1987年9月1日発売
働き者の平凡なトラック運転手と思われていたポール・マイヤーズは、深夜誰に頼まれ、何を運んでいたのか?運転中、崖から転落死したと思われたポールが、何者かの仕掛けた爆発物で命を絶たれたと知ったピナクル保険は調査員デイヴ・ブランドステッターに事件の背景を探るよう依頼した。彼はまず、保険金を請求した未亡人アンジェラに話を聞きに出かけた。彼女は、夫の仕事については何も知らないという。が、そういう彼女の顔は何者かに殴られ、怯えた様子だった。ポール殺しの容疑者はあがってはいた。シレンシオ・ルイス-チンピラグループのもとリーダー格で、ポールの証言により強盗の罪が確定し、保釈になったばかりの男だ。彼の意趣返しかもしれないが、その行方は杳として知れなかった。そのうち、妙な事実があきらかになった。ポールに仕事を紹介した運転手オシーも、やはり変死を遂げていたのだ。しかも、オシーの死亡診断書を書いた人物は偽医者らしい。その上、オシーの妻子も何者かに怯えて逃げ出していた。事件関係者を脅かす謎の人物とは何者なのか?そして、真夜中のトラック便に絡む怪事件の意外きわまる真相とは?
惑星ハイブリージルの酒場で、窮乏した宇宙貨物船の船長モーゼス・キャラハンは、中身を知らずに積荷を引き受けた。だが、積貨はなんと、ソーラー・フェニックス反応を引き起こしあらゆる物質を恒星に変えてしまう最終兵器ベータ・トリガーだったのだ。しかも、出港前に依頼人を殺され、船内にベータ・トリガーを積んだままキャラハンは目的地をめざす破目に!傑作冒険SF!
惑星ティアマットにいま〈交替〉のときが訪れようとしていた。〈双子〉と呼ばれる太陽がブラックホールである〈黒い門〉に近づくとき、もうひとつの太陽〈夏の星〉は輝きを増し、〈主導世界〉と唯一の連絡路である〈黒い門〉は使用不能となる。ティアマットは通商停止の世界、大宇宙の孤島となるのだ。150年にわたって〈冬の女王〉の治世は終わり〈交替〉を象徴する〈祭り〉とともに、〈夏の女王〉の治世が始まる。だが、〈生命の水〉によって永遠の若さを保つ〈雪の女王〉アリエンロードは、むざむざと〈冬〉を〈夏〉にあけわたす気はなかった…ヒューゴー賞受賞作!
数奇なる運命にもてあそばれるかのように〈夏〉の少女ムーンは惑星ティアマットを離れ、〈主導世界〉の中心ー惑星ハレモークへと連れ去られた。だがその地で彼女は、ティアマットをめぐる数々の問題の真相を知り、そしてまた巫子であることの真の意味を教えられたのだ!〈冬の女王〉アリエンロードのつむぎだした不可思議な糸に捕えられた愛するスパークスを取りもどすべく、ムーンはティアマットに帰還した。だが彼女をそこで待て受けてたのは更なる試練の数々であった…アンデルセンの同名の作品をもとに華麗に描きあげられた傑作サイエンス・ファンタジイ巨篇!ヒューゴー賞受賞作品。
冷凍睡眠を使い、光速と比べられる宇宙船の速度を利用し、時間という盾に隠れて逃げつづけてきた永久逃亡犯。そして彼を捕え、火星の永久警察へ連行しようとする永久刑事。二人の乗りこんだ民間宇宙船が救難信号を受信したことから、敵味方であるふたりは難破船の捜索に赴いたのだが…「渇眠」、酸性雨が降りつづく都市で起きた連続殺人事件の謎を追う「酸性雨」、ひとりひとりのパーソナル・コンピュータが人格の一部になっている未来世界を描く「兎の夢」など、星雲賞受賞作家・神林長平の才気をあますところなくつたえる中篇4篇を収録する。
西側安全保障の中枢といわれる情報機関GCHQ(英国政府通信本部)-その一部局に勤務する息子が不慮の死を遂げた。訃報を聞いた父親のフランクは愕然とした。警察の調べでは、息子はアパートの屋上から墜落死したという。が、数日前の息子の言動からすれば、自殺はありえなかった。疑惑を抱いたフランクは密かに調査を開始するが…。次々と現れる謎、そして彼を脅かす黒い圧力。やがて米英ソ3国の苛烈な情報戦の影がちらつき始めた。全英を揺るがせた機密漏洩事件を題材に、一市民の孤独な闘いを不気味なタッチで描くスパイ・サスペンス!
