな同じ理想を抱いている。南京の「沙宗キマッサージセンター」は、その名のとおり、沙復明と張宗キが共同出資して開いた店だ。出稼ぎ労働で苦難をともにした二人は、「半分ずつ」とはいえ、いまやどちらも「店長」だ。ある日、沙復明のもとに、かつての同級生・王先生が職を求めてやってくる。彼は天生のマッサージ師だが、開業を急ぐあまり株に手を出し、せっかく貯めた資金を失っていた。駆け落ち同然で連れてきた恋人・小孔との仲も、新しい環境のなかでぎくしゃくし始める。同僚のマッサージ師たちの人生もさまざまだ。少女時代、全盲でありながらピアノの名手だった美貌の都紅。完全に失明してしまう前に、愛する人との婚礼を目に焼きつけたいと願う金嫣。無口な青年・小馬は、初めて芽生えた恋愛感情に戸惑いを隠せない……。 ふとしたことで、平穏に思えた日常にさざ波が立ち、やがて大きなうねりとなって、盲人たちはそれぞれ人生の決断を迫られることになる。暗闇の中、ひと筋の光明を求め、懸命に生きる姿が胸を衝く。 中国の実力派作家による、20万部ベストセラー傑作長篇。映画化原作。
遺稿から発見された初期の重要作 ウド・ベルガーはウォーゲーム(戦争ゲーム)のドイツ・チャンピオン。恋人のインゲボルクと初めてのバカンスを共に過ごすため、カタルーニャの海岸地方を訪れた。ここで第二次世界大戦をモデルにしたゲーム〈第三帝国〉の新たな戦法についての記事を書こうとしている。 二人は近くのホテルに滞在中のドイツ人カップル、チャーリー(カール)とハンナと出会い、〈狼〉、〈子羊〉、〈火傷〉という地元の若者と知り合う。記事が捗らないまま日々が過ぎ、ある日、サーフィンの最中にチャーリーが行方不明になる。夏が終わりに近づくがチャーリーはいっこうに見つからず、ハンナ、そしてインゲボルクはドイツに帰国する。ウドはなおもホテルに留まり、ホテルのオーナー夫人、フラウ・エルゼに言い寄りながら、〈火傷〉を相手に〈第三帝国〉をプレイし続ける。ウド率いるドイツ軍の敗色が濃厚になるなか、現実を侵食しつつあるゲームの勝敗の行方は……。 1989年に書かれた本書は、作家の遺稿の中から発見され、2010年に刊行された。日記風の体裁や、現実と虚構の中で得体の知れない暴力や恐怖に追い詰められていく点で、後年の『野生の探偵たち』や『2666』の要素を先取りする初期の重要作。
農民の息子ケイレブは両親を亡くし、有力者の地主フォークランドの秘書となる。慈悲深い主人の下で恵まれた生活を送るケイレブだったが、好奇心の強い彼はやがて主人の不可解な性格に興味をいだき、ついにその恐ろしい秘密を突きとめてしまう。社会の不正義、追う者と追われる者の闘争を息苦しいまでの緊迫感で描いたゴシック小説にしてミステリの原点ともされる名作。
69752。ポーランド生まれの祖父の左腕には、色褪せた緑の5桁の数字があったーアウシュヴィッツを生き延び、戦後グアテマラにたどり着いた祖父の物語の謎をめぐる表題作ほか、異色の連作12篇。ラテンアメリカ文学の新世代として国際的な注目を集めるグアテマラ出身の鬼才、初の日本オリジナル短篇集。
月の光でお読みください。 夏の夜更け、アメリカ東海岸の海辺の町、眠らずに過ごす、さまざまな境遇の男女がいる。 何を求めているかもわからず、落ち着かない14歳の少女、ひとつの小説を長年書きつづけている39歳の男、その男を優しく見守る60代の女性、マネキン人形を恋い慕うロマンチストの酔っ払い、仮面を着けて家屋に忍び込む少女たちの一団……ほぼ満月の光に照らされ、町なかをさまよう人びとの軌跡が交叉し、屋根裏部屋の人形たちが目を覚ます……。 ミルハウザーの9作目(1999年発表)にあたるこの中篇小説は、格好の「ミルハウザー入門」といえるだろう。短い章を数多く積み重ねながら、多様な人間模様と情景を緻密に描写することによって、「小宇宙」全体の空気を浮かび上がらせる手法は、作家の得意とするところ。まさに作家の神髄が凝縮された作品で、余韻は深く、心に重く響く。 ミルハウザー初心者の読者には好適であるとともに、熱心なミルハウザー愛好者にも堪能していただける傑作中篇だ。 「訳者あとがき」に柴田元幸氏による「注」を付した。カバー装画は画家の牛尾篤氏。
スペイン文学における幻の高峰、待望の完訳!幼年期の春、青年期の夏、壮年期の秋、老年期の冬。人生の四季を旅する二人の男、クリティーロとアンドレニオ。深い縁で結ばれた彼らの行く手に待ち受けるのは、寓意的人物と怪物が入り乱れ美醜善悪が渦巻く幻想世界と、生きるためには避けられない冒険と試練。そして暴かれるのは、落日を迎えた帝国スペインの虚と実…。さあ、どちらの道を行く?二人は別れ、また出会い、魂の成長とともに不死の島への旅が続く…
