出版社 : 角川春樹事務所
安倍益材の息子、葛丸(後の晴明)は、幼き頃から人の死を先見してしまう力を持つと噂されていた。災いが降りかからぬように、屋敷から出ずに育てられてきた葛丸。彼が七歳になった時、友人となったのが、陰陽師への修業を目前に控える少年・津久毛と、先帝の孫である鶴君だった。ともに人に馴染めぬがゆえに親しくなる三人。しかし葛丸の先見のせいで、宮中での毒殺の疑いが益材にかかる。その事件をきっかけに、葛丸は平安の都に潜む数々の謎へと挑み始めるー。
京都駅に降り立った女性の名は坂本龍子。彼女は高知県の県庁職員でありながら、政治の世界で数々の難問を解決し「交渉人」と呼ばれ、その名を馳せていた。ある日、龍子の元に京都府知事の桂大吾から、低迷した日本経済を救うため、経済の拠点や首都を東京から関西へ移したいという依頼が入った。この法外とも思える構想を実施すべく、京都・大阪・兵庫の三府県が手を組み、西の統一をはかるため、龍子に力を貸してほしいのだという。しかしその裏には京都が国の政治を司る拠点として返り咲き、そして遷都までをも実現するという思惑があったー。
嘉永六年(1853)江戸。好奇心たっぷりの銀次と絵師の歌川芳徳は、妖怪伝説やゴシップネタなどを追う、低俗なかわら版を売りさばいて人気を博していたが、浦賀に来た黒船を見に行き、勢いで乗り込んだことがきっかけで人生が変わる。江戸一番の物知りと評判が高い佐久間象山に師事し、勝麟太郎や坂本龍馬、吉田松陰、西郷吉之助など、様々な幕末の英雄と出会い、大地震や大火災、死の疫病をかわら版で報じるうちに、銀次は報道の使命に目覚め、弱き大衆のために立ち上がる。幕末の動乱の中で、真実(たまに嘘)を追い求めるかわら版屋を描いた、痛快時代小説!!
従業員5300人を擁する一部上場企業ジャパンテックパワー。日本の将来を背負って、再生可能エネルギーの発電施設を開発・運営する期待の企業が大きく揺れていた。株主総会を間近に控えたある日、社長が失踪。それに端を発した後継者争いが激化していく。混乱を極める会社に追い討ちをかけるように、中国系ファンドの介入も噂されはじめ…。社内派閥、恫喝、誘惑、陰謀、権謀術数、手練手管。保身と欲にかられた者たちが暗躍する権力闘争。
美希喜は、国文科の学生。本が好きだという想いだけは強いものの、進路に悩んでいた。そんな時、神保町で小さな古書店を営んでいた大叔父の滋郎さんが、独身のまま急逝した。大叔父の妹・珊瑚さんが上京して、そのお店を継ぐことに。滋郎さんの元に通っていた美希喜は、いつのまにか珊瑚さんのお手伝いをするようになり…。カレーや中華やお鮨など、神保町の美味しい食と心温まる人情と本の魅力が一杯つまった幸せな物語。
2020年初頭から世界を席巻した新型コロナウイルスは、あっという間に私たちの生活を一変させた。職場も、家庭も、友人や恋人などの人間関係も、そして未来すらも。劇的に変化した世界で生きる私たちの日常は、どこに向かっていくのか?ラジオの現場でコロナを報道し、リスナーの声を聞き続けた著者が、抱えてきた想いを25本の物語に昇華させた!誠実でありながらシュールで刺激的。そして笑え、最後には沁みていく…。舞台、ドラマの脚本・演出で今、最も注目される鬼才、初めての小説!
早期退職したキョウコは、相変わらず古いアパート「れんげ荘」で暮らしています。キョウコが愛してやまない近所の飼いネコ・ぶっちゃん。キョウコの兄夫婦のところに、突然やって来たおネコさま御一行。「れんげ荘」の住人・チユキさんの彼が飼いはじめたイヌのえんちゃん…。無職でひとり身のキョウコは、将来に少々不安を感じながらも、ネコやイヌ、鳥や花や隣人とのお茶の時間、図書館で借りた図鑑…などに気もちを和らげてもらいながら、日常にささやかな喜びを見つけ生きていくー。
野望、宿命、誇り、謀略ー様々な因縁が交錯する上田城攻防戦。民とともに、一族の存亡と男の夢を賭けた真田家の戦いに刮目せよ!!舞台は稀代の策士・真田昌幸が愛して作り上げた、信州小県郡、上田の地。日の本を真っ二つに分けた大乱に強大な敵が攻め来る。敵は天下取りへ驀進する徳川家康。二十倍の大軍勢を前に、一族、家臣、城、領地、民、忍び、すべてをつぎ込んだ真田の戦略が動き出す。密命を帯びた真田忍びの源吾は、真田信幸付き小姓に姿を変え、敵味方の間を駆け続ける。果たして若き忍び武者の役割とは!?そして、真の正体とは!?