さよならスティーヴ。ベッツィーのこと、よろしくね…とうとうトリシアがいっちゃった。悲しみにくれるスティーヴだけど、最後になにか約束をしてたみたい。きっとトリシアの姉さん、町いちばんの不良娘のベッツィーのことだわ。そういえば、あれからスティーヴはベッツィーにとってもやさしいし、彼女もちょっぴりまじめになったみたい。でも、ジェシカはおかんむり。不良娘と兄さんが仲よしなんて…。またまたなにか、たくらんでるんじゃないかしら。
パーム・スプリングスの別荘から、富豪ワトスンの息子がロールス・ロイスとともに消えた。FBIの捜査もむなしく、事件は迷宮入りとなった。それから17か月もたって、ハリウッド署のシドニー・ブラックプール部長刑事がワトスンに呼び出された。行方不明になった当日、息子がハリウッドのロールス・ロイス販売店に寄ったことが今になってわかった、もう一度ハリウッド署に事件を調べ直してほしいというのだ。警察小説を書かせては並ぶもののないウォンボーが、鮮やかなプロットに深い味わいを添えて贈るミステリ。
薬師寺太郎は“現象界引き戻し人”だ。“現象界引き戻し人”というのは、現実世界から、なんらかの原因で精神的にも肉体的にも離れてしまい、境界線を越えて“未知の領域”へ踏み込もうとする人間をつかまえ、連れ戻すのが役目なのだ。今日の太郎のターゲットは、失恋して現実逃避、幽体離脱しかかっている女の子・由美子を連れ戻すこと。渋谷の街を透明人間になってさまよっているらしい。行方を追いかける太郎。だが彼女の囲りには早くも境界線を越えた人間を飲み込む闇が迫り始めていた。ヤバイゼ!岬兄悟のちょっとHでファンキーなSF連作集。
「おにいさん、あたしを買わない?」田賀倉健助は、突然声をかけられた。声の主はお嬢さま風の娘、晃美。断わると、彼女は中年男とホテルへ…。翌日ニュースが報じた女子大生殺人事件の被害者は晃美だった。どうやら、田賀倉と別れた直後に殺されたらしい。おまけに証言しに行った警察の副署長は、ゆうべ晃美と消えた中年男にそっくり!真相を究明しようと事件に乗り出した田賀倉を、今度はヤクザが追ってきた。この事件には何か裏があるらしいのだ。一般市民・田賀倉は、なんとヤクザと警察を相手に、仲間と大がかりな「信用詐欺」を開始した!