革命前夜のロシアに咲いた暗黒の幻想 南極大陸に建設された新国家の首都〈星の都〉で発生した奇病〈自己撞着狂〉。発病者は自らの意志に反して愚行と暴力に走り、撞着狂の蔓延により街は破滅へと向かうーー未来都市の壊滅記「南十字星共和国」。15世紀イタリア、トルコ軍に占領された都市で、スルタン側近の後宮入りを拒んで地下牢に?がれた姫君の恐るべき受難と、暗闇に咲いた至高の愛を描く残酷物語「地下牢」。夢の中で中世ドイツ騎士の城に囚われの身となった私は城主の娘と恋仲になるが……夢と現実が交錯反転する「塔の上」。革命の混乱と流血のなか旧世界に殉じた神官たちの死と官能の宴「最後の殉教者たち」など、全11篇を収録。20世紀初頭、ロシア象徴主義を代表する詩人・小説家ブリューソフが紡ぎだす終末の幻想、夢と現、狂気と倒錯の物語集。アルベルト・マルチーニの幻想味溢れる挿絵を収録。 序文 地下牢 鏡の中 いま、わたしが目ざめたとき…… 塔の上 ベモーリ 大理石の首 初恋 防衛 南十字星共和国 姉妹 最後の殉教者たち 解説
戦勝の歓声が上がる中、会戦から帰還したマナスは戦場での恐るべき死の光景を嘆き、自ら死を求めて亡者が原へと赴く。彼はそこで悲惨・非道の様々な亡霊を目撃する。シヴァ神配下の三悪鬼などとの闘争の末に死んだマナスは、愛妻サーヴィトリーによって甦るが、最終的に彼が見出したものは…。
「映画自閉症」の青年ヴィカーは、映画『陽のあたる場所』のモンゴメリー・クリフトとエリザベス・テイラーを、自分のスキンヘッドに刺青している。フィルム編集の才能が買われ、ハリウッドで監督作品を撮ることになるが…。『裁かるゝジャンヌ』、『めまい』、『ロング・グッドバイ』…映画と現実が錯綜する傑作長篇!
十月の午後というのに窓を開けっぱなしにしているのはなぜか。少女の話では、三年前、このフランス窓から猟に出ていった叔母の夫と弟二人が荒地の沼に呑まれてしまう事件があった。三人がいつか帰ってくると信じている叔母は、以来、この窓を開けたままにしているというのだが……ショートショートの名作「開けっぱなしの窓」。列車内で騒ぎ立てる子供たちを大人しくさせるため、相客になった独身男が話して聞かせた“やんなるくらい良い子”のお話とは……反教訓的な皮肉の利いた「お話上手」など、全36篇を収録。 生彩ある会話と巧みなツイスト、軽妙な笑いの陰に毒を秘めたサキの名短篇集『けだものと超けだもの』(1914)を初の全訳。いきいきとした新訳で原作の味を伝える、好評『クローヴィス物語』に続くサキ短篇集第二弾。エドワード・ゴーリーの挿絵を収録。 女人狼 ローラ 大豚と私 荒ぶる愛馬 雌鶏 開けっぱなしの窓 沈没船の秘宝 蜘蛛の巣 休養にどうぞ 冷徹無比の手 出たとこ勝負 シャルツーメッテルクルーメ方式 七羽めの雌鶏 盲点 黄昏 迫真の演出 テリーザちゃん ヤルカンド方式 ビザンチン風オムレツ 復讐(ネメシス)記念日 夢みる人 マルメロの木 禁断の鳥 賭け クローヴィスの教育論 休日の仕事 雄牛の家 お話上手 鉄壁の煙幕 ヘラジカ 「はい、ペンを置いて」 守護聖人日 納戸部屋 毛皮 慈善志願者と満足した猫 お買い上げは自己責任で 訳者あとがき
軍政下のチリ、奇抜な空中詩パフォーマンスでその名を馳せた飛行詩人カルロス・ビーダー。複数の名をもつ彼の驚くべき生涯とはー。『アメリカ大陸のナチ文学』から飛び出したもうひとつの戦慄の物語。
スペイン内戦下、バスクから疎開した少女を引き取ったベルギーの若者ロベール・ムシェ。その出会いが、彼の人生を思わぬ方向へと導いていく…。それから70年近くを経て、バスクの作家によって見いだされた、無名の英雄をめぐる心揺さぶる物語。
1930年代のエディンバラ、女子学園の教師ジーン・ブロウディはお気に入りの生徒を集め、彼女たちを「一流中の一流」にするための独自の教育を授けた。その圧倒的な個性と情熱に心酔し、“ブロウディ組”と呼ばれるようになった六人の少女は高等部にあがってもブロウディ先生のもとに集まり、親衛隊として、先生の教育方針に疑念を抱き追放を画策する校長に抵抗したが…。20世紀イギリス文学を代表する名作。
待望の復刊! 収録作品=短編と反古草紙(追い出された男/鎮静剤/終わり/反古草紙)/死んだ頭(断章[未刊の作品より]/たくさん/死せる想像力よ想像せよ/びーん)/なく/人べらし役