1987年9月発売
惑星ハイブリージルの酒場で、窮乏した宇宙貨物船の船長モーゼス・キャラハンは、中身を知らずに積荷を引き受けた。だが、積貨はなんと、ソーラー・フェニックス反応を引き起こしあらゆる物質を恒星に変えてしまう最終兵器ベータ・トリガーだったのだ。しかも、出港前に依頼人を殺され、船内にベータ・トリガーを積んだままキャラハンは目的地をめざす破目に!傑作冒険SF!
惑星ティアマットにいま〈交替〉のときが訪れようとしていた。〈双子〉と呼ばれる太陽がブラックホールである〈黒い門〉に近づくとき、もうひとつの太陽〈夏の星〉は輝きを増し、〈主導世界〉と唯一の連絡路である〈黒い門〉は使用不能となる。ティアマットは通商停止の世界、大宇宙の孤島となるのだ。150年にわたって〈冬の女王〉の治世は終わり〈交替〉を象徴する〈祭り〉とともに、〈夏の女王〉の治世が始まる。だが、〈生命の水〉によって永遠の若さを保つ〈雪の女王〉アリエンロードは、むざむざと〈冬〉を〈夏〉にあけわたす気はなかった…ヒューゴー賞受賞作!
数奇なる運命にもてあそばれるかのように〈夏〉の少女ムーンは惑星ティアマットを離れ、〈主導世界〉の中心ー惑星ハレモークへと連れ去られた。だがその地で彼女は、ティアマットをめぐる数々の問題の真相を知り、そしてまた巫子であることの真の意味を教えられたのだ!〈冬の女王〉アリエンロードのつむぎだした不可思議な糸に捕えられた愛するスパークスを取りもどすべく、ムーンはティアマットに帰還した。だが彼女をそこで待て受けてたのは更なる試練の数々であった…アンデルセンの同名の作品をもとに華麗に描きあげられた傑作サイエンス・ファンタジイ巨篇!ヒューゴー賞受賞作品。
冷凍睡眠を使い、光速と比べられる宇宙船の速度を利用し、時間という盾に隠れて逃げつづけてきた永久逃亡犯。そして彼を捕え、火星の永久警察へ連行しようとする永久刑事。二人の乗りこんだ民間宇宙船が救難信号を受信したことから、敵味方であるふたりは難破船の捜索に赴いたのだが…「渇眠」、酸性雨が降りつづく都市で起きた連続殺人事件の謎を追う「酸性雨」、ひとりひとりのパーソナル・コンピュータが人格の一部になっている未来世界を描く「兎の夢」など、星雲賞受賞作家・神林長平の才気をあますところなくつたえる中篇4篇を収録する。
さよならスティーヴ。ベッツィーのこと、よろしくね…とうとうトリシアがいっちゃった。悲しみにくれるスティーヴだけど、最後になにか約束をしてたみたい。きっとトリシアの姉さん、町いちばんの不良娘のベッツィーのことだわ。そういえば、あれからスティーヴはベッツィーにとってもやさしいし、彼女もちょっぴりまじめになったみたい。でも、ジェシカはおかんむり。不良娘と兄さんが仲よしなんて…。またまたなにか、たくらんでるんじゃないかしら。
パーム・スプリングスの別荘から、富豪ワトスンの息子がロールス・ロイスとともに消えた。FBIの捜査もむなしく、事件は迷宮入りとなった。それから17か月もたって、ハリウッド署のシドニー・ブラックプール部長刑事がワトスンに呼び出された。行方不明になった当日、息子がハリウッドのロールス・ロイス販売店に寄ったことが今になってわかった、もう一度ハリウッド署に事件を調べ直してほしいというのだ。警察小説を書かせては並ぶもののないウォンボーが、鮮やかなプロットに深い味わいを添えて贈るミステリ。
「おにいさん、あたしを買わない?」田賀倉健助は、突然声をかけられた。声の主はお嬢さま風の娘、晃美。断わると、彼女は中年男とホテルへ…。翌日ニュースが報じた女子大生殺人事件の被害者は晃美だった。どうやら、田賀倉と別れた直後に殺されたらしい。おまけに証言しに行った警察の副署長は、ゆうべ晃美と消えた中年男にそっくり!真相を究明しようと事件に乗り出した田賀倉を、今度はヤクザが追ってきた。この事件には何か裏があるらしいのだ。一般市民・田賀倉は、なんとヤクザと警察を相手に、仲間と大がかりな「信用詐欺」を開始した!