世紀末都市/メガロポリス-それは、人類がテクノロジーの高度化の果てに生み出した文明の廃棄場である。昼夜の別なく響き渡るサイレン。崩れ、朽ちかけた裏通りを彷徨う男達。殺し屋、刑事、タクシー・ドライバー、バーテン…職業は違っても皆、心の奥に苦い過去を隠しながら、誇り高くタフに生きている。近未来のSFイメージを随所に散りばめながら、犯罪に巻き込まれて戦う彼等一人一人の姿を通じて、都市と人間の歪みを鮮やかに描いた、著者初のハードボイルド連作集・全6篇。作品のアイディアを詳しく解説したあとがきも収録。
おれ-邑谷武は、人間-機械のハイブリッドソルジャーだ。火星陸軍の1等兵として無機生命体・マグザットと戦闘を繰り広げてきた。だがマグザットに急襲されて、意識を失った-そしてここは地球、1986年。ある日、おれの脳に組み込まれたTIPがコンピュータとシンクロし、ディスプレイに火星の戦友・中条光則の助けを求める姿が映し出された。崩壊していく現実の中で、火星のイメージと風景がオーバーラップした時、おれは2131年にいた。そこで、首なし死体となった中条に再会する。謎をとくため、おれは彼の恋人・絵里奈の家へ向った。
限定核戦争によって、壊滅状態となった東京は、浮遊都市として驚異的な復興をなしとげた。日本最大の宇宙産業グループKPDの若きトップ・九条俊一郎は、宇宙都市P1の市長の娘・レイチェルとのロマンスを実らせようとしていた。一方、凶悪なスラムと化した保護区では、リョウの率いるグループが勢力を伸ばしていた。おしのびで保護区に遊びに来ていたレイチェルは、スラム内の抗争に巻きこまれ、リョウに掠奪されてしまう。陽のあたる道を歩いてきた俊一郎と闇の世界を牛耳るリョウ…同じ女性を愛してしまった二人には悲劇的運命ともいえる秘密が。
漂泊の民、出雲呪族。彼らは山野を放浪し、歴史の裏側で暗躍した一族である。出雲王朝崩壊後の迫害の歴史は怨念の呪詛として一子相伝で語り継がれてきた。しかし、簸上竜造が掟を破り、3千年におよぶ遺恨を文字にたたきつけた。陰から体制を支配しつづけてきた謎の天孫一族・須米婁は、簸上文書の存在を嗅ぎつけ、闇に葬り去ろうと動きだした。支配者・須米婁にとって日本史を否定されることは自らを否定されることを意味するからだ。次々と襲撃を受ける出雲呪族。鬼祭光舜は人狐と呼ばれる精神遊離の呪用を用いて、須米婁の魔手を退けようとするが…
俺の名はヒトシ・トキムネ。しがない運び屋兼ハスラーだ。土星の衛星タイタンを周回するステーション『アルテミス』を根城にしている。そんな或る日、ビリヤードの賭けに勝った俺は、相手の男にノコノコ付いていった。不覚にもガツンと一撃をくらう。気がつくと、そこは海王星の衛星トリトン。俺は、米宇宙軍のお偉いさん、J・Jから異星人とのファースト・コンタクトを依頼される。宇宙空間に浮遊する28個の球体を駒にした立体版チェスゲームでコンタクトしようというものだ。プレイ・デイが近づくにつれ、俺のハラスー魂は燃え上がるー。
東京相互物産会長内藤牛之助の秘書である燕三四郎は、“富士の君”と呼ばれる会長の愛人上月茜に3000万円を騙し取られてしまった。3000万の代わりに残されたのは、会長が金に糸目をつけず蒐集したアタッシェケース一杯の“大人のオモチャ”。激怒した会長の命令で、三四郎はアタッシェケースをかかえ、上月茜とその恋人高木を捕まえるため、奇妙な旅へでかけるのであった…。長篇ミステリー。
伊井直人は名ばかりの伊達家剣道指南役、若妻定の薙刀にも敗れた直人は、面あてに妻との閨房も断って出奔した。一方、定との不倫を疑われた弟子の仏子四郎五郎も旅の途次、真田幸村の遺児磯姫らが隠れ棲み武技を磨く加賀山中の地で直人に再会。妬心に狂う直人から逃れ江戸での御前試合を目指したが、諸国から集まる武芸者の中には直人、定、さらに仏子を慕って里を出た磯姫の男装姿があった…。時代娯楽巨篇。
奔放無頼な暮しぶりで江戸下町の庶民に慕われる無役の幕臣・勝小吉の子として生まれた麟太郎(後の海舟)は、周囲の愛に育まれて成長、島田虎之助に学んだ剣では早くも皆伝を許され、都甲斧太郎に師事した蘭学でも頭角を現わしつつあった。まさに栴檀は双葉より芳し。紅夷の学を蔑視する側からの圧迫もものかは、来るべき激動の日本を担う大器の進取の気は、日増しに鋭くなって行く…。『父子鷹』姉妹篇。