1988年10月1日発売
南房総の海岸で3人組の男に襲われた冴子と母。だが、心の傷が癒えた頃に母は突然自殺をする。一方、男たちが残した1枚のフィルムについて父は口を開こうとはしない。孤独に犯人を探す冴子だったが、男たちは殺されてしまい、ネガフィルムが示す16年前のある出来事を軸として公判が開かれた。両親の秘密が明らかになり、二転三転する審理の末に弁護側証人として出廷した意外な人物は?著者会心の本格推理。
奥多摩・青梅の神社で、高校生の死体が発見された。被害者は医学部進学を目指す秀才。しかも、系列大学医学部への推薦枠をめぐる不正を探っていた。続いて、ライバルの女生徒を教えていた東大生家庭教師も殺される。背後には巨大な黒幕が…。そして舞台は成田へ。斬新なアイデアと、卓抜なトリックを駆使した気鋭の本格推理。
盟友明智光秀と共に足利義昭の将軍擁立に奔走し、やがて信長に臣下に。戦国の世を生き、傍ら茶道・和歌の世界に独自の境地を切り開き、世に“文芸大名”と称された細川藤孝(幽斎)・忠興父子の数奇な生涯を描く。
島帰りの牢人が、浜田旧城下で贋の公卿に化け、維新の世に不平不満をもつ旧藩士や庶民を引きこんで、ひと騒動を企んだ(浜田騒動)。-時代小説界の巨匠が、武士世界の悲喜こもごもを綴る珠玉の短編集。
死の床にある秀吉をめぐって、北政所と淀殿、石田三成と古参の武将たちが激しく対立。慎重に時を待つ家康の巨大な影が、無言の圧力となって人々を脅かす。知性の人・石田三成の悲劇を描いた長編歴史小説。
大統領の演説草稿担当官から核エネルギーの最高機密“Qクリアランス”を扱うポイントに出世した平凡な政府職員ティモシー・バーナム。彼の当惑をよそに、KGBのスパイは新たな“重要人物”の登場に色めきたち、大統領の取り巻きたちは右往左往。バーナムを陥れようと…。-ベストセラー『ジョーズ』の原作者が、自らの体験(ジョンソン大統領のスピーチ・ライター)を生かして、ホワイトハウスの内幕を辛辣なタッチで描いた痛快傑作ノベル。
〈手掛かりはビートルズのテープ?〉パーティ・コンパニオン小田香子は驚いた。仕事先のホテルの客室で、さっき別れたばかりの同僚牧村絵里が毒入りビールを飲んで死んだのだ。現場は密室、警察は自殺だというけれど…。知り合った若手刑事芝田と情報交換するうち、今度は絵里の親友だった真野由加利が自室で扼殺され、続けて香子の部屋までが何者かによって荒らされた。〈どうなってんのよ、この事件〉退くに退けなくなった香子と芝田。はたして犯人は?密室の謎は解けるのか…。ミステリー界の若き旗手が、華やかなコンパニオンの世界を舞台に、卓抜なトリックと洗練された機知を織り込んで放つ長編本格推理の傑作。
〈私は魔女なのよ-〉全寮制の名門聖真女学園で、高取恵が謎の言葉を残し焼死体となって発見され、続いて堀江千秋が刺殺された。それが恐怖の幕開けとなった。学園に転校して来たばかりの和泉冴子は、生理の度に、血の悪夢に悩まされ、相次ぐルームメイトの死に“もしかして私が”という不安に戦いていた。冴子には夢遊病の癖があったからである。さらに連続殺人劇は進行し、疑惑の眼は冴子に向けられた…。いったい魔女という言葉の意味は?殺人鬼は冴子自身なのか?推理文壇の若き俊英が本格推理の醍醐味と心理サスペンスを見事に結実させた注目作ここに誕生。
名古屋に向かう“ひかり87号”の車中で出版社の外注校正係、草田恭子が毒殺された。その直前に恭子と接触したと思われる“長身の男”を割り出した捜査員は、トラベルライター笹岡卓也と市役所勤務の折原俊彦を容疑者と断定した。しかし笹岡は同日同時刻、取材のため熊本に、一方、折原は新大阪発“ひかり23号”で博多に向かっていた。東京ー名古屋間をノンストップで走る新幹線での殺人は2人には絶対不可能に思われた。アリバイ崩しの名手が満を持して贈る本格推理の傑作。
紫の廊下を、薄い衣裳の裾を引きずりながら神の聖なる娼婦が歩く。その秘密結社「アメン神団」の幹部小泉博は、不思議な図形を記した手帳を残して失踪した。新沢大作はその図形をたよりに捜索を開始し、天橋立からギリシャへ、そしてエジプトでようやく彼の足取りを掴んだ。しかし、小泉の背後には“ギルガメシュの秘宝”を巡る壮大な陰謀があった…。失われた超古代の秘宝を求めて、ピラミッドの内部深く展開するアドベンチャー・ロマン“空白”シリーズの第4弾。
芭蕉の句碑が立つみちのくで、殺人、変死、拉致事件が相次いで起こった。しかも『奥の細道』に関する“ショッキングな新説”を執筆中の大学助教授橋本行三が謎の失踪を遂げた。僧侶で警部の鳥居快海は虎田警視監ことトラカンの密命を帯び、みちのくへ旅立った。やがて事件の発端は三百年前、芭蕉とその同行者曽良の不審な行動にあることがわかった…。ブルーのBMWで疾駆する気ままな美女岩波海子とともに、芭蕉の謎と連続殺人を追う、人気シリーズの第3弾。
こんなのはなにかのまちがいにきまっているー伸弥はなにがなんだかわからずに、無人の駅前広場に突っ立っていた。朝とまったく同じ、きれいさっぱり、あっけらかんと静かなのだ。電車も動いていず、人々はベッドやふとんの中で、あるいは道端で、ぐっすり眠っている。それも、みんな幸せそうな顔をして…。起きているのは伸弥のみ。パニックに陥って街中を走り回った伸弥だが、仕方ない、とりあえず年上の女友達・二谷静香さんのマンションにいってみようと、自転車を拝借した。走っているうちに、起きている人間に出会うかもしれない…。甲州街道を走っていると、車のエンジン音が聞こえてきた。ベンツが伸弥を襲った!男が運転している。その男、酔っ払いの郭と、伸弥は東京探険へと出かけた。伸弥の背後に取り憑いた少女の霊、深夜歩きまわる夢魔。不可思議なことが続く。伸弥たちのサバイバル。次々と意表を衝く気鋭のSFファンタジー。
東南アジアの小国エンシノアで政変が起きかけている。大統領が危篤になり、軍司令官バルガスが後釜を狙っているのだ。大統領には妻と息子がいる。国民は大統領の後継者に息子を望んでいた。バルガスにとっては邪魔な存在だった。危険を感じた大統領夫人は、旧知の、というより、かつての愛人でいまはアメリカで弁護士をしているリチャード・フォレストに救いにきてほしいと頼んだ。リチャードの裏の顔は、暗殺者。そしてその相棒が薔薇のアサシン(暗殺者)ことカオルだった。リチャード、続いてカオルがエンシノアへ飛ぶ…。彼らを待ち受けるものは?スケールの大きさで定評のある気鋭のサスペンス・アクション。
重ねて前科が14犯。焼跡闇市に若い男も女も、命と身体を張って手傷をうけた。傷は癒えても心に染み込んだ毒はおいそれとは消えはしない。ちんぴらヤクザ水田順二の物語。人気作家・安部譲二の自伝的小説。