出版社 : 角川春樹事務所
どうしたというのだ?-良平は愕然とした。授業中眠ってしまったというのにきちんとノートがとってあるのだ。その上、周囲の人々も、まるで何者かに乗っ取られたかのような行動を見せるではないか!人間の身体と意識を占領し、思いのままに操る借体生物の恐怖を描く表題作。他に、亜空間に住む無機生命による驚くべき侵略をテーマとした『まぼろしのペンフレンド』を収録。
戦争によってその将来を断たれたピアニスト・寺田武史。戦後、非業の死を遂げた彼の生涯を小説にするべく取材を始めた柚木桂作は、寺田の遺した謎の楽譜や、彼の遺児と思われる中国人ピアニスト・愛鈴(エーリン)の存在を知る。調査をすすめるうち徐々に明らかにされる、戦時下の中国と日本を舞台とした“ある犯罪”…。複雑にもつれあう愛憎劇に、楽譜による“暗号”を絡めて描く、長篇ミステリー。
アルファベットのYのように人生は右と左へ分かれていった-。貸金庫に預けられていた、一枚のフロッピー・ディスク。その奇妙な“物語”を読むうちに、私は彼の「人生」に引き込まれていった。これは本当の話なのだろうか?“時間(とき)”を超える究極のラヴ・ストーリー。
“異変”は突然の出来事だった。新聞記者・福井浩介はある朝、普段とはまったく違う光景を目にするーいや、「世界」はそのままなのだが、そこからは「人間」の姿が一切消えてしまっていたのだ!福井の他にも何人かの“消え残り”が確認され、この異様な事態の究明に乗り出すのだが…。人類消失という極限の状況下、人はいかに行動し、文明はいかに機能するのかを描く異色SF長篇。
生きている食糧“視肉”、猿を思わせる怪物“猩猩”、空を飛ぶ魚、二メートルを超える大グモ…。悪夢のような動植物がはびこる世界で、守護神が甲虫である戦士ジローは、恋する女、ランへの思いをとげるために、女呪術師ザルアー、“狂人”チャクラとともに「月」を求めて旅立った。「月」とは何かを知らない三人は「空なる螺旋」を探せと教えられるのだが…。
地底の病院探検を敢行した里見捜査官と立松刑事は、時の杜の真下に壮大な秘密が仕掛けられていることに気づきはじめる。しかし、その一方で連続殺人は止まらない。不潔恐怖症の女、謎めいた言葉を繰り返す美少女、スピード狂の高校教師、七五調で喋るクラブ支配人、不可解な行動をとるオカマ歌手、禁断の御神体を知る老婆。疑い出せばキリがない容疑者だらけの状況で、こんどはまさかと思われる人物が撃ち殺された。
森には神が棲んでいる、しかし悪魔も棲んでいるー早川家の老母歌子は、時の杜地区一帯に仕掛けられた壮大なスケールの陰謀を示唆する。その一方で、これまで変人を装ってきた住人たちが、その意外な素顔を続々と表わしはじめた。いったい誰が味方で、誰が敵なのか。混乱する里見捜査官をよそに、一色舞子を刺し殺した犯人の正体がついに明らかにされた!だがそれでもなお、惨劇はその幕を下ろさなかった…。
果てることなき連続殺人の真相をなんとか解き明かそうとする里見捜査官は、犯人に襲われて重傷を負った精神科医鰐淵吾郎から、時の杜地区に秘められた驚くべき秘密を聞き出すことに成功する。地下に御神体を祀り、独自の哲学によって新しい社会を築こうとする姫神教信者たち。その教義は、現代日本の常識を根底から覆すものだった!だが、真犯人逮捕を目指し地下神殿に突入した里見を待ち受けていたのは…最後の悲劇。
