出版社 : 駒草出版
芥川賞候補作「静かな家」の発表と同時期の1987年から1992年に書かれた小説とエッセイを中心に収録。詩から散文へと表現方法を転換していく、若き日の魚住陽子の瑞々しい感性が光る。 〈小説〉 草の海 チョコレート夜話 花火の前 煮干のごろん 野の骨を拾う日々の始まり 草の種族 川原 鵙日和 〈エッセイ〉 恍惚として乾酪黴びた 文学周辺を遠く離れた読書について 思いつめる日々 〈付録〉 詩編「草の種族」 同人誌時代の作品について 三浦美恵子 あとがき 加藤 閑
俳句に閉じていく日々の物語 自身の創作への迷いのなかで作家は、俳句と小説のあわいに立ち上る詩情を紡いだーー 「小説の書けない時」と名付けられたパソコンのフォルダに残された物語。 月刊俳誌『つぐみ』に2001年から2006年まで書き綴った作品を中心に、掌編小説63編と俳句をまとめた一冊。 1 ・料理 ・蔦 ・指輪 ・美しい骨 ・言葉 ・猫 ・ホーム ・百足 ・作品 ・秘密 ・公園 ・ドーナッツ ・ダブルデライト ・怒りっぽい女 ・かけら ・プール ・花 ・包丁 ・エンゼルトランペット ・傷痕 ・足のない鳥 ・訃報 ・姉妹茸 ・山茶花日和 ・雪 走る ・花の雨 ・信仰 ・五月の迷子 ・温泉 2 ・甘い話 ・波濤 ・虹 ・命 ・車窓 ・雨 ・漂泊 ・訪問者 ・俯瞰 ・トスカーナの白い闇 ・日常と殺人 ・運命の女 ・惜春 ・別れの時計 ・六月の祭壇 ・白い服 ・階段の上 ・べりー、べりー、べりー ・二月の病室 ・女神のいる庭 ・聖夜に熊野町循環バスに乗る ・お喋りの樹 ・鮎の家 ・緑陰 ・絵手紙 ・パーティー ・羽虫 ・人の声 ・蝶の家 ・水の庭 ・私はテレビを消すことが出来ない ・ドライブ ・十月のベンチ ・夫婦 ・月刊俳誌『つぐみ』 掲載句
2021年に急逝した作家・魚住陽子が、2009年に書き上げていた、唯一の未発表長編小説。 「どうしてもそれがなければ生きていけないのなら、求め続けるしかないのよ。 正しくても正しくなくても、仕方のないことだってある」 達子と彼女を取り巻く女性たちが織りなす、半貴石をめぐる物語。 ローズクォーツの天使 半貴石の出会い 石の予告 ガムランの響き 石の別れ 再生の石 西蔵宝珠 左水晶の誘い 翡翠色の魔
ここにいないものを ここで想うということ── 『水の出会う場所』や『菜飯屋春秋』で知られ、2021年に急逝した作家、 魚住陽子が遺した個人誌『花眼』(ホゥエン)からの短編集。 2006年から2011年にかけ、計10号刊行された作家、魚住陽子の個人誌『花眼』。自身や他の作家の短編はもちろん、自身の心情や近況を綴ったエッセイのような趣があるていねいなあとがきを収録したこの冊子は、装画のチョイスなどにも一貫した美意識を感じさせる。魚住陽子の長年のファンはもちろん、最近その作品に触れた方には特に魅力的なものに違いない。 2021年の急逝後、一周忌を前に発表した『夢の家』に続き、その『花眼』からの10編の短編と著者による全10号分のあとがき、そして『花眼』各号の表紙・裏表紙やその制作背景についてのテキスト(装画を手掛け、寄稿もしている魚住氏の伴侶、加藤閑氏による)をまとめた1冊。 かつて「花眼・ホゥエン」という美しい言葉の、美しい意味を教えてもらったことがある。近くのものは朧ろにかすみ、遠くのものだけが晴朗に見渡すことが できる目。平たく言えば老眼のことだけれど、広義には「春の満開の花の中に秋の衰弱と凋落を見、命の輝きのさなかに死を予見する。反対に秋の別離と荒廃の最中に、萌え出る生命と、満開の花を透視することができる」という意味もあるのだという。 ーー『花眼』No.1「あとがき」より 【目次】 中庭の神 朝餉 坂を下りてくる人 骨の囁き 白い花 芙蓉の種を運んだのは誰 野末 山繭 夕立ち シオノ 附録 個人誌『花眼』について
