1988年10月17日発売
敗戦直後の荒廃した世情のなかで、深い倦怠と疲労に自身の老いを自覚する信吾。老妻や息子夫婦と起居をともにしながら孤独を感じさせられる家庭にあって、外に女をもつ長男の嫁菊子に対する信吾の哀憐の情は、いつしかほのかな恋にも似た感情に変わってゆく。その微妙な心のひだをとらえた戦後川端文学の傑作。
まえがき 第 一 章 到 着 三十四号室 レストランで 第 二 章 洗礼盤と二つの姿の祖父のこと ティーナッペル家で。そして、ハンス・カストルプの倫理状態について 第 三 章 謹厳なしかめっつら 朝 食 からかい。臨終の聖体拝受。たちきられた上きげん 悪魔(Satana) 頭脳明快 一言失言 もちろん、女さ! アルビンさん 悪魔(Satana)ぶしつけな進言をする 第 四 章 必要な買いもの 時間感覚についての余談 フランス語の会話をこころみる 政治的にうさんくさい! ヒ ッ ペ 分 析 疑問と考察 食事中の談話 昂じる不安。二人の祖父のこととたそがれの船あそびについて 体 温 計 第 五 章 永遠のスープと突然の明るさ 「ああ、見える!」 自 由 水銀の気まぐれ 百科辞典 フマニオーラ 探 究 亡者の踊り ワルプルギスの夜 訳 注
第 六 章 変 化 さらに一人 神の国とうさんな救済 激怒。そして、もっとたまらないこと 攻撃失敗 精神的修錬(operationes spirituales) 雪 兵士として、それもりっぱな 第 七 章 海べの散歩 ペーペルコルン氏(Mynheer Peeperkorn) トゥエンティー・ワン(vingt et un) ペーペルコルン氏(つづき) ペーペルコルン氏(むすび) 無感覚という名の悪魔 楽音の泉 ひどくうさんなこと ヒステリー蔓延 青天の霹靂 解 説 トーマス・マン略年譜 あとがき 訳 注