1986年発売
十五歳で木下藤吉郎(のちの秀吉)に仕えた虎之助(清正)は、股肱と頼む肉親の少い秀吉の重用に応えて、山崎、賎ケ嶽はじめ数々の合戦に名をあげ、ついに肥後の太守となった。小田原城を陥した秀吉を出迎えて、清正はともに故郷中村に錦を飾る。翌天正19年、太閤となった秀吉は朝鮮出兵を決意し、清正と小西行長に先鋒を命じた。
秀吉の死によって朝鮮出兵は不毛のうちに終る。清正・行長の間に根深い対立を残しただけだった。武断派と文治派を代表するその対立は、関ヶ原の勝敗を分ける決め手ともなり、世は徳川氏のものとなった。慶長16年、家康と秀頼の対面が無事終るのを見届けた清正は領国熊本でその生を終える。大阪夏の陣はその僅か4年後だった。
美しいばかりでなく朗らかで怜悧、しかも文学的才能もゆたか、という類まれな女主人・定子中宮に仕えての宮中ぐらしは、今まで家にひきこもり、渇き喘いでいた清少納言の心をいっきに潤して余りあった。男も女も、粋も不粋も、典雅も俗悪も、そこにはすべてのものがあった。「心ときめきするもの」など、小さな身のまわりの品、事象を捉えて書きつけた『枕草子』。そこには、共に過ごし、話に興じた、細やかな情趣を解してくれた中宮への憧憬と敬慕、中宮をとりまく花やかな後宮の色と匂いと笑い声を、千年ののちまで伝えたいと願う清少納言の夢が息づいているー。平安の才女・清少納言の綴った随想を、千年を経て、今清少納言・田辺聖子が物語る、愛の大長編小説。
美しいばかりでなく朗らかで怜悧、しかも文学的才能もゆたか、という類まれな女主人・定子中宮に仕えての宮中ぐらしは、今まで家にひきこもり、渇き喘いでいた清少納言の心をいっきに潤して余りあった。男も女も、粋も不粋も、典雅も俗悪も、そこにはすべてのものがあった。「心ときめきするもの」など、小さな身のまわりの品、事象を捉えて書きつけた『枕草子』。そこには、共に過ごし、話に興じた、細やかな情趣を解してくれた中宮への憧憬と敬慕、中宮をとりまく花やかな後宮の色と匂いと笑い声を、千年ののちまで伝えたいと願う清少納言の夢が息づいているー。平安の才女・清少納言の綴った随想を、千年を経て、今清少納言・田辺聖子が物語る、愛の大長編小説。
ケイスは、コンピュータ・カウボーイ能力を奪われた飢えた狼。だが、その能力を再生させる代償に、ヤバイ仕事をやらないかという話が舞いこんできた。きな臭さをかぎとりながらも、仕事を引き受けたケイスは、テクノロジーとバイオレンスの支配する世界へと否応なく引きずりこまれてゆく。話題のサイバーパンクSF登場!
野山獄に幽閉されていた吉田松陰にほのかな恋情を寄せる年上の女囚高須久子の目を通して、新しい松陰像を描く表題作、長州藩の犠性となって切腹させられる3家老の三様の死にざまを描く「見事な御最期」、井上聞多暗殺未遂事件にまつわる数奇な物語「刀痕記」など情感に満ちた維新の青春像を描く歴史小説の好著。
素人画家・美保子の「赤い雲」の絵を買おうとした老人が殺され、その絵も消えた!!絵のモデルとなった瀬戸内海に浮かぶ寿島は、原発誘致にからみ村が二分され、大きく揺れ動いていた。そしてまた新たな殺人が…。莫大な利権をめぐって、平家落人の島を舞台にくりひろげられる骨肉の争い。絵に秘められた謎と殺人犯人を追って、私立探偵浅見の名推理が冴える!!長編伝説推理。
原爆投下の前日8月8日、長崎の街にはいま現在そこに住む人々と、おなじ人間の暮らしがあった。結婚式を挙げた新郎新婦、刑務所に収監された夫に接見する妻、難産の末に子供を産む妊婦…など。愛し傷つき勇気を奮い起こし、悲喜こもごも生きる人々を突然に襲う運命の《明日》。人間の存在を問い、核時代の《今日》を鮮烈に描く長篇。第29回青少年読書感想文全国コンクール・高校の部『課題図書』。
「犯人はボクじゃない!ところで君に一目惚れしたので結婚して。でもその前に1千万円でボクの容疑晴らしてくれない!?」美人でちょっぴりケチなOL冴子は、ひょんなことから愛人殺し容疑の青年と知り合った。人間以外なら“来るものは拒まず”がモットー、貯金が趣味の冴子はこの申し出を引き受け、さっそく調査を開始したが…。恋とお金と殺人の長編ミステリー。
「中絶手術は、戦後最大の産業であり、今日の繁栄は、ひとえに産婦人科医のおかげ」という説も生まれる中絶天国・日本。その数は三千五百万、大韓民国一国分くらいの人口を抹殺したことになる…中絶は果して悪か?湘南の小さな産婦人科医院を舞台に展開されるさまざまなドラマを通して真の生命の尊厳を訴える衝撃の問題作。
表題作は、父の遺骨を納めるべく売り出された墓地を見に行く青年の奇妙な一日をポップ・アート風に描いて注目を浴びた第84回芥川賞受賞作。他にカメラ狂のフェティシズムを考察する「星に触わる」、晴れた日に雨樋を買うことこそラディカルだと思う男を描く「自宅の蠢き」など、初期の秀作五篇を収録した純文学短篇集。
アメリカ留学中に奇妙な翳りを身につけて帰国した婚約者の日野夏彦を迎えて、千沙子は不安を覚えた。やがて恩師の教授が密室状態で殺され、助教授のポストを手に入れた夏彦に嫌疑がかかった。一旦は容疑は晴れたものの、続いて第2、第3の殺人事件が発生、そこに夏彦が絡んでいる匂いを感じた時、千沙子の不安は怯えへと変わった。未来の夫は殺人者なのか?アリバイ崩しと密室トリックに挑む長篇本格推理。