遠ざかってゆく者と残される者。魚住文学はその間に横たわる暗がりへと読者を誘い込む。他のどこにもない小説が、そこに映し出されている。 ーー小川 洋子 2021年8月に急逝した作家、魚住陽子が遺した作品から、6編を収録。静謐でありながら、自らの感情に向き合う強さを感じさせる珠玉の短編集。 <出版社より> 『奇術師の家』や『水の出会う場所』『菜飯屋春秋』など、独自の世界観をもつ作家として知られ、2021年8月に急逝した作家、魚住陽子。彼女が遺した作品から、6編を収録した短編集です。 画家の女性と彼女がかつて共に暮らした男性との愛憎を互いの心情描写で綴る表題作「夢の家」、家族を喪った一人暮らしの中年女性と彼女が関わる整体院を中心に、彼女を取り巻く人間模様を描く「シェード」、往復書簡というかたちでの師弟ふたりのやりとりによってそれぞれの感情や生活の変化を描く「郭公の家」、そして、作者の母校の創立記念の冊子に収録されていた、女子高生たちの日常のやりとりをいきいきと描いた「物置に蝶が来ている」、その他2編を加えた全6編を収録。 静謐でありながら、その奥に潜む生々しい感情(後悔、諦め、憎しみ、愛、失望、希望など)をしっかりと見つめ、自らに向き合う強さを感じる作品群は、作者独自の世界観にあふれています。また、病を抱えながら暮らし、創作を続けてきた作者ならではの死と生についての鋭敏な感覚も、そこここに散見され、はっとさせられるものがあります。 作者が晩年取り組んでいた俳句のエッセンスやどの作品にも登場するたくさんの草花、そして何気ない生活風景の描写にも魚住ワールドともいうべき美意識が感じられる短編集。ファンの方はもちろん、足を踏み入れたことのない方にもぜひこの世界観に触れていただきたい一冊です。 【目次】 ・物置に蝶が来ている ・萌木色のノート ・夢の家 ・シェード ・郭公の家 ・旅装 ・あとがき(加藤 閑)
「シャープでダークでユーモラス。唸るほどポリティカル。恐れ知らずのアナキーな展開に笑いながらゾッとした」 ーーーブレイディみかこ(英国在住保育士、ライター) 「毎日の生活に侵食する、暴力と格差と不条理。ケンドリック・ラマーの『To Pimp a Butterfly』を最初に聴いた時のように、ドナルド・グローヴァーの『Atlanta』を最初に見た時のように、すべてのエピソード(短編)を夢中になって読み進めた」 ーーー宇野維正(映画・音楽ジャーナリスト) 『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー・リストに初登場13位でランクインし、同紙のレビューでも激賞。『Vogue』『Elle』といったファッション誌や「ハフィントン・ポスト」「バズフィード」などのネットメディアでも取り上げられ、人気テレビショー「Late Night with Seth Meyers」に著者本人が出演するなど、新人としては異例の注目を集めた新進作家、ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー。そのデビュー短編集『フライデー・ブラック』の初の邦訳版(訳者はブラックカルチャーに縁の深い米国在住の翻訳者/ライターの押野素子氏)。 現代に生きるアフリカ系アメリカ人につきまとう暴力と理不尽さを描いて鮮烈な印象を残す「フィンケルスティーン5」、大量消費社会のグロテスクな姿をホラー的感覚でブラックユーモアたっぷりに描いた表題作 「フライデー・ブラック」などの短編、全12編を収録。 ●目次 ●フィンケルスティーン5 ●母の言葉 ●旧時代<ジ・エラ> ●ラーク・ストリート ●病院にて ●ジマー・ランド ●フライデー・ブラック ●ライオンと蜘蛛 ●ライト・スピッター──光を吐く者 ●アイスキングが伝授する「ジャケットの売り方」 ●小売業界で生きる秘訣 ●閃光を越えて ●謝辞 ●解説 藤井 光(英文学者、同志社大学教授) ●訳者あとがき
視聴率に翻弄される制作現場、局上層部の腐敗、ハニートラップ、社長の椅子をめぐるきな臭い争い、そして番組は裏で巨大な陰謀に操られ国際事件に発展しかねない大問題に発展していく…魑魅魍魎が跋扈する巨大組織に一人の新米テレビマンが立ち向かう!元・日テレのヒットメーカーが痛快に描くエンタメ小説!!