「妹を自殺に追い込んだ男・森嶋吾郎を殺したい」と思いつめているステンドグラス作家・羽田野祥子の前に、アイと名乗る謎の人物が現われた。「ぼくがかわりに殺してあげましょうか」…一週間後、森嶋は自宅近くの公園で頭を割られ、死体となって発見された!次の日、祥子は隣に住む主婦・宮脇まゆみに、「わたしにも殺し屋を紹介してほしい!」と頼まれるが…。
森の奥で刺し殺された一色舞子の遺体状況から、里見捜査官は犯人が左利きではないかと疑う。だが、捜査の進捗をみないうちに、こんどはFM局の人気DJ日向基樹が放送中に射殺された。しかも目撃された犯人は身体が人間で顔は鹿!異形の殺人鬼は「時の杜」地区に住む誰かと思われたが、奇人ばかりのこの町では、みんながみんなウソをつき、犯人像は全く絞れない。そしてついに連続殺人の犠牲者は捜査陣の中からも出た。
わずか三日で四件の殺人事件が発生した高原の町「時の杜」。県警本部から鯨岡警視も応援に駆けつけ懸命の捜査にあたる中、最初の犠牲者となった一色舞子の父が経営する新聞社に一通のFAXが届いた。文面は「私は犯人を見ています」!一方里見捜査官は、時の杜地区の地下に巨大な都市構造が存在するのではないかという疑念を抱き、実地調査に乗り出した。読み返す手間がはぶけて便利な1&2巻のダイジェスト付き。
引退を決意した落語家・伊呂八亭破鶴の最後の演目ーそれはごく少数の客を招いての奇妙な“二人羽織”だった。独演会の席上、破鶴は怪死を遂げる。集まった客は五人。うち四人までが彼を殺す動機を持っていた!幻の探偵小説誌「幻影城」新人賞人選作である表題作をはじめ、二転三転する展開で、ミステリーの醍醐味を存分に堪能させてくれる全九篇を収録した傑作小説集。
超常能力ゆえに、自らに滅びの運命を課す独覚一族。その一人である結城弦は、長老から、人類を第三次世界大戦の危機に陥れようとする、正体不明の独覚の存在を知らされる。ところが、一族の掟に従い、悪しき独覚を除こうとする結城たちの前に姿を現したのは、ブッダ入滅後五十六億七千万年を経て現世に出現し衆生を救うといわれる弥勒だったのだ…。“神”をテーマに描く傑作SF。
森と湖に囲まれた不思議な町「時の杜」。外部と隔絶された奇妙な異次元世界の森の奥で、女子高生・一色舞子が殺された。県警本部から現場へと急行した里見譲捜査官がそこで見たものは、スギの巨木に埋め込まれ、カチカチと静かに時を刻む謎の柱時計。死体の直腸温にフェチを感じる病院長の内村英太郎。捜査を露骨に妨害する地元巡査。奇怪な人間模様の中で起こったその殺人は、神をも恐れぬ壮大な陰謀の序章にすぎなかった。
若き天才情報工学者、島津圭助は、神戸市で調査中の遺跡、花崗岩石室内壁に、ある『文字』を見せられる。十三重に入り組んだ関係代名詞と、二つの論理記号のみの文字。論理では解くことのできないその世界の言葉を執拗に追うある組織は、島津の卓越した頭脳に、この文字を通じて『神』の実在を証明することを強要する。-語りえぬことについては、沈黙しなくてはならない。ヴィトゲンシュタインの哲学に反く行いに幕を開ける、SF小説の金字塔。
「さっき、棄てるっていったのは命のこと?-命の棄て場所を探してるってこと?」。友人を裏切り、人生を自堕落に過ごしている古宮の前に現れた女性・鈴子。彼女もまた、悲しい宿命を持った者だった。大正の東京を舞台とした、はかない男女の交歓を軸に描かれる表題作をはじめ、「能師の妻」「野辺の露」「花虐の賦」「未完の盛装」の全五篇を収録した傑作ミステリー集。