世紀末都市/メガロポリス-それは、人類がテクノロジーの高度化の果てに生み出した文明の廃棄場である。昼夜の別なく響き渡るサイレン。崩れ、朽ちかけた裏通りを彷徨う男達。殺し屋、刑事、タクシー・ドライバー、バーテン…職業は違っても皆、心の奥に苦い過去を隠しながら、誇り高くタフに生きている。近未来のSFイメージを随所に散りばめながら、犯罪に巻き込まれて戦う彼等一人一人の姿を通じて、都市と人間の歪みを鮮やかに描いた、著者初のハードボイルド連作集・全6篇。作品のアイディアを詳しく解説したあとがきも収録。
おれ-邑谷武は、人間-機械のハイブリッドソルジャーだ。火星陸軍の1等兵として無機生命体・マグザットと戦闘を繰り広げてきた。だがマグザットに急襲されて、意識を失った-そしてここは地球、1986年。ある日、おれの脳に組み込まれたTIPがコンピュータとシンクロし、ディスプレイに火星の戦友・中条光則の助けを求める姿が映し出された。崩壊していく現実の中で、火星のイメージと風景がオーバーラップした時、おれは2131年にいた。そこで、首なし死体となった中条に再会する。謎をとくため、おれは彼の恋人・絵里奈の家へ向った。
限定核戦争によって、壊滅状態となった東京は、浮遊都市として驚異的な復興をなしとげた。日本最大の宇宙産業グループKPDの若きトップ・九条俊一郎は、宇宙都市P1の市長の娘・レイチェルとのロマンスを実らせようとしていた。一方、凶悪なスラムと化した保護区では、リョウの率いるグループが勢力を伸ばしていた。おしのびで保護区に遊びに来ていたレイチェルは、スラム内の抗争に巻きこまれ、リョウに掠奪されてしまう。陽のあたる道を歩いてきた俊一郎と闇の世界を牛耳るリョウ…同じ女性を愛してしまった二人には悲劇的運命ともいえる秘密が。
漂泊の民、出雲呪族。彼らは山野を放浪し、歴史の裏側で暗躍した一族である。出雲王朝崩壊後の迫害の歴史は怨念の呪詛として一子相伝で語り継がれてきた。しかし、簸上竜造が掟を破り、3千年におよぶ遺恨を文字にたたきつけた。陰から体制を支配しつづけてきた謎の天孫一族・須米婁は、簸上文書の存在を嗅ぎつけ、闇に葬り去ろうと動きだした。支配者・須米婁にとって日本史を否定されることは自らを否定されることを意味するからだ。次々と襲撃を受ける出雲呪族。鬼祭光舜は人狐と呼ばれる精神遊離の呪用を用いて、須米婁の魔手を退けようとするが…
俺の名はヒトシ・トキムネ。しがない運び屋兼ハスラーだ。土星の衛星タイタンを周回するステーション『アルテミス』を根城にしている。そんな或る日、ビリヤードの賭けに勝った俺は、相手の男にノコノコ付いていった。不覚にもガツンと一撃をくらう。気がつくと、そこは海王星の衛星トリトン。俺は、米宇宙軍のお偉いさん、J・Jから異星人とのファースト・コンタクトを依頼される。宇宙空間に浮遊する28個の球体を駒にした立体版チェスゲームでコンタクトしようというものだ。プレイ・デイが近づくにつれ、俺のハラスー魂は燃え上がるー。
伊井直人は名ばかりの伊達家剣道指南役、若妻定の薙刀にも敗れた直人は、面あてに妻との閨房も断って出奔した。一方、定との不倫を疑われた弟子の仏子四郎五郎も旅の途次、真田幸村の遺児磯姫らが隠れ棲み武技を磨く加賀山中の地で直人に再会。妬心に狂う直人から逃れ江戸での御前試合を目指したが、諸国から集まる武芸者の中には直人、定、さらに仏子を慕って里を出た磯姫の男装姿があった…。時代娯楽巨篇。
奔放無頼な暮しぶりで江戸下町の庶民に慕われる無役の幕臣・勝小吉の子として生まれた麟太郎(後の海舟)は、周囲の愛に育まれて成長、島田虎之助に学んだ剣では早くも皆伝を許され、都甲斧太郎に師事した蘭学でも頭角を現わしつつあった。まさに栴檀は双葉より芳し。紅夷の学を蔑視する側からの圧迫もものかは、来るべき激動の日本を担う大器の進取の気は、日増しに鋭くなって行く…。『父子鷹』姉妹篇。
深川の元芸者を娶った勝麟太郎は、蘭学塾を開き、西洋兵術を講じて声望を上げる一方、佐久間象山との交流を通じて、“海”への関心を高めて行く。時は弘化から嘉永。来航する異国船はいよいよ繁く、やがて海防御係・大久保忠寛(一翁)の訪問を受ける日が来た。しかし、幕閣の顕官に麟太郎は臆するどころか、幕府の無為無策を説くのだった…。日本転換期を骨太に生きた傑物父子を描く、巨匠の代表作。
セクシャル女医探偵VS悪霊教団!通信社や放送局がたちならぶオフィス街の一角にクリニックを構える美貌のセックス・カウンセラー、貴堂舞子。副院長の男性治療士・岬や助手の美人ギャルを従え、現代の風俗も反映して医院は大繁盛。そんな舞子の友人の1人が、黒猫を利用したオカルトじみた嫌がらせにあい、また医院の患者である真弓が『聖星会』と名のる新興宗教団体絡みの殺人事件にまき込まれる。独自の調査を始めた舞子たちは、財界一の巨頭・瀬戸山の腹上死事件の裏にも現代の闇で蠢く悪徳教団の影を知るが…?最新長篇セクシャルミステリー。
古都・京都で次々と若い娘がさらわれて、その行方も知れない。さらうのは狐狸妖怪の類だと目撃者は言う。また、西山の各地で全裸の美女の死体が発見され、警察の躍起の捜査にも被害者達の身元は不明だった。一方、東京で失踪者捜索の依頼を受けた、剣の達人で妖術使いの蟇目仁人は京都へ向かったが、その彼の前に立ち塞がった美貌の呪術師ー大枝山の酒呑童子が蘇生し、その彼を陰で操る謎の米国秘密研究組織!
マニラ発成田行極東58便の機中から一人の乗客が消えた!翌朝、消えたはずの乗客・武藤俊介が相模湖で水死体となって発見された。武藤は、暴力団・水島組の幹部だったが、マニラで“じゃぱゆきさん”の日本人手配師として暗躍していたらしい。極東航空のパイロットで、新宿にシマを持つ酒巻組の三代目組長でもある酒巻茂樹は、武藤失踪に疑惑を抱き、事件の裏に隠された真相を追うが…!マニラを飛び立った酒巻の操縦する極東58便に刻一刻と危機が迫っていた…。マニラ-東京間で暗躍する暴力団に絡む殺人事件を背景に、熾烈な暴力団のサバイバルゲームを描いた、長編推理アクション小説の書下ろし会心作!