暖簾も看板もない「菜飯屋」。街の片隅に佇む店は、過去との訣別をした女店主を象徴するかのように温かく、少し寂しい。「菜飯屋」の春秋を人との出会いと別れ、孤立と自立になぞらえたように描いている。こころの錘を静かにそっと呑み込みながら、揺れ動く自己と他者を見つめた作品。弱さが人を包み込む優しさに変わる時、人は人を慈しむ心を知るのだろう。ここに綴られているのは人との出会いと縁を育むたましいの処方箋。 離婚を機に自立していく女性を淡々と、そして時に激情する胸の内を、静かに描いた『菜飯屋春秋』。初出は魚住陽子個人誌『花眼』(2006年〜2011年)にて連載した作品。それを加筆修正し、再編集した単行本。見えているものだけがすべてではなく、ある一つの側面であることに気づかされる。気づく時には瞬時にして気づかされてしまう人の思いやその関係性、誰のもとにもある日常を魚住陽子は流れる映像のように描き出す。
ー寂しさは惨めだろうかー 流れ去るしかない生命の煌めきと翳りを水の模様のように描いた物語 著者20年ぶり、待望の書き下ろし作品集 呼吸をするように紡ぎ出される文章は、ひっそりと湖面に浮かぶ水のようでもあり、狂った激しさを見せる濁流を思わせるようでもある。その激しさも密やかさも生み出される瀞(とろ)で深く切なく甘い流れとなる。平等に訪れる死をひたひたと漂わせながら、弱くとも強く生き続ける人たちと水の流れを重ね合わせて描かれた三篇の作品集。 緑の擾乱 水の出会う場所 水の上で歌う
手に取れば、そこに広がる「ホームレス」と「しっぽつき家族」のノンフィクション・ストーリー。 犬も猫も、そして人も、すべてに生きる権利がある 河川敷や公園に捨てられる犬や猫。飼い主から見放された動物たちだ。 そんな見捨てられた動物たちを自らの食事を抜いてまで世話をするホームレスたち。 その動物たちを無料で診察する女性獣医師。 彼女が見たのは、社会の片隅で肩を寄せ合い生きていく、動物と野宿者が直面する厳しい現実だった。 女性獣医師が動物医療の視点から現代社会のひずみを描き出す、渾身のドキュメント。 プロローグ 第一章 山谷ブルース 東京に生きる野宿仲間と動物たち たこつぼからドツボへー初めての隅田川医療相談会 ウサギ・マジックー荒川河川敷ウサギのやさしい魔法 はなちゃんとハッピーー隅田川テラスから見える風景 隅田川から信州へー野宿の女性と猫の引越し 「輪」からつながる「和」-荒川医療相談会 井上さんとイノウエくんー山谷の祭りの出来事 「コラム」犬が苦手! の名ドライバー 第二章 Love me tender 大阪・釜が崎の自由と不公平 川から海へー全国地域・寄せ場交流会 西成公園へー初めての大阪・釜が埼 不当なことは立ち向かってGO! -カタヤマさんの逮捕 人と犬が紡ぐものー残された犬たちと人間模様 事件後のジェシカおばさんー里親探しに奔走するボランティアたち 居酒屋「はな」のシアワセ術ー釜が埼に集う人たち 「コラム」ジョン熊五郎 第三章 Many rivers to cross 野宿仲間と越えていく壁 桜の中のお別れー信州のMさんの死 百年に一度のことをしようー若者たちの挑戦 なぜ暴力が起きるのかー動物虐待と野宿者襲撃 若い世代へ伝えたいー野宿問題の授業 ファミリー・アフェアー野宿からアパートへ やすらかに暮らしたいー生活保護と動物と 「コラム」ありがとう、鉄の道 第四章 People get ready 生きものみんなに明日が来るために 情報格差社会のなかでー知る権利と知らせる責任 トルエケが起こした奇跡ー助け合いの経済 誰かが何とかしてくれる?-無関心と関心のあいだで Five freedoms-最低限の自由の保障 違っているからいいー人間多様性 タコツボからクラーケンへー共感力と手をつなぐ社会 エピローグ 橋爪竹一郎「微笑して正義を行え」 藤原英司「命の尊厳」 大きな河の流れのほとりでーあとがきにかえてエピローグ あとがきにかえて