松前家中の少年、春山伸輔は家名を復権させるべく、新政府の遊軍隊と合流。榎本軍への反乱活動を行っていた。一方、新撰組の土方歳三は、かつて近藤勇らと夢見た国盗りを、箱館政府によって実現させようとしていた。相反する二人の運命の出会いを圧倒的スケールで描く歴史小説の登場!
吉川元春に拾われ馬術を見出された少年・小六。尼子再興を願う猛将・山中幸盛(鹿之助)。ともに戦火で愛する人を失った二人の譲れぬ思いが、戦場でぶつかるー!第13回角川春樹小説賞受賞作。
東京の進学校に通っていた、高校一年の成瀬航基は、母の再婚をきっかけに、ある田舎町に引っ越すことになった。転入して間もない学校生活は順調に進んでいたが、そんな状況が一変し、突然いじめのターゲットになってしまう。いじめは次第にエスカレートしていき、航基は身も心も耐えられなくなっていく。不条理な目に遭うたびに心は削られ、誰にも相談できずに、我慢の限界を迎えた航基が出した結論は「死」。地元で『ゴーストリバー』と呼ばれる河を自殺の場所に選ぶが、その河でほとんど学校にも登校せず、真面目に授業も受けない、クラスメイトの月島咲真と出会う。そんな咲真が航基に対し、「報復ゲームに参加しないか」という衝撃的な一言を放つー。命の重要性を問いかけ、連鎖する“いじめ問題”に一石を投じる、青春ミステリ小説。
多くの日本人が知らない事実ー。ガソリンエンジンの新車販売の禁止。そして、その対応に日本企業が、大きく遅れをとっていること。深刻な地球温暖化の前に、欧米では遅くとも2035年までにエンジン車の新車販売が規制される。つまり新車販売は電気のみで動く車に限られるのだ。加えて中国が2030年をめどに、国内の新車販売をすべて環境対応車に変更するという。このような世界情勢を前にしても、既存産業への配慮と圧力から日本政府は有効な手を打てずにいた。経産省の自動車課に籍を置く瀬戸崎啓介は焦りを募らせる。このままでは、日本の自動車関連就業人口534万人のうち多くが路頭に迷う可能性がある。だが、いったいどうすればいいのか…?
かつて“六分の一殿”と呼ばれた山名家は、十二代目・山名宗全が応仁の乱を起こしたことで凋落を始める。この家に生まれた山名豊国は、苦境をはね退け名家を再興することを、幼き日からの悲願としていた。だが毛利と織田の二大勢力に挟まれて国は混乱し、家臣・国衆の反発がその道を阻む。心ならずも裏切りを繰り返し、その果てに家を潰した豊国が、泰平の訪れに見たものとは?
江東区有明で強盗事件が発生。被害者は救急搬送されたが、病院で死亡が確認された。強行犯第一係の安積班が現場に向かい本格的な捜査が始まろうとしている矢先、犯人が自首してきたのだが、須田は納得がいかないようでー(第二話「暮鐘」より)。ひとつひとつの事件を、安積班の揺るがぬ正義の眼差しで解決に導くー。
世界各国から百名以上の研究者や大学院生が集まり、宇宙の始まりや仕組みなどの疑問に答えるべく日夜研究に取り組んでいる天文数物研究機構。ある日、若手研究者たちが主宰するセミナーに謎の青年が現れ、ホワイトボード23枚に及ぶ数式を書き残して姿を消した。見たこともないその数式には、人類の宇宙観を一変させかねない秘密が隠されていた。つまりその数式は、この宇宙、そして世界の設計図を描いた“何ものか”が存在する可能性を示唆していたのだ。悪戯のように思えるこの不可思議な出来事は、日本だけでなく世界中23もの研究機関で発生していた。にわかに“神の存在”に沸き立つ世界。ほどなく人類は、“神の存在”にアクセスしようと試みる。そして、その日から現実は大きく変わることになるー。
日本から米国に向かういずれかの旅客機に不審者“QUEEN”が乗り込み危険行為を行う可能性が高い、という情報を得た警視庁。警備部特務班の兼清、上司の矢島、2名のスカイマーシャルを14時羽田発ニューヨーク行きの“さくら212便”に搭乗させた。だが兼清の警戒を嘲笑うように、離陸から1時間半後、一般客には知られていないクルーバンクで遺体が発見された。いったい何者が、どうやって?そして、スカイマーシャル・兼清の孤独な戦いが始まる…。
奄美諸島徳之島出身の東貞吉は、琉球警察名護警察署に配属になり、米軍現金輸送車強奪事件を解決する手柄を立て、公安担当になる。沖縄刑務所暴動で脱獄した人民党の末端、島袋令秀に接近し、自分の作業員(スパイ)に育てることにー。令秀が人民党の瀬長亀次郎に心酔していくなか、貞吉は公安としての職務を全うするために、敬愛する瀬長を裏切ることができるのか。矛盾と相克に満ちた沖縄で、主人公は自らの道を歩んでいく。