出版社 : 筑摩書房
夫と妻のこと、出産のこと、引越しのこと、職業のこと…。この世のもろもろを引き受けつつ、小説を書きつづける、それはなかなか楽ではない。生活と創作、両方にわたる喜び、悲しみ、ときに怒りもこみ上げる日々を、さりげないユーモアでいろどってつづる、自伝的な長編小説。
若い娘の肉体をすみかにし、映画俳優として成功するハンサムなノミの話、マネキン人形に恋をして身を滅ぼすノイローゼ気味のデパート店員の話etc.-ブラックユーモアと諷刺にあふれた短篇21。プロット・性格を念入りに加工し、複雑奇妙な味に仕立てあげられた作風は、ありきたりの小説に倦きた「すれっからし」の読者にも歯ごたえ十分。
コロンビアのノーベル賞作家ガルシア=マルケスの異色の短篇集。“大人のための残酷な童話”として書かれたといわれる6つの短篇と中篇「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」を収める。
自分の頭蓋骨をとりだした男の話、患者に模した蝋人形で患部を治療する医者の話、賭ルーレットの数字をピタリと当てる男の話等々ナンセンスの中にアブノーマルなグロテスクさの満ちた短篇群。現代イタリア作家の中で最も評価することの難しい作家といわれる、異才マッシモ・ボンテンペルリの戦後初のまとまった短篇集。まことに奇妙キテレツ・痛快な一冊である。佐々木マキの挿画入りで贈る、文庫版オリジナル。
あなたは〈子育て〉に悩んでいませんか。にせの家族だからこそほんとうの家族よりも確かめられる親と子のきずながある。家族とは、親と子のきずなとは何かを問うハイブリッド〈子育て〉の試み。六つの短篇集。
SF界にニューウェーブ旋風を巻きおこし、現代SFをリードしたJ・G・バラード。「私は、宇宙ものに背を向け、宇宙の果てをのぞくのを終わりにして、視線をこんどは人間の内部に向け、心のなかや神秘的な時間の問題というまったく新しい方向に出発した」と宣言する著者の自選短篇コレクション。「時間が語りかけてくる」「強制収容都市」ほかバラード自身によるメニューは、その手法を知り、その作品世界を楽しむための最良のテキストだ。序文としてバラードの文学宣言、また各作品ごとに自身の解説を付す。
残酷さとユーモア、とぼけた語り口、簡潔な文体で、心の暗部を描き出すサキ。新訳4篇を含む86篇を発表順に編集して2冊で贈るサキの決定版。本巻には、人間の醜聞を次々と暴く、言葉をしゃべる描の話『トバモリー』をはじめ、『ハツカネズミ』『エズミ』など44篇収録。
心優しきニヒリストで冷笑的なヒューマニスト・サキ。ユーモアと幻想、奇抜な着想で人間の暗黒部分を描き出す短篇の名手・サキ。新訳4篇を含め彼の短篇86篇を発表順に2分冊で贈る決定版。本巻には、伯母のお伴でデパートのバーゲンセールに行き、店員になりすまし、お客からもらったお金をポケットに入れてしまう甥の話『夢みる人』をはじめ、『マルメロの木』『禁じられたハゲタカ』など42篇を収録。
1959年の夏、パリに到着したばかりのペルーの一留学生が買い求めた一冊の小説。それこそは、作家としての彼の人生を決定づけた「愛の物語」だった。現代ラテンアメリカ文学の最前線に立つ若き巨匠、マリオ・バルガス=リョサが、鍾愛の書『ボヴァリー夫人』をめぐってダイナミックに展開する、とびきり面白い文学論。
ママはパパと別れるし、彼女はふいにいなくなっちまうし、ついでに犬も死んでしまった。僕の人生、さいきんちょっと暗いぜ。新鋭ピーター・キャメロン、本邦初登場。ミドルクラスの明るい〈悲劇〉を描く80年代のサリンジャー。
敗戦直後の廃墟の東京で、獣になって身を売る若い女たちの集団。その中に突然現われた一人の男をめぐって起こるドラマを描いた表題作「肉体の門」。戦場の中国を舞台に、死と隣り合わせた欲望のひしめく中で、民族・思想・立場をこえた“人間”のつながりを求める男女の姿を描いた「肉体の悪魔」「春婦伝」「蝗」。さらに彼の主張を集約したエッセイを収め、田村文学のエッセンスを贈る。
旧約聖書創世紀にあるヨセフの物語は、イスラエルの族長ヤコブの第11子ヨセフが、父の過度の寵愛を兄たちにねたまれて奴隷としてエジプトに売りとばされた話である。このヨセフ物語をトーマス・マンが51歳から丸々16年かけて長大な小説にしたのが『ヨセフとその兄弟』4部作である。今世紀最大の夢のロマン、全巻完結。
偶然に教会で出会った10人の男女がそれぞれ1話ずつ10日間話した100の物語。間男が扉をたたく合図の音を聞きとがめられ、幽霊だと夫をごまかしたり、夫の帰宅に間男をあわてて樽の中に入れ、中をたしかめている買主だとだまし、夫に男を送らせるなど、浮気をごまかすために数数の知恵を働かす妻たち。逆に女をだましてものにする司祭や修道院長たち。だましだまされ、虚々実々の人間模様がつぎつぎに展開されて、大団円へ。