出版社 : 筑摩書房
関東のはずれの町に暮らす高校生、ワラ、ディノ、タンシオ、ギモ、テンポ、リスキ。彼らはそれぞれに傷ついた少年少女たちだった。戦わないで自分自身の大切なものを守りたい、そんな思いから彼らは包帯クラブを結成する。その活動を描いた前作『包帯クラブ』から16年。本作は前作の終わりから話が始まる。場所に包帯を巻く活動は、無理解や反発などを受け、自粛を余儀なくされる。しかし、ひっそりと集まりバンド活動を始める彼ら。発表の場を求めながら、さまざまな人と出会い、再び物語は動き出す。本作では、未来の、成人した彼らの姿も交差して描かれる。この世界にあふれた悲しみのひとつひとつを手当てすることは難しいが、だから何をしたってむだ、とは言いたくない。自分たちのやり方で、自分を守り、大切な人たちを守ろうと踏み出す彼らの第二幕が開く。
韓国の首都、ソウル。貧困層が住む最底辺の住宅「チョッパン」を取材する記者が苦心の末にたどり着いたのは、「見えない」富裕層による貧困ビジネスの実態だったー。チョッパン街住民の声、自身の貧困経験や徹底した調査をもとに、新自由主義がまかり通る社会に問いをつきつける迫真のルポ。
幼い頃に母に棄てられ、施設で育ったひかる。ふとした瞬間甦るあやふやであたたかな記憶、そして手元に残された母子手帳が唯一の母とのつながりだった。ある日、公園のベンチで拾ったのは、自分と同じ名前、生年月日の母親が落とした母子手帳。他人とは思えないもう一人のひかるがどんな母親なのか見届けるため、ひとり待つー。『birth』は第37回太宰治賞受賞作品。『彼女がなるべく遠くへ行けるように』は第34回太宰治賞最終候補作品を加筆修正。
売れないピン芸人・根尾の元に大御所声優・田代から人気アニメの声を継いで欲しいというオファーが舞い込む。俳優の夢を諦めて声優として上り詰めた田代に声優一筋になれと言われ続けるが、根尾は芸人として売れたいという夢を捨てきれない。そしてホストとなった元相方もまたコンビ再結成を願っているのだった。元相方のネタにダメ出しをしながら、芸人魂を密かに燃やしていく…。夢を追う若者たちの思いと諦めたものの思いが交錯する物語。最後に何を選ぶのか?
仕事も恋も活発な長女・貞子、体育会系で素直だが男運の悪い次女・夏子、シニカルだけど憎めない文化系の三女・陽子、末っ子にしてその美貌で誰からも愛され自由に生きる恵美里。時は流れ人は変われど、横浜は戸塚区原宿の睦家に集う女たちの絆は変わらない。熟達の筆致で送るお茶の間平成ヒストリー、ここに開幕!
イギリス系の夫、イタリア系の妻ー移民の国オーストラリアに暮らす倦怠期の夫婦のもとに、日本人女子学生がホームステイにやってくる。異文化ギャップに軋む家族に、再生はあるのか?『さようなら、オレンジ』著者、書下ろし新作!
舞台は横浜。志村亮子は才気と実行力を買われ孤児院「双葉園」の運営に奔走する。そこへアメリカ人実業家、文芸評論家、婦人運動家と三流プロ野球選手など、個性的な人物が集まりドタバタ劇が始まる。一方、夫の志村四方吉は戦争による虚脱症で無為の生活を送っているように見えたが…。戦後の社会問題を巧みに取り込み、鋭い批評性と高い諧謔性で楽しませる